型月産ワカメは転生者である(仮題)   作:ヒレ酒

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なんかもうゴールインした後だけに、本編のオマケ感が拭えない。
もうあっち本編でこっちオマケでいいんじゃなかろうか(遅筆の言い訳

一応、本編終了までのプロットは組み直せた模様。

またボチボチ書くやで!


第八話

 草木も眠るウシミツ・アワー。

 凍える深山町を、バイクに乗った慎二が疾走する。

 魔術的なアレコレによって強化されたバイク。間桐家での通称、ライダーの玩具。

 頑張って免許を取ったのに、いつの間にか使い魔のモノになっていた。解せぬ。

 

 こうして乗ってやるのも暫くぶり。

 どうだい。ご主人様のライテクは素晴らしいだろう。

 なに? ライダーのほうが上手だし満足させてくれる? そうか。そうか。

 大事な愛車を寝取られて慎二君、激おこである。

 後でライダーをイジメて愉しもう。そうしよう。

 そんな決意を胸に秘め、目指すは冬木の西端、柳洞寺。

 

 ライダー召喚(ガチャ爆死)事件から数か月。

 聖杯戦争――原作開始までのカウントダウンは既に始まっている。

 最早、一時も油断は出来ない。

 ここから先は一瞬の判断ミスが死を招く。

 

 山門へと続く階段。その下でバイクを止めた。

 卓越した超感覚が捉えたのは、人外の気配。

 

「出てこいよ、居るんだろう?」

 

 細めた視線の先に現れたのは一人のSAMURAI。

 身の丈ほどもあろうかという長刀を背負っている。

 

「召喚されている頃だと思ったよ」

 

 起こり始めたガス漏れ事件。

 そして町中で感じる魔術の痕跡。

 時期的にもそろそろだと思っていたが、ドンピシャというやつだ。

 

「オマエがアサシンだね?」

 

 確信の籠った慎二の問いかけ。

 月光に照らされた若侍が頷いた。

 

「いかにも――アサシンのサーヴァント、佐々木小次郎」

 

 慎二の唇の端が吊り上がる。これが伝説のNOUMINか。

 彼こそは、ついぞ斬れなかったTSUBAMEを斬ってみせた偉大なる先人。

 ここはこちらも名乗っておかなければ失礼だろう。挨拶は基本である。

 

「魔術師、間桐慎二」

「ほう、魔術師であったか……して、このような夜更けに何用かな?」

「オマエのマスターに用があってね」

「あの女狐にか」

 

 アサシンは顎に手をやると、くっと喉を鳴らした。

 

「生憎と――この山門からは誰も通すな、と命じられていてな」

「まぁ、そうだろうなとは思ってたよ」

 

 柳洞寺から感じるのは、明らかな魔術の気配。

 内部は既にキャスターの陣地と化していると考えていいだろう。

 キャス娘と宗一郎の愛の巣、というやつだ。

 ガス漏れ事件(魂食い)さえなければ、放っておきたい筆頭組である。

 

 それにしても、某赤い悪魔は何をしているのだろう。

 自分の管理地でここまで好き放題されているのに、まさか気付いていないのか。

 もし慎二がセカンドオーナーだったら、この時点で戦争まったなしだ。

 

 これも平和ボケ、というやつなのか。

 とはいえ遠坂の家系が色々とボケているのは今に始まったことではない。

 これも全部、時臣(トッキー)ってやつの仕業なんだ。

 あいつが悪い。そういうことにしよう。そうしよう。

 

「悪いけど、押し通らせて貰うよ」

 

 慎二の全身が蒼銀の装甲に覆われる。ちなみにこの間、コンマ一秒。

 顕現させた朱槍の切っ先を、真っ直ぐにアサシンへと向けた。

 

「さて、アサシン。一手お付き合い願おうか」

「ふっ……是非もなし」

 

 アサシンが僅かに口元を緩ませる。

 なんというか、それだけでサマになっていた。美麗というのだろうか。

 イケメンはこういうところでも得をするらしい。

 

 ふむ、なるほど。イケメンか。

 イケメンは死すべし、慈悲はない。

 

「……凄まじく理不尽な誹りを受けたような……」

「気のせいさッ!」

 

 スラスターを全開。

 深紅の魔力を全身から放出しつつ、慎二が突貫。

 魔槍と刀が激突。夜闇に火花が咲いた。

 

 

 

 慎二の強みは魔力放出による加速力だ。

 しかし足場の悪さが、その長所を殺してしまっている。

 魔力の放出による突進は、充分な加速距離がなければ効果が薄い。

 そして狭い山門の階段では、距離を稼ぐことは難しい。

 

「ハァァァ!」

「ふっ、突進に突進を重ねる……まるで猪よな」

 

 足場の悪さという条件はアサシンも同じ。

 だがあちらは、巧みな技術でそれを補っている。

 速度で追いつけない以上、どちらが不利かは明白だ。

 

「未熟――有り余る力に技が追い付いておらぬ」

「……よく言われる――よッ!」

 

 具体的には黒ボンテージ辺りから。それはもう酷い評価を下されている。

 まるで素人。初見はともかく二度目は通用しない、というのが彼女の言。

 

 出力に限って言えば、慎二の力は英霊に匹敵する。

 しかし悲しいかな。それを自在に操る術を持ち合わせていない。

 力に振り回されている、という表現が正しいか。

 

 基本的な戦術は、莫大な膂力とスラスターの推力に任せた突進。

 あとは細々とした魔術による牽制がせいぜい。

 二手、三手程度ならば誤魔化せても、純粋な技量ではとても英霊に敵わない。

 

「突き、とみせかけてからの――眼からビーム!」

 

 (バイザー)が開き、慎二の左目が煌く。

 瞳にルーンが浮かび、発射されたのは七色に輝く怪光線。

 イケメン殺すべし。

 怨嗟と共に顔へ向けて放たれたそれを、アサシンが首を捻って躱す。

 

「ぬぅ、面妖な真似を!」

「――隙アリィ!」

「甘い!」

 

 深紅の魔力を放出しながらの突進。

 アサシンはそれを、刀の切っ先を巧みに使って受け流してみせた。

 そして慎二の背後に回ると、首筋目がけて一閃。

 何重にも重ねた結界は容易く切り裂かれ、蒼銀の装甲に刃が食い込む。

 

「ちょ――ぬおお!」

 

 瞬間、スラスターを全開に。

 強引に身を捻り、階段を転がり落ちるようにして距離を取る。

 

「ふむ、中々に頑丈な鎧よ」

「お褒めに預かり光栄だね……」

 

 軽々と引き裂いておいて、よく言ったものだ。

 (バイザー)の下で冷や汗を流しつつ、しきりに首元を撫でる。

 大丈夫だよね。まだ首ついてるよね。

 

「どうするつもりだ。児戯の如き槍では私は倒せんぞ?」

「余計なお世話だよ。そんなこと、わかってるさ」

 

 長期戦になればなるほど、取り繕った戦術に綻びが出始める。

 ライダーからも口を酸っぱくして言われている。

 もし戦いになった場合、狙うのは短期決戦。それしかないと。

 前面にあるスラスターを展開。魔力を放出。階下に向かって跳躍。

 

「技で敵わないのなら、必殺技でゴリ押す――」

 

 魔力展開。充填。魔槍に深紅の魔力が宿る。

 放つは必殺。次元を屈折させる斬撃。

 

「ならば相応の技を以って迎え撃つまでよ」

 

 応えるように、アサシンも必殺の構えを取った。

 ジリジリと焦げるように闘気が高まる。

 永遠の如く引き延ばされた時間が、弾ける。

 

「――燕返し」

燕返し(ゲイ・ボルク)!」

 

 全く同一の軌跡を描き、魔剣と魔槍が激突した。

 

 

 

 

 

 

 で、一時間後。間桐邸にて。

 

「それで奥の手まで晒した挙句、負けて帰ってきたわけですか、兄さん」

「ま、負けてないやい! あれは……そう、戦略的撤退ってやつさ!」

「それを世間では負けたっていうんですよ」

 

 身も蓋もない桜の言葉が、慎二の胸を穿つ。

 お兄ちゃん、心が痛くて涙がちょちょ切れそうである。

 

 速度で負けていて、因果逆転の槍は使えない。

 奥の手である燕返しも、本家本元の燕返しで相殺される。

 さらに肝心要である技量はあちらのほうが上。

 

 この状態でどうやって勝てというのか。

 山門から動けないという相手の弱点を突いて逃げるしか慎二には手がなかった。

 もしあれが自由に動き回っていたらと思うとゾッとする。

 ありがとうキャスター。NOUMINを山門に留めてくれて、ありがとう。

 

 本物のNOUMINは格が違った。

 せめてこちらがライダーを連れていれば話は別だったが――

 

「それでライダーは? 昼頃から姿が見えないけど」

 

 流石に慎二も、単身討ち入りするつもりはなかった。

 英霊相手に一人で挑むなんて、普通に考えて自殺行為。

 しかしライダーの姿が見当たらず、仕方なく一人で向かったのだ。

 おかげでNOUMINに首オイテケされるところであった。間一髪だ。

 

「ライダーは……えーっと……その……」

 

 口籠って明後日の方向を見つめる桜。

 なんだろう。凄く怪しい。

 

「……ねぇ桜」

「な、なんですか兄さん……?」

「今度は何をやらかしたんだい?」

「私が毎回やらかすみたいな言い方やめてくれません!?」

 

 嘘をつくな、嘘を。

 やらかすのは十中八九、桜のほうだ。

 たまに慎二もやらかすが、往々にして原因は桜である。

 

「それで桜。何した?」

「こうなっては仕方ありません」

「おう、白状しろよ」

「……出てきて、ライダー」

「い、嫌です! こんな格好でシンジの前になんて出られません!」

 

 ライダーの声はすれども姿は見えず。

 というか、なんでそんなに必死なのか。

 アレか。エロか、エロなのか。お兄ちゃん、とても気になります。

 

 いつまで経っても出てこないライダーに業を煮やしたのか。

 桜が居間の奥へと向かっていく。

 

「ほ、本当にこの格好のまま出ていかなくてはダメですか?」

「大丈夫、これなら兄さんもイチコロよ」

「そういう問題では……あっ、待ってくださいサクラ! まだ心の準備が――」

 

 桜に押されて奥から出てきたのは、フリフリのメイド服に身を包んだライダー。

 頬を赤らめ、もじもじと恥ずかしげな仕草がこれまた――いや待て。

 ライダーを見るんだ。あんなに恥ずかしがっているじゃないか。

 ここは一つ、兄として桜にビシッと言っておかねばなるまい。

 

「やめてあげなよ桜。ライダーが可愛そうだろう」

「ああ、シンジ……あなただけが私の味方――」

「兄さん、本音は?」

「ナイスゥ――ハッ」

「――あなたもですかシンジ!」

 

 膝をつくライダー。

 そして不適に笑う桜。

 してやられた。慎二は歯噛みする。

 

「は、謀ったな桜!」

「ふふ……間抜けは見つかったようですね!」

 

 くそぅ、でもいい仕事しやがる。

 お兄ちゃん、鼻から色欲が溢れ出そうだよ。

 

「私に味方は居ないんですか!?」

「何を言ってるんだい、ライダー。僕達はいつでもライダーの味方さ」

「そうよライダー。でも……大好きだから、ついその……ね?」

「どうしてでしょう。方向性は違うのに、姉様達と同類の気配が……!」

 

 あのドS共と同じとは心外な。

 ただライダーを可愛がりたい。それだけなのに。

 

 決して愛車を寝取られた恨みではない。

 絶対にないったらないんだからね。

 

 この後、桜と一緒にライダーで滅茶苦茶にゃんにゃんした。

 

 

 

 




にゃんにゃん(意味深)

すまない……筆を持ち替えて逆転裁判しててすまない……。
レイファ様可愛いよ、レイファ様。
ご尊顔を歪ませる度にゾクってする(愉悦

なんか戦闘物足りないので、後から追加するかもしれませぬ。
血が足りない。

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