オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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夏が暑い・・・
投稿も遅れてしまってます
我が県は全国でも上位に入るほど暑い県なので
バテてます




四十五話目 魔導国建国物語 ~終~

 

王国との戦争が終了してから3日がたった

 

あまりにも拍子抜け過ぎるほどあっけなく王国との戦争が終わってしまった。

 

俺こと、悪魔王サイファーは戦争開催日の前日にカルネ村でドンパチして死体の処理をしていたため、戦争の見学が出来なかったので、アルベドが制作した報告書を読みふけっていた。

 

それにによると、戦争自体は超位魔法の『黒き豊穣への貢/イア・シュブニグラス』一発で王国軍七万くらいの兵士を屠り、魔法の追加効果で誕生した子羊さんたちによる蹂躙で王国軍の被害は10万人を超えるほどの大活躍、帝国軍の軍人さんは拍手喝采で喜んでくれたようだ

 

ユグドラシルでも人気の高い超位魔法だけあって帝国の軍人さんたちもニッコリだったのだろう

 

しかし、そんなどこの誰とも知らない赤の他人が何十万人も死んだという報告書を読んでもサイファーの心には、まったく響かず罪悪感すら湧いてこない

 

むしろ、なんで敵を倒して罪悪感を感じなくてはならないのだろうか?という感じである

 

王国軍は『アインズ・ウール・ゴウン』の敵なのだ。叩き潰し、蹂躙し、殲滅し、ドロップアイテムを回収するのは当たり前のことであり、むしろ、『黒き豊穣への貢/イア・シュブニグラス』の追加効果のユグドラシル記録を遥かに超えた数である五体も召喚したことが重要であり、自分もその場にいたかったと言う願望が湧きだしてくる

そんな偉大な記録を出したアインズと話しをしたかった

 

 

・・・しかし・・・

 

 

「なぁ、アルベド。アインズさん戦争から帰って来てから何か元気がないんだけど、なんか知んない?」

 

そう、元気がないのだ、期間限定ガチャをコンプする前にガチャが終了したときの様なもの悲しさというか、欲しかったものがもうちょっとのとこで手に入らなかったような、そんな元気のなさだ

 

「・・・やはりサイファー様から見てもそう見えるのですね」

 

「ああ、長年一緒にいた経験から言うと、そこまで深いものではないと思うんだが、少し気になってね」

 

「そうですか。・・・ああ!!サイファー様ですら分かるほどお元気を無くされておられるのですね!! これはナザリックの一大事だわ!! ああ、アインズ様! 気付いていながら何もできない私めを何なりと処罰してください!」

 

「うん、ちょっと落ち着こうねアルベド、それと・・・ちょっと俺の事ディスってるよね?」

 

サイファーの言葉など聞こえていないのか、何やら怪しい妄想を口に出しながら自身の体を抱きしめながらクネクネし始めた

 

流石にこれはまずいと思い、ワザとらしいほど咳払いをすると、やっと元のアルベドに戻ったのか僅かな微笑を浮かべこちらに目線を合わせてくれた

 

「一緒に戦場に行ったマーレには話しは聞いたのか?」

 

「はい、マーレの話しでは『黒き豊穣への貢/イア・シュブニグラス』で生贄の羊が五体出てきたことに大変お喜びになられ、帝国の兵にも喝采をお求めになられたほどです」

 

「キャラ崩壊するほど上機嫌じゃないですか! 」

 

「その後、羊に乗って戦場に赴かれ、時間停止魔法を使用したあと陣営に帰って来てからお元気を無くされているようです」

 

アインズが元気がないことを思い出したのか、言葉の最後の辺は気分が沈んでいるように聞こえる

 

「う~ん・・・・分からん。何が不満だったんだろう・・・仕方ない、直接聞いてくるか」

 

「お、お待ちくださいサイファー様。流石にそれは失礼ではないでしょうか」

 

「そう言ってもなぁ、直接聞いたほうが早いし、遠回しに聞くのって苦手なんだよ」

 

「でしたら私もご・・・」

 

「御一緒には行けないなぁ」

 

「なぜでございましょう!?」

 

「いや、やっぱ、こういうことは男同士の方が良いと思うんだよ。それに・・・・」

 

ワザとらしく言葉をためると、アルベドも黙って言葉の続きを待つ

 

「アルベドにはアインズさんが元気になった後に最高の笑顔で出迎えてほしいからさ」

 

ここには記さないがアルベドは狂喜乱舞して喜んでくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・と、いう訳で。なんで元気ないの? お兄さんにちょっと話してみなさいよ」

 

「いきなり来たかとも思えばそんな事ですか? いや、心配してくれていたことは嬉しいんですけど、俺のほうが年上でしたよね?」

 

アルベドと別れた後、何時ものようにアインズの執務室に訪れたサイファーは何の言い回しもせず、ズバッと本題を切り出したがアインズは特別気分を害した様子はなかった

 

「せいぜい数か月程度の事なのによく覚えていましたね。いや、それよりも元気がない訳を話しなさいよ、言いたくないけど、アインズさんが元気がない事はナザリック全域に広まっているんですからね」

 

「隠し通していたのに、なぜばれた!?」

 

「いや、今もそうなんですけど、頬杖つきながらため息ばかりついているのに、なぜバレていないと思ったんですか」

 

指摘されギョッとしたアインズは慌てて姿勢をただしたが、最早言い訳できる状態ではないらしい

 

「・・・はぁー。大したことは無いんですけど、この前の王国との戦争でガゼフ・ストロノーフを手に入れられなかった事がちょっとショックだっただけですよ」

 

「ガゼフ・ストロノーフ? ・・・ああ! 王国戦士長で王国最強の男。やっぱりあの戦争にも出張って来てたんだ。手に入れられなかって、なに、ナザリックに勧誘でもしたの?」

 

「ええ。カルネ村での一件以来、立場の違いこそありましたが俺はある種、彼に対して憧れに似た好感を抱いていました。だからこそ、彼を引き入れたかったんですが・・・」

 

そこまで言ってアインズは再び大きなため息をついたが先ほどまでの元気がない様子は薄れ、少し晴れやかな感じになっていた

 

「ふぅ~サイファーさんに愚痴ったら何か少しだけ元気が出てきた気がします。」

 

「おう、アインズが納得したんなら俺はもう何も言わないよ」

 

「あ~あ。やっぱり交渉ごとに関してはサイファーさんに丸投げしたほうがうまくいくかもしれませんね」

 

「え? いきなり何言ってんの、俺がそんな重大なこと出来るわけないじゃん」

 

「え? だってウルベルトさんやタブラさんが『敵対グループに交渉に行かせるんならサイファーが適任だな』ってよく言ってましたよ」

 

アインズのいきなりの交渉丸投げ宣言に面食らったサイファーは慌てて反論をするがアインズは首を傾げるばかりである

 

「・・・ああ、交渉(生贄)ね・・・あれは酷い事件だった・・」

 

不思議がるアインズにサイファーはゆっくりとだが当時の二人の交渉術に対して語り始めた

 

まず最初に獲物のグループを発見いたします。次にタブラ・スマラグディナが製作した親書(極悪)を悪魔王サイファーが丸腰で届けます。親書(極悪)を見た獲物グループは怒り狂い丸腰のサイファーに襲いかかるます。

当然ダメージカウンター特化のサイファーは攻撃を反射させ一人、多い時は三人くらい戦闘不能に追い込みます。。その様子を陰から見ていたウルベルト・アレイン・オードルが『平和の使者にいきなり攻撃するとは見下げ果てたやつですね』と超位魔法で辺り一帯を吹き飛ばします

戦意を喪失させてから身ぐるみ剥ぐまでがワンセット

 

「・・・という感じの交渉です。だからアインズさんはそんな事に俺を使わないでください」

 

「・・・ええ、そんな事だったとは思いもよりませんでしたよ。仕方がない、交渉事はデミウルゴスに一任するとしよう。さて、サイファーさんと話して元気も出てきたことだし、来週のエ・ランテル譲渡についてアルベドと話してくるかな」

 

一回大きく背伸びをした後、アインズは部屋から出るために扉を開けると、何時から其処にいたのか分からないがとても深い笑顔のアルベドが佇んでいた

 

そんなアルベドと目が合ってしまったアインズは驚愕と恐怖にかられ凄まじいスピードで扉を閉めた

 

「え? ええ~・・・な、何だったんだあれは、もしや、アルベドからの何かしらのメッセージなのか? いや、あんな顔したアルベドなんて見たことがないぞ、考えるんだ俺、守護者統括の裏を読むんだ」

 

思考の渦に飲まれかかっていると後ろから間の抜けた友の声が聞こえてくる

 

「ああ、そういえば、アルベドにアインズさんを最高の笑顔で出迎えてくれって頼んでたから楽しみにしているといいよ」

 

とりあえずこの気の利いた友人の頭にツッコミ代わりのチョップを頭に叩き込んだが、同時に自分の頭部にも衝撃が走った

こんな些細なダメージでも反射するとは・・・ダメージカウンター特化恐るべし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王国よりエ・ランテルがアインズ・ウール・ゴウン譲渡され、この街が魔導国の初めて街になった日のことだ

サイファーはアバター変化の装備品でアインズの姿に変装し豪華な輿に揺られながら街の中心地へと向かっていた

 

第一の門が開かれるのと同時に鐘の音が響き渡る。

 

何時もなら何時もは鳴らない鐘の音が聞こえてきたら興奮を隠そうとはしない彼だが、今日ばかりは辺りを警戒し汎用性の高いカウンタースキルを発動し、いざという時に備えていた

 

「第一の門に敵影無しか・・・アインズさん、いや、モモンとの接触ポイントまでもう少しか・・・」

 

結局、戦争の間に他のプレイヤーからの接触も監視の目も無く不気味なほどうまく事が進んでいる

 

アインズや階層守護者達からの情報を整理すれば他のプレイヤーがこの世界にいたことは間違いないはずなのに中々成果が上げられない

 

いかなる手段かは分からないが、こちらを監視している相手の出方を見るために街の譲渡に合わせワザと不用意に姿をさらし相手の出方を伺っている

 

この作戦はアインズが囮になると聞かなかったが守護者達とサイファーの説得によりモモン役で行動する事となった

 

代わりにサイファーが囮になると言った時、アインズは友が囮になる事を反対したが思ったより守護者達から反対の声が上がらなかったのは内緒だぞ

 

「第二の門か・・・さぁ、茶番が始まるぞ。『アインズ・ウール・ゴウン』の敵対者達よ、この隙を見逃すなよ」

 

第二の門を抜け、大通りを進んでいくが何時も混雑している道には人っ子一人おらず、まるで死者の街かと思うくらい静寂に包まれていた

 

しかし大通りに面した家屋から人の気配と視線を感じるため、全員が逃げ出したわけではないようだ

 

これからこの街を支配していかなくてはならないのに、えらく嫌われている様子なのはサイファーでも感じられる

 

「おかしいな、ここまで恐れられているなんて予想外だぞ。当初の予定と違いエルダーリッチ二十体にデス・ナイト五十体と控えめなはずなのに」

 

アインズ達と比べても人間らしいサイファーであったが今だにモンスターの強さに現地住民とプレイヤーの認識の違いにズレがあった

 

「とうさんを返せ!」

 

そんな事を考えていると子供の幼く甲高い声が静かな街に響き渡り、サイファーは茶番が始まったことに気付き別の事を考えていた頭を切り替え、辺りを一層警戒し始める

 

さあ、どこからくる?

 

「とうさんを返せ!ばけもの!」

 

予定通り子供の手からは石が投げられたが、思ったより距離が伸びず、近くまで石が飛んできただけだった、サイファーに命中するには少し力が足りなかったようだ

 

茶番のコマである子供の母親と思われる女が子供も抱きしめ、自分の身体で覆い隠そうとする

 

たしかこの母親には何の魔法も掛けてはいないはずである。それなのに自分の命を捨ててでも子供を守ろうとする母親の姿にサイファーは感動を覚えてしまう

 

(ああ、なんて素晴らしいのだろう。あの母子は冒険者サイファーとして少し手助けをしてやろう)

 

そう決意し茶番を眺めているとアルベドと母子の前に大剣が突き刺さり、ズンと大地が揺れた。どうやら英雄様が母子を助けるために現れたようだ

 

ゆっくりと漆黒の鎧を身に纏った男が大通りに現れ、地面に突き刺さった大剣を無造作に引き抜き、戦闘態勢となったモモンがアルベドと対峙した

 

「子供が石を投げた程度で乱暴だな。嫁の貰い手がないぞ」

 

「アインズ様にお嫁に行くので御心配なく・・・ ゴホン! アインズ様に無礼を働いたものに子供も大人も関係ありません。全て死罪となるのです」

 

「それは俺が許さない、と言ったらどうする?」

 

「この地を統べる王への反逆と見做し、死罪を言い渡します」

 

「そうか。ならば致し方ない。しかし、この俺の命が容易く取れるとは思うなよ? ここが死に場所と思い掛かってこい」

 

モモンが大剣を器用に振るい戦闘態勢に入る、その姿は大胆かつ迫力に溢れるものであった

 

それに対するようにアルベドも武器を構えるがその表情はかなり緩んでいた

どうやら近くでモモンのカッコ良さを見ていたのが原因だろう

じりじりと距離を詰め始めるアルベド

見ようによっては攻撃に最適な間合いを達人的な動きで詰めているようにも見えるが・・・なぜかサイファーには獲物ににじり寄る獣にしか見えなかった

アルベドの異常に気が付いたのかモモンも予定とは違って半歩ほど後退してしまった

 

あ、これあかんやつや

 

急いで輿から飛び降り、アルベドの肩を後ろから掴んだ

 

「アインズ様!」

 

そのままアルベドの耳に口を寄せ打ち合わせ通りにお願いしますと囁くと、一瞬ハッとした顔になったがすぐに誰もが見惚れるような笑みを湛えると台本通りのセリフをしゃべってくれた

 

その後は何の問題も無く話しが進み、アルベドがモモンに配下に加わる様に促し、モモンは最初は懐疑的な態度であったが街の人々の安全と生命を守るため、自らの旅の使命を一時中断し手を結ぶことを了承した

 

この結果、エ・ランテルは周辺国家が想像もできなかったほど平和的に統治されていったのだ

 

 

・・・もっとも、この茶番じみたマッチポンプに至高の御方と呼ばれる二人も思わず苦笑いしたとか、ないとか。

 

 


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