型月産ワカメは転生者である(仮題)   作:ヒレ酒

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おっ金槍やんけ、メドゥーサ来たやろ→サーヴァント界のアイドル。
めでたく宝具レベルが5になりましたとさ。


ついに最終章ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
僕は爆死してるけど元気です(真顔

いやぁ、ホント極悪ピックアップでしたね(マーリンから目を逸らしつつ




第十三話

 空を見ろ。あれは鳥か、飛行機か。

 いや、あれは波濤仮面(ワカメ)だ。

 深夜の冬木。慎二が魔力ジェットで空を行く。

 猛禽類が得物を見定めるかのように、ぐるぐると旋回を続ける。

 

 慎二は間桐邸から飛び立つと、教会の上空で待機をしていた。

 眼下ではセイバーとバーサーカーの激しい戦闘が行われている。

 

 標的はイリヤスフィール。

 狙うは彼女からバーサーカーが離れた瞬間だ。

 戦闘が行われている今ならば、そのチャンスは必ず来る。

 

 イリヤスフィールは聖杯の器。そして心臓はその核だ。

 これを手に入れられるかどうかで、今後の戦い方が変わってくる。

 

 波濤の耳(クリード・イヤー)に桜からの通信が入る。

 愛人一号(ライダー)が所定の位置についたらしい。

 準備は整った。後は決行するだけだ。鷹のように目標を見定める。

 

 銀髪、赤眼、合法ロリ。波濤の瞳(クリード・アイ)標的(イリヤスフィール)をロックオン。

 仮面(バイザー)越しに、慎二はニヤリと口元を歪めた。

 イリヤちゃんのハートをキャッチする作戦、開始である。

 

 自由落下を開始。さらにスラスターを全開に。

 空気を切り裂く甲高い音を立てながら、慎二は標的目がけて急降下。

 

 間違いない、()れる。

 そう確信した瞬間、高速で飛来する矢に射抜かれた。

 

「――がっ!?」

 

 これは――アーチャーの矢か。

 まさかここで邪魔されるとは思ってもみなかった。段取りが狂った。

 やっぱりアーチャー(エミヤーン)的にはイリヤスフィールは生かしたいか。

 慎二は空中でバランスを崩し、失速。

 そしてこちらに気付いた標的(イリヤスフィール)と、視線が交錯する。

 

「――ッ!? 戻りなさい! バーサーカー!」

「■■■■■!!」

 

 セイバーと撃ち合っていたバーサーカーが咆哮を上げつつ瞬時に方向転換。

 上空から迫る慎二を迎撃すべく、まるで大砲の弾の如く跳躍。

 イリヤとの間に割り込むかのようにして、その身を滑り込ませてきた。

 

「厄介な!」

 

 慎二は舌打ちを零しつつ、右腕に魔力を集束。

 スラスターを再点火、降下を再開。

 落下のエネルギーごと、バーサーカーへと叩き付けた。

 

「オラァ!」

「■■■■■!!」

 

 慎二の拳と、バーサーカーの石斧が激突。

 魔力の赤い閃光。そして轟音。

 両者は弾かれるようにして吹き飛び、そして着地。

 

 まるで大岩を殴ったかのような感触だった。

 おそらくダメージは入っていないだろう。本当に厄介だ。

 

 バーサーカーは今回の聖杯戦争で、最も相手をしたくない英霊だ。

 慎二が得意としているのはあくまで搦手。

 しかし相手が大英雄(ヘラクレス)とあっては、正攻法での突破は無理がある。

 

 尖ったスペックをした英霊が相手ならばいい。やりようはある。

 伝承に明確な弱点の記されている英霊もいい。ハメられる。

 しかしバーサーカーのような地力が高く弱点のない相手とは、すこぶる相性が悪い。

 

 主人への害意に反応したのか。慎二を油断なく睨み付けるバーサーカー。

 その鋭いを通り越して凶悪な視線を受け流しつつ、じりじりと間合いを計る。

 

「下がってくださいシロウ!」

 

 セイバーが衛宮士郎を庇うように位置取りをする。

 狙われたと自覚しているイリヤスフィールは、こちらを注意深く観察している。

 

 しかし衛宮士郎と遠坂凛は、未だ現状を飲み込めていないらしい。

 呆気にとられた様子で固まっている。

 ゴクリと唾を飲み込んだ士郎が、言葉を絞り出した。

 

「……アイツは何だ? サーヴァントなのか?」

 

 対して遠坂家の当主である凛は、わなわなと体を震わせていた。

 恐れによるものではない。あれは明確な怒りの感情によるものだ。

 

「アイツは……アイツは……!」

「知っているのか遠坂!」

「ええ、あの無駄なまでに蒼銀に輝く鎧……間違いないわ」

 

 そうか、なるほど。

 波濤仮面の名は遠坂にまで知れ渡っていたか。

 いいだろう、ならば自己紹介してやるのも吝かではない。

 

「そう、僕は――」

「アイツは冬木市ご当地ヒーロー、波濤仮面こと……間桐慎二よ!」

「――そう、間桐……ってなんで正体まで知ってるんだい?」

 

 慎二としてはそこまで有名なつもりはない。

 特に遠坂との親交なんて、十年前から途絶えたに等しいものだ。

 というかなんだ、ご当地ヒーローって。そんなものになった覚えはない。

 衛宮が訝しげに尋ねた。

 

「間桐慎二……? この日曜朝の怪人みたいな奴があの間桐だって!?」

「ええ、そうよ……コイツのせいで、私がどれだけ苦労したか!」

 

 苦労、はて、何のことか。全く身に覚えがない。

 後ろ暗いことなどやってはいない、と胸を張れる人生ではない。

 けれども彼女に恨まれることはしていない、そう断言できる。

 困惑する慎二をよそに、凛は怒気を吐き散らす。

 

「コイツはね、魔術の秘匿なんて知ったことかとばかりに、冬木市で暴れ回ったの」

「……うん? 僕が暴れた?」

「私が……私がどれだけ後処理に追われたことか……!」

 

 身に覚えは――あった。

 今はもうしていないが、一昔前のこと。まだこの身体を持て余していた頃の話だ。

 ふと、なんとなくその場の気分で変身してみたり。

 自動車と併走してみたり。航空機と一緒にスカイハイして記念写真を撮ったり。

 慎二は連日のようにそんなことを繰り返していたような気がする。

 

 しかもそれだけのことをやって、一切の騒ぎが起こらなかったのだから恐れ入る。

 当時は冬木市が超人に住みやすい街だから、なんて理由で納得していたが。

 その裏では凛ちゃんによる後処理が、涙ぐましくも行われていたのだろう。

 

「なんなのよ! 私があれだけ苦労したのに、本人はご当地ヒーロー扱いってなんなのよ!」

 

 セカンドオーナーってそういう仕事もしなければいけないのか。

 ごめんね。大変だったよね。

 それなのに資産奪いまくってごめんね。絶対に返してやらないけど。

 

「そういうわけで、アイツだけは許しちゃおけないわ……アーチャー!」

 

 狙撃位置でスタンバイしているであろうアーチャーへの狙撃命令。

 しかし、なにも、おこらない! 凛の表情に困惑の色が浮かぶ。

 

「そんな、どうして……」

「無駄だよ。アーチャーの所には別戦力を向かわせてある」

「なんですって?」

 

 言うまでもない。ライダーだ。

 今回の作戦において注意せねばならないものの一つに、アーチャーの狙撃がある。

 波濤の鎧の防御力があっても、流石に宝具の直撃を受ければただでは済まない。

 だから先んじてライダーと桜を、アーチャーの足止めに行かせた。

 先程の狙撃で位置は割れたはずだ。今頃は交戦を始めているだろう。

 

「この間桐慎二に死角はない。作戦は完璧――ぷげらッ!?」

 

 突如、横合いから殴りつけられた。

 吹き飛ばされた慎二は、何度か地面をバウンド。地面に埋まるようにして停止。

 視界の端に石斧を振り抜いたバーサーカーの姿が見えた。

 あの野郎、不意打ちをかましやがった。

 会話フェイズに攻撃をしてはならない。物語のお約束だろうに。

 

「よくわからないけど……とにかく敵なのよね?」

 

 だったら容赦する必要はない、とイリヤスフィールが白銀の髪を払う。

 余裕ぶりやがって。ぜひともその顔を恐怖に歪ませてやりたい。

 

「ま、間桐! そんな……どうして殺したんだ!?」

 

 士郎が悲痛な叫びを上げる。

 でも待ってほしい。慎二君、死んでない。まだ死んでないから。

 ちょっと手足がいけない方向に曲がって、内臓もいくらかやられたけど生きてる。

 

「え? なに言ってるのお兄ちゃん。だってアレ……敵なんでしょ?」

「だからって殺していい理由にはならない!」

 

 ご高説どうも。

 その敵にまでお優しい理論には全くもって賛同できないけれども。

 まぁあれだ。回復までの時間稼ぎにはなるだろう。会話フェイズ続行だ。

 

「あの娘の言う通りよ衛宮君。アレは冬木に巣食う害虫みたいなもの。生かしてはおけないわ」

 

 凛ちゃんの辛辣なコメントに少しだけ涙がこぼれた。

 確かに迷惑はかけたかもしれない。でも害虫扱いはないだろう。

 

「それでも、話し合う余地はあったはずだ!」

 

 士郎が怒りを滾らせながら吼える。

 でも残念ながら、話し合う余地なんてないんだ、士郎君。

 聖杯戦争はサーチ&デストロイ。古事記にもそう書いてある。

 

 どうしてコイツが聖杯戦争を勝ち抜けるのかが未だにわからない。

 アレか、主人公補正ってやつなのか。

 そんな便利な代物があるのなら、是非とも欲しいところだ。

 

 地面に半ばめり込んだ状態で肉体の修復を始めつつ、慎二は思考を巡らせる。

 現状で考えられる最悪のパターンは、セイバーが敵に回ること。

 つまり衛宮とアインツベルンの共闘だ。

 ならば取るべき手段は一つ。

 衛宮陣営がこちらの目的を把握する前に、目標を仕留める。

 

 肉体の修復完了。跳ねるようにして飛び上がる。

 スラスターを全開に。放出された魔力が土を巻き上げる。

 推力は最大。方向はイリヤ――ではなくバーサーカーへ。

 真紅の閃光となった慎二が、バーサーカーに向かって飛翔する。

 

「――ッ! まだ生きてたのね! 迎撃しなさいバーサーカー!」

 

 イリヤスフィールの命令に、バーサーカーが石斧を構えた。

 そしてそれが振り下ろされる瞬間に、前面のスラスターを展開。

 急停止、そして踏み込み。

 迫る石斧の表面を撫でるようにして回避、バーサーカーの懐に入り込む。

 

 十二の試練(ゴッド・ハンド)

 バーサーカー(ヘラクレス)の持つ宝具であり、こいつを最強至らしめる最大の要因。

 Bランク以下の攻撃を全て無効化するという、正しくチートじみた能力だ。

 

「でもさぁ、要するに諸々を合算してAランク相当ならいいわけだろ!?」

 

 破るためにAランクの宝具を用意する必要はない。

 ただ単に“Aランクに相当する”威力さえあればそれでいい。

 慎二の持つ武術。そして偽・死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 全てを組み合わせれば、瞬間的にAランク相当の火力を叩き出すことは可能だ。

 

 狙うは心臓から頸椎にかけてのライン。

 慎二は両掌を重ね、そこへ向かって魔力を限界まで絞り出す。

 昨日までの慎二ならば、こんな使い方をしようとすら思わなかった。

 己の朱槍をただ死棘であると信じ、愚直に槍を振るっていたはずだ。

 

 けれど今はもう違う。

 死棘の正体も、魔術の本質も見極めた。

 今ならばわかる。この波濤の力には、もっと先がある。

 

「くらえよ大英雄――撃ち貫く死棘の杭(ゲイ・ボルク)

 

 拳に載せられ、杭打機(パイルバンカー)の如く射出された朱槍。

 そして同時に放たれた魔力発勁。

 複合されたそれらは、瞬間的にAランク相当の威力を叩き出した。

 

「■■■■■ッ!?」

 

 心臓から頸椎までを貫通した死棘の槍が内部で爆発。

 血飛沫と共に、バーサーカーを中心として死棘の花が咲いた。

 上半身を吹き飛ばされたバーサーカーの巨体が、音を立てて崩れ落ちる。

 

「これでゲームセットだ、アインツベルン」

 

 しかしイリヤスフィールの表情は、余裕をもったまま変わらない。

 己の優位が崩れるはずがないと確信している表情だった。

 

「……随分と甘く見られたものね」

「なに?」

「まさか、この程度で終わったと思っているのかしら」

 

 ミシミシと軋むような音と吐息が背後から聞こえる。

 バーサーカーが立ち上がった音だろう。

 イリヤスフィールが勝ち誇った笑みを浮かべた。

 

「わたしのバーサーカーは最強なんだから……!」

 

 十二の試練(ゴッド・ハンド)には防御能力以外にも、能力がある。

 それが命のストックだ。マリオ風に言うならば残機だろうか。

 致命傷を受けても十一回までならば蘇生することができる。

 本当にチート染みた能力だ。イリヤスフィールが勝ちを確信するのも頷ける。

 

「確かに、オマエのバーサーカーは最強だよ」

 

 そんなことは最初から知っている。

 知っていて、あえてバーサーカーに正面から宝具を撃ちこんだのだ。

 

「けれど決して万能、というわけじゃない」

 

 イリヤスフィールが驚愕に目を見開いた。

 それは慎二の背後で立ち上がった狂戦士(バーサーカー)の姿を見たからだろう。

 バーサーカーは宝具の能力通り、確かに再生していた。

 けれどもそれは、決して“正常な形”ではなかった。

 

「これが慎二流、バーサーカー対策」

 

 バーサーカーは再生していた。

 しかしその体のあらゆる所から、まるで拘束具のように死棘が“生えていた”。

 内部から死棘に全身を貫かれたバーサーカー。

 イリヤスフィールの喉から引き攣った音が漏れた。

 

「な、なんなのコレ……」

「バーサーカーの再生に、僕の死棘を割り込ませたのさ」

 

 慎二は考えなしに渾身の一撃を見舞ったわけではない。

 単純に攻撃したところで、再生されるどころか耐性がつくことくらい百も承知だ。

 だから死棘を放った際、その一部が体内に残留するように仕向けた。

 そして再生能力が発動する際、体内に残った死棘を同調させて一気に増殖。

 バーサーカーの体内で増殖した死棘はまるで拘束具のように、鋼の肉体を縫い止める。

 

「■■■■■ッ! ■■■■■ッ!」

 

 バーサーカーはその拘束を破ろうと足掻くが、無駄だ。

 いくら劣化しているとはいっても、それは魔獣(クリード)由来の死棘に変わりない。

 しかも体内に残留した死棘は、破壊されても無限と言える速度で増殖していく。

 宝具クラスの力ならまだしも、単純な膂力で破れる代物ではない。

 だからバーサーカーはもう、満足に動けない。

 

「宝具の防御能力に驕った。それがオマエの敗因だよ」

 

 殺し切ることは出来ない。

 けれど留め置くことは不可能ではない。

 これが慎二の出したバーサーカー戦の結論だった。

 

「さて、ハートキャッチの時間だ」

 

 慎二は右手に魔力を集束。

 安心して欲しい。痛みはないと思う。おそらく、きっと、めいびー。

 一瞬で心臓を抜き取ってやる。

 

「ひっ……」

 

 イリヤスフィールの表情は恐怖のあまり固まっている。

 そうだ、その表情が見たかったんだ。

 圧倒的優位にいると確信している人間が、絶望に叩き落される瞬間。

 その時の表情が、一番“そそる”。

 

 残念なことに、真に残念なことに、ここはプリズマ次元ではない。

 血で血を洗うステイナイト次元だ。

 努力、友情、勝利の三大原則は通用しない。

 

 この作品の登場人物はすべて十八歳以上です。お決まりの文句である。

 つまりコイツは合法ロリであって、本物のロリではない。

 要するに容赦する必要は全くないということ。証明終了だ。慈悲はない。

 

「さようなら、イリヤスフィール」

 

 振りかぶった手刀を、イリヤスフィールの心臓めがけて突き出した。

 

 

 

 

 

 





実際のところ、合算の威力で十二の試練を超えられるかはわかんないです。

同種の防御能力っぽい悪竜の血鎧は、魔力放出&技量で押し切れるらしいんで、その辺りから捏造した(正直
まぁルーンでのブーストとかでもOKらしいんで、多分なんとかなるやろ(適当

再生に割り込ませる~辺りの元ネタはわかる人にならわかるはず。


とりあえずこの次元だとそれで超えられる、ということにしてくださいお願いしますなんでも(ry


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