十勇士 作:妖狐
森を抜け、丘から上田城を見下ろした。
「さぁて、元気にやってるかなぁ」
桜華を背負う真助と才蔵達は、森の中を歩いていた。
「すいません、真さん……桜華のこと」
「別にいいですよ。
眠ってる鎌之介には、才蔵の方がいいでしょう」
「ハハハ……」
真助の背中で気持ち良さそうに眠る桜華……
優しい微風が吹いた時、彼女はゆっくりと目を開けた。
頬に当たる柔らかい髪の毛……隣を見ると、自分と同じ白髪を長く伸ばした女性が、楽しげに何かを話していた。桜華は、自分を背負う者に目を向けた。黒く長い髪を束ね、大きい背中……その背中から伝わる暖かさ。その暖かみに安心しながら、桜華は頬を髪の毛に擦り付け眠った。
そんな夢を見ながら、桜華は真助の背中に頬を擦り寄せた。その感触に、真助は眠る桜華の顔を見ながら微笑んだ。
城へ帰ると、何やら騒がしい声が響いていた。その声に、才蔵と真助は顔を見合わせ中へと入った。城の庭に置いてある岩に座る一人の男……彼の前には、倒れる佐助がいた。
「……げっ!!おま」
「はいドーン!」
隙を突かれ、才蔵は男から肘鉄を食らい、鎌之介を落とし仰向けに倒れ気を失った。目が覚めたのか、鎌之介は飛び起き男を見た。男は彼に回し蹴りを食らわせ、喰らった鎌之介は俯せに倒れ、気を失った。
「おやおや……」
「駄目だねぇ……油断しちゃ。
忍はいつ何時、気を許しちゃ駄目だって教えたでしょう?才蔵、佐助」
「……あの、どちら様で?」
「才蔵と佐助の師だ」
「お師匠さんですか……で、何用で?」
「弟子達の様子見」
そう言いながら、男は懐から煙管を出し口に銜え煙を出した。騒ぎに気付いた大助達は、庭へ集まり外で伸びている才蔵達を見て驚いた。
「さ、才蔵!佐助!鎌之介!?」
「これ一体……」
騒ぎに桜華は目を覚ました。あくびをしながら、眠い目を擦り体を起こした。
「おや、起こしてしまいましたか」
「……ここは?」
「上田城です」
目を擦る桜華……ふと、男の方に目を向けた。
「……あ、百(モモ)」
「?」
「?……!
おぉ!桜じゃねぇか」
百は笑みを浮かべながら、真助に背負られている桜華に近寄った。桜華は、真助の背中から降り百を見た。
「久し振りだな。元気だったか?」
「うん。百は?」
「この通りだ。
しっかしお前さん、何でまた上田なんかに?」
「それは……」
「幸村様が、この子を保護したので」
「あれ?そういえばアンタ、確か……」
「入らぬ事を言わぬよう、お願いします」
「へいへい。そういうことにしときます」
「この!!阿呆師匠が!!」
「何故いつもいつも、不意打ちをするんですか!!」
意識を取り戻した才蔵と佐助は、飛び起き百に向かって攻撃した。百は大あくびをしながら、攻撃を受け止めた。
「そんなもん、油断する君等が悪いんでしょう?」
「お前のはいつもいつも不意打ちなんだよ!!」
「不意打ち、やめて下さい!!」
「うるさいねぇ……いちいち。
ほれ、桜を見なさい」
そう言うと、百は桜華に向かって後ろ蹴りをした。彼女は後ろ蹴りを避け、彼の下へと足を入れ肘鉄を食らわせようと前へ出た。その肘鉄を、百はすぐに受け止め笑いながら佐助と才蔵を見た。
「ね?」
「“ね?”じゃねぇよ!!
つか、何でお前が桜華を知ってんだよ!?」
「そりゃあ、俺はコイツの師だからな」
「ハァ!?」
「クナイの投げ方とか教えたの、お前か!?」
「いいや。コイツは忍の心得全て基本は出来ていた。
俺はそこを、ちょちょっと伸ばしただけだ」
「おい桜華!」
佐助は怒りの形相で、桜華に近寄り彼女の前にしゃがんだ。桜華は怯えた様子で、真助の後ろへ隠れ顔だけひょっこり出した。
「この馬鹿から、何教わった?」
「クナイと手裏剣の投げ方とか、刀の振り方とか……
あと、走り方とか……」
「稽古終了後は?!」
「ふ、普通に……休んでた」
「休んでた?
扱い方が俺等と違う!!」
「おいクソ阿呆師匠!!
どういう事だ?!」
「んな事で、いちいち怒るな。
普通に考えろ、コイツは女だ。俺は女には優しいんだ」
「猿、今こそコイツを殺るぞ!!」
「望むところだ!!」
剣と小太刀を握り、二人は男に向かって攻撃をしてきた。百は大あくびをしながら、二人の攻撃を受け止めた。その光景を見ていた真助は、軽くため息を吐き傍にいた桜華はポカンと、その光景を眺めた。
「真助!!帰るぞ!!」
怒鳴り声と共に、信幸は幸村と共に姿を現した。
「もう喧嘩は、済みましたか?」
「喧嘩ではない!!説教だ!!」
信幸の怒鳴り声に、桜華は再び怯え真助に抱き着き、彼の後ろへ隠れた。
「余り怒鳴らないで下さい。
桜華が怯えます」
「相変わらず、真田の兄君は怖いなぁ」
「幸村!!
この城は、浮浪者保護家か!!?」
「口が悪いぞ!兄上!!」
「うるさい!!
真助!!帰るぞ!!」
「分かりましたから、先に門へ行ってて下さい」
怒りの形相で、信幸は先に門へと行った。軽くため息を吐いた真助は、手で目頭を抑えた。
「何故あの様に怒りっぽいのか……」
「全くだ。おかげで耳が痛いわい」
「それは若が、徳川様に余計なことを言うからでしょうが!!」
(こちらもこちらで、耳が痛いわい)
「ほら才蔵、戦っていないで桜華を引き取りなさい」
百と戦いへばっていた才蔵に、真助はくっついていた桜華を離し、彼女を差し出した。
「俺は親か!!?」
「あれ?才蔵、いつから親になったの?」
「お前は黙ってろ!!」
「酷いなぁ、才蔵。
もういいや、今日から桜だけに構おう」
そう言うと、百は桜華の持ち上げた。
「桜華を下ろせ!!阿呆師匠!!」
「え~。いいじゃん~」
「良くなーい!!とにかく、桜華を返して貰う!」
怒鳴りながら、佐助は桜華を百から奪った。桜華は下ろされると、三人がやり合っている光景を見ながら、真助の元へ駆け寄った。
「やれやれ……あの喧嘩は、当分収まりそうもありませんね。
それでは桜華、また来ますね」
「……」
小さく頷いた桜華の頭を撫で、真助は門へと向かった。
彼を見送っていると、どこからかレオンがやって来て彼女の服の裾を引っ張った。後ろ向いた彼女に、レオンは擦り寄るようにして押し倒した。尻を突いた桜華に、レオンは頭を擦り寄らせ咽を鳴らした。そんなレオンを、桜華は頭を撫でてやった。
門へ来た真助。信幸は待ちくたびれた様子で腕を組みながら立っていた。
「お待たせしました」
「全くだ。
真助、あの桜華という者は何者だ?」
「さぁ……
僕もここへ来て数回しか会っていないので」
「……似ていたな」
「はい?」
「お前と蓮華に似ていた」
「……娘とでも言うんですか?桜華が」
「違うのか?名も一緒だろ?」
「断じて違います。
二人はもう死にました。以前にも言いましたよね?」
「……」
何も言わず、信幸は歩き出した。真助はしばらく上田城を眺めると、彼の後を歩いて行った。
才:何で阿呆師匠が出て来るんだ!!
狐:出した方が面白いかと。
猿:面白くない!!
狐:じゃあ本音。
お前等二人が、私を叩き起こしたからだ。
才:う……
猿:う……
狐:夜中まで頑張って書いたから、寝てただけなのに……
それをさ~、叩き起こすなんて~。
氷:あ~あ、怒らせちゃった。
才:……
狐:また次回。