十勇士 作:妖狐
場所は変わり、藤の花が咲き誇る広場へ来た真助達。
墓石の前に、数本の花を添える真助。手を合わせながら、彼は口を開いた。
「お久し振りです。
僕と蓮華は、相変わらず元気にやっています。あなた方が残した土地は、今は真田が守っています。
桜華」
真助は振り返り、蓮華の隣に立っていた桜華の名を呼び手招きをした。彼女は蓮華をチラッと見ながら、彼の元へ歩み寄り、差し出した手を握り隣に立った。
桜華を挟むようにして、蓮華も隣に立った。
「遅くなりましたが……
あなた方が楽しみにしていた……僕等の子です」
「……
桜華です。初めまして」
その声に応えるかのようにして、微風が吹き藤の花弁を舞い上がらせ、三人の髪を靡かせた。
「父さん」
「?」
「ここに、誰が眠ってるの?」
「……父さん達の主だよ」
「主?」
「今は真田だけど、昔は武田と言う人が主だったの」
「……」
「主は、君が産まれてくるのをずっと心待ちにしていたんだよ。
生きている間に、顔が見たいってずっと言っていた」
「……私も会いたかった」
「……」
「……さぁ、行こう。
優之介達を待たせているから」
「えぇ……
桜華」
蓮華は彼女の名を呼びながら、しゃがみ込んだ。そして、何かを言おうとしたがそれを上手く言え無かった。
「……大丈夫だよ!」
何かに戸惑っている蓮華に、桜華は笑顔を見せながら言った。
「まだまだ知らないこといっぱいだけど、平気だよ!
六助や才蔵、佐助に氷柱、甚八、十蔵に六郎。清海や伊佐道、鎌之介に大助、幸村さん。
それに、父さんや水もいるから、全然大丈夫!」
逞しく言う桜華に、蓮華は思わず泣き笑いながら彼女を抱き締めた。
その夜……
城の屋根で月見酒をする才蔵。その隣で桜華は、串団子を食べていた。
「……なぁ、才蔵」
「何だ?」
「……あのさ……
才蔵って、どっかで私と会ったことある?」
「……」
その質問に、才蔵は何の疑問も感じなかった……だが、答えることは出来なかった。
「今日まで、才蔵達と暮らしてて思ったんだ……
以前にも、この光景を見たことがあるなぁって。
何かね、皆と一緒にいると凄く懐かしいって感じるの」
「……」
「でも、覚えてないから、何でかは分かんないんだよね!
だけど、ここへ来て才蔵の名前聞いてから、ずっと言いたいことがあるの……」
立ち上がった桜華は、月明かりに照らされまるで月の姫君のように見えた……下ろしていた髪が、夜の風に靡いた。
才蔵は酒を置き、立ち上がり桜華の方のを見た。
桜華は、才蔵に笑顔を見せて言った。
「ただいま……才蔵」
その瞬間、才蔵の目から一筋の涙が流れ、そして彼も笑顔を見せながら言った。
「……お帰り、桜華」
(完)
狐:いやぁ、何とかハッピーエンドで終わって良かった良かった!
これも、アンタのおかげだよ。伊弉諾尊さん。
伊弉:私はそれなりのことをしたまでです。
あなたの頼みを断るわけには、いけませんから。
狐:相変わらずだな。
伊弉:しかし、よかったのですか?
あなたの記憶まで消して。
狐:いいのいいの!私は妖狐!
人を騙すのが得意な狐だよ!
伊弉:あなたが良ければ、別に構いませんが。
狐:ご心配御無用!
さぁ!一杯やろう!伊弉諾尊さん!
伊弉:はいはい。
古ぼけた左右の扉がゆっくりと開き、妖狐と伊弉諾尊はその中へと入って行った。