十勇士 作:妖狐
そこへ三人の子供が集まった。
目元だけの面を着け、少し露出の高い服に身を包んでいた。
「揃ったか……」
「アンタ達も感じたの?」
「だからここに集まったんだろ?」
「まさか生きてたとはね……
桜華の奴」
「蓮華さんが逃がしたんだろう……」
「生きていると分かれば、早く桜華を保護するぞ」
「やっぱそうなるか」
「僕達四人は、大名に知られちゃいけない存在だよ」
「俺が迎に行く。
お前等は、引き続きあの捜査を頼む」
「分かった」
「了解」
桜華の額に手を置く才蔵……三日間寝ていたおかげか、彼女の熱は引いた。桜華も桜華で、安心した顔をして眠っていた。
水の入った桶を手に、才蔵は部屋を出た。
「才蔵!」
出て来た彼の元へ、鎌之介と大助は駆け寄ってきた。
「シッ!
静かにしろ。今眠ってるんだから」
「桜華の奴、大丈夫なのか?」
「熱は下がった。
あとは自然に起きるのを待つだけだ」
「本当?!
じゃあ、桜華はもう大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。
ほら、ここで騒ぐな。桜華が起きちまうだろう」
騒ぐ二人を押しながら、才蔵は桜華の部屋を離れた。
一滴の雫が、水に落ち水波が起きた。水の音で桜華は目を開けた。辺りは暗く自分は、水の上で眠っていた。
(ここ……どこ?
?誰?)
水面に立つ男女三人の子供……一番後ろにいた少年は、振り返り桜華に手を差し伸べた。
手を掴もうとした時、桜華の手を横から誰かが握った。彼女はその手の方に顔を向けた。
黒く染まった一人の女性……女性は不敵な笑みを浮かべると、口を桜華の耳元へ持っていき囁いた。
『また、自由を奪われたいの?』
「自由……」
蘇る記憶……手脚に枷を着けられ、牢に閉じ込められる幼い自分。扉が開く音が聞こえ、顔を上げた。格子に寄ってくる一人の女性……彼女は格子の間から幼い自分に向かって、手を伸ばしてきた。幼い自分は立ち上がり、伸ばしてきた女性の手を握りながら、手を伸ばした。
女性に抱き締めて貰いたい……その思いが、桜華の心に響いた。
「……私……」
『それはあなたが見つけなさい……』
「……」
『真実を知れば、あなたは必ず私の元へ来るわ』
「……真実?
それって……」
振り返る桜華……だが、あの黒く染まった女性は消えていた。ふと目を向けると、水の上に一本の桜の木があった。その木の傍には、一人の少女が蹲っていた。
その時、どこからか微風が吹き、桜華の髪を靡かせそして桜の花弁を舞い上がらせた。
『また来ましょうね。
桜を見に。三人で』
優しい声が響き、桜華はゆっくりと目を開けた。障子の隙間から差し込む夕陽が、部屋を照らした。
(夢?)
目を擦りながら、起き上がった。その音に気付いたのか、障子を器用に開けながら、縁側で寝ていたレオンが入ってきた。レオンは桜華の頬を舐め攻め、くすぐったいのか彼女は笑いながら、それを阻止しようとレオンの顔を手で抑えた。
笑い声に応えるかのように、外に生えていた木や草花が風に揺られた。庭にいた六助は、風に揺られる草木を見ながら、ふと桜華の部屋を見た。
彼女の笑い声に、六助は思い出に浸った。
馬とじゃれ合う幼い蓮華。彼女が笑うと不思議と周りにいた仲間達も笑った。
(……蓮華)
お握りが乗った皿を持ち歩いていた才蔵は、彼女の笑い声に気付き部屋へと急いだ。中を覗くと、レオンに倒される桜華が笑いながら、レオンの顔を撫でレオンはそんな彼女の顔を舐めた。
「あ、才蔵……」
レオンは才蔵に気付くと、桜華から離れ彼女の膝に頭を乗せた。
「何だ……
結構良くなったみたいだな」
「……」
「ほら、お握りだ」
差し出されるお握りを桜華は見つめた。そして才蔵の顔を見上げた。すると自然に目から涙が流れ落ち、桜華はレオンを退かし才蔵に飛び付いた。飛び付いた拍子に、才蔵は持っていたお握りと皿を落とした。
「桜華……」
「……
いなくなったり、しないよね?」
「……しねぇよ」
その言葉を聞いた時、桜華の首から下がっていた勾玉が光り、体の痣が薄くなった。
「あー!
桜華の奴が起きた!!」
「鎌」
「ヒャッホー!!」
才蔵を飛び越え鎌之介は、桜華に飛び付いた。飛び付かれた勢いのまま、桜華は床に倒れ鎌之介はその拍子に顔をぶつけた。そんな彼を見て、二人は吹き出し笑い出した。
「随分と賑やかだのぉ」
そう言いながら、三人の前に現れたのは幸村だった。
「幸村!」
「体は、大丈夫みたいだな?桜華」
「……」
「大助も心配しておる。早く」
「あ!桜華!
気が付いたんだね!」
幸村の横から顔を出した大助は、起きている桜華を見ると一目散に彼女に駆け寄った。
「もう起きて大丈夫なの?!」
「う、うん」
「良かったぁ!
ねぇ!また川に遊びに行こう!」
「あ!それ、俺が言おうと思ったのに!」
大助と鎌之介の騒ぐ姿を見ながら、桜華は笑った。そんな彼女の姿に、幸村はしゃがみ才蔵に小声で話した。
「あの爆発を起こして、何かが吹っ切れたみたいだな」
「あぁ……そうみてぇだ」
「けど、まだ油断する出ない。
またいつ、あの爆発を起こすか」
「起こさせねぇように、俺が就くんだろ?アイツに」
「流石、お主は理解が早いわい」
「お前に何年仕えてると思ってんだ?幸村」
「そうだの」
「幸村様」
「?」
外に顔を向けると、縁側を歩いて来る侍女がいた。
「文が届いております」
「ふむ、ご苦労」
一礼すると侍女は仕事場へと戻った。侍女から受け取った文を広げ中を読む幸村。
「幸村、何だ?」
「ん?
ん~……茶会の招待状だ」
「茶会?」
「まぁ、後日話す。
大助、そろそろ佐助に刀の稽古を付けて貰え」
「えぇー!」
「文句を言うな。
鎌之介、お主は森で見張っている佐助と交代だ」
「はぁー!!」
「オラ、主の命令だ。とっとと動け」
「才蔵から言ってよ!
佐助に、少しは手を抜くように!」
「若君が何甘ったれたこと言ってんだ!」
「あ~、何で見張りなんだ……
見張りはつまんねぇんだよなぁ」
幸村は六郎の名を呼びながら部屋へと戻り、文句を言う二人の背中を押しながら、才蔵は部屋に残る桜華を見た。
「まだ寝てろ。
あとでお握り持ってきてやるから」
そう言うと、まだ文句を言う二人を押しながら才蔵は障子を閉め部屋を離れた。
いなくなり、静かになった途端桜華は激しい眠気に襲われた。ウトウトする彼女をレオンは舐め後ろへ移動すると、そこに伏せた。伏せたレオンの背中に頭を乗せた桜華は、そのまま眠りに入った。
才:雑談コーナー!
いや~!今回の話しで、桜華の奴が笑うようになって良かった!
氷:そうね!笑えば、あとは何とかなるわ!
才:そういえば、狐は?
猿:その狐から文が届いてる。
才:何だ?
えーっと『前に登場した六助の紹介をお願い。
私、今回は忙しくて出られそうにないから』だとさ。
氷:佐助、この手紙はどうしたの?
猿:鼬の首に巻かれてた。
才:何?!アイツ、忍なのか?!
猿:知るか。それより、早く六助を紹介しろ。
才:分ーったよ。
えぇ、ゴホン!ご紹介します!
元武田に仕えていた侍・望月六助(モチヅキロクスケ)さんです!
望:随分前にも、同じ事があったが?
才:そん時の続きだ。
えーっと、六助さんは桜華を知ってるみたいだけど、どこまで知ってるんだ?
望:拙者が知っているのは、桜華の母親の蓮華と父親だけだ。
猿:父親?
そういえば、父親って生きてるのか?
望:拙者の口からでは、何も言えない。
才:そんじゃあ、母親のこと聞かせてくれよ。
望:その話は、いずれ本編で話す。
才:何でだよ!!
氷:そろそろ時間ね。
読者の皆さん、また次回!