十勇士 作:妖狐
※ここでの雑談はありません。
桜が咲き誇る上田……城に一人の少年が縛り上げられ、砂利の上に座らされていた。前には、幸村と六郎、そして佐助達がいた。
「ほぉ、こいつが上田の森に住み着いた山賊か……」
「えぇ、佐助と才蔵がやっと捕まえたと……」
「おかげで傷だらけだ……痛っ!!」
「で、この子どうします?幸村様」
「まぁ、森に返すのも何だし……かと言って、罰を与えるにはまだ子供だし」
「じゃあどうすんだよ」
「……そうだ!
才蔵、お主この子の面倒を見ろ」
「ハァ!?」
「命令だ。佐助と氷柱も頼むぞ」
「嘘……」
「わ、分かりました」
「頼んだぞ」
そう言い捨てながら、幸村は六郎と共に部屋を出て行った。
「あのクソ殿!!俺等に押し付けやがって!!」
「面倒なことは、全部私達に押し付けて……時々嫌になるわ」
「そう言うな」
怒る才蔵を宥めながら、佐助は少年の縄を解いた。その瞬間、彼は佐助に刃を向け怯んだ隙を狙い、そのまま部屋を出て行った。
「馬鹿猿!!何やってんだ!!」
出て行った少年を、三人は慌てて追い駆けた。
庭を歩く少年……その時、ある一室から幼い大助が飛び出し、庭へ出て行きその後を伊佐道と清海が追い駆けてきた。
「ねぇ!森行きたい!」
「いけません。
森は今、危険です」
「えぇ!行きたい行きたい!」
「駄目です」
駄々を捏ねる大助を、少年は恨めしそうに見ていた。
「……?」
少年に気付いた大助は、彼の元に駆け寄り手を握りながら言った。
「ねぇ、ここにいないでこっちに来て一緒に」
そう言った瞬間、少年は大助の手を振り払い睨んだ。
「失せろ……俺は、テメェみてぇな甘ちゃんは嫌いなんだよ」
「……う…ウワァァン!!」
大助の泣き声に、伊佐道達は駆け寄り彼を慰めた。清海は少年に訳を聞こうと寄った途端、彼は持っていた鎖鎌を振り回し、清海の腕に傷を付けた。
「兄上!!
何者ですか!?あなた」
「……」
「何やってんだ!お前は!」
その声と共に、少年は後ろに降り立った佐助から拳骨を食らった。彼は頭を抑えながら、その場を立ち去った。
「いきなり拳骨食らわすなよ」
「躾だ」
「躾って……あのなぁ」
「清海、傷は?」
「少し切っただけだ……大したことは無い」
「あの子は何者です?」
「上田の森に住み着いてた山賊の子供だ。
名前は確か……」
「由利鎌之介」
「あぁ、今朝あなた方が捕まえた山賊さんでしたか……
して、なぜその山賊さんがここに?」
「城に置くことになった」
「……はい?!」
上田の森へ戻ってきた鎌之介は、川辺で顔を洗っていた。顔を洗いながら、ふと思い出す無邪気に笑う大助の姿……
(ムカつく……)
袖で濡れた顔を拭きながら、立ち上がった。その時、茂みから物音がした。鎌之介はすぐに、鎖鎌を構え睨んだ。茂みから出て来たのは、五頭の狼だった。唸り声を上げながら、五頭は彼を囲った。
「……んだよ……
どいつもこいつも、俺のこと睨みやがって!!
見るんじゃねぇ!!」
鎖鎌を振り回し、狼達を攻撃した。その攻撃を、駆け付けた佐助が受け止め、その背後から氷柱が鎌之介の動きを封じ鎖鎌を取った。
「返せ!!俺のだ!!」
「しばらくは没収よ!」
「ハァ!?」
「お前が大人しくなって、聞き分けの良い子供になれば、鎖鎌は返す」
「っ!!
ふざけるな!!」
「ギャーギャー騒ぐな!」
後からやって来た才蔵は、鎌之介を宥めながら彼の頭に手を乗せた。
「大人しくなれば、鎖鎌は返すって約束だ。それぐらいやれるだろう?」
「そんな約束するか!!第一、約束なんざ破られるもんだ!!したって」
フラッシュバックで蘇る過去……鎌之介は歯を食い縛りながら、口を閉じた。
「んじゃ、こうしよう。
お前が今日から一ヶ月、俺の命令を口答えせず聞けたら、鎖鎌は返すしこの森に帰ってまた山賊として生きてもいい」
「ちょ、才」
文句を言おうとした氷柱に、佐助は指を口に当て口出しするなと、目で合図を送った。
「どうだ?悪くない条件だろ?」
「……」
「交渉成立だな。
んじゃ、早速命令だ!
今すぐ大助と清海に謝ってこい」
「嫌だ!」
「早速、逆らうな!!」
城内……
清海と大助を前にする鎌之介は、二人と目を合わせようともせずずっとそっぽを向いていた。
「どうも悪うごさんした!」
「ちゃんと相手の目を見て謝れ!!」
「悪かったな!!クソチビ!クソハゲ!」
「何で目を合わせると、悪口しか言わねぇんだよ!!」
「才蔵、もう良いぞ。
これほどの悪者が、目を合わせないし口も悪いが、ちゃんと謝っているのだからな」
「オイラもいいよ。
ねぇ!鎌之介、一緒に森に行こうよ!」
「行きたきゃ一人で行け!」
「えぇ!!」
「……鎌之介」
「あぁ?」
「命令だ、大助と一緒に森に行って来い」
「はぁ?!」
「やったー!」
「もちろん、清海達もだ。
こいつと二人っきりじゃ、大助が心配だろ?」
「その通りだ」
「けど才蔵、その者は」
「武器は持たせてないから、大丈夫だ」
「ふざけるな!!何でこの俺が、こんな」
「鎌之介、行こう行こう!」
目をキラキラさせながら、大助は鎌之介の手を握った。彼は舌打ちしつつも、引っ張られるがままに連れて行かれてた。
「あれ、大丈夫なの?」
「平気だろ?」
森へ来た大助達……
先に走っていた大助は、目の前に生えていた木に登った。
「大助様!またその様な事を」
「危険ですぞ!」
「平気!平気!」
「落ちたら怪我をしますよ!早く降りてきて下さい!」
「嫌ーだよぉ!」
「大助様!!」
「別にいいじゃねぇか。
一度痛い目に遭えば、もう二度とやらなくなるだろ?」
「しかし、大怪我をしては話になりません」
「六郎に何て言われるか!!
あ!大助様!!」
足を滑らせ、大助は枝にへばり付くようにして、ぶら下がった。
「うわーん!!落ちるー!」
「大助様!!」
「兄上、肩車を!僕が」
二人が騒ぐ中、鎌之介は軽々と木を上り大助の元へ行った。
「チビのくせに、馬鹿なことするな?」
「だって……」
「ほら、俺に掴まれ」
体を支えられた大助は、半泣きしながら枝から手を離し、鎌之介にしがみついた。彼は大助を背にそのまま飛び降り、清海達の所に投げ渡した。
「大助様!」
「お怪我は?!」
「大丈夫だよ!
鎌之介、ありがとう!」
「……」
礼を言った大助に、鎌之介は鋭く睨みながら背を向けた。