十勇士   作:妖狐

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今から六年前……鎌之介が上田に来た頃の話。

※ここでの雑談はありません。


赤髪の山賊

桜が咲き誇る上田……城に一人の少年が縛り上げられ、砂利の上に座らされていた。前には、幸村と六郎、そして佐助達がいた。

 

 

「ほぉ、こいつが上田の森に住み着いた山賊か……」

 

「えぇ、佐助と才蔵がやっと捕まえたと……」

 

「おかげで傷だらけだ……痛っ!!」

 

「で、この子どうします?幸村様」

 

「まぁ、森に返すのも何だし……かと言って、罰を与えるにはまだ子供だし」

 

「じゃあどうすんだよ」

 

「……そうだ!

 

才蔵、お主この子の面倒を見ろ」

 

「ハァ!?」

 

「命令だ。佐助と氷柱も頼むぞ」

 

「嘘……」

 

「わ、分かりました」

 

「頼んだぞ」

 

 

そう言い捨てながら、幸村は六郎と共に部屋を出て行った。

 

 

「あのクソ殿!!俺等に押し付けやがって!!」

 

「面倒なことは、全部私達に押し付けて……時々嫌になるわ」

 

「そう言うな」

 

 

怒る才蔵を宥めながら、佐助は少年の縄を解いた。その瞬間、彼は佐助に刃を向け怯んだ隙を狙い、そのまま部屋を出て行った。

 

 

「馬鹿猿!!何やってんだ!!」

 

 

出て行った少年を、三人は慌てて追い駆けた。

 

 

庭を歩く少年……その時、ある一室から幼い大助が飛び出し、庭へ出て行きその後を伊佐道と清海が追い駆けてきた。

 

 

「ねぇ!森行きたい!」

 

「いけません。

 

森は今、危険です」

 

「えぇ!行きたい行きたい!」

 

「駄目です」

 

 

駄々を捏ねる大助を、少年は恨めしそうに見ていた。

 

 

「……?」

 

 

少年に気付いた大助は、彼の元に駆け寄り手を握りながら言った。

 

 

「ねぇ、ここにいないでこっちに来て一緒に」

 

 

そう言った瞬間、少年は大助の手を振り払い睨んだ。

 

 

「失せろ……俺は、テメェみてぇな甘ちゃんは嫌いなんだよ」

 

「……う…ウワァァン!!」

 

 

大助の泣き声に、伊佐道達は駆け寄り彼を慰めた。清海は少年に訳を聞こうと寄った途端、彼は持っていた鎖鎌を振り回し、清海の腕に傷を付けた。

 

 

「兄上!!

 

何者ですか!?あなた」

 

「……」

 

 

「何やってんだ!お前は!」

 

 

その声と共に、少年は後ろに降り立った佐助から拳骨を食らった。彼は頭を抑えながら、その場を立ち去った。

 

 

「いきなり拳骨食らわすなよ」

 

「躾だ」

 

「躾って……あのなぁ」

 

「清海、傷は?」

 

「少し切っただけだ……大したことは無い」

 

「あの子は何者です?」

 

「上田の森に住み着いてた山賊の子供だ。

 

名前は確か……」

 

「由利鎌之介」

 

「あぁ、今朝あなた方が捕まえた山賊さんでしたか……

 

して、なぜその山賊さんがここに?」

 

「城に置くことになった」

 

「……はい?!」

 

 

 

上田の森へ戻ってきた鎌之介は、川辺で顔を洗っていた。顔を洗いながら、ふと思い出す無邪気に笑う大助の姿……

 

 

(ムカつく……)

 

 

袖で濡れた顔を拭きながら、立ち上がった。その時、茂みから物音がした。鎌之介はすぐに、鎖鎌を構え睨んだ。茂みから出て来たのは、五頭の狼だった。唸り声を上げながら、五頭は彼を囲った。

 

 

「……んだよ……

 

どいつもこいつも、俺のこと睨みやがって!!

 

見るんじゃねぇ!!」

 

 

鎖鎌を振り回し、狼達を攻撃した。その攻撃を、駆け付けた佐助が受け止め、その背後から氷柱が鎌之介の動きを封じ鎖鎌を取った。

 

 

「返せ!!俺のだ!!」

 

「しばらくは没収よ!」

 

「ハァ!?」

 

「お前が大人しくなって、聞き分けの良い子供になれば、鎖鎌は返す」

 

「っ!!

 

ふざけるな!!」

 

「ギャーギャー騒ぐな!」

 

 

後からやって来た才蔵は、鎌之介を宥めながら彼の頭に手を乗せた。

 

 

「大人しくなれば、鎖鎌は返すって約束だ。それぐらいやれるだろう?」

 

「そんな約束するか!!第一、約束なんざ破られるもんだ!!したって」

 

 

フラッシュバックで蘇る過去……鎌之介は歯を食い縛りながら、口を閉じた。

 

 

「んじゃ、こうしよう。

 

 

お前が今日から一ヶ月、俺の命令を口答えせず聞けたら、鎖鎌は返すしこの森に帰ってまた山賊として生きてもいい」

 

「ちょ、才」

 

 

文句を言おうとした氷柱に、佐助は指を口に当て口出しするなと、目で合図を送った。

 

 

「どうだ?悪くない条件だろ?」

 

「……」

 

「交渉成立だな。

 

んじゃ、早速命令だ!

 

 

今すぐ大助と清海に謝ってこい」

 

「嫌だ!」

 

「早速、逆らうな!!」

 

 

 

城内……

 

 

清海と大助を前にする鎌之介は、二人と目を合わせようともせずずっとそっぽを向いていた。

 

 

「どうも悪うごさんした!」

 

「ちゃんと相手の目を見て謝れ!!」

 

「悪かったな!!クソチビ!クソハゲ!」

 

「何で目を合わせると、悪口しか言わねぇんだよ!!」

 

「才蔵、もう良いぞ。

 

これほどの悪者が、目を合わせないし口も悪いが、ちゃんと謝っているのだからな」

 

「オイラもいいよ。

 

ねぇ!鎌之介、一緒に森に行こうよ!」

 

「行きたきゃ一人で行け!」

 

「えぇ!!」

 

「……鎌之介」

 

「あぁ?」

 

「命令だ、大助と一緒に森に行って来い」

 

「はぁ?!」

「やったー!」

 

「もちろん、清海達もだ。

 

こいつと二人っきりじゃ、大助が心配だろ?」

 

「その通りだ」

 

「けど才蔵、その者は」

 

「武器は持たせてないから、大丈夫だ」

 

「ふざけるな!!何でこの俺が、こんな」

「鎌之介、行こう行こう!」

 

 

目をキラキラさせながら、大助は鎌之介の手を握った。彼は舌打ちしつつも、引っ張られるがままに連れて行かれてた。

 

 

「あれ、大丈夫なの?」

 

「平気だろ?」




森へ来た大助達……


先に走っていた大助は、目の前に生えていた木に登った。


「大助様!またその様な事を」

「危険ですぞ!」

「平気!平気!」

「落ちたら怪我をしますよ!早く降りてきて下さい!」

「嫌ーだよぉ!」

「大助様!!」

「別にいいじゃねぇか。

一度痛い目に遭えば、もう二度とやらなくなるだろ?」

「しかし、大怪我をしては話になりません」

「六郎に何て言われるか!!

あ!大助様!!」


足を滑らせ、大助は枝にへばり付くようにして、ぶら下がった。


「うわーん!!落ちるー!」

「大助様!!」

「兄上、肩車を!僕が」


二人が騒ぐ中、鎌之介は軽々と木を上り大助の元へ行った。


「チビのくせに、馬鹿なことするな?」

「だって……」

「ほら、俺に掴まれ」


体を支えられた大助は、半泣きしながら枝から手を離し、鎌之介にしがみついた。彼は大助を背にそのまま飛び降り、清海達の所に投げ渡した。


「大助様!」

「お怪我は?!」

「大丈夫だよ!

鎌之介、ありがとう!」

「……」


礼を言った大助に、鎌之介は鋭く睨みながら背を向けた。
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