禍終素学園の混沌な日常   作:有頂天皇帝

49 / 51
今回は銀魂パロです

OP『曇天』


一度取った皿は戻さない

禍終素学園 寿司屋バイト

 

嵐獄島の西側の港町にある寿司屋にて

 

「いや~、ここまで長かったよ。親方の所に弟子入りしてから、ずっと包丁も握らせてもらえない下働きの生活」

 

そこに存在する回転寿司屋では、一人の男が誰かにそう言っていた。

 

「毎日、寿司を握る親方の手元を盗み見てはシャリの握り方を練習してよう、ようやくこの支店を預からせてもらえるようになった」

 

ようやく一人前になったらしい、この男は──。

 

「今度こそ、やるよ、俺ァ」

 

かつては本土にて政府の高官を務めていたが現在は禍終素学園の用務員である長谷川泰三であった。

 

「よっ、長谷川店長!」

 

回転寿司の流れるベルトコンベアの前にいる零斗が長谷川をおだてる。長谷川も「よせやい、テレるべ!!」と顔を横に向けて零斗に答える。

 

「この前見つけた仕事も、やっとここまで出来るようになったみたいだな」

 

零斗の左隣に座る銀時が長谷川を褒める。

 

「これで、逃げたお嫁さんも帰ってくるんじゃないですか?」

 

「ここまで頑張ったじゃないですか」

 

銀時の左隣と零斗の右隣にやって来た、明久と鍵が長谷川に言った。

 

「今日は応援してくれたみんなに俺の握った寿司最初に食べてほしくてよ」

 

そして、長谷川が零斗達にこう言った。

 

「全部、俺のおごりだ!!好きなだけ食べていってくれ!!」

 

長谷川の言葉を聞いた零斗達は、期待に心を踊らせる。

 

「おおーう!!握りたての寿司なんて滅多に食べられないものじゃないですか!!何食べよっかな~」

 

零斗は嬉しそうな顔をしながら両手を上げる。

 

「あっ、流れてきたよ」

 

明久がベルトコンベアから流れてくる寿司を見て、声を上げる。最初に流れてきたのは、カッパ巻きだった。

 

「おいしそうなカッパ巻きだね」

 

「響、一緒に食べましょう!」

 

駆逐艦の響は姉妹艦である暁と共に、カッパ巻きの乗った皿を手に取った。

 

「わっ!またカッパ巻きなのです!」

 

今度もカッパ巻きが流れてきて、響の姉妹艦である電が思わず声を上げて、カッパ巻きの乗った皿を手に取った。

 

「……またカッパ巻きとかいう奴?」

 

雷の前にもカッパ巻きが流れてきた。

 

「最初はそれで慣らすのもいいもんだぞ」

 

銀時はそう言って、ベルトコンベアの上を確認した。

 

「······················」

 

 

なんと、ベルトコンベアの上にはカッパ巻きが延々と続いていたのだ。

 

「「「「沙悟浄かァァァァァァ、俺たちはァァ!?」」」」

 

零斗、銀時、明久、鍵の四人はカウンターを乗り越えて長谷川に蹴りを入れた。四人に蹴飛ばされた長谷川はその場に仰向けで倒れ込む。

 

「なんでカッパ巻きしか流さねーんだコラァァァ!!カッパ巻きがガンダーラまで続いてんだろーが!!」

 

「何ケチってんだコラァァァ!!トロ出せ!!ウニ出せ!!何のためにアンタに会いに来たと思ってんだァァ!!」

 

「タダ飯だからっていくらなんでもこれはないでしょ!?」

 

「お土産持って帰っていいって言ってましたけど、カッパ巻きだけとか半殺しにさせる気ですか!?」

 

零斗たちが長谷川に対して、怒号を浴びせる。

 

「……カッパしか、握れねーんだよ」

 

仰向けに倒れた長谷川がグラサンから涙を流しながら、鈴谷達にこう言った。

 

「俺、ホントはまだ·······、寿司なんて握れねーんだよ」

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「 ·········するとこういうことですか、親方に認められたのはウソで、実際は親方が八角を生食してアニサキスに当たって入院して店に出れなくなり、急遽バイトの長谷川さんに店を任せたと?」

 

席から立ち上がった零斗が長谷川の話を聞いて要点をまとめていた。

 

「そうなんだよ。大将からはこの寿司マシーンがあるから大丈夫だって聞いてたんだが、コイツがウンともスンとも言わなくてよォ、もうすぐ開店の時間だってのにどうすりゃいいんだ?こんなんじゃ、ここはまるでダメお寿司屋、略してマダオに成り下がっちまう!!」

 

長谷川は持ってきた動かなくなった寿司マシーンの事で、途方に暮れていたのだ。

 

「とりあえず、その機械を直さないといけませんよね」

 

明久は長谷川の持ってきた動かなくなった寿司マシーンに目を向けながらそう言った。

 

「つっても誰に頼むよ」

 

「とりあえずこういう機械に詳しい連中に連絡入れたから誰かは直せるだろう」

 

鍵は修理を頼むのだとしたら誰にすべきかと言った。それに対して銀時は既に知り合いの機械に詳しい人達に連絡したことを伝えた。そしてしばらくの間待っていると······

 

「修理ならこの天才のダ・ヴィンチちゃんに任せなさい!!」

 

「直流ならこの私に任せるが良い!!このすっとんきょうとは比べ物にならない物を造ってみせよう!!」

 

「交流こそが至高!!この凡骨に任せたらろくなモノが出来んぞ!!」

 

『蒸気機関に全てを任せるが良い』

 

やって来たのは美術担当のレオナルド・ダ・ヴィンチことダ・ヴィンチちゃん、化学担当の直流バカことトーマス・エジソン、同じく化学担当の交流バカのニコラ・テスラ、整備科の蒸気王ことチャールズ・バベッジ。いずれも天才にして頭のネジが数本抜けているような連中である。

 

「この人たちで大丈夫なのかよ銀さん?」

 

「心配するな長谷川さん。確かにアイツらは頭のネジが数本抜けているが腐っても天才だ。何とかしてくれるだろう」

 

「銀さんそれフラグにしか聞こえないんですけど」

 

長谷川はダ・ヴィンチちゃんたちが本当に直せるのか不安になって銀時に尋ねるが、銀時は頭を掻きながら適当に答えた。そんな銀時とダ・ヴィンチちゃんたちに零斗は不安しか感じられなかった。

 

「それじゃあ、早速改ぞ───修理を始めるからこの機械を一旦外に移動させるね」

 

「今改造って言いかけたよね?」

 

「言ってない言ってない。それじゃあチャチャッと直してあげようじゃないか」

 

ダ・ヴィンチちゃんが改造と言いかけていることに明久が問いかけるもダ・ヴィンチちゃんはそれを無かったことにして修理するためにいそいそと寿司マシーンを店の奥の方へと運ぶのだった。

そして寿司マシーンを外に運び終えるとやって来た天才たちは店の奥へと向かい早速修理に取り掛かるのだった。

 

カーンカーンカーン!! バリバリバリッシュ!! モエルーワ!! イワァァァァーク!! ドガガガガガガ!! キュイイイイイン!! ボォォォォォォォ!! モウヤメルンダ!! アンタッテヒトハァァァァ!! 人類神話・雷電降臨(システム・ケラウノス)!! W・F・D(ワールド・フェイス・ドミネイション)!! 万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)!! 絢爛なりし灰燼世界(ディメンジョン・オブ・スチーム)!!

 

ダ・ヴィンチちゃんたちは事前に用意していた工具で寿司マシーンの修理?を始めていた。

 

「なぁ本当に大丈夫なのかよ。さっきから修理しているとは思えない音がしてるんだけど」

 

長谷川さんは店の奥から聞こえてくるどう聞いても修理している時に聞こえないような音に訝しむ。

そして─────

 

プシュゥゥゥゥゥ───(全壊している寿司マシーンから煙が上がっている音)

 

「手を尽くしたけどダメだったよ」

 

「今完全に壊したよね!?明らかにアンタたちがトドメさしたよね!?」

 

テヘッと舌を出しながら笑顔を浮かべるダ・ヴィンチちゃんに暁がツッコミを入れた。ダ・ヴィンチちゃんたちは寿司マシーンを完璧に壊してしまったのだった。

 

「オイどーしてくれんだ!!唯一の希望を!!もう時間ねーってのに!!」

 

唯一の希望であった寿司マシーンが壊れてしまったことで絶望する長谷川が零斗たちにそう叫んだ時だった。店の玄関の引き戸から数名の話し声が聞こえてきた。

 

「ここがお寿司屋さん、ですか·····」

 

「マシュはこういう場所は初めてなんだっけ?」

 

「今日はドクターの奢りだから好きなだけ食べようね」

 

「あまり高いものは頼まないでね?」

 

どうやら外にいるのは藤丸兄妹とマシュ・キリエライト、カルデア部顧問のロマニ・アーキマンのようで、今日はロマニの奢りでこの寿司屋に食べに来たようだ。

 

「ここは私たちでフォローする。銀さんたちは長谷川さんと裏方でフォローしてくれ」

 

響が取り仕切り、暁、電、雷、ダ・ヴィンチちゃんと共に来た客の対応をしにカウンターへ向かい、銀時、零斗、明久、鍵、長谷川は店の奥にある厨房に入っていった。

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「す·····すまねぇ。みんなこんなこと手伝わせることになっちまって」

 

厨房の中にて銀時、零斗、明久、鍵。そして助っ人として呼ばれた桂、エミヤ、くりむ、邪ンヌ、ノッブは長谷川からそう謝罪されていた。

 

「大丈夫ですよ長谷川さん。困った時はお互いに助け合いですよ。ここは俺たちに任せてください」

 

寿司屋の制服を着た零斗が申し訳なさそうに言った長谷川に対して気にしないように言った。

 

「しかし、俺以上に素人のお前らに寿司なんて握れるわけねーよ」

 

「誰も回転寿司にそこまで完成度求めてねーよ。上にネタが乗ってて形さえ取り繕ってりゃなんとかごまかせるはずだ」

 

長谷川は零斗たちがまともな寿司を握れるかどうか怪しいと言うが、銀時は形さえ何とかすればいいと言った。

 

「長谷川さん。とりあえず最低限だけでもシャリの握り方教えてもらえますかか?かっぱ巻きしか作れないと言っても形だけは親方さんの見て知ってるんだから」

 

明久は長谷川から寿司の握り方を形だけでも教えてもらおうとそう言った。

 

「わかった……。見よう見まねだが、よく見ててくれ」

 

長谷川は明久の頼みに答え、結桶に入った米を掴んで説明を始める。

 

「まずシャリを取る。この時あまり取りすぎないように気を付けてくれ。強過ぎず弱過ぎない加減で片手で空気を含むように握るんだ」

 

そう説明しながら、長谷川はシャリを握る。

 

「わさびを付け、ネタを乗せる」

 

シャリにわさびを付け、その上にネタのマグロを乗せる。

 

「ひと握り」

 

仕上げとして、長谷川はマグロ寿司を少し握る。

 

「完成だ」

 

だが、出来上がったのは──。

 

「なんでよ!?」

 

なぜかカッパ巻きだった!

 

「なんであそこからカッパ巻きが完成するのよ!?たった数行の間に何があったっていうのよ!!」

 

邪ンヌは長谷川に突っ込みを入れた。

 

「ダメだ········、俺やっぱりカッパ巻きしか作れねェ」

 

「今、惜しい所までいったわよね!マグロ乗せてたわよね!なんできゅうりに変わったのよ!?」

 

邪ンヌに突っ込まれた長谷川は頭を抱えながら落ち込んでその場にしゃがみこんでしまう。

 

「先祖がカッパ殺したりとかして呪われてんじゃろ、多分」

 

「これはダメだな。長谷川さんはカッパ巻き用員にするしかないな」

 

ノッブと鍵が呆れ返った表情で長谷川を見ながら、そう言っていた。と、そのとき。

 

「でも、雰囲気だけはしっかり伝わったわね。形だけならなんとかできそうな気がしてきたわ」

 

「そうですねー。握るだけなら会長でも大丈夫ですよ、きっと」

 

結桶の中のシャリを手に取るくりむに、零斗が言った。

 

「空気を含むように握り、わさびを付ける。ネタを乗せてひと握り」

 

くりむは念じたことを漏らしながら、寿司を握る。

 

「やっと出来たわ!」

 

しかし、完成したのは──。

 

「ちょっと会長ぅぅぅぅぅぅ!?」

 

鍵の叫びが厨房内にこだました。なぜかくりむの手にはうさマロがあったのだった。

 

「ちょっと待って!?なんで米とマグロからマシュマロが出来るんですか!?何したんですか今!!」

 

「おかしいわ杉崎。わたくしはちゃんと長谷川さんの説明した通りに握っただけなのに」

 

「我が生徒会の長ながら末恐ろしいよこの人!!まさかお米握っただけでマシュマロ作っちゃうなんて!!」

 

鍵にそう言われるなか、くりむも長谷川の隣で頭を抱えながら落ち込んでその場にしゃがみこんでしまう。

 

「ダメだこりゃ」

 

「このレベルじゃ長谷川さん以上に使い物にならないな」

 

零斗とエミヤはくりむに呆れ果ててため息をついていた。

 

「なら次は俺が試しに握ってみよう」

 

次に動いたのは桂だった。桂は結桶の中のシャリを手に取り、握りだす。

 

「空気を含むように握るとか何とかってゴチャゴチャ考えてっから失敗するんだ。そんなの職人でさえ何年もかけて身につける技だ。俺達は、不味くても形さえ繕えばいいくらいだ」

 

桂は零斗達にそう言いながら、寿司を形作る。そして──

 

「完成だ」

 

「形を守れェェェ!!」

 

零斗の叫びが厨房内にこだまする。桂は確かに寿司を握っていたはずなのに完成したのは何故か蕎麦だった。しかも何故か湯気がたっていた。

 

「コレもう寿司ですら無くなってんじゃねーか!!あんたやる気ねーだろ。完全にサイドメニュー狙いに言ってんじゃねぇか!!」

 

「文句を言う前にまず食べてみろ。同じ口が聞けるかな?」

 

「食べねーよ!!何一丁前な口聞いてんだよ!!」

 

寿司ではなく蕎麦を作った桂に零斗がツッコミを入れると桂は蕎麦を食べるように言ってくるので、零斗は額に青筋を浮かべながらツッコんだ。

 

「そうだぞヅラ。真面目に作りやがれ」

 

「ワシらだって今回はふざけずに真面目に作っとるんじゃからな」

 

そう言う銀時とノッブだが、2人が作っているのは寿司ではなくパフェと金平糖だった。

 

「何でアンタらも寿司とは関係の無いものを作ってんだよ!?」

 

「寿司屋にはサイドメニューがあるだろ?俺たちはそれ担当として作ったんだよ」

 

「サイドメニューの前にまず寿司を作れ!!」

 

鍵がパフェと金平糖を作った銀時とノッブに文句を言うと銀時がそう言うのでエミヤが至極真っ当なツッコミをする。

と、その時だった───

 

「玉子と海老が入ったわ!!」

 

カウンターにて客の対応をしていた暁が零斗たちに寿司の注文が入ったことを伝えた。

 

「どうするんですか!?今できてるのはかっぱ巻きとうさマロ、蕎麦、パフェ、金平糖しかなくてまともな寿司なんて出来てませんよ!?」

 

鍵は頭を抱えながら長谷川に訊いた。このままでは先程と同じようなかっぱ巻きがガンダーラまで続くようになってしまう。そんな最悪な展開を想像していたそのときだった。

 

「仕方ない。ここは私に任せてもらおうか『体は酢飯で出来ている。心はワサビで 血潮はネタ 幾度の調理場を超えて不敗 ただの一度の失敗も無く ただの一度の批評もなし 握り手はここに独り 調理場で包丁を鍛つ ならば我が生涯に意味は不要ず この体は無限の寿司で出来ている アンリミテッド・スシ・ワークス!!』」

 

エミヤは目を閉じながら詠唱を唱え始めながらシャリを握っていると、エミヤの周囲に大量の寿司ネタが浮かび、カッ!!と目を見開くのと同時に握り終えたシャリたちの上に次々と寿司ネタが乗っていき、大量の寿司が次々と出来てきた。

 

「何それぇぇぇぇぇ!?そんな裏技あるんなら最初から使えよ!!」

 

銀時はエミヤの思わぬ行動に全員が思ったことを代弁してツッコミをしてくれた。

 

「フッ、緊急事態だから仕方なくだ。時間に余裕があれば皆に完璧な握り方を教えるつもりだったのだがね」

 

「ドヤ顔かましてんじゃないわよこの見せかけ筋肉!!」

 

「おっと、心は硝子だぞ?」

 

ドヤ顔しながら言うエミヤに邪ンヌがツッコミを入れるとエミヤが苦笑しながら対応した。

 

「とりあえず味はエミヤが作ったものだから問題はないし出来たやつから流しますね」

 

零斗はエミヤが作った寿司からまず玉子と海老を皿に乗せてベルトコンベアに次々と流していった。

そしてエミヤが握った玉子と海老はベルトコンベアに乗って店のカウンターに流れてきた。

 

「先輩!お寿司が流れてきましたよ!!」

 

「そうだね。最初は一緒に食べよっか」

 

ベルトコンベアに乗って流れてくる寿司を見てテンションが上がっているのか、目を輝かせながら立香に声をかけるマシュを心の中で『クッソ、カッワイイイイイイイイイ!!』と叫びながらもそんな様子を顔に出さずに冷静に対応しながら、立香は海老と玉子の乗った皿を取った。

 

「お、美味しい!!美味しいです先輩!!」

 

「うん!今まで食べてきたどの寿司よりも美味しいね!!」

 

寿司を食べたマシュと立香は美味しそうな顔をしながらついそう言った。

 

「それじゃあ私もサーモンといくらを頼もうかな」

 

「じゃあ僕はホタテとマグロにしようかな」

 

2人の美味しそうな顔で立花とロマニもまた寿司を注文した。そしてそれをしているのは立香たちだけではなかった。

 

「中々いけるわねコレ」

 

「うまっ!!こんなうまい寿司なら幾らでも食えるじゃん!?」

 

「ほんとですの!なんですのこのウマさは!!」

 

「まるで寿司の革命だ!!」

 

朱鷺原紗雪、紗倉ひびき、邪神ちゃん、カズマも寿司を頼み美味しそうに食べていた。そして気づけば注文は殺到していた。

 

「・・・・・奇跡だ」

 

長谷川が零斗、明久、鍵と共に、厨房の中から店内の様子を確認してそう呟いた。

 

「奇跡が起こった」

 

そう呟くと長谷川は厨房内に戻り、エミヤ達にこう言った。

 

「作れェェェェ!!ドンドンエミヤの宝具で寿司を作りまくれェェェェ!!店の中にある食材を全て使えぇぇぇ!!」

 

長谷川の叫びに答えるように、エミヤは宝具を利用して寿司を作り、長谷川さんから教えてもらった作り方で零斗、鍵、明久は同じように寿司を作った。そして完成した寿司を銀時、邪ンヌ、くりむ、ノッブがベルトコンベアに乗せていった。

 

「スゴイのです!飛ぶように皿がさばけていくのです」

 

客達が寿司を次々と注文するせいか、雷、電、暁、響が店中をてんてこ舞いになりながら次々と皿を回収し──

 

「店の前も長蛇の列になってるよ!」

 

ダ・ヴィンチちゃんの言うとおり、店の前にもたくさんの客が並び、店は大いににぎわっていた。

 

「キタァァァァ!!これキタァァァ!!」

 

成功を確信した長谷川がそう叫んだときだった。

 

「長谷川さん!あまりの客足に材料が尽きかけてるわ!」

 

「何ィィ!!」

 

くりむが冷蔵庫の中を確認して長谷川に言った。凄まじい客足の前に、材料の在庫が尽きそうになっていたのだ。

長谷川はガツンと厨房の壁を叩きながら、悔しそうにこう言った。

 

「立身出世のこの絶好のチャンスに、俺って奴は……。どこまで俺はマダオなんだ!!」

 

そのときだった。

 

「行けよ」

 

長谷川に背を向けて次々と寿司をベルトコンベアに乗せている銀時がそう呟いてから、長谷川にこんな事を言い出した。

 

「長谷川さんはなんとしても材料をかき集めてこい。それまで俺達が、この場をもたせてみせる」

 

長谷川は銀時の言葉を聞いて、呆然とする。

 

「早く行けェェ!!」

 

そんな長谷川を、銀時は叱責する。長谷川は、グズッと涙を浮かべる。そして。

 

「頼んだぜ!!」

 

長谷川はそう言いながら、厨房どころか、店を出て行った。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

それからしばらく経った店内。先程の勢いは収まり、あるテーブルでは二人の男が注文した寿司を待っていた。

 

「トシ、なんだここは」

 

黒髪の鋭い目をした男にそう言った、精悍なゴリラみたいなこの男は、真選組局長・近藤勲だ。近藤は土方と共にこの回転寿司屋に客として来ていたのだ。

 

「回転寿司と聞いて来てみれば、回転しているのはカッパ巻きばかりではないか」

 

近藤がそう言った頃には、あらかた材料が尽きてしまい、長谷川が量産したカッパ巻きばかりがベルトコンベアを流れるようになっていた。

 

「隊士どもの話じゃ安くて、うまいと評判だったんだが、ガセだったかね」

 

と、土方はタバコを吸い始める。

 

「なんだあの店員は。なんで睨み合ってんだよ。つーかどっかで見たことがある気がするんだが」

 

客数が大分減って、店の中で堂々と掴み合いをしているエジソンとニコラ・テスラを土方が呆れた目で見ていた。

 と、そのとき。

 

「なんだ、あのドロドロに溶けたパフェ。なんで回転させてんだよ。冷やしとけよ」

 

土方と近藤の前を、ドロドロに溶けたパフェが横切り、土方は突っ込みを入れた。

 

「オイ、トシ、今度は蕎麦が流れてきたぞ」

 

今度は二人の見ている側で桂が作った蕎麦が『300円』と書いた紙と共に流れてくる。

 

「なんで蕎麦がカッパ巻きと一緒に回転してんだよ。しかも今度は温そうだし」

 

「300円だぞオイ、どーする?買っとくかトシ」

 

なぜか流れてくる温くなった蕎麦に突っ込みを入れる土方に、近藤は買うかどうか訊いていた。

 

「蕎麦なんかより、俺が頼んだカレイのエンガワはいつ来るんだよ」

 

土方がそう不満を漏らしたときだった。

カッパ巻きに紛れて、木製の縁側に乗ったカレーがベルトコンベアの上を流れてきた。カレーの前には『縁側のカレー』と書いた紙が貼ってあった。

近藤と土方がそれを呆然と見てるうちに、ベルトコンベアに流されて二人の前から離れていった。

 

「・・・・なんだ今の」

 

近藤が思わず声を漏らす。

 

「なんで寿司屋にカレーが回ってんだ」

 

と、土方がベルトコンベアに流されていた物に突っ込んだ。

 

「なんか、『縁側のカレー』って書いてなかった?・・・トシ、アレひょっとしてお前が頼んだ?」

 

近藤は土方にさっきの縁側に乗ったカレーが土方が注文した物じゃないかと思って土方に訊いた。

 

「いや違うだろ。俺が頼んだのはカレイの縁側だ。魚のひれの基部の肉の事だ」

 

と、土方が近藤に返す。

 

「いや、そうなんだが」

 

近藤が土方にそう言ったとき──。

またしても例の縁側に乗せられたカレーが流れてきた。今度は張り紙が『カレーが縁側に』に変わって。

 

「・・・・トシ、一周回るたびに書き直されて微妙に近寄ってきてるんだが・・・」

 

「いや、違う違う。俺のはカレイの縁側だからね」

 

今度も土方は縁側に乗ったカレーを手に取らないでそのままにした。縁側に乗ったカレーはそのまま一周して──『カレーの縁側』と張り紙がそう変えられて、またまた二人の前に姿を現した。

 

「オイ、無理矢理カレーの縁側におさまっちまったぞ。コレ完全にお前のだよ」

 

「カレーじゃねェ、カレイだっつってんだろ」

 

近藤の読み通り縁側に乗ったカレーは土方に向けて出された物だった。言うまでもなく、カレーではなくカレイの縁側を食べたい土方は手に取らない。そして、そのまま縁側に乗ったカレーはまた厨房に吸い込まれていく。

 

『カレー早くとれマヨネーズ野郎』

 

「誰がマヨネーズ野郎だコノヤロォォー!!」

 

張り紙に書かれていた暴言を見た土方は怒号を上げる。

 

「オイ、もう完全にメッセージになってるよ」

 

と、近藤。

 

「誰がとるか。なんで寿司屋でカレー食わなきゃいけねーんだ」

 

完全に機嫌を損ねた土方がそう呟いた。

 

「それより、俺の鯖はまだか。一向に見えんのだが」

 

近藤が土方にそう返したときだった。

サー○ルと女の子が合体したような謎の人物が、ベルトコンベアの上を流れてきた。その人物は大きな目で近藤と土方を見つめる。近藤は思わず半目になった。誰も回収しないまま、その謎の人物は、そのまま厨房に吸い込まれていく。

 

「・・・・オイ、アレサーバ○ちゃんじゃねーのか。ひょっとして近藤さんの?」

 

「違う、俺が頼んだのは鯖だ。サー○ルちゃんじゃねェ」

 

土方の推測を聞いた近藤だが、近藤はベルトコンベアから目をそむけながら土方に答える。

 

「いや・・・、でもメチャクチャこっち見てんだけど」

 

「違う、目ェ合わせんな」

 

近藤はそう言いながら、しつこく見てくるサー○ルちゃんから視線をそらす。

と、そのとき。

 

 ガガガガガ

 

「あっ!はさまった、サー○ルちゃんはさまった!」

 

「はさまったけどまだこっち見てる!!サー○ルちゃんこっち見てる!!」

 

厨房に続くトンネルの入り口に、サー○ルちゃんが詰まる。しかし、それでもサーバ○ちゃんは二人を凝視する。そして、サー○ルちゃんはズボッとトンネルの中に吸い込まれ、辺りにカッパ巻きを散乱させる。

 

「何なんだ、この店」

 

「オイ、もう帰ろうぜ。気持ちワリーよ」

 

その様子に土方は不快感を示し、近藤は顔を真っ青にして引いていた。

 

「ワケわかんね・・・・」

 

近藤と土方が席を立って店から出ようとしたときだった。なんと、今度はサーバ○ちゃんが両手に、カレーをふたつ持ちながらベルトコンベアを流れてきた!

 

「オイぃぃぃぃぃぃ!サーバ○ちゃんカレー持ってきた!!」

 

「両方、無理矢理受け取らせるつもりだァ!!」

 

近藤と土方は慌てて逃げ出そうとした。しかし。

 

「「ぎゃあああ!!」」

 

 イカ娘は二人を目掛けてカレーを投げつける。が、そのカレーは客としてやって来たアリス・マーガトロイドと霧雨魔理沙にかかってしまう。

 

「ちょっと!いきなり何するのよ!!」

 

「何するんだよ!!熱いじゃねぇかよ!!」

 

「なんで怒りを俺達に向けんのォォ!!理不尽にも程があるだろーが!!」

 

「違う!!誤解だキミタチ!!ぐああああ!!」

 

店内のカウンターの前で、大規模な乱闘が勃発し、客同士がバトルし合うわけのわからない展開になってしまった。

 

「乱闘が始まってしまいましたけど、どうしますか?」

 

零斗は、明久、鍵、邪ンヌ、ノッブ、くりむ、エミヤ、桂はいつの間にか合流した電、雷、暁、響、ダ・ヴィンチちゃんと共に厨房から乱闘の様子を見ながら銀時に訊いた。

 

「そうだなー」

 

銀時は少し悩んでからこう言った。

 

「よし、帰るぞ!!」

 

銀時の言葉を聞いた零斗達は、ハチマキを脱ぎ捨てて俺知らないと言わんばかりに、乱闘を続ける近藤達を残してそのまま帰ってしまった。

一方、食材をかき集めに行った長谷川はというと──

 

「うおおお!!」

 

荒れ狂う海の中、長谷川はラギアクルスと格闘していた。

 

「(待っていろみんな!!今すぐに行く!!)」

 

収拾不能に陥った銀時達が既に店から出て行った事を知らずに。

 

その後、近藤達の乱闘のせいで店内はメチャクチャになり、長谷川はクビになってしまったという。




アンケート取ってますので皆さん意見の方よろしくお願いします

ED『星が降るユメ』

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。