オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

39 / 48
遅くなりましたが『オーバーロード』第二期決定!!
嬉しすぎて涙出そう( ノД`)

え、言うの遅いって? 細かいことは良いんだよ!!



三十八話目 何もない日常 その3

 

 

ナザリック時刻 14:05

 

 

 

「・・・で、結局何が言いたいかと言うと。ちょっと詰め所を見てくると言いながら何で俺たちを置いて女の人と一緒に街に入って行くんですか? 何ですかナンパでもしたんですか? 」

 

エ・ランテルの街の一画でアインズよりお説教を受けるサイファー、しかしかなり語弊があるようなので、とりあえず修正しとかなくてはいけないと思い言葉を発した

 

「いや、アインズさん、それは誤解ですし違います。詰所に行ったらエンリちゃんが絡まれていたから手を貸してあげただけですよ。他に他意は全くないです」

 

「エンリ?・・・」

 

アインズはその名の人物を思い出そうと一瞬考え込むしぐさをしたが、すぐに思い出したらしい

 

「あっ、カルネ村のエンリ・エモットか、しばらく顔を見てないからすっかり忘れていたな。それで、彼女は一体何しに来たのか聞いてますか?」

 

「確か、村で取れた薬草の売買に移住者の確保に冒険者組合で何か話があると言ってましたね」

 

「冒険者組合? 何か村で問題でも起きたのか? いや、それならば報告が上がって来るはずだ、それともルプスレギナが見逃すほどレベルの高い者が・・・しかし・・まさか」

 

「いや、依頼じゃなくてお話だけって言ってたから村の危機とかではないと思いますよ」

 

変な思考の渦に飲み込まれていたアインズだったがサイファーの言葉で我に返り、それを確認したサイファーが続けて発言をする

 

「気になるんなら冒険者組合で聞いてきたらどうです。どうせ一番に向かうつもりだっだんでしょ」

 

「そうですね、考えても仕方がない。行くぞハムスケ」

 

「了解でござる殿。ささ、サイファー殿も行くでござるよ」

 

「はいよ」

 

恥ずかしい、情けないと何度も愚痴っていたアインズだったが、今では何の躊躇もなくハムスケに騎乗するようになり、この前などタクシーみたいで楽とまで言い始めたアインズに何とも言えない感情を覚えながらサイファーは後を追うようにして冒険者組合に向かうのであった

 

 

やがて冒険者組合に到着すると先ほどから話題のエンリの後姿と荷馬車が目視できたがアインズはハムスケに止まるよう命じた

 

「なんで止まるんですかアインズさん?」

 

「いや、念の為に彼女とは接触せず組合の職員から間接的に話の内容を聞いたほうがいと思いましてね。ハムスケ、裏口に回ってくれ」

 

「畏まったでござるよ殿!」

 

裏口に回ったのは良いがここから組合の中に入るのは二人とも初めての経験であり、特権階級だからと言って権力を振りかざし悪評が広まるのをさけるためこういったことは初めてであり、ちょっとドキドキしてしまった

 

裏口から入り最初に出会った職員に組合長の部屋に案内を頼むと、運が良い事に彼は部屋にいたようだ

 

「おお、モモン君! それにサイファー君まで、よく来てくれた!」

 

部屋の主である組合長アインザックが両手を広げ歓迎してくれたが、なぜかアインズは組合長から熱い抱擁をうけ、背中を親しげに叩いてからゆっくりと離れていき、次にサイファーに向かおうとしたが、とっさの機転で握手を求めるように手を差し出し抱擁を回避する

するとこちらの意図に気付いてくれたようで差し出した手をガシッとつかみ握手を交わす

 

「この頃君が来てくれなくて、寂しい限りだったよ。さあ、座ってくれたまえ。会合に参加するメンバーが集まるまで、ゆっくり話そうではないか」

 

久しぶりの友人を迎え入れたような表情で嬉しげにソファーを指さすのでアインズとサイファーはお互い向いあうように座るとアインザックはアインズの横に座った。

が、二人の距離は狭く、くっつき、息が詰まりそうな間隔だった

 

「モモン君も付き合いが長いんだ。気軽な口調で全然かまわないんだよ?」

 

そんな感じで気安くアインズに迫るアインザックを目の前で見ながらサイファーは背筋が凍り付くような考えが頭を駆け巡った

 

(男のくせに男のアインズさんにあんなに詰め寄って・・・まさか同性愛好癖ではないだろうな、いや、奥さんがいるらしいから両刀かもしれん)

 

一度でもそんな想像をしたら目の前にいる男が全く信用できなくなってきた。

アインズが遠ざかるようにお尻の位置をずらしたら露骨に残念そうな顔をし始めた(偏見)、ここまで考えて先ほどまでの組合長のセリフは少しねっとりとしていた気すらしてくる

 

まったくもって失礼な事を本気で考え、頭の中で例の兄貴のセリフを連発する組合長を想像しはじめる

そんな空想をしていたら知らぬ間に受付嬢が部屋に来ておりしどろもどろに良く分からない内容を話しており、アインズが組合長に言葉を掛けると組合長は監督不行き届きだったと言い、それに受付嬢が反発する

それをアインズが優しく諭すと受付嬢は踵を返し全力で走っていった

 

何だか知らないが仕事中は真面目に話を聞こうと改めてサイファーは心に誓った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック時刻 17:28

 

いつもは露店が騒がしいほど声を上げて客引きをしている中央広場だが、昼のピークがすぎ、夕暮れの時刻にさしかかっている今は昼ほどの活気はないが、酒やつまみ類を売る店はこれからが本番とばかりに商品を並べ始め、それを目当てに色々な職業の人間が集まり始める。そんな時間帯に一際目立つ人物が市場を練り歩いていた

 

「サイファー殿、この店で最後でござるか?」

 

背中に色々な食材や服装品、はては鉱石類の入った袋を背負いながらハムスケが質問してくる

 

「ああ、ここで酒類を購入して屋敷に持っていったら今日のお買い物は終わりだ」

 

「そうでござるか。なら、もうひと踏ん張りでござるな」

 

「そうだな・・・」

 

組合から東の巨人、西の蛇という、ハムスケに匹敵するほどの強敵の情報を入手したアインズは街で軽く挨拶回りをした後に急いでナザリックに帰還していき、残ったサイファーは実験やナザリック外のシモベ達に振る舞う為の食料品の購入と一人で歩き回りナザリックの敵対者の誘い出しという任務を一人でこなしていた

 

前者は欠伸が出るくらい簡単だか後者に関しては全く油断できない。なにしろ、敵対者とおぼしき者は世界級アイテムを最低一個は保有している事以外の情報が全くなく、保有戦力数、行動目的および思想、すべてが謎の集団である

 

 

「おー! サイファーじゃねえか。今日も買っててくれよ」

 

小難しい事を考えていたら、よく行く串肉店のオヤジから威勢よく声を掛けられたので店の前まで行くと、串肉の焼ける良い匂いが腹にこたえはじめる

 

「ん~、そうだな、腹も減ったし20本もらおうか」

 

「へい!ありがとよ。銀貨10枚だよ」

 

すまし顔で正規の金額以上を請求するオヤジにサイファーはくってかかった

 

「ざっけんなよクソオヤジ! 定価の倍以上じゃねえか!」

 

「今日は特別にアダマンタイト割り増し料金なんだよ!」

 

「さらにふざけるなよ! 他の店は頼んでもいないのに割り引いてくれるぞ」

 

「その差し引きぶん俺が貰ってやろうってんだよ! ナイスな考えだろう」

 

ニカっと歯を見せて笑うオヤジにさらに文句を言おうとしたがその前に袋に入った串肉が目の前に差し出された、もちろん注文した本数よりかなり多く串肉が入っていた

 

「ま、冗談はさておき、今日もお買い上げありがとうよ!」

 

「いつもながらこのオヤジはアダマンタイト級冒険者を何だと思っているのやら」

 

悪態をつきながら正規料金を支払い店を後にする。しばらく歩き、ふと後ろを振り返ると串肉のオヤジと目があってしまうが、向こうはそんなの関係ないとばかりに豪快に手を振っている

そんなオヤジに全く嫌な感情を抱くことなくサイファーは拠点へと向かっていった

 

 

.

 

 

.

 

 

.

 

 

 

ナザリック時刻 19:00

 

清潔感あふれる食堂のテーブル上に次々と料理が運ばれ夕食の準備が進められていき、メイド達は忙しなく動いているが全く急いでいるようには見ないがすごいところである

 

そんな様子を上座に座ってワインを呑みながらサイファーは眺めながら困り果てていた

 

「うっぷ、流石に夕食前に串肉一気喰いは無謀だったな。しかし、軽めに頼むって言ったのに何だこの量は・・・」

 

ざっと見ただけでテーブルにはバスケットに入った大盛りのパンにボール一杯のサラダ、鳥の丸焼きが一羽に果物の山、そして目の前にはスープの入った皿が一つ。明らかにサイファーの胃の許容範囲をオーバーするほどの量が並べられている

 

「もしもしフィースさんや、料理はこれで全部ですか?」

 

「いえ、食後に果実のケーキを3種類用意しておりますので、サイファー様のお好みのものをお運びいたします」

 

まだあった。というか、目の前の果実がデザートではないのか! かなりの回数ナザリックの高級料理を堪能してきたが今回は苦しい戦いになりそうだぜ

ああ、お母さんが何でごはん前につまみ食いしたらダメと言ったのかようやく理解できたよ。こういうことだったんだね(多分違う)

 

「では、用意もできたことだし、いただきます。」

 

覚悟を決めスプーンを手に取りスープをすくおうとしたその時食堂の扉が開きエルダーリッチが入室してきた

腕に青い腕章を付けていることから自分が召喚したB作であることがわかる

 

「悪魔王様。カルネ村に駐在しておりますワーカーどもより報告が上がってきました」

 

食事中に来たためメイド達の怒りの視線がB作に突き刺さり、それを感じたのか必要以上にメイド達から距離を取りながらこちらに向かってきた

 

「報告? 朝の書類には問題ないと書いてあった気がするが・・・まぁ、報告してくれ」

 

「は! ワーカーどもよりますとトブの森には東の巨人と西の蛇と呼ばれる外敵が存在し・・・」

 

「もういい。その事についてはアインズさんが直接動いてくれてるので何の問題もない。」

 

「おお、さすがは至高の御方であらせられる悪魔王サイファー様。感服いたします」

 

街で偶然知った情報なのだがB作は凄く感動して跪き、周りのメイドは当然ですって顔をしていた

しかし、何が何でも情報が上がってくるまで遅すぎる気がするが、仕方がないことだな

二体のエルダーリッチはカルネ村に在住してはいないし、何日かに一回アルシェに定期報告を聞きに行くくらいでしか村にはいないし、本来村の監視はルプスレギナの仕事だし、今回はポカをやらかしたみたいだが、アインズさんがキチンと教育してくれたはずだから俺からは何も言う事はないがな

 

「ま、キチンと危険の報告ができるだけましか。とりあえずワーカーどもには責務を果たすように厳命せよ。あと、今回は急いで戻ってもらうため転移のスクロールを使用する事を許可する」

 

「は!、お食事中に御時間いただきありがとうございました・・・では失礼いたします」

 

急に来たシモベを見送りながら大量の夕食を食べる事にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリック時刻 21:10

 

アインズの執務室にサイファーが向かうとアインズのほかにコキュートス、マーレの姿があり、デミウルゴスは何やら書類らしき紙を見ながらアインズと話していた

 

「おや、守護者三人揃って珍しいな? 何か問題でもあったのか?」

 

「い、いえ。アインズ様が男だけでお風呂に行こうと誘ってくれましたので、こうして集まったしだいです」

 

「え? アインズさん俺聞いてないんでけど?」

 

サイファーの言葉にアインズは口をぱかーんとあけ固まってしまったがすぐに落ち着きを取り戻し申し訳なさそうに話し始める

 

「すみません、俺の中ではサイファーさんは参加で決定だと勝手に思っていて声を掛けてませんでした。えっと、サイファーさんはこれからなにか予定はあります、なければ俺たちと風呂にでも行きませんか?」

 

「すんごく今更ですよね。まぁ暇だからここに来た訳だしOKですよ・・・で、デミウルゴスは何の確認をしているんだ」

 

「ああ、これは失礼をいたしましたサイファー様。いえ、アインズ様がお招きになるお客人の為の食事のメニューの確認です、サイファー様もご覧になりますか?」

 

そう言ってデミウルゴスはこちらに紙の書類を差し出してきたのでそれを受け取り内容を確認するが・・・ホント凄い食事内容だった

 

「・・・すんごいねこれ。あ、フォアグラはちょっと好き嫌いが分かれるから排除して肉料理をメインにしたほうが俺は嬉しいかな」

 

自分の嗜好を前面に出したが皆からは割と好評でメニューからフォアグラは削除され、さっぱりとしたデザートが追加され最終決定された

 

 

「各守護者よ。お前たちの風呂支度の方は終わっているな?」

 

「申し訳ありません。私とマーレは途中で一式を借りていこうと思っております」

 

「俺は一回部屋に帰ってメイドに風呂の準備をしてもらいますから、少し遅れると思います」

 

「そうか。コキュートスは・・・持ってきているか。ならば風呂場の前に集合しよう。インクリメント。もし誰かが来たなら部屋で待たせてくれ」

 

「畏まりました」

 

メイドの答えを聞いたアインズは立ち上がり自室を出ていき、サイファーも自室へと戻っていく

もっとも、この楽しい男だらけのお風呂もある意味女の子たちにより台無しにされるのであった・・・

 

 

 

 

 

 




何もない日常。別名、ある日のサイファーさんの一日


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。