とりあえずどうぞ。
第一話
さくりさくりと、土を踏みしめる音が林の中を伸びる細い道に響き渡る。木立からは木漏れ日が洩れて、そよりと時おり吹く風と共に踊っている。点々と道ばたを彩る色とりどりの草花を目で楽しみながら、一人の青年が道を歩いている。
季節は初夏。運動をすれば汗をかくが、多少歩いた程度では額にすら滲まない。むしろ林の中は人によっては肌寒い、そう感じるかもしれないくらいの気温だ。まあ、少し低めの気温は目的地の近くにある霧の湖と呼ばれる場所が近いからなのかもしれないが。
改めて青年を見てみよう。背丈は170センチ半ば程で、顔立ちは優しげな風貌をしている。服装は藍に染め抜いた着物で、どこか中華風に見える。手には護身用なのか、それとも邪魔な草木を払うためなのか昆を持っており、首からは【博麗】と達筆な文字と難解な模様が書かれている御守りをかけている。腰には使い降るされた水筒代わりの瓢箪が二つ。それと巾着がついている。
彼の名前は蒼井神楽。現代社会ではまぼろしとなっているモノ達が集う幻想郷の人里に住む少し風変わりな人間である。
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先程の場面から十数分。頭上を小鳥が通り過ぎたり、ふらふらと低空を
まあ、そんなこんなで神楽は目的地に着いたようだった。
目の前に広がるのは目が痛くなるような赤。いや、名前や住んでいる主の事を考えると紅、と呼ぶのが正しいか。壁一面が深紅に染まった、とても大きな屋敷だ。窓の数が極端に少ないのと、大きく立派な時計台が印象的である。
屋敷の名前は紅魔館。悪名高きスカーレットデビルこと、レミリア・スカーレットの居城である。人里の大半の人はまず近付く事は無いだろうこの建物。まあ、盟約である程度の身の安全を確保されているとはいえ、わざわざ妖怪の、それも妖怪の中でも最強種の一つでもある【吸血鬼】の住み処に近付こうという愚か者は普通は居ないのである。
…もっとも、自分からノコノコと近付く愚か者はここに居たりするのだが、彼は特殊な部類である。
ひょんな事から此処、紅魔館に辿り着き、偶然出会ったが門番と意気投合。本人曰く、お互いに穏やかな気性であったのが幸いした、とのこと。その後、友人となり健康の為に太極拳等を習いに足しげく通った所、連鎖式に他の住人とも知り合って結構気に入られている。最近ではほぼ毎日通う始末であり、紅魔館の庭いじりに参加したり、レミリアの妹君とじゃれあったり、夕食(館の主であるレミリアにとっては朝飯だが)に招待等もされている。お陰で人里では少し浮いた存在となっている。もともと早くに親を無くしており、浮いた存在だったという事情もあるのだが。まあ、それでも人里に友達は居るので、村八分にされたりはしていないのだが。そんな事情もあり、レミリアから紅魔館で住み込みで働かないかと声を掛けられており、どうしようかと悩んでいるのだが…、それは置いておこう。
さてさて、そんな一風変わった青年が何故紅魔館に来たのか。それは今、青年の前で門にもたれ掛かりながら門番をしている彼女に会いに来たからだ。
すぴー…すぴー…。
…訂正、門番していなかった。というか、お昼寝をしていた。燦々と降り注ぐ太陽の恵みを受けながら、暢気に寝ている彼女。
腰より少し上くらいまで伸びた、赤いスイートピーを彷彿とさせる鮮やかな髪。閉じていて今は見えないが、穏やかな雰囲気の青がかった灰色の瞳。夏の生命溢れる植物の葉のように、鮮やかな緑色を主体とした中華風の衣服を着ており、頭には額部分に星の中に龍と刺繍された帽子を被っている。
彼女の名前は
…そして、神楽の恋人でもある。
台詞が一つもない不具合。
さてさて、次は何時かなぁ…。