十勇士   作:妖狐

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桜華達が光坂の里から帰ってきてから、数ヶ月が過ぎた。あれ以来、誰からの襲撃は無く、不安であったが安心できる日々を過ごしていた。


正式に城に住むこととなった優之介達は、才蔵達の下に就き彼等の手伝いをしていた。


絡む糸

櫓で才蔵から受け渡された上田の地図を、優之介は書き写しながら地形を覚えていた。

 

 

「……あの、才蔵さん」

 

「ん?」

 

「桜華は、どこに?」

 

「あいつなら、鎌之介達の所だ。

 

今日は、丘の所に行くって言ってたな」

 

「丘って……」

 

「心配すんな。

 

鎌之介と六助さんがいる。大丈夫だ」

 

「……」

 

「危険だからって、城に閉じ込めとくのも可哀想だろう?

 

だったら、俺等がきっちり守ってやれば」

「俺達も、そうして貰えば」

 

 

動かしていた筆を止め、優之介は静かにそう言った。

 

 

「自由無かったのか?お前等」

 

「儀式が終わってからずっと……

 

森や川に自由に行けなくなった。行こうとすれば止められた。一度黙って言ったら、その日の夜三時間くらいの説教を受けた」

 

「……」

 

「怒られるのが嫌になって、段々と遊びに行くことは無くなった……家にいるか、武器の稽古をするかのどちらかだ」

 

「……桜華から見れば、お前等の方が余程自由じゃねぇか」

 

「!」

 

「檻に入れられて、自由を奪われて……母親の温もりも奪われて。

 

外へ出たくても出られなくて、檻の中鎖に繋がれて閉じ込められてたんだ」

 

「……

 

 

確かにそうだ。

 

 

俺達の方が、自由だったのかも知れないな」

 

 

 

城下町を歩く氷柱と椿。

 

雑貨屋の前を通った時、椿は立ち止まり中の商品を眺めた。

 

 

「何か珍しい物でもあったの?」

 

「!べ、別に……

 

 

ねぇ」

 

「ん?」

 

「何で桜華だけ、あの若君と一緒なの?

 

普通、アンタ達の誰かと一緒じゃないの?」

 

「大助様が、気に入ってるからよ。

 

それに鎌之介も」

 

「フーン……」

 

「何?桜華のことが心配なの?」

 

「!べ、別に心配じゃ無いわよ!!

 

ただ、どうしてあの子だけ」

「自由に振る舞ってるかって?」

 

「!」

 

「あなた達は、私達と一緒に仕事をしなければならないのに、何で桜華だけが自由に動けるかって……

 

そう疑問に思ってるの?」

 

「っ……それは」

 

「桜華も同じ事思ってたんじゃないの?」

 

「!」

 

「自由にどこへでも行けるあなた達を、桜華はずっと羨ましく思っていたんじゃないの?

 

今のあなたと同じ気持ちみたいに」

 

「……

 

 

初めてだった」

 

「?」

 

「私の髪の毛を褒めてくれたのが……

 

 

昔から赤い髪なのに、毛先の方になっていくと黒くなってて……周りからよく言われた。

 

『人の血を浴びた女だ』って……私、産まれてくる時に欲張ったのかも知れない」

 

「欲張った?何を?」

 

「……母様は赤い椿の様な真っ赤な髪だった。

 

父様は光を通さない様な真っ黒な髪だった……

 

 

私はその二つを欲張ったから、こういう髪なんだと思う。周りから毎日からかわれる日々だった……けどある日、桜華は言ってくれた」

 

 

『毛先が黒いのは、まだ咲いてないんだよ!』

 

『咲いてない?』

 

『うん!ほら、花って上から開花するじゃん!

 

椿の髪は、毛先から上が先に咲いただけだよ!だからいつか、毛先も真っ赤になって、綺麗な赤い椿の花になるよ!』

 

 

「……あんな風に言われたのが、初めてだった。

 

 

私、いつか彼女に恩返しがしたいとずっと思ってた……あの日、桜華が閉じ込められた日に一回だけ、鍵を持ってあいつの牢屋に行った……けど、そこを見張りに見つかった。

 

罰は受けなかった……でも、次やったらただじゃ置かないって言われて……それが怖くて」

 

 

肩を震えさせながら、椿は気付かぬ内に涙を流した。

 

 

 

森の中……鹿の群れにいた佐助は、子鹿の怪我を手当てしていた。そんな彼の様子を、後ろから陸丸は眺めていた。

 

 

「凄ぉい……まるで、僕の父ちゃんみたい」

 

「お前の親父さん、医者だったのか?」

 

「うん。一族の中じゃかなり腕の良い!

 

よく怪我した動物や皆を治してたんだ!」

 

「そうか……」

 

「……僕も、父ちゃんの仕事をしたかった」

 

「すれば良かっただろ?駄目だったのか?」

 

「選ばれた子供だから、医者になんかならず忍になれって……

 

僕、争いとか喧嘩好きじゃないんだ……昔から」

 

 

寄ってきた子鹿の顔を撫でながら、陸丸はそう話し出した。

 

 

「皆、それぞれ夢あったんだよ。

 

優は光坂の里長になって、里を変えるのが夢だった。

椿は得意な神楽舞をもっと磨いて、いつか里の外で披露するのが夢だった。

桜華は真助さんや蓮華さんみたいな、強い忍になるのが夢だった。

僕は……僕は、医者になって父ちゃんの後を継ぐのが夢だった」

 

「……」

 

「普通に夢持ってたんだ……

 

 

でも、選ばれた子供だからって理由で、僕と椿の夢は駄目だって言われた……選ばれた子供だから、強い忍になりなさいって言われて……

 

自由に夢を持っちゃいけないの!?選ばれた子供だからって理由で!」

 

「……俺はお前達の故郷、里の仕来りは知らない」

 

「っ」

 

「けど、夢を持つ持ったお前等を俺は羨ましく思う」

 

「え?佐助さんは、なかったの?夢とか」

 

 

怪我の手当てを終えた子鹿を、群れに返すと佐助は傍に寄ってきた狐の頭を撫でた。

 

 

「忍は、ただ主に仕え仕事を熟す道具。

 

けど、俺等甲賀の忍は主に仕えるのが目標(モットー)だった。主がいなければ、夢など抱けない。抱けたとしても、それは主を見つけた者だけ。

 

俺は幸村様に会ってから、生まれて初めて夢を抱けた」

 

「……ど、どんな夢?」

 

「命を賭けて、真田を守ること……それだけだ」

 

「……」

 

「お前達の故郷はもう亡い……けど、これからは俺等と同じ真田に仕える……そこで、昔見た同じ夢を追い駆けても良いんじゃないのか?」

 

「そ、そんなことやって良いの?!

 

だって、殿に仕えたら己の生涯を殿に捧げるって、大人達は皆」

 

「それは普通の殿の場合だ。

 

幸村様は、その辺にいる殿とは違う。仕えたきゃ仕えろ、仕えたくなきゃ仕えなくていい……そういう考えの持ち主だ」

 

「……」




狐:はーい!お久し振りでーす!

猿:……何故そんなにテンションが高いんだ?

狐:そんなの決まってんじゃん。

ストレスで、頭ピーヒャラ状態だから!

猿:……話にならん。

才:ビックリしたぞ。

突然、鎌之介の過去をやるなんて。

狐:前々から書こうと思ってて、どの辺りにしようかなぁって考えてたら、あの辺りが良いなって思って!

氷:じゃあ、他の人達のもやるの?

狐:いや、やるつもりはない。

でも、次の話で少しシリアスに入るつもり。

才:マジかよ!?

狐:あくまで予定だから、期待しないで。

あと、次回からこの雑談のコーナーがもしかしたら無くなるから、よろしく!

才:応!……って、えぇ!?

狐:そんじゃ、ここいらで。


読者の皆さん、また次回!
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