十勇士 作:妖狐
「桜華、この傷は?」
「知らない。
ずっとある傷だから」
「フーン……それにしても、真っ白ね。ちゃんと陽に当たってる?」
「生まれ付きなの……」
『逃げて!!
もっと遠くへ!!あいつ等の届かない所へ!!』
『捜しましたぜ?』
「!!」
飛び起きる桜華……息を切らし、額に掻いた汗を拭った。枕元に置いてあった刀を腕に抱え、部屋の隅へ蹲った。
数時間後……
「桜華!!いつまで寝て……やがる」
部屋に入ると、布団ではなく部屋の隅で蹲り眠る桜華の姿があった。
「……」
「朝から騒々しいぞ。才蔵」
「猿……」
「……無理もない。
昨日の見た感じだと、こいつずっと何者かに追われていたんだ。夜が怖く一晩中起きていたのなら、未だに起きなくても不思議じゃない」
「何でそこまで詳しいんだ」
「山犬から聞いた」
「さすが、お山の大将」
「何とでも言え。
朝飯はこちらへ持ってくる。面倒見ろよ才蔵」
「俺かよ?!」
「昨日、幸村様があの子をここへ置くことを決めた」
「何で?!」
「この子、徳川に狙われている」
「?!」
「詳しいことは、十蔵が調べに行った。
しばらくの間、お前にこの子の面倒を見るようにと幸村様が」
「あの爺……」
「お前、いい加減口の利き方どうにかしろよ。
六郎さんにも言われてんだろ?」
「その内な」
『見つけましたぜ?
いくら遠くに逃げても、俺等の手から逃れることは出来ねぇんだよ』
いつまで逃げればいいの……
誰か助けて…誰か……
「……」
動物の鳴き声で、桜華は目を覚ました。足下に目を向けると、そこに茶色い毛をした鼬が鳴き声を上げながら、彼女を見ていた。
「やっと起きたか……」
部屋の障子を開けながらそう言って入ってきたのは、佐助だった。彼の姿を見た鼬は、佐助の元へと寄り肩へ登った。
「朝ご飯、ここに置いとくから食えよ」
「……いらない」
「少しでもいいか」
「いらない!」
佐助の隙を狙ったのか、桜華は刀を持ったまま部屋を飛び出した。
「あ、コラ!!」
首から下げていた木の笛を鳴らし、佐助は彼女の後を追った。庭を走る桜華の前に、城壁を飛び越えた山犬が入り込み、降り立った。桜華は刀の束を握り、息を調えると刀を勢い良く振った。
振った刀から、風が起き狼を飛ばした。道が開いたのを確認すると、刀を鞘に戻しながら駆け出した。
「凄い……一瞬で山犬達を」
城壁に沿って走っていた桜華は、開いていた門を潜ろうとした時だった。
何かにぶつかり、地面に尻を突いた。すると目の前に、手が差し出された。見上げると、そこにいたのは煙管を手に流れる水の模様が付いた着流しに、その上から黒い羽織に腕を通した男だった。
「大丈夫ですか?」
「……」
「真助さん?!
何故あなたが」
屋根から飛び降りた佐助は、驚きながら真助に駆け寄った。桜華は駆け寄ってくる佐助に、隠れるかのようにして真助の後ろへ隠れた。
「この子供は?」
「訳ありで、ここに置くことになった子です」
「なぜ、あなたから逃げているんです?」
「それはそいつに聞いて下さい。
朝ご飯食べろって言ったら、逃げ出して」
「食べたくなければ、食べさせなくていいんです。
お腹が空けば、子供は勝手に食べます」
「放置教育、やめて下さい!!」
「……台所を貸して貰います?」
「え?」
「桜華、来なさい」
後ろに隠れている桜華の手を握りながら、真助は城へ入り台所へと向かった。
二人の後を、佐助はついて行き台所を覗いた。真助は米を握りお握りを二つ作った。そして出来上がると、傍にいた桜華に差し出した。
「食べなさい」
「……」
出されてきたお握りを、桜華は手に取り真助の様子を伺いながら、一口食べた。余程美味しかったのか、持っていたお握りを一気に頬張った。
「おやおや。余程腹を空かせていたようですね。
ほら、もう一個食べなさい」
指に付いた米粒を食べながら、桜華は差し出されたお握りを手にし口にした。
その様子を、佐助は呆気に取られながら見ていた。
「何やってんだ?猿」
「!……才蔵か」
「……!
あ!真さん!」
「おや才蔵、お久し振りです」
「どうしたんスか?」
「信幸様から、馬鹿な弟の様子を見に行くように言われましたもので」
「またかよ……?
あれ?桜華、握り飯食ってんのか?」
「……ん」
「そうか。美味いか?」
「……ん」
「だろう!
真さんの握り飯、美味いんだよなぁ!
真さん!俺」
「お断りします。
佐助、幸村様の所へ案内して下さい」
「あ、はい!」
「それではまた。
食べ終えたら、ちゃんと手を洗いなさい。桜華」
「うん」
「では」
佐助と共に、真助は台所を出て行った。
「あ!いたいた。
捜したよ」
台所へやって来た氷柱は、桜華の元へ駆け寄った。
「氷柱、どうしたの?」
「この子に服、着させようと思って」
「服?」
「いつまでも、男物の着物着せてられないでしょ?
一応は女の子なんだから。ほら、一緒に来て」
手を掴もうとした時、桜華は氷柱の手を避け才蔵の背後に隠れた。
「……アンタ、好かれたわね」
「好かれてもなぁ」
「才蔵、一緒に来て」
「何で俺まで?」
「アンタがいないと、この子行かないでしょう。
早くして」
「ったく……?」
後ろを見ると、桜華は未だに手を震えさせ才蔵の服を掴んでいた。
「(……まだ、怯えてるのか)桜華」
「?」
「ここは安全だ。何も怖いことはねぇよ」
桜華の手を掴みながら、才蔵は言った。その時、桜華の脳裏にある映像が流れた。
泣いている自分の手を掴み、優しく頭を撫でる女性。
『大丈夫よ。もう怖いことは何も無いわ』
「桜華」
「?」
「どうかしたか?」
「……何でも無い」
才:雑談コーナー!
猿:話す事、何かあるのか?
才:新しいキャラ、出ただろ!
ゴホン!ご紹介します!我等の殿・真田幸村の兄・真田信幸の小姑・真助さん!
真:初めまして。山本真助と言います。以後お見知りおきを。
狐:ヤッホー、皆やってる~?
才:よぉ!狐!
真:あなたが狐ですか。初めまして。
狐:堅くなくていいよ。
猿:おい狐、話がある。
狐:話?何?
猿:何で、子供の名前の次がお握りの話なんだよ!!
狐:お握り美味いぞ。因みに私は塩とオカカが好きだ!
才:俺は断然、塩だな!
猿:好みを聞いてんじゃねぇ!!
狐:佐助、何故お握りにしたか分かるか?
猿:だから、それを聞いてんだろうが!!
狐:追々重要になるんだよ。
猿:重要?
才:そういえば、桜華の過去ってどうなってんだ?
氷:あの子、何かに追われてるって感じはするけど……
狐:次回かその次に分かるかもね~
才:何だ?ついに、桜華の過去が明らかになるのか?!
狐:それはどうだか……
真:僕とも何か関係してると聞いてますが……
才:は!?それどういう意味だ?!
狐:……
才:狐!答えろ!!
狐:皆さーん、また次回お会いしましょう!
才:あ、反らしやがった!!
猿:狐!!