十勇士 作:妖狐
庭にいたレオンと青達は、何かを察して空を見上げた。
「……父上、空が」
「大丈夫だ……」
ゆっくりと目を開ける才蔵……だが、そこに広がっていたのは、漆黒の闇だった。
「どうだ?妾の闇は?
これで、手足も出せまい!」
「……さぁ。
それはどうかな?」
「?……
!?」
闇の中に射す一筋の光……光は闇を払った。
「な、何だ!?この光は!?」
「光と八つの力を持った勇士達が集う時」
「我等光坂は、その者達に力を貸せ」
光の中から現れ出たのは、優之介達だった。彼等の手には、あの黒く染まった勾玉が握られていた。
「お主等……」
「残念ね、伊佐那美」
「勾玉を奪う際に、俺等も殺しておくべきだったな?」
「怒(ヌ)ううぅ!!
邪魔だ!!邪魔だ邪魔だ邪魔だ!!邪魔だ!!!!妾の邪魔をするな!!
この世に渦巻く憎しみの怨情、そしてこの桜華の苦しみが、妾をこの世に呼び起こした!!妾の裁きを必要としておるのだ!!」
「だったらその苦しみ」
「私達が」
「取り除くよ」
各々の技を出した優之介達は、一斉に桜華目掛けて放った。伊佐那美はすぐにそれを防ごうとしたが、防ぐ寸前に技が出ず、そのまま攻撃を食らった。
「……くっ!!
いい加減眠れ!!桜華!!」
「?!」
「お主の意思など、必要ない!!」
何かを察した才蔵は、手に握っていた勾玉を見た。黒く染まった勾玉の中、再び光が宿った。
「やはり、奪っていたか」
「?」
「闇の糧として、久久能智神の魂を食らった……その際に、彼女の器が息を吹き返し、大岩に嵌めていた魂を五つ取り、そこから消えた……」
「……まさか、それが」
「蓮華さん……」
「あの女のせいで、桜華は深い眠りにつくことが出来なかった……
だから……お主等全員を殺し、その魂を壊せばこの女(桜華)は、深い眠りにつき完全な妾の器となるのだ!!」
その声に反応するかのようにして、才蔵の手に握られていた勾玉の光が、消えようとしていた。
「桜華!!眠るな!!
今すぐ、助けに行く!!もう少し踏ん張れ!!」
「ええい!!黙れぇ!!」
黒い球を出した伊佐那美は、才蔵に向けてその球を放った。玉に当たる寸前に、彼は腰に挿していた鞘から刀を抜き、球を真っ二つに切り裂いた。
「?!そ、その刀は」
青く光る桜華の刀……その光に、照らされた伊佐那美の姿が一瞬、桜華の姿へと変わった。
「何故……
何故、お主がその刀を持っている!!」
(一瞬……
一瞬、桜華に戻った……)
「天之尾羽張(アメノオハバリ)!」
「?!」
「代々光坂の当主に、受け継がれている刀です!」
「……まさか桜華は、これを知って」
『才蔵』
弱った桜華の声が、どこからか聞こえた……
「……桜華……」
その時、才蔵の背後から炎に身を包んだ素戔嗚尊が、大太刀を振り上げて襲ってきた。
斬られる寸前に、優之介が刀で受け止めようと構えたが刀は耐える事も無く、真っ二つに折れ彼の体を切り裂いた。
「優!!」
「優!!」
倒れた瞬間、光が消え再び闇が辺りに広がった。
「ホホホホホホ!!再び闇に染まった!!
こうなれば、妾に刃を向けるなど出来やしない!!」
乱れる息を整える才蔵……その時、ふと思い出した。
師である百地の言葉を……
『才蔵には、もう一つ目があるんだよ』
『もう一つの目?
何言ってんだ?ついにボケたか?』
『大人を馬鹿にしない。
目を瞑って、深呼吸してごらん?そうすれば、見えてくるはずだよ……
才蔵の、大事なものが』
深く呼吸しながら、才蔵は目を瞑った……
聞こえてくるのは、風に揺られざわつく木々、佐助達の交戦の音……
『後ろ』
声に導かれ、才蔵は後ろを振り返り刀で何かを受け止めた。
一瞬にして闇が晴れた……木の幹に凭り掛かるようにして座り込む甚八に、岩に干されるようにして倒れる鎌之介、そして茂みに倒れる十蔵の姿が才蔵の目に映った。
「鎌之介!!甚八!!十蔵!!」
素戔嗚尊の大太刀を払い避けた才蔵は、すぐに彼等の元へ駆け寄ろうとした。だが、その前に千草が立ち弦に矢筈を嵌め弓を引いた。
「千草……」
「……」
見つめ合う二人……才蔵の目には、笑顔を浮かべた千草が映った。
「甲賀流水術五月雨!!」
「氷術氷槍!!」
水と氷の技が、千草に当たった。その光景を見た瞬間、才蔵の脳裏に彼女が死んだあの日の記憶が蘇った。
「ボサッとするな!!」
怒鳴りながら佐助は、才蔵の背中を力強く叩いた。
その痛みで我に返った彼の背後から、素戔嗚尊が大太刀を力任せに振り下ろしてきた。
「風術風神拳!!」
強烈な風が吹き当たり、素戔嗚尊は茂みの方へ飛ばされた。
「テメェの相手は俺だ!!」
「鎌之介!」
「こんな奴に構ってねぇで、才蔵は早く桜華を救え!!」
「言われずとも!」
「そうこねぇと!
!!才蔵!後ろ!」
才蔵の背後から彼に襲い掛かるくノ一……次の瞬間、才蔵の横を何かが通り過ぎ、くノ一の脳天を貫いた。
「油断禁物だぞ!才蔵!」
「十蔵!」
「とっとと、真助のガキを助けろ!」
「鎌之介と同じ事言うな!!甚八!」
「な、何故だ!?
何故動ける!?」
「桜華を助けたいからだ!!」
「それ以外に理由はない!!」
各々の敵を相手する鎌之介達……彼等の姿を見た伊佐那美は、不意に涙を流した。
「何故流す……
あの者達は、お主を見捨てたのだぞ!!
母から引き離され、襲撃を受けても尚誰も助けに来ず、挙げ句の果てには母を殺されたようなものなのだぞ!!」
「もう見捨てない」
「?!」
肩から出る血を手で抑えながら、優之介は椿達と立ち言った。彼等が身に着けていた勾玉に、微かな光が蘇りつつあった。
「裏切った分際で、何を言うか!!」
「桜華は俺達の家族だ……
もう二度と、お前を裏切ったりはしない!」
「桜華、帰ってきてよ!また皆で遊ぼう!」
「帰ってきなさいよ!桜華!
アンタがいなきゃ……誰が、私の咲いた花(髪の毛)を見てくれるのよ」
「喧しい!!」
闇の波動弾を三人に向けては放ったが、難なく避けられた。
乱れる伊佐那美の息……何かを察した才蔵は、手に持っていた勾玉に目をやった。
黒かった勾玉は、所々が青くなっていた。
「眠れ!!桜華!!」
そう怒鳴りながら、伊佐那美は体から闇の波動を解き放った。闇は辺りの草木を枯らし、虫や動物の命を吸い取っていった。