十勇士 作:妖狐
誰?
『桜華』
才蔵……才蔵なの?
『桜華、お前のせいだ』
!?
嫌……嫌!!止めて!!
知らない!!何も覚えてない!!何も!!
才蔵!!助けて……助けて!!
「!?」
目を覚ます桜華……目から流していた涙を拭きながら、彼女は起き上がった。
見覚えのない部屋……足には枷が付けられ、その部屋の周りには格子が着けられ、更に鍵が掛けられていた。
「ここ……どこ?」
桜華は思い出した……自分は、政宗に連れ去られたことを。
「出して……出して!!
ここから出して!!帰りたいの!!あそこに!!才蔵の所に……上田に(才蔵……助けて)」
格子に手を掛け、目から涙を出しながら桜華は、訴えた。
森を駆ける佐助と氷柱……数日前、十蔵から桜華がさらわれたという情報を受け、氷柱と共に政宗がいるであろう城へ向かっていた。
「まさか、才蔵達が動けなくなるまで戦っていたとは」
「それほど強い奴だったのだろう」
「あら?今回は、素直なのね」
「当たり前だ。服部半蔵……俺は好かないが、アイツは才蔵と互角……いや、才蔵よりも上だ」
「そうね……」
「無駄話は後にして、早く桜華を助けるぞ」
「そういえば、レオンがその近くにいるのよね?」
「確かそうだ。
十蔵の話によると、レオンは真っ先に馬を追い駆けていったらしい」
「さっすがレオン」
場所は変わり、城内の中。政宗は大あくびをしながら、自身の愛用している薙刀の手入れをしていた。
「あの子供は何者ですか?政宗殿」
部屋の隅に座っていた男は、怒っているのか低い声で政宗に質問した。
「あぁ?あれは宝だ」
「宝って……あなた、またどこからか変なものを拾ってきたんですか!?」
「変なものとは何だ!!変なものとは!!」
「あの子供に、一体どんな価値があるというんですか?」
「光坂のガキだ。これだけ言えば、分かるだろ?」
「光阪?
確か、武田が滅んだと共に姿を晦ましたはず」
「その一族が、いたんだよ。
まぁ、他の輩が一族を殺しちまった見てぇだが……生き残ってたガキを、あの真田が匿っていたんだ」
「それがあの子供……」
「そうだ……
さぁて、あのガキに挨拶でもしてくるか」
(全く……どこまで、勝手な殿だ)
地下牢へと来た政宗……桜華は部屋の隅で身を縮込ませ、政宗を睨んだ。
政宗は隅にいる桜華の前に腰を下ろし口を開いた。
「そういや、名前聞いてなかったな?
お前、名前は」
「……」
(答えるはずも無いですよ……)
「名前!
それから、人と話す時は相手の顔を見ろ!」
政宗が桜華の頭を掴んだ時、彼女は手に隠していた木の棒で彼の腕を刺そうとした。刺さる寸前、傍にいた男が彼女の腕を掴みその行為を止め、刺さらずに済んだ。
「うへぇ。ビックリしたー」
「足枷だけでは、駄目のようですね」
「……」
「まぁ、長い付き合いになるなんだから、これくらいは勘弁してやるよ」
「?付き合い?」
「お!やっと口を開いたか」
手に持っていた棒を落とした桜華は、政宗を見た。男は外にいた手下に、手枷を持ってくるように頼んだ。
「お前は、今日からこの俺に仕えるんだ」
「……嫌だ。
帰りたい!才蔵の所に返して!!」
「そりゃあ、無理な願いだ。
帰りたい以外だったら、何でも願いは聞いてやる」
「……」
「何か用があったら、そこにいる小十朗に頼め」
「……」
何も答えない桜華……すると、胸元が黒く光だした。それを見た政宗は、小十朗に桜華を抑えさせ首に下げていた鎖を引っ張り勾玉を見た。
「へー。珍しいな、青い翡翠とは」
「触るな!!」
桜華は小十朗の手を振り払い、手から氷を放ちながら政宗の腕を攻撃した。政宗は痛みで勾玉を離し、その瞬間桜華は勾玉を握り隠し、彼を睨んだ。
「若!」
「心配すんな。
小十朗、手に枷付けとけ」
「はい」
「こっから逃げようなんて、思わねぇ方がいいぞ。
逃げようとすれば、才蔵はもちろんお前に関わった奴等の命は無い」
「?!」
立ち上がった政宗は、傷口を抑えながら桜華を見た。しばらく見ると、不敵な笑みを浮かべ牢を出て行った。小十朗は手下から手枷を貰うと、大人しくなった桜華の手に付け牢を出て行った。
独りになった桜華は、浅く息をしながら蹲った。
(私のせいで……才蔵が……皆が)
夜……
城付近へ来た氷柱と佐助。近くには、レオンの姿が有りレオンは二人を見ると、傍へ駆け寄り二人に擦り寄った。
「どうやら、あの城ね。
道は私が作る。その間に桜華を」
「分かった」
座敷牢へ侵入した二人は、声を上げようとした輩を瞬時に倒した。牢がズラリと並ぶ所へ辿り着き、手下が二人いる牢を見つけた。
「あそこね……
氷術夢想吹雪」
冷たい息を出す氷柱。息は手下の体を纏い、手下は意識を失ったかのようにして、壁に凭り掛かりながら座り込み寝込んでしまった。
「弱い手下。
さてと……」
氷柱は、座敷牢の中を見た。隅には蹲った桜華がいた。佐助は眠っている手下の腰から鍵を取り、牢を開けた。その音に、桜華は少しだけ顔を上げた。開けたと共に先にレオンが入り、彼女に擦り寄った。
擦り寄ったレオンに、桜華は顔を上げレオンの頭を撫でた。レオンに続いて氷柱が中に入り佐助は外で、他の輩が来ないか見張った。
「無事でよかった。どこも怪我はしてないみたいね」
「……」
「さぁ、上田へ帰りましょう」
「上田……」
『逃げようとすれば、才蔵はもちろんお前に関わった奴等の命は無い』
政宗の言葉を思い出した桜華は、差し出してきた氷柱の手を振り払い、彼女に背を向けた。
「帰らない……」
「え?」
「帰らない……上田に」
「桜華……皆心配してるわ。
落ち着いたら、帰りましょう」
「私が帰ったら、皆死んじゃう……
もう見たくない……見たくないの!!
私のせいで、皆が死ぬところなんか!!あの里の人達みたいに、私のせいで誰かが死ぬのは見たくない!!」
「桜華……」
「上田に来る二年前……
ある村で数カ月過ごした。その時、凄く善くしてくれた老夫婦がいた。このままここで静かに過ごそうかと思った……
でも」
フラッシュバックで蘇る過去……火の海となった村。その中で血を流し倒れる老夫婦。
「私に関わったせいで……二人は死んだ。
だから……これ以上、私のせいで誰かが死ぬのは見たくない……見たくない」
目から涙を流しながら、桜華は二人に訴えた。そんな彼女に氷柱は、振り向かせ頬を軽く叩き抱き締めた。
「誰も死にはしないわ。
上田の皆は、強いもの」
「でも……何も分からないんだよ……いつかまた襲われる。
私はどこの誰なのか……どうしても分からない」
「そんなの、ゆっくり時間を掛けて戻せばいいわ。
それに、あなたが襲われるなら私達は全力であなたを守るわ」
「でも……」
「でもはもう無し。
桜華は何も心配しなくていいの。私達が付いてるわ。もちろん才蔵も」
「……」
「さぁ、帰りましょう。
才蔵が城で首を長くして待ってるわ」
「……うん」
足枷の鎖を切ると、桜華は氷柱と共に外へ出た。
「桜華」
「?」
「お前の刀、城に戻ってるからな」
「……うん」
牢から出て来た桜華の首元は、青く光っていた。
翌朝……物家の空になった牢を見る政宗。
「大した野郎だ……
さすが、光坂一族。
必ず、俺のものにしてやる!!」
狐:ここで新しいキャラ、伊達政宗のご登場です!
才:何か、たくさん出てくるな?
狐:次回には、一気に四人出すつもり。
才:マジかよ!?
狐:何さ~。早く書け書け言うから、早く書いてんじゃん。
才:本気出すと、お前やるな……
狐:どうだ!見直したか!
猿:けど、更新は遅いよな?
狐:……
読者の皆さーん、また次回!
才:あ!終わらせやがった!!
猿:狐!!