十勇士 作:妖狐
「痛て!」
手に持っていた木刀を落とし、大助は地面に尻をついた。
「油断しないで下さい!
もっと相手の動きを見て」
「そ、そんなこと言われたって!
佐助、強過ぎるんだもん!!」
「これでも、力は抜いている方だ」
「もう少し抜いてよ!」
「これ以上抜いたら、稽古にならん!!」
怒鳴られた大助は、泣き出した。その声に、離れた場所で刀を振っていた六助と桜華は、顔を見合わせ大助の元へと行った。
「あ~あ、泣かしやがった」
「っ」
「どうすんだぁ」
「貴様は黙っていろ!!」
「何泣いてんの?」
やって来た桜華は、才蔵の隣に座りながら質問した。
「猿が強過ぎて、大助の野郎が泣き出したんだ」
「大助の奴、まだガキなんだからもう少し力抜けよ」
「これでも、抜いている……(これ以上、俺にどうしろって言うんだ)」
「そういや、桜華って確か刀使えたよな?」
「うん、まぁ……」
「相手すれば?」
「え」
「だって、見た感じ桜華って大助とあんまり歳変わんねぇだろ?」
「確かに……」
「大助だって、佐助より桜華との方が良いよな?」
「う、うん……」
「大助様!?」
「という事で、桜華!早く相手!」
鎌之介に押され、桜華は前へ出された。佐助から木刀を受け取りながら、彼女は渋々大助の前に立った。
大助は、少々怯えた様子で木刀を握り構えた。
「……攻めてきて」
「え?」
「先、攻めて」
「でも……」
「いいから」
「……分かった」
足を前に出し、大助は木刀を振ってきた。桜華は難なく、その木刀を払い避け大助の頭を軽く叩いた。
「……」
「う、嘘……」
(さすが、蓮華の子だ)
「足がなってない。
相手の動きをもっとよく見て。あと刀の稽古するなら、先制攻撃した方が良い。
大助はまだ、刀に慣れてない。刀に慣らしてから、本格的な組み手をやればいい」
「……」
「スゲェ……」
「佐助より、桜華の方が教えるの美味いんじゃねぇのか?」
「……お、俺は小太刀専門だ!」
「小太刀も、刀の一種だけど」
「……」
「どうした?猿?
何とか言ったらどうだ?」
「うるさい!!」
その日、雨が降っていた。上田を見下ろせる丘から、三人の子供が見下ろしていた。
「本当にいるの?桜華が」
「間違いない。六助が一緒にいた」
「あんまり、行きたくないなぁ」
「アイツ等より先に、早く俺等が桜華を保護しなきゃいけねぇんだお。文句言うな」
「……」
「説得は、アンタに任せるわ」
「分かっている」
城……
大助は清海達と共に自身の部屋で、勉強をしていた。才蔵達は、それぞれの部屋で武器の手入れをしており、桜華は才蔵の傍で佐助の鼬と遊んでいた。
「?」
何かの気配を感じた、才蔵達は動かしていた手を止めた。同じように気配を感じた桜華は、才蔵にしがみつき怯え出した。
「何だ、この気配……」
「……すぐ近くにいるわね」
「……才蔵」
「分かってる。
桜華、来い」
しがみついていた桜華を立たせ、才蔵は別室へと行った。
庭へ降り立つ三人……地面へ足が付くと、突如草が生え彼等を拘束した。
「何者です?!」
「教える義理はない」
そう言うと、猫の面をした者が指を動かし、風を出した。風は三人の草を切り裂き、動きが取れるようになった。
「風使い?!」
「長居は無用……
光坂桜華を出せ」
「!!」
「ここにいるのは分かっている」
「何者だ……」
「そこにいる、六助に聞けば分かるだろう?」
「?!」
既に庭にいた六助に、六郎は目を向けた。そんな彼等の様子を、佐助達は屋根の上から武器を構え眺めた。
「六助、この者達は」
「……光坂の生き残りです」
「?!」
「皆、面を外せ。
この者達は、そこいらにいる殿達とは違う」
「……」
六助の言葉に、互いを見合いながら皆面を外した。面の下から現れたのは、桜華と同じ赤い目だった。
「騒がしいと思えば……客人か」
「若……」
「中へ入れ。
話をしよう」
「……」
某所……
社から出る黒いマントに身を包んだ女性……彼女に跪く半蔵達。
「時は来た。
半蔵、間違いなくあの子は上田にいるのね?」
「確かです」
「そう……
さぁ、行きましょう。伊佐那美の子を迎えに」
雷が落ち、辺りが光った。その時、社から出て来た女性の目が赤く光っていた。
蝋燭の明かりが灯る座敷牢の中、桜華は戸の前に座り才蔵の羽織の裾を掴み怯えていた。
「ここにいれば、安全だ」
「……」
「保護しに来た?!」
幸村達の前に座り、紺色の髪を生やした少年の言葉を幸村は繰り返し言った。
「何で今頃になって、迎えに何か来たんだよ」
「捜してたの……やっと見つけて、迎えに来たの」
「けど、光坂の人達って皆死んだんだろ?
何でお前達が生きてるの?」
「伊勢に行ってた」
「伊勢?」
「僕等は選ばれた子供……
力を使い熟すには、知識も必要。そのために伊勢へ行っていた」
「選ばれた子供?どういう意味だ?」
「六助、お主は何か知っているのか?」
「いえ……何も」
「もう話はいいか?
早く、桜華を出せ」
「そりゃあ無理だ」
襖を開けながら、才蔵はそう言った。
「才蔵……」
「お前等の気配を感じ取った桜華は怯えてる。
怯えてる本人を、お前等に渡せるか」
「……」
「なぜそこまでして、桜華が欲しいの?」
「……それは」
「陸丸(リクマル)!余計なこと、言わない!」
「っ……」
「渡さないというのなら、こちらにも考えがある」
紺色の髪の少年は立ち上がり、手から火の刃を出し幸村に攻撃しようとした時だった。背後から雷が放たれ、少年はその雷を背中に当て、そのまま倒れてしまった。
「そんな弱っちい技で、殿方を殺そうなんざ百年早いんだよ」
「甚八!」
「妙に騒がしいから来てみりゃ、何だ?このクソガキ達は」
「光坂の生き残りだ」
「へ~、生き残りねぇ」
「あれ?甚八、レオンは?」
「桜華の所だ」
「(桜華?)どこにいるの?!教えなさいよ!」
「教えるわけねぇだろ。
何考えてるか分からねぇ連中に、レオンのお気に入りのガキを渡せるか」
「っ……」
「……!
優、あいつ等が近付いてる!!」
「!?
早く桜華を渡せ!!大変なことになるぞ!!」
「あいつ等って、誰のことだ?!」
「僕等の里を襲った敵です!
桜華を狙って、こっちに……!
来た!」
“ドーン”
狐:今回もキャラ紹介!
では、三人どうぞ!
名前:望月六助(モチヅキロクスケ)
年齢:不明
使用武器:弓、小太刀。
容姿:灰色の髪に黒い瞳。右頬に火傷の跡がある。
服装:紺色の旅人服に身を包み、その上から武田の家紋が刻まれたポンチョを着ている。手には籠手を嵌め、服の下には甲冑を着けている。
名前:真田幸村(サナダユキムラ)
年齢:不明
使用武器:扇、刀(滅多に使わない)
容姿:焦げ茶色の髪を結っている。目の色は茶色。
服装:着流しに羽織を羽織っている(兄の前では袴を着ているが、それ以外はほぼ着流し)
名前:真田大助(サナダダイスケ)
年齢:12歳
使用武器:刀(まだ稽古中)
容姿:橙色の髪に茶色の目。
服装:黄緑色の七分袖の服に、黄緑色のズボンを穿き、西洋のブーツを履いている。
刀の稽古の時は、袴を着ている