十勇士 作:妖狐
「大変です!!幸村様ぁ!!」
大声を上げながら、清海は城へ帰ってきた。ただ事ではないと思った才蔵達は、すぐに駆け付けた。城へ帰ってきた清海は傷だらけになり、彼に背負られていた伊佐道は意識が無く、同様に傷だらけになっていた。
「どうしたんだ!?清海!!」
「さ…山賊が現れ、その山賊共に大助様が!」
「!?」
「鎌之介は?!」
「それが……」
清海の口から聞いた言葉……大助をさらった山賊と鎌之介はグルだった。
その言葉を聞いた才蔵は、すぐに森へ向かいその後を佐助が追い駆けていった。
深い森の中……手を縛られた大助は、半べそをかきながら鎌之介の傍に座っていた。
「本当、クソガキだな?
こんなクソガキが、あの真田のガキだとは」
「いい宝が手に入った。
まさか、テメェが傍にいたとはな?」
刀を手入れしていた男は、ニヤニヤしながら鎌之介を見た。
「毎回お前が後始末してくれたおかげで、俺等は捕まらずこうして今も山賊をやってやれるってもんだ」
「え?どういう事?」
「どうもこうも、俺等がやった悪事は、皆こいつが片付けてくれるんだ。
まぁ、時々捕まっては痛い目に遭ってるみてぇだがな」
「テメェ等馬鹿が、ヘマするからだろうが」
「んだと!!」
「止めろ。
さぁて、そろそろ出ますか。鎌之介」
「?」
「そのクソガキ、お前には懐いてるみたいだな?
売り場まで、お前が面倒見ろよ」
「俺に命令するな」
背を向け、先に歩き出した二人の山賊……目を離した隙に、鎌之介は懐に隠し持っていた小太刀で、大助の縄を切った。
「鎌」
「シッ!合図出したら、すぐに逃げろ」
「え?鎌之介は?」
「あいつ等を始末する」
「お尋ね者?!鎌之介が?」
清海の手当てをしていた氷柱は、声を上げながら資料を持った六郎に目を向けた。
「えぇ。
昔は、ある武家に仕えていた一族の一人でした。しかし数年前、自身の親を殺しその罪により、一族は崩壊……鎌之介は、伯父に引き取られました」
「しかし、なぜ引き取られたはずの鎌之介が、山に住み着き賊に?」
「酷い暴行を受けていたみたいです。
それが嫌になり、伯父の家から逃げたとか……
まぁ、結論から言いますと……
彼は平気で、人を裏切る……ということになりますね?」
茂みの中……首から血を流し倒れる大助を前に、小太刀に付いた血を一舐めする鎌之介。
「テ、テメェ!!せっかくの金を!!」
「殺しても、死体は売れるだろう?」
「この!!」
「待て!
騒いでいる」
「甲賀流隼斬り!」
木の上から飛び降りた佐助は、二人の山賊に攻撃をした。二人は慌てて刀と鎌で彼の攻撃を防ぎながら、後ろへ下がった。
「何者だ?!」
「真田忍隊隊長、猿飛佐助」
「真田……
へ~、このガキの」
「
……!!
大助様!?」
首から血を出す大助の元へ、佐助は駆け寄り彼を起こした。その後に来た才蔵は、変わり果てた彼の姿に目を疑った。
「……だ、大助?」
「残念だったな?
テメェ等の大事な若君は、そこにいるガキが殺ったんだよ!」
血だらけになった腕を舐める鎌之介に、才蔵達は目を向けた。
(まだ持ってたのか!?)
「……鎌之介」
才蔵の声に、鎌之介は彼等の方を向いた。
(またその目かよ……
何言っても、どうせお前等も)
フラッシュバックで蘇る過去……鎌之介は歯を食い縛り、持っていた小太刀を構えた時だった。
突然彼から放たれた強い風……その風に、才蔵達は吹き飛ばれかけ、二人の山賊は飛ばされながらその場から逃げた。風を起こしながら、鎌之介は鋭く眼光を光らせて、彼等を追い駆けていった。
次第に収まる風……動きが取れるようになった才蔵は、鎌之介の後を追い駆けていった。
二人がいなくなった後、佐助は大助の亡骸を持ち上げようとした時だった。
「……ウ」
「?
大助?」
「……ガハッ!」
咳き込みながら、大助は目を開けた。
「あれ?佐助?」
「大助!良かったぁ……」
「……あれ?
鎌之介は?」
起き上がった大助は、佐助から離れ鎌之介を探すようにして、辺りをキョロキョロと見回した。
「大助、傷は平気なのか?」
「傷?オイラ、どこも怪我してないよ」
その言葉に疑問を持った佐助は、血が付いている大助の首元を見た。首には一つも傷が無く、血はただ彼の首に付いているだけだった。
「大助、この血は誰のだ?」
「鎌之介のだよ!
鎌之介、いきなり自分の腕を切って出て来た血を、オイラの首に垂らして付けたんだ。質問しようとした途端、オイラのお腹を思いっ切り殴ったんだよ!」
「……まさか」
鎌之介を追い駆ける才蔵……その時、また強風が吹き荒れた。飛んでくる枝や木の葉に小石……才蔵は飛んでくる方向に目を向け、そして木々を盾に近付いた。
吹き抜けとなった森の一箇所……そこに、鎌之介は立っていた。そして彼から逃げる一人の男の姿を、才蔵はすれ違いに見ていた。
「……鎌之介」
「……セ」
「?」
「どうせ何言ったって、お前も俺のこと信用してねぇんだろ?」
「……」
「いつもそうだよ……いつもいつも……
人の話なんざ、聞きもしねぇで勝手に犯人扱いしやがって!!」
息を切らし怒鳴る鎌之介……怒りに満ちた彼の目に、才蔵は何も言えなかった。
「鎌之介!」
佐助に背負られてきた大助は、彼の名を呼びながら背中から降りると、駆け寄った。
「傷、大丈」
「俺に触るな!!
どうせ、テメェだって俺のことゴミにしか見えてねぇんだろ!!」
彼の怒鳴り声に、大助は泣き出した。彼の泣き声に、ハッとした鎌之介は、背を向け歩き出そうとした。
だが、血の出し過ぎか彼は足がふらつきその場に膝を付いた。才蔵は慌てて駆け寄り手を差し伸ばしたが、鎌之介は叩き払い、再び立ち上がろうとしたが、意識が遠のきそのまま気を失ってしまった。
「鎌之介!!」
「血の出し過ぎだ。
手当てをすればすぐに気が付く」
言いながら、才蔵は鎌之介を背負い先に城へ戻った。泣きじゃくる大助を抱き上げ、佐助は彼の後を追い駆けていった。
夜……
手当てをして貰った鎌之介は、用意された部屋で静かに眠っていた。
「……あいつに、そんなことが」
氷柱から鎌之介の話を聞いた才蔵は、少しだけ開いた障子から、眠っている彼を見た。
「余り深入りしない方が良いそうよ。
六郎さんが言ってたわ」
「……信じられねぇな」
「え?」
「その、鎌之介が親を殺したって話……
そんな残酷なことが出来るなら、自分の腕切ってまで大助を守ろうとはしねぇだろ」
「だがもし、それか作戦のうちだったら?」
「それは無いと思う」
「なぜ、そう言い切れる」
「あいつの目、見ただろう?」
「目?」
「怒りに満ちた中に、微かだが悲しみみたいな光があった」
「……」
「なぁ、その鎌之介の一族のことについて、調べられねぇか?氷柱」
「え?出来なくも無いけど……何で?」
「どうも引っかかる……
鎌之介の伯父は、人殺しだと思われる鎌之介を易々と引き取ったんだぞ?おかしいと思わないか?」
「……確かに、言われてみれば」
「殺人者……しかも、自身の弟夫婦を殺した甥を、引き取りたいとは正直思わん」
「……分かったわ。
明日、幸村様から許可を得たらそのまま」
「頼んだ」
掛け布団を引きずりながら、鎌之介の部屋へ来た大助。彼は襖をゆっくりと開け、ソッと音を立てないように中へ入った。
眠る鎌之介……彼の隣に、大助は横になりそのまま眠りに付いた。