十勇士   作:妖狐

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『お前が両親を殺したのか!』

違う!!俺じゃねぇ!!

『じゃあなぜ、ここで人が死んでいる!!』

それは、こいつが

『お前しかいないんだ!!』

『この人殺しが!!』

『二度と俺達の前に姿を見せるな!!』


俺の話を聞いてくれ!!俺はやってない!!

ここへ来た時には……来た時にはもう!!



『全く、引き取って貰っただけ有り難いと思えよ?』

俺は、お袋も親父も殺してねぇ!!

『黙れ!!人殺しの分際で、威張るんじゃねぇ!!』

違う!!俺はやってねぇ!!

誰も信じねぇなら、もういい……俺はもう、俺は……


最悪の再会

目を覚ます鎌之介……障子の隙間から差し込む日差しに、目を向けながら起き上がった。

 

 

「……?」

 

 

隣で眠る大助に気付いた鎌之介は、軽くため息を吐くと立ち上がり部屋を出て行った。

 

 

それから数時間後……

 

 

「……あれ?

 

鎌之介?」

 

 

眠い目を擦りながら、大助は起き上がった。隣にいるはずの鎌之介の姿は無く、彼は立ち上がり部屋を出た。

 

 

「おや?起きましたか?」

 

「……あ!六郎。

 

ねぇ、鎌之介は?」

 

「鎌之介?彼なら、今朝早く才蔵と一緒に町へ行きましたけど」

 

「え~!!オイラも行くぅ!」

 

「いけません。

 

あなたは今日、佐助と刀の稽古があるんですから」

 

「う……」

 

 

 

城下町……

 

町を歩く才蔵と鎌之介。

 

 

「言っとくが、これは単に腕の傷の貸しを返してるだけだからな!」

 

「ヘイヘイ」

 

「……」

 

「なぁ」

 

「?」

 

「邪魔じゃねぇ?髪」

 

「え……」

 

 

腰まで伸びた赤い髪……鎌之介は、横髪を手に取りながら弄った。

 

 

「そんなに邪魔に見えるか?」

 

「見える。せめて、結べ」

 

「……」

 

 

腰に巻いていた緑色の帯を、鎌之介は取りそれで髪を耳下で結った。

 

 

「……まぁ、多少はマシか」

 

 

頭をかきながら才蔵は歩き出し、彼の後を鎌之介は歩きついて行った。

 

 

それから、鎌之介は文句を言ったり嫌々ではあったが、才蔵の言う事を聞いた。最初は反抗的だった鎌之介だが、時間が経つにつれ多少聞き分けの良い子供になっていった。次第に大助の面倒をよく見るようになり、大輔は彼のことを本当の兄のように慕っていた。

 

 

だが、ある日事件は起こってしまった。

 

 

それは曇り空の日、池の水を風の力で持ち上げ、渦を作る鎌之介に、大助は楽しそうに見ていた。

 

彼等の様子を才蔵と幸村は、縁側からその様子を見ていた。

 

 

「随分と聞き分けの良い子になったな?才蔵」

 

「あいつは根っからの悪じゃねぇからな」

 

「大助も懐いておるし……このまま、ここにいて大助の良い遊び相手になってはくれぬかのぉ」

 

「そりゃあ、あいつ次第だ。

 

まぁ、あと一週間だな。鎌之介と一緒にいられるのも」

 

 

「幸村様」

 

 

六郎に呼ばれた幸村は、立ち上がり彼の話を聞きそのまま別室へ行った。

 

先程の二人の会話を聞いていた大助は、才蔵の元へ駆け寄ってきた。

 

 

「ねぇ、あと一週間したら鎌之介、いなくなっちゃうの?!」

 

「あ?

 

まぁ、そういう約束だからな」

 

「嫌だ!嫌だ!

 

オイラ、もっと鎌之介と一緒にいたい!もっと遊びたい!」

 

「……あのなぁ」

 

「どうし」

「どこにも行ったりしないよね?!鎌之介!」

 

「え?」

 

「ずっと、オイラ達とここにいるよね!?」

 

「……」

 

「ねぇ!」

 

「……それは」

 

 

言い掛けた時、突然鎌之介の顔が強張った。

 

 

「……鎌之介?」

 

「……いる」

 

「え?」

 

「あいつが、近くに!!」

 

 

場所は変わり、ここは幸村の部屋……彼の前に座る腕と顔に傷跡を付けた男と彼の仕え二人が座っていた。

 

男は口に咥える煙管から、口を離し煙を出しながら話し出した。

 

 

「まさか、上田の殿方の所にいるとは……

 

うちの甥が、世話になってるって聞いたもんで、それで」

 

「それで迎えに来たのか?」

 

「えぇ、まぁ。

 

手の掛かるガキでしょ?人殺しだけど、死んだ弟の子供だし、仕方なく引き取ったんだ。

 

それがどうだ……親代わりであるこの俺に、反抗ばかりしやがって。最終的には、一年前に突然失踪して、行方不明になっちまうし……本当手の掛かるクソガキだ」

 

「……」

 

「さぁて、長居は無用です。

 

早く、クソガキを返して貰えませんかねぇ?」

 

「……お主が言う、その聞き分けのないクソガキの名は?」

 

「?

 

鎌之介……由利鎌之介だ」

 

「おかしいなぁ……

 

ここにいる鎌之介は、聞き分けの良い面倒見の良い子何だが?」

 

「それは何かの間違いだ。

 

あいつが、そんな聞き分けの良いガキな訳が無い。

 

 

さぁ、無駄話はもういい。早く鎌之介を返せ」

 

「……六郎」

 

「はい」

 

 

六郎は立ち上がり、部屋を出て行った。伯父は勝ち誇ったかのような表情で、煙管を吸った。

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

廊下から響く声……襖を蹴り飛ばし入ってきたのは、怒りに満ちた鎌之介だった。

 

 

「何しに来やがった!!」

 

 

怒鳴り声を上げながら、彼は男を睨んだ。男は不敵な笑みを浮かべながら、入ってきた鎌之介を見た。男の傍にいた仕えが、武器を握り攻撃態勢に入り、二人に続いて才蔵と六郎も構えた。

 

 

「何を言っている……フゥー。

 

迎えに決まってるじゃないか」

 

「何が迎えだ……

 

 

散々一をゴミみたいに扱っときながら、捨てたくせに」

 

「捨ててはいない。お前が勝手に出て行ったんだろ?」

 

「っ!!」

 

「さぁ、文句言ってねぇでとっとと帰るぞ!

 

奴を連れて行け」

 

 

二人の内一人の仕いは、瞬時に鎌之介の背後に回り彼の腕を拘束した。その仕いの首に才蔵はクナイの刃を当てた。

 

 

「何、人のもん盗ろうとしてんだよ……」

 

「……貴様、伊賀者か」

 

「さっさと、その手を離せ」

 

 

睨み合う二人……その時、黙っていた幸村は口を開いた。

 

 

「あと一週間、待て」

 

「?」

 

「俺はそいつに、一つ貸しをしている。

 

その借りがまだ返して貰っていない」

 

「だから何だ?」

 

「契約で、この一ヶ月俺の元で働いてくれていた。

 

あと一週間もすれば、その契約は切れる。それまで待てと言っているんだ」

 

「……ほぉー。

 

テメェみてぇなクソガキが、殿に貸しを作るとは」

 

「……」

 

「……良いだろう。

 

一週間後、また来る」

 

 

仕いの二人に合図を出し、男は部屋を出て行った。鎌之介を拘束していた仕いは、彼から手を離し男の後に続いていった。

 

 

去って行く三人に、幸村は嫌そうな目を向けて、口から煙を出した。

 

 

「全く、嫌な男だ」

 

「一応、殿である幸村を前にしてあの態度か」

 

「一応は余計だ!

 

安心せい、鎌之介」

 

「?」

 

「決して、お主をあの男には渡さぬ」

 

「……テメェに出来るなら、とっくに俺が殺ってる」

 

 

怒りの声でそれだけを言うと、鎌之介はその場から去って行った。

 

 

「……せっかく、良い奴になってきてたのに」

 

「まぁ、この鎖を砕けば奴はもう、自由の身なんだろう」




とある宿……

そこで酒を飲む鎌之介の伯父。


「ったく、せっかく引き取ってやったのに、逃げ出しやがって……

挙げ句に、あの真田の若君に就くとは」

「……どうする?

奴がいないと、あの話は無くなるんだろ?」

「あぁ……

赤髪のガキなど、珍しいから高く売れるんだ」

「自分の甥なのに、よく売れるね?」

「ガキの世話なんざしたかねぇ。

本当はこの俺が、由利一族の当主になるはずだった。


だが、あのクソ親父……俺では無く、弟を選びやがった。納得が出来なかった!一族の奴等が認めても、この俺だけは認めなかった」

「だから、俺達に暗殺の依頼をしたんだろ?」

「まぁな。

運良く、鎌之介があの場にいてくれたおかげで、あいつを親殺しの犯人にでっち上げ、今だ。


親を殺した息子を、次の当主にすることも無く、由利一族は散らばった」

「結構な悪だな」

「全てを手に入れるなら、どんなことでもする……それだけだ。


それに、次に目を付けているしな」

「次は何を?」

「光坂一族だ。

赤い瞳が特徴の奴等だ。中でも子供が一番高く売れるらしい……」

「……その一族って確か、武田が滅んだ後消息を絶ったと」

「出雲近くにいることまでは、分かっている。

後はその付近を探すまでだ」


書類を見る伯父……その書類の一枚に、光坂の名簿がありその中に書かれていた。



光坂桜華…
光坂優之介…
光坂椿…
光坂陸丸…
そして、光坂蓮華。
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