オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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四十二話目 魔導国建国物語 ~序章~

 

ナザリック地下大墳墓では絶対的支配者であるアインズ・ウール・ゴウンの偉大なる計画が遂行中であり、近日中に帝国の皇帝を招くとあって少々慌ただしかった

ナザリックの知恵者二人は作戦中に想定外のことが起きても対処できるように高レベルのシモベを待機させ万全の準備を勧め、帝国の皇帝をナザリックに招待しに行った双子のダークエルフの守護者も無事に帰還しそれぞれの持ち場にて仕事をこなしている

一般メイドやプレアデス達も一般業務に加え作戦に使用する物資の運搬にいそしんでいた

まさに組織が一丸となって作戦の成功を目指していた

 

そんな慌ただし空気の中、第十階層玉座の間にてサイファーとアインズは二人だけで最後の詰めの確認をしていた

 

 

「良くぞ来られたバハルス帝国皇帝よ。私がアインズ・ウール・ゴウンだ」

 

玉座に深く腰掛け足を組みながら尊大に答えるアインズの姿を確認したサイファーはアインズ近づき声を掛ける

 

「う~ん。やっぱり『ナザリック地下大墳墓が主人』ってセリフはカットしないほうがよさそうですね」

 

「そうですか? 俺としては長いセリフは少しでもカットしたいんですけど・・・」

 

「気持ちは分かりますけど、やっぱりアインズさんはギルドのトップなんですからカットしないほうが支配者らしいですよ。はい、もう一度。」

 

あまり長いセリフは言いたくないアインズであったがギルド長として気持ちを入れ替え再び威厳に満ちた声を作り言葉を発する

 

「良くぞ来られたバハルス帝国皇帝よ。私がナザリック地下大墳墓が主人アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

訂正された箇所を修正しアインズは堂々と名乗りを上げた

 

「やっぱりそう言ったほうが貫禄と言うか威厳があって良いと思いますよ」

 

「お、そうですか。じゃ、メモに書いときますね」

 

その言葉を受けアインズはアイテムBoxよりメモ帳を取り出しセリフを書き足していき、サイファーはアインズの周りをウロウロしながら何やら思案していた

 

「ん? どうかしましたか?」

 

「あ、いや。やっぱり足は組まないほうが良いかなって。ほら、足を組んで座っていると態度が悪いって思われちゃうかもしれませんし」

 

「ああ、確かにそうかもしれませんね、・・・こんな感じでどうですか?」

 

「いや、足はくっつけないで少し開く感じで目線は相手を見下すようにして・・・グット! 素晴らしいですよ。」

 

サイファーの修正によりアインズは『カッコいい支配者の座り方』を覚えた。もっとも本当に素晴らしいかは分からないが守護者統括ならびにシモベ達全てはカッコいいと絶賛されること間違いないだろう

 

次にサイファーはメモを見ながらその他に気を付ける事をアインズに質問し始める

 

「じゃ、次。帝国の皇帝の名前は?」

 

王族や貴族の名前はどの世界でも長ったらしく言いにくいものが多く、言い間違いなどしたら赤っ恥もいいところであり、下手をすれば内外共に取り返しのつかないことになりかねない大事なことである

ちなみにサイファーは自分が目を掛けているはずのアルシェの名前を覚えきれていないのはここだけの秘密である

 

「それは散々練習しましたから楽勝ですよ。ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ!」

 

得意顔で答えをすらすらと噛まずに言い放つアインズ

 

「マジかよ。一発で答えやがった」

 

「ふ、もはや昨日までの私ではないのだよ」

 

サイファーおぢちゃん時間だよ♥

 

サイファーが次の予定を口にする前に右腕に付けている時計から甘えたよう猫なで声が聞こえてきた

 

「おっと、もうこんな時間か。アインズさん次は会談での装備品の調整の時間ですよ」

 

「もうそんな時間ですか。確か偵察の報告では明日の昼頃にはナザリックに来るんですよね」

 

椅子から立ち上がり身体を伸ばす動作を行っているがアンデッドである彼はそんな動作などしなくても良いのだがアインズの中に残っている人間としての習慣は今だ根強く生きているのだ

 

「そうですけど。まさか緊張しているんですか?」

 

「もちろんしています。いや、正確には皇帝との会談の後の守護者達との話し合いの方が憂鬱で・・・失敗してつるし上げられたらどうしよう」

 

どよーんとした空気がアインズから漂い始めるがサイファーは声を出して笑いながら慰め始める

 

「はっははは! そんな心配しなくてもあいつらがアインズさんの失敗を怒るはずないじゃないか。それにこの計画はアインズ様の考えられた計画ですよ。ミスなどありはしませんよ」

 

「ほう、アインズの計画か。なるほど俺と同じ名前の者が何か特別な計画を立てているようだな、それは頼もしい・・・ってアホか!」

 

どうやらアインズはサイファーの励ましでノリツッコミ出来るくらいまで回復したようで心なしか顔に笑みが戻ったように思われる

 

「ふぅ、思いがけず精神の安定化が働いてしまった・・・で、サイファーさんは当日はどこにいるんですか?いつも通り玉座の横で待機ですか?」

 

もしそうならいつも通りフォローしてもらえる、そう考えての発言だったがサイファーの口からは思いがけない言葉が飛び出した

 

「え? 俺は出席しませんよ」

 

「な、なんでですか!」

 

アインズはサイファーに食って掛かるが当の本人は軽く受け流すがどこかバツが悪そうに話し始める

 

「いや、正確には出席はするんだけど完全隠蔽を施して玉座の裏でスキルを使ってアインズさんを守るのが役目だって。ほら、俺って王都の一件もあって素顔が結構知れ渡っちゃったでしょう、だからデミウルゴスやアルベドが俺があまり表に出るのは感心しないって」

 

あまりのことに衝撃を受けたが、話を聞く限りあまり間違ってはいない

 

「だから一人で頑張ってください(笑)」

 

良い笑顔の友人に少しむっとしたアインズは無防備な頭にチョップを食らわせたが、当たると同時に自分の頭にも軽い痛みが走った

ダメージカウンター特化、まさかこんなじゃれ合いでも発動するとは恐れ入ったとアインズは一人思うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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会談が終わりアインズの自室には守護者達たちとセバスとサイファーの姿があった

その場にいる全員サイファーという例外を除けば全員がひれ伏しアインズの言葉を待っていた

アインズは肘を机に突いて手を組むと顔の半分をその後ろに隠す

 

このポーズは威厳を出すためのモノではなく冷静に周りの人物の顔色をうかがうためのものである

会談の準備期間に友人に冗談半分で言った『つるし上げ』という言葉が胸をえぐり、胃がチクチクと痛む気がする。

 

そんな気持ちでまずはナザリックの頭脳でもあるデミウルゴスとアルベドの様子をうかがうが怒りも呆れの雰囲気すらなく静かにひれ伏している

それがポーカーフェイスでない保証はないが万が一がある

次に横で待機しているサイファーに視線を移すが彼は何も問題がないとばかりに佇んでいた

 

(く、逃げたいが最早やるしかない。大丈夫だから、覚悟を決めろアインズ・ウール・ゴウン・・・フォローは任せますよサイファーさん)

 

そう決心すると不思議と胃の痛みは小さくなったが吐き気のようなものはまだ少し残っていた

帝国の皇帝が予定通りにくると聞いた時、対峙しなければならないアインズは当然デミウルゴスに『どうしたらいい?』と遠回しに聞いたら『想定道理ですのでアインズ様のお心のままに』などど返されてしまい、それでもアインズはサイファーに頼んで再びデミウルゴスに聞いてみたが『ふふふ、サイファー様もお人が悪い。ご心配なさらずとも手は回しておりますよ』と言われたらしい

 

その想定が分からないんだよ・・・などとは言えるはずもなく今日もアインズはナザリック地下大墳墓の絶対者として君臨する者の態度で帝国の皇帝であるジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスと会談を行ったのである

 

もっともアインズはなるようになれと半ば思考を放棄して臨んだため自分が正しい交渉が出来た気は全くなかった。

それでもアインズは帝国が自分の想定通りに動いたと皆に発言し続きを話そうとしたとき、シャルティアより『帝国など力で支配したほうがよいのではありんせんか?』と質問されドキリと心臓が音を立てた気がしていたらほかの皆もその通りだという雰囲気になり、なぜ主人がその選択肢を選んだか疑問に思い、アインズの考えをはき違え一回失敗をしているシャルティアやセバスは真剣な顔でアインズの言葉を聞き逃さないようにしていた

アインズはこの流れを払拭するため博打ではあるが彼女らの意見を否定する発言をすることを選んだ

 

「それは愚行だと私は考えているぞ、シャルティア」

 

間違っていてもサイファーと二人がかりで起動修正すれば何とかなるはずだそう思い口にしたが、口にしたら最後周りの守護者達は目を輝かせながら続きを聞きたがっていた

 

「・・・デミウルゴス」

 

「はっ!アインズ様のお考えが理解できない者たちの無能、お許しください」

 

「いや、デミウルゴス、無能は言いすぎでしょう」

 

「失礼いたしました。お許しください、サイファー様」

 

「いや、皆も気にするな」

 

サイファーが細かいフォローをしてくれているがアインズが聞きたいのはそういうことではない。

ダメもとで名を呼べば賢い彼が助け船を出してくれるはずだと求めたがやはりダメだった、だがまだチャンスは残っている

 

「・・・アルベド」

 

「アインズ様の優しきお心づかいに感涙の思いです。流石は我らの支配者、絶対なる王!」

 

「・・・・・うむ。ではサイファーさん」

 

賛辞より答えが欲しかった。最後の砦である妙に察しが良く、口が上手いような気がする友人にも一応声を掛けてみた

友人は何か考えるそぶりを見せたが重々しく口を開いた

 

「大義名分が必要だったんだよ」

 

「ソノヨウナモノガ必要ナノデショウカ?」

 

「俺は必要だと思うね。確かに俺たちなら力で支配するほうが簡単だけど、それでは敵を必要以上に作ってしまう。今回のことを誰かに説明しろ言われたら『静かに暮らしている俺たちのギルドに帝国がワーカーを送り込み、財宝を奪ったので怒りからそいつらを殺し、依頼主である帝国に抗議し謝罪を求めたら、国を作るので許してほしいと言ってきた』とね。帝国を協力者に置くのもその一環だと俺は考えるね」

 

「なるほどー。でもサイファー様、説明せよと言ってきた相手がそれで納得しますか」

 

「ん? 俺は何か嘘を言ったか? 相手がどう言うおうとこれが事実なんだよ」

 

サイファーさんも自分と同じことを考えていたのかとホッとし、周りからもサイファーの答えに納得がいったという声が上がり始め、帝国ではなくナザリックに皇帝を呼んだのは証拠を残さないためだとマーレが発言し感心の声が上がる。アインズは改めてデミウルゴスの叡智に驚き、自分の代わりに発言した友人の顔を見ると、見事に目が死んでいた

どうやら彼もいっぱいいっぱいだったようだ

 

「それに国を作ると言うことは保護対象が増るということでもある。廃墟となった国では、アインズ・ウール・ゴウンの名が泣いてしまうぞ。さて他に気がついた者はいるか?」

 

最後の気力を振り絞って友人は話を締めくくった。もちろんマーレのように何か気がついた者はいないかと言う意味だ

守護者達の目はデミウルゴスに集中し、ナザリック最高の知能を持つ彼ならば何かあるのではないかという考えからだろう。無論アインズとサイファーもその考えに賛同しデミウルゴスに視線を向ける

 

「くくくく・・・君たちは本当にアインズ様の計画がそれだけだと思っているのかね?」

 

予想外とも言えるデミウルゴスの言葉に二人は絶句するが、おなじく頭脳明晰なアルベドは笑い声をもらし、他の守護者達は驚いている

 

「皆、少しは考えるべきだだ。我らの主人にして、至高の御方々をまとめ役であったアインズ様がその程度の思考しかされていないはずがないだろ」

 

二人が絶句している間に守護者達は確かにと顔を見合わせ各々頷いている『何、ハードル上げてんだよ!」とアインズは心から叫ぶが、しかしその叫びを理解してくれる者は隣にいる友人しかおらず、話は進んでいく

 

「全くよ。サイファー様から分かりやすい答えだけを聞いて真意を悟ったつもりになるのは早計過ぎるわね。だからアインズ様もすぐには深い部分の答えをお聞かせくれないのよ?」

 

その言葉に他の守護者は悔しさを顔に浮かばせているが当のアインズはポーカーフェイスが保ちやすいからアンデッドで良かった~などと心の底から思い、サイファーは僅かに額に汗を浮かばせていた

 

「やれやれ、サイファー様もお人が悪い。・・・アインズ様私の仲間達にもアインズ様の真の狙いを告げておいたほうが良いのではないでしょうか。今後の方針にも係わって参りますので」

 

全員の視線がアインズに集まり、愚鈍なる自らに教えて欲しいという、懇願を込めた視線だった

アインズは一息、いや数度呼吸を繰り返し、友人であるサイファーに視線を向けると彼もアインズと同じく何かを悟った顔をしていた

ゆっくりと椅子から立ち上がり守護者全員に背を向けるとデミウルゴスに何時ものセリフを言い渡す

 

・・・即ち『デミウルゴス、説明してあげなさい』である

 

 

 

 

 




~悪魔王サイファーの影響~

『ナザリック地下大墳墓』


『ギルド長モモンガさんの場合』

共に転移したのが極端な問題児でも人間に厳しい悪でもないお人好しな悪魔だったためモモンガさんの胃はストレスで傷んでおらず生活にも余裕がみられる
しかし、お人好しの悪魔のためナザリックの守護者達からの期待は裏切れずモモンガ同様流されてはいるが悩みを共有できているため負担は軽くなっている
独りぼっちではないため人間性は余り薄れていないが、あくまで原作と比べるとでありアンデッドらしさもしっかりとある
あと指輪の力で飲食可能になったがサイファーが食事に誘わない限りは仕事を優先させている
サイファーの事は良い友人だと思っており、いつかは二人で未知を求め世界中を旅したいと思っている




「シャルティアの場合」

原作同様洗脳されモモンガに反旗を翻したがサイファーが与えた罰やエ・ランテルの屋敷での活躍などでモモンガから称賛される機会が増えているので原作ほど腐ってはいない
サイファーの事は至高の御方として尊敬しているがモモンガよりは魅力を感じないらしい




「コキュートスの場合」

あまりサイファーと関わっていないが訓練用に高レベルの傭兵モンスターを度々用意してもらっているのでご機嫌な様子である
サイファーのダメージカウンター特化の戦いに興味を持っており、いつか勝負を挑みたいと少なからず思っている




「アウラ、マーレの場合」

仕事の合間にサイファーがアウラのシモベの獣をモフりに来るので意外と交流があり、会うたびにお菓子などを差し入れしてもらっている
自らの創造主であるぶくぶく茶釜との思い出話を語ってくれるのでサイファーの事を至高の御方と思っているのと同時に気の許せる相手だと認識している
姉のアウラはどちらかというとサイファーよりモモンガのほうが好きなようである





「デミウルゴスの場合」

サイファーの策によりアルベドが冒険者として外で活動することになったので必然的にナザリックでの仕事量が増えたが本人はやりがいがあると喜んでいる
最近の悩みはサイファーの妃候補はどうしようかと思いをはせている
仕事量が増えたため牧場経営は原作よりやや効率重視に変更されている、それが牧場の羊たちにとって幸福か不幸かはわからない
サイファーの事はモモンガ程ではないが侮れない頭脳と柔軟性を持っていると思っている





「アルベドの場合」

最初は長いこと留守にしていたサイファーにあまり良い感情は抱いていなかったがカルネ村事件の後から徐々に打ち解けていき、今ではモモンガの次くらいには忠誠を誓っている
サイファーの策により冒険者として行動し原作以上にモモンガと触れ合う機会が増えご機嫌は最高潮である
もちろんサキュバスとしても最高潮でありモモンガを狙う欲望は原作の8割増しである
サイファーの『モモンガに呼ばれたから帰ってきた』との発言を歪んで受け取っており、他のギルメンは呼ばれても帰ってこなかった裏切者の敵だと認識しており、原作より過激な捜索メンバーをかき集めている
サイファーの事は至高の御方と忠義を誓っているがモモンガとの恋愛にどうにかして利用できないかと考えているらしい





「プレアデスの場合」

特に変わりはないがナーベラルは出番が無くなり、ルプスレギナはカルネ村の監視任務に赤ん坊の監視が追加され、エントマは声が変わらずにすんだ
他のメンバーの仕事量は原作と変わらずである





「一般メイドの場合」

原作より休日への抵抗感がなく、休みの日はギルメンが異常なほど作りこんだ複合施設で楽しく過ごしている
有給休暇なる制度は自分たちの忠誠を確かめる悪魔の誘惑だと思っており誰も使おうとは考えてはいない
サイファーの事は手のかかる優しい主人であると大多数が認識している
ちなみに絶対的支配者であるモモンガ派が37名で、優しいサイファー派が4人である


こんな感じで私は考えております。
この設定が生かされる日はいつか来たらいいなと思ておりますが、多分使いません


次回はナザリック外の変化を予定しております。

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