十勇士 作:妖狐
正式に城に住むこととなった優之介達は、才蔵達の下に就き彼等の手伝いをしていた。
櫓で才蔵から受け渡された上田の地図を、優之介は書き写しながら地形を覚えていた。
「……あの、才蔵さん」
「ん?」
「桜華は、どこに?」
「あいつなら、鎌之介達の所だ。
今日は、丘の所に行くって言ってたな」
「丘って……」
「心配すんな。
鎌之介と六助さんがいる。大丈夫だ」
「……」
「危険だからって、城に閉じ込めとくのも可哀想だろう?
だったら、俺等がきっちり守ってやれば」
「俺達も、そうして貰えば」
動かしていた筆を止め、優之介は静かにそう言った。
「自由無かったのか?お前等」
「儀式が終わってからずっと……
森や川に自由に行けなくなった。行こうとすれば止められた。一度黙って言ったら、その日の夜三時間くらいの説教を受けた」
「……」
「怒られるのが嫌になって、段々と遊びに行くことは無くなった……家にいるか、武器の稽古をするかのどちらかだ」
「……桜華から見れば、お前等の方が余程自由じゃねぇか」
「!」
「檻に入れられて、自由を奪われて……母親の温もりも奪われて。
外へ出たくても出られなくて、檻の中鎖に繋がれて閉じ込められてたんだ」
「……
確かにそうだ。
俺達の方が、自由だったのかも知れないな」
城下町を歩く氷柱と椿。
雑貨屋の前を通った時、椿は立ち止まり中の商品を眺めた。
「何か珍しい物でもあったの?」
「!べ、別に……
ねぇ」
「ん?」
「何で桜華だけ、あの若君と一緒なの?
普通、アンタ達の誰かと一緒じゃないの?」
「大助様が、気に入ってるからよ。
それに鎌之介も」
「フーン……」
「何?桜華のことが心配なの?」
「!べ、別に心配じゃ無いわよ!!
ただ、どうしてあの子だけ」
「自由に振る舞ってるかって?」
「!」
「あなた達は、私達と一緒に仕事をしなければならないのに、何で桜華だけが自由に動けるかって……
そう疑問に思ってるの?」
「っ……それは」
「桜華も同じ事思ってたんじゃないの?」
「!」
「自由にどこへでも行けるあなた達を、桜華はずっと羨ましく思っていたんじゃないの?
今のあなたと同じ気持ちみたいに」
「……
初めてだった」
「?」
「私の髪の毛を褒めてくれたのが……
昔から赤い髪なのに、毛先の方になっていくと黒くなってて……周りからよく言われた。
『人の血を浴びた女だ』って……私、産まれてくる時に欲張ったのかも知れない」
「欲張った?何を?」
「……母様は赤い椿の様な真っ赤な髪だった。
父様は光を通さない様な真っ黒な髪だった……
私はその二つを欲張ったから、こういう髪なんだと思う。周りから毎日からかわれる日々だった……けどある日、桜華は言ってくれた」
『毛先が黒いのは、まだ咲いてないんだよ!』
『咲いてない?』
『うん!ほら、花って上から開花するじゃん!
椿の髪は、毛先から上が先に咲いただけだよ!だからいつか、毛先も真っ赤になって、綺麗な赤い椿の花になるよ!』
「……あんな風に言われたのが、初めてだった。
私、いつか彼女に恩返しがしたいとずっと思ってた……あの日、桜華が閉じ込められた日に一回だけ、鍵を持ってあいつの牢屋に行った……けど、そこを見張りに見つかった。
罰は受けなかった……でも、次やったらただじゃ置かないって言われて……それが怖くて」
肩を震えさせながら、椿は気付かぬ内に涙を流した。
森の中……鹿の群れにいた佐助は、子鹿の怪我を手当てしていた。そんな彼の様子を、後ろから陸丸は眺めていた。
「凄ぉい……まるで、僕の父ちゃんみたい」
「お前の親父さん、医者だったのか?」
「うん。一族の中じゃかなり腕の良い!
よく怪我した動物や皆を治してたんだ!」
「そうか……」
「……僕も、父ちゃんの仕事をしたかった」
「すれば良かっただろ?駄目だったのか?」
「選ばれた子供だから、医者になんかならず忍になれって……
僕、争いとか喧嘩好きじゃないんだ……昔から」
寄ってきた子鹿の顔を撫でながら、陸丸はそう話し出した。
「皆、それぞれ夢あったんだよ。
優は光坂の里長になって、里を変えるのが夢だった。
椿は得意な神楽舞をもっと磨いて、いつか里の外で披露するのが夢だった。
桜華は真助さんや蓮華さんみたいな、強い忍になるのが夢だった。
僕は……僕は、医者になって父ちゃんの後を継ぐのが夢だった」
「……」
「普通に夢持ってたんだ……
でも、選ばれた子供だからって理由で、僕と椿の夢は駄目だって言われた……選ばれた子供だから、強い忍になりなさいって言われて……
自由に夢を持っちゃいけないの!?選ばれた子供だからって理由で!」
「……俺はお前達の故郷、里の仕来りは知らない」
「っ」
「けど、夢を持つ持ったお前等を俺は羨ましく思う」
「え?佐助さんは、なかったの?夢とか」
怪我の手当てを終えた子鹿を、群れに返すと佐助は傍に寄ってきた狐の頭を撫でた。
「忍は、ただ主に仕え仕事を熟す道具。
けど、俺等甲賀の忍は主に仕えるのが目標(モットー)だった。主がいなければ、夢など抱けない。抱けたとしても、それは主を見つけた者だけ。
俺は幸村様に会ってから、生まれて初めて夢を抱けた」
「……ど、どんな夢?」
「命を賭けて、真田を守ること……それだけだ」
「……」
「お前達の故郷はもう亡い……けど、これからは俺等と同じ真田に仕える……そこで、昔見た同じ夢を追い駆けても良いんじゃないのか?」
「そ、そんなことやって良いの?!
だって、殿に仕えたら己の生涯を殿に捧げるって、大人達は皆」
「それは普通の殿の場合だ。
幸村様は、その辺にいる殿とは違う。仕えたきゃ仕えろ、仕えたくなきゃ仕えなくていい……そういう考えの持ち主だ」
「……」
狐:はーい!お久し振りでーす!
猿:……何故そんなにテンションが高いんだ?
狐:そんなの決まってんじゃん。
ストレスで、頭ピーヒャラ状態だから!
猿:……話にならん。
才:ビックリしたぞ。
突然、鎌之介の過去をやるなんて。
狐:前々から書こうと思ってて、どの辺りにしようかなぁって考えてたら、あの辺りが良いなって思って!
氷:じゃあ、他の人達のもやるの?
狐:いや、やるつもりはない。
でも、次の話で少しシリアスに入るつもり。
才:マジかよ!?
狐:あくまで予定だから、期待しないで。
あと、次回からこの雑談のコーナーがもしかしたら無くなるから、よろしく!
才:応!……って、えぇ!?
狐:そんじゃ、ここいらで。
読者の皆さん、また次回!