十勇士 作:妖狐
門前で大あくびをする甚八。彼に釣られて、白い虎も大あくびをした。
「くれぐれも、桜華のことを頼んだぞ」
「へいへい」
「才蔵、お主は!!」
「筧さん、大声上げるな!」
才蔵の背で、フードを被り寝息を立てる桜華……十蔵は、慌てて手で口を塞いだ。
「筧さん、もし起こしたら説明お願いしますね」
「う……」
「本人の承諾もなく連れて行くとは……」
「目が覚めて、お主がいれば何の文句も言わぬだろう?」
「幸村ー」
「取りあえず、桜華が起きぬ前に早く行け」
「ヘーイ」
「何かあったら、すぐに連絡するんだぞ!」
「分ーった」
『寝ちゃってるわね』
『疲れたんだよ』
『出来るまで辞めないところ、あなたそっくり』
『え?そうかなぁ?』
『そうよ。
強くなってね。桜華』
「……」
騒ぐ声に、桜華は起きた。
「だぁかぁらぁ、何で船が出ねぇんだ!!
それを説明しろ!!」
大きな木の船の前に立つ船員と甚八は言い争っていた。
「あの馬鹿、自分に任せろとか言っときながら、全然駄目じゃねぇか」
「ハァ~……全く、仕様の無い」
「才蔵?」
「?」
桜華の声に気付いた才蔵は、後ろに目を向けながら話した。
「お!起きたか」
「……ここ、どこ?」
「港だ」
「港?何で?」
「あ~……
ちょっと訳あって……その……
筧さん、頼む」
「……
幸村様からの命で、お主を連れて昨日話した隠れ里へ行く」
「里?何で?」
「そ、それは……」
「お前がここへ来る前……追われる前、住んでた場所がもしかしたらそこかも知れねぇんだ」
説明しながら、才蔵は桜華を下ろした。桜華は少し当たりを警戒しながら、彼の羽織を掴んだ。
「外にいる間は、俺から離れるな」
「……うん」
すると、寝そべっていた白い虎が、あくびをしながら立ち上がり、桜華に歩み寄ってきた。桜華は寄ってくる虎に、手を伸ばしながらしゃがんだ。虎は彼女の手のにおいを嗅ぐと、尻尾を振りその場に座り顔を洗った。
「オーイ!十蔵ー!」
甚八の声が聞こえ、十蔵は顔を上げた彼の方を見た。
「船の準備が出来た!とっとと乗れ!」
叫ぶ甚八の隣りにいる船員は、怖じ気着いた様子で立っていた。
「……あ奴、あの船員に何をしおった?」
「さぁ……」
甚八が先に船に乗り、その後に十蔵達は乗った。三人を乗せた船は、出港し海へ出た。
波に揺られ進む船……
「甚八、どれくらいで着く?」
「二日後には着くだろ。
もっと早く着く方法もあるが」
「荒運転は止さぬか!!子供が乗っておるんだぞ!!」
甚八が十蔵に怒鳴られている様子を、才蔵は面白可笑しく見ていた。ふと、桜華の方を見ると、彼女は船の縁に手を置き海を眺めていた。
『ほら桜華、海よ』
『いつ見ても、綺麗ですねぇ。
あ!入っては!!』
“バシャーン”
突如水が桜華の顔にかかり、彼女は水に驚き船の縁から離れ腕で顔に浴びた水を拭いた。
「うへー。生きのいい魚だぁ。
大丈夫か?」
水を拭きながら、目を開き桜華は足下を見た。
木の板の上で跳ねる魚……魚を見て、驚いた桜華は小さい悲鳴を上げ床に尻を突いた。
跳ねる魚を、白い虎は尻尾を口で銜え上へ投げ、そのまま口に入れ食べてしまった。虎は満足げな顔をすると、座り込んでいる桜華の膝に頭を乗せ、咽を鳴らした。
「珍しい。レオンが俺以外の人に懐くなんて」
『桜華って、本当に動物に懐かれるよな』
『いいなぁ。
滅多に懐かない動物も、桜華だとすぐだもんね』
『桜華にはきっと、不思議な力があるんだよ!
だって桜華は……』
揺れる灯り……目を開けた桜華は、瞬きし起き上がりながら部屋を見回した。
ソファーがテーブルを挟んで二つ置いてあり、その内の一つのソファーに桜華は寝かされていた。向かいのソファーには、才蔵が気持ち良さそうに眠っていた。
「……!!」
突然激しい頭痛が走り、桜華は頭を手で抑えながら横になった。
見覚えの無い記憶……その記憶の奥に立つ一人の男。
『あの人の元へ行きなさい!!桜華!
真田でもいい!!とにかく、あいつ等の手の届かない場所へ逃げて!!』
「おい!!」
誰かの声に、桜華はハッと我に返り息を切らしながら、声の方に振り向いた。そこにいたのは、甚八だった。
「大丈夫か?」
「……」
外へ出た桜華と甚八……壁に凭り掛かり座っていた彼女に、甚八は水の入ったコップを渡した。桜華は彼からコップを受け取り、水を一口飲んだ。
「落ち着いたか?」
「……ん」
「相当魘されてたが、何か怖い夢でも見たのか?」
「……多分。
何か、凄く頭が痛くなって……気が付いたら、お前に呼ばれて」
「思い出すことを拒否ってんだろうな」
「え?」
「ここへ来る前、才蔵や俺達に会う前の出来事を、お前の頭が拒否してるんだ」
「何で?」
「それは知らねぇよ。お前自身しか」
「……」
桜華は落ち込んだかのようにして、顔を下に向けた。すると、レオンが傍へ寄り彼女に体を擦り寄せた。
「けど、お前は悪い奴じゃないのは確かだ」
「え」
「レオンは、生まれて間もなく母親から引き離されて、俺の元へ来た。
初めは俺の事、攻撃してきたさ。引っ掻くは噛み付くはで……けど、寝てる間は片時も俺の傍を離れようとはしなかった。
それから間もなくして、ある商人と俺が話してた時さ。突然商人を攻撃した」
「どうして……」
「……思い出したんだよ。
自分の母親が、そいつに殺されたって事を。商人問い質したらお見事。レオンの母親は、そいつに殺され売られていた。
俺が白い虎を飼い慣らしていると、どこかで聞いて是が非でも手に入れようとして、俺に近付いた。
そんな悪党から、俺を守ろうとしたんだよ。なぁ、レオン」
レオンの頭を撫でながら、甚八は彼の名を呼んだ。レオンは咽を鳴らしながら、甚八の腕を甘噛みし体を擦り寄せた。
「それからしばらくして、十蔵に会った。そしたらコイツ、アイツにじゃれたんだ。そしたら十蔵の奴、悲鳴上げてたわ。
そして才蔵達に会った……それからのコイツ、悪い野郎のにおいを嗅ぐと、歯を剥き出しにして襲い掛かるが、才蔵達のにおいを嗅ぐと、犬みてぇに尻尾振って飛び乗ってくる。
ま、餌食になるのはいつも才蔵だけどな」
「へー」
「……ホラ、とっとと寝ろ」
空になったコップを取った甚八は、ポケットから煙草を取り出し火を点け口に銜えた。桜華はレオンの頭を撫で、立ち上がり部屋へ戻ろうとした。
「……!」
一瞬蘇る記憶……口から水を吐き、息を切らしながらゆっくりと目を覚ます自分。そこに映るのは、目に涙を溜めた女性と若い頃の甚八の姿……
「……ねぇ」
「ん?何だ?」
「……何でもない」
才:雑談コーナー!
……って、何だよ!!今日の話!
狐:ん?どうした才蔵?
才:どうしたじゃねぇだろ!!何だよ!?
桜華とあの馬鹿に、何か関係でもあるのか?!
甚:誰が馬鹿だ!!
狐:あ~、もう少ししたら分かる。うん……もう少ししたら。
才:どんな関係だよ!!
筧:少し黙らぬか!!
狐:(何か、今回怒鳴り声が飛び交うなぁ)
甚:おい、あんまり怒鳴ってると狐が話せねぇだろうが。
筧:あ!す、すまぬ!
狐:皆苛々してるから、今回は佐助の紹介するよ。
ではどうぞ↓
名前:猿飛佐助(サルトビサスケ)
年齢:19歳
使用武器:小太刀二本。
容姿:癖っ毛の茶髪。その上から黒い布を巻いている。目の色は紺色。
服装:深緑色の長袖と長ズボンに茶色の足袋を履いている。手には手袋を嵌め、右手に毒が仕込まれたクナイを装備。