オーバーロード~悪魔王の帰還~   作:hi・mazin

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ちょっと手直し。

あ、続きは出来るだけ早くしたい(笑)


四十六話目 魔導国でのお仕事 その1

 

 

この地で暮らし始め、朝から晩まで支配者ロールを強いられる現実に、アインズは一人心労をためていた

 

 

(苦痛だ、せめて気が休まる時間が欲しい・・・)

 

 

今日も朝早くからメイド達にされるがままにお着替えをしてもらいながらアインズはこの状況の打破する策を考えている

 

そもそも、服を女性に着替えさせてもらうなど、アンデッドであっても羞恥の感情が身を焦がし、何度も精神の抑制が働くほどである

しかし情報を集めてみれば、国の権力者はこの程度の行為は当然とばかりに受けていた。

 

最初聞いた時はバカらしいと吐き捨てた、しかし、支配者の振る舞いを学ぶためジルクニフを盗撮してみると彼もそれが当たり前のように生活しており、内心ショックを受けた

何日もそれとなく拒否しようと思ったが、メイド達の楽しそうな様子を見ているうちに、ついにアインズは屈してしまった

 

そんなアインズが派手なローブをなびかせて向かった先は執務室だ。

 

アインズがドアの前に立つとメイドさんが素早く前に出て扉を開けてくれる。

至高の御方と呼ばれる者の頂点に立つアインズは自分でドアを開けたりはしないのだ

 

この自動的手動ドアはメイドさん達の標準技能であり、誰もが誇らしげにしているため、最早アインズは気にしないこととして心に決めていた

 

ナザリック程豪華ではないが執務室の内装はいい感じのインテリアに囲まれ気品に満ちている感じがする

もっとも、インテリアを用意したメイドさん達から言えばまだ地味すぎるらしい

 

そんな執務室でアインズが最初にやる作業は以外にも仕事ではなく、口唇蟲への餌やりである

 

「今日も良い色艶だな・・・ほ~らヌルヌル君、ご飯だよ~」

 

日差しよけ用の葉っぱをめくり近くに置いてある皿からキャベツを手に取り口唇蟲に近づけるとすごい勢いで食いつき、その様子を確認したアインズはさらにキャベツをもう二枚与える

 

「最初は気持ち悪かったが、こうやって世話をしていると愛着が湧いてくるな」

 

この口唇蟲はもちろんただのペットではなく、外出時に変声するために使う大切な蟲である

使い方は簡単で、蟲を口の中に入れると蟲が喉に張り付き自分の声が口唇蟲に登録されている声に変化するのである

もっとも、アインズが骸骨のアンデッドだからできる事であり、生身でやるとかなり辛いらしい

 

『うゔぁぁがぁぶ!! ヌチョヌチョのヌルヌルがのどに張り付くうっぅぅぅう!! ゔぇ!ゲブォ・・・はぁ、はぁ、はぁ。・・・この口唇蟲って微妙に甘いんだね・・・ 』

以上が友人の感想である

 

その時の様子を思い出し、小さく笑ってしまった

 

この短くも楽しい時間が終われば仕事の時間だ。もっとも、日を跨ぐような仕事は残ってはおらず机の上には書類はない

これはアインズが仕事を早く終わらしたわけではなく、彼の仕事は大きな決定をすることであり、細かな雑務は全て部下が済ましサイファーが統括しているため、彼の仕事は極端に少なくなる

 

(それが辛いんだけどな。責任の重要度こそが仕事の辛さだと初めて分かったよ・・・肉体的な疲労より精神的な疲労、いわゆるプレッシャーの方が辛いって・・・)

 

そんなかんだ考え事をしていたらアルベドと部下のエルダーリッチ達が入室してきた。天気の話を軽く振ると、

 

「お気になさるなら天候を変えてしまいましょうか?」

 

とアルベドが笑顔で答えてくる。ただの世間話でこの反応では、さすがのアインズもゲンナリである

 

気を取り直して仕事の話に戻れば、分厚い書類が幾つも置かれていく。その一つを手に取りパラパラ~っと内容を確認するが、単なる会社員だったアインズには国家規模の経営策など困難極まる

故にアインズは出来る者に仕事を任せるべき、という考えのもと、書類に判を押していく

誤解がないように言っておくが、アインズは書類にちゃんと目を通してから判を押している

自分の決定に対して知りませんでした、と逃げないために上に立つものとしての責務をまっとうしようとしている

 

だから分からないことや理解しにくい内容を発見すると遠回しだが一応アルベドに教えてもらっている

もっともアルベドはアインズは理解しているうえであえて聞いていると認識しているようである

 

「さて、ではいつものやつをやろう。今日の提案分はこれだ」

 

小難しい話しを切り上げ、アインズは用意してあった紙を引き出しの中から取りだした

これこそ、アインズがひそかに楽しみにしている案件で、名付けて『魔道国これからどうしましょう?意見を支配者が聞きます』という企画である

もちろん大真面目な企画であり、ナザリックのシモベ達から様々な意見を募集しさらなる発展につなげるものである

アインズ本人も自分の意見が本当に正しく評価されるのかを確かめるため、匿名で参加している

こうでもしないとアインズの意見は絶対のものとされ、例え間違っていても最高の評価と共に実行されてしまう恐れがある

 

まず最初の投書には『人のために学校を創って有益な人材を育成しましょう』とあったが知識の拡散防止のためあえなく却下された

最低限の知識を持って家畜のように支配されるべしとアルベドは言う

 

その意見には概ね賛成だが、発案者のユリのために何か代案を用意してあげたほうが良いかなと心の片隅で思いながら本命である自分の意見書を読み上げた

(ユニフォームを作りナザリックの団結力を強めよう)である

 

内心自信満々に読み上げアルベドの顔を伺うと彼女は苦虫を噛み潰したような苦い顔で呆れていた

 

「・・・度を越して下等な発想ですね」

 

アインズは内心『ごめんなさい』と謝りながらまったく困ったものだという態度をとる

 

「困ったものですね。このような愚劣極まりない提案をして、アインズ様の貴重なお時間を無駄にさせるとは。聞き取り調査を行い、何らかの刑に処すべきでしょう」

 

「そ! その必要はない! 良いかアルベド! 決してそのようなことはするな!」

 

アルベドの提案に心の中であわわわと震えながらも犯人捜はやめろと口に出すと、途端にアルベドは微笑を浮かべた

 

「分かっておりますアインズ様。・・・まったく、サイファー様にも困ったものですね」

 

は? どうしてここで友人の名が出るか全く理解できないアインズは一瞬頭の中が真っ白になったが、持ち前の精神安定のおかげで意識を取り戻し、アルベドになぜそのような考えに至ったか聞こうとしたとき扉をノックする音が部屋に響いた

 

メイドのフィースが確認に向かったが漏れて聞こえてくる声で誰が来たのかは見当がついていたが、あえて何も言わなかった

だってそれが王としての態度だから・・・らしい

 

「アインズ様。アウラ様、マーレ様です」

 

分かってたよ。と言いたかったが素直に入室許可を出すと、すぐに双子の闇妖精が入ってきた。何か厄介事かと思ったが

二人は満面の笑みを浮かべていたので取り越し苦労だったようだ

しかしそのせいで、なぜアインズの案がサイファー案だとアルベドが勘違いしたのか聞くタイミングを逃してしまった

 

その後もアウラとアルベドはアインズの膝に座わるのに固執しあっていた。

アウラが膝の上に座りたがるのは子供だから分かる。おそらくこの年齢の子は親の温もりを必要としているのだろう、だから大人であるアインズに無意識に求めてしまうのだろう

友人であるサイファーも彼女たちの階層に遊びに行くときはお菓子などを持参していると言っていた

 

(となると、やはり情操教育などをしていく必要があるな。闇妖精の国とかないかな? ん、そう言えばナザリックには外から来たエルフがいるじゃない)

 

「アウラよ。一つ聞きたいのだが、第六階層に預けている三人のエルフはどうした?」

 

「ナザリックに土足で踏み入れながら、サイファー様のお慈悲によって生かされている者たちですか?」

 

ワーカー達を呼び寄せたときに、あまりにも劣悪な扱いを人間により受けていたため、サイファーの『異形種狩り絶対殺す精神』により助けられ、エルフの国に無事に帰れるようになるために治療を受けていたはずである

 

今まですっかり忘れていたが、まだ国に返したという話を聞かないためエルフ式の情操教育の方法を聞いてみたいと思ったのだ

 

「はい。一応、あたしたちの階層の森の一画にドリアード達と働いております」

 

「働いている?」

 

「はい、なんか、あいつら、王も国も最悪な状況なんで何でもしますから置いてくださいってサイファー様に嘆願したらしくて、それを聞き入れたサイファー様の命令でエルフ式の薬草畑や野菜を作ってるらしいです」

 

(なるほど、サイファーさんがたまに持ってくる変な味の野菜はそこで作られていたのか。しかし、エルフ式か、ちょっぴり興味があるな、こんどエルフ式の教育を聞きに行くついでに見学でもしていくかな)

 

「ところで、アインズ様達は何をされているのですか?」

 

「ん、ああ。ナザリック内の者たちから集めたこの国をより良くするためのアイディアを検討している。そうだ、二人とも何かアイディアがあれば言ってみないか? 何でもいいぞ」

 

アインズの言葉に二人がう~んと悩んでいるとアルベドが先ほどのアインズの案を二人に渡し話し始めた

 

「二人とも難しく考える必要はないわよ。こんな案でも良いのだから」

 

「ん、どれどれ・・・うげぇ、流石にこんな酷い案はまずいでしょう」

 

「う、うん。そ、それはちょっと・・・」

 

(うう、やめてくれ。その攻撃は俺に効く)

 

しかし傷つきながらもアインズの脳に電撃が走る。今なら何でこの案がサイファーの案だと誤解されたのかが聞けるのではないかと

 

「そう言えばアルベド。なぜ、それがサイファーさんのものだと分かったのだ?」

 

ナチュラルにサイファーへと責任転換したがアインズはあえてその考えを忘却の彼方へ追いやった

アインズの言葉でこの案がサイファーのものだと知った双子はなぜか納得がいったという顔になりアルベドに視線を向け始めた

そのアルベドは話しても良いものかという顔でこちらをを見ていたため、アインズは意味深にうなずいてあげた

 

「簡単な話です。いくらアインズ様がどの様な案でも良いと言われましても、ナザリックの最高責任者であるアインズ様の貴重な御時間を下らない案で潰すわけにはまいりません。そうなるとシモベ達は委縮し意見を思いついてもそれが下らないものだと判断されればその命を持って償わなければならないと考え意見を出すことに躊躇するでしょう」

 

(いや、そんな事はないぞ。お前たちの考えすぎだって!)

 

「おそらくサイファー様はその様な状況は芳しくないと考え、この様なくだらない案を出され皆を少しでも安心させようとお考えになったのでしょ。最初はアインズ様の自作自演だとも考えましたが、アインズ様が必死に犯人捜しを止めたことは、サイファー様の御考えを理解したうえで止められたのでしょう」

 

「さ、さすがは、アルベド。彼の考えを読むとは私も驚いたぞ(恐ろしいほどの勘違い!しかし、下手な言い訳が出来ない状況になってしまった )」

 

「そうなんだ。本当に何でもいいんだ」

 

「う、うん、僕たち難しく考えすぎてたみたいだねお姉ちゃん」

 

アウラとマーレはいい感じに騙されて、先ほどの難しい顔から幾分も柔らかい顔になり考え始めている

そんな二人を見ていたアインズはこれはもう言い訳できねぇと考え、二人にはしっかりと口止めをしようと決心し、アウラは笑顔で自分の考えた国を良くする方法を口にした

 

「はい! 男の子は女の子の格好を、女の子は男の子の格好をすべきだと思います」

 

「ぶくぶく茶釜ぁぁぁぁ~~!!」

 

あまりにもぶっ飛んだ意見が飛び出したため、思わず声を荒げてしまった、脳内ではピンクのスライムが可愛い声でてへぺろしている姿がありありと浮かんでいた

 

「俺を呼んだか!? 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」

 

何を勘違いしたのか呼んでもいないのにサイファーが扉を開けて現れた・・・・・が

 

「いえ、呼んでおりません」

 

「ぶくぶく茶釜様だって言ってたじゃん」

 

「あ、えっと、お呼びじゃないです」

 

三人の正論にorzのポーズで倒れこむサイファーの姿を見ていたアインズに今日一番の笑いをもたらしたのである

 


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