カメラマンの名前は
アニメ17話のカメラマンを担当された方のお名前をお借りしました。
バックダンサーに選ばれたのは卯月ちゃん、凛ちゃん、未央ちゃんの三人。
残りのメンバーは11人。
特に遅れてきたメンバーが抜擢されたことに不満を持っているのはみくちゃん。
同じようにお姉ちゃんっ子の莉嘉ちゃんも、多少は煮え切らない思いを抱いているように思える。
莉嘉ちゃんは、早くお姉ちゃんのようになりたいって気持ちが強いから仕方ないか。
特にフォローが必要なのはこの二人と当たりをつける。
他の子たちはまだ自分に自信が無かったりしているようなので大丈夫なはず。
特に年長者の美波さんは、こういう世界だということを理解してくれているだろう。
彼女は大学生ということもあり、精神的に大人だ。
まずは莉嘉ちゃんといつも一緒にいるみりあちゃんも追加して、この三人からにしよう。
上着からスマホを取り出して自分のプロデューサーと連絡を取る。
彼女たちが参加できそうな仕事があったか確認を取らないと。
何か撮影の仕事とかあれば、宣伝写真も経験しているし大丈夫だと思う。
「これから大変になりそう」
「武内さん。今、お時間大丈夫でしょうか?」
「久遠さん、ですか? 少しになりますが大丈夫です」
「では、失礼します」
CPをフォローをするとはいえ、正直どこまで干渉していいかは自分にもわかっていない。
鬱屈とした思考を片隅に追いやりつつ、勧められたソファに腰掛ける。
プロジェクトが本格始動したこともあり、忙しなく働いている武内さんの時間を奪うのは本意ではない。
早速本題に入らせてもらいましょう。
「お聞きしていると思いますが、雑誌の撮影の協力を前川さん、城ヶ崎さん、赤城さんの三人にお願いしたいのですが」
「……久遠さんの担当からもOKを頂いていますが、理由をお聞きしてもいいでしょうか」
「美嘉のバックダンサーに、遅れてきた卯月ちゃんたち三人が選ばれたと聞いています。一番そのことに不満を抱いているのが、前川さんと莉嘉ちゃん・・・・・・城ヶ崎さんだと思いました。なので、それを少しでも発散させることができればと思ったのですが、どうでしょう? あの娘たちが望んでいるステージに立たせて上げられないのは、残念ではありますけど……」
武内さんがよく思案する際に出てしまう癖。
首に手を当てて困った顔をするのがでてしまった。
「久遠さんの考えは理解しました。しかし、引き受けてしまった場合また他のメンバーに影響が出ないかが……」
「……そうですね。でも、今は一度あの娘たちのガス抜きを優先したほうが良いかと思いまして」
そのときはまたそのときに考えればいい。
行き当たりばったりな思考ではあるが、妙案が思いつかないのも事実なのだ。
「……わかりました。では、三人には私のほうから伝えておきます。これから今日の予定を伝えに行くところでしたので」
「では、二人で行きましょう。今回はこちらのわがままなのですから」
「わかりました」
許可だけとって自分から伝えようと思っていたが、仕事内容に関してはやはり自分から伝えたいものなのだろう。
プロデューサーとしての使命感や責任感といったものか。
「みなさん、いらっしゃいますね?」
「あっ、プロデューサーさん。おはようございます」
卯月ちゃんの挨拶を皮切りに全員が武内さんに挨拶をする。
その一つ一つに律儀に返しているあたり、彼の人柄がうかがえる。
個人的には、ひとまとめに返してもいいと思うけれど。
「先日、島村さん、渋谷さん、本田さんの三人が城ヶ崎さんのバックダンサーに選ばれました。三人にはこれから城ヶ崎さんのもとでダンスレッスンを行っていただきます。それと、前川さん、城ヶ崎さん、赤城さんには久遠さんのほうからお仕事をいただきました」
「本当かにゃ!」
「アタシもステージに立てるの!?」
「お仕事ってどんなお仕事なのかなぁ?」
興奮している三人を視界に入れつつ、他のメンバーに目を移す。
選ばれなかったことを残念に思っているのは美波さんな気がする。
最年長であるが故の焦り、なのかもしれない。
しかし、彼女は卯月ちゃんたち三人と一緒にCPでは一番早くCDデビューする。
そこでアーニャちゃんと一緒に、武内さんが用意してくれた煌びやかな衣装と舞台で何も憂うことなくデビューできる。
至れり尽くせりの状態は不安になるかもしれないけれど、彼女はユニットであり一人ではない。
その点を踏まえると、今回は目を瞑らせてもらおう。
他のメンバーを見渡しても、残念に感じてはいてもそれほどショックは受けていないように見受けられる。
追々デビューまでの様子をみつつ、適宜フォローしていくという最初の方針は変更しなくても良さそうだ。
「雑誌の撮影だよ、みりあちゃん。ステージに立たせて上げられないのは残念だけど、お願いしてもいいかな?」
「え~! アタシ、三人みたいに踊れないの~?」
「ごめん、莉嘉ちゃん。またバックダンサーが必要になったら、CPのみんなを優先するから許してね」
「莉嘉ちゃん! 雑誌の撮影も立派なアイドルのお仕事にゃ! お仕事のえり好みはみくが許さないにゃ」
「そうだよ、莉嘉ちゃん。また今度ステージに立てるように頑張ろう?」
二人に窘められた莉嘉ちゃんは渋々といった形で頷いてくれた。
本当はバックダンサーの仕事があればよかったんだけど、生憎頼めるようなものが無かった。
「他のみんなもごめんね。今回は莉嘉ちゃんたち三人を選んじゃったけど、今度はみんなにもお願いするから」
「杏には印税生活できる仕事以外はまわさないでね~」
「じゃあ、そういう仕事が回ってきたら僕の代わりに杏ちゃんにお願いするね」
「え? それは遠慮したいな~」
いつもの杏ちゃんの調子に、メンバー全員が苦笑を浮かべる。
彼女のようにオンオフができて、ぶれない子がいると場の雰囲気が暗くならなくて助かる。
「では、みなさん。デビューまであと少しですが、それぞれできることを頑張っていきましょう」
――はいっ
先ほどとは打って変わり、全員が気合の入った表情をしている。
この様子だと、もう大丈夫だと思う。
あとは武内さんに任せるとして、さっそく三人と一緒にお仕事に行きましょうか。
「じゃあ、早速だけど前川さん、莉嘉ちゃん、みりあちゃん。移動しよっか」
「はいにゃっ! それとみくのことはみくでいいにゃ、久遠ちゃん」
「そう? なら、みくちゃんってこれから呼ばせてもらうよ。莉嘉ちゃんは大丈夫だけど、みりあちゃんもみりあちゃんでいいかな?」
「うんっ! これからよろしくね、久遠くん!」
「ねぇねぇ久遠兄。雑誌の撮影ってどんな雑誌? お姉ちゃんみたいなセクシーな服着れる?」
「今日は美城を特集にしたアイドル雑誌だよ。服装は素を出したほうがいいから、今のままでも大丈夫だと思う。まあ、何か言われたら衣装を借りる方向で」
「そっかぁ……お姉ちゃんみたいな、セクシーな衣装着たかったなぁ~」
「それは今後に期待、だね。美嘉と一緒の仕事ができれば、そういうのも着れると思うけど」
むすーっと膨れっ面になってしまった莉嘉ちゃんを宥める。
一年後には美嘉と一緒に仕事ができるし、デビューしてからは目まぐるしくこの娘たちの日常は回っていく。
それまでの間は苦しいかもしれないけれど、我慢してもらうしかない。
「まあ、今は気持ちを切り替えて目の前の仕事を楽しんでみよう?」
「莉嘉ちゃん、千里の道も一歩からにゃ!」
「頑張ろう、莉嘉ちゃん」
「……うんっ。アタシがカリスマJCだってこと、この格好でもわからせちゃうんだから☆」
「その意気があればすぐにOKもらえると思うよ」
いつものギャルピースができるぐらいに、莉嘉ちゃんは持ち直してくれた。
この感じなら本当にすぐOKをもらえるだろう。
今日撮影する場所は、奇しくも以前CPが宣伝写真を撮影したスタジオと同じだ。
一度来ているところだから、変にスタジオに呑まれることもないだろう。
さて、まずはカメラマンさんたち関係者各位に挨拶に行かないと。
担当してくれるカメラマンは利根さん。
オールバックで眼鏡をかけた40代の男性だ。
何度か撮影をしてくれたこともあるので、自分も気負う必要が無くてありがたい。
「やぁ、久遠くん。久しぶりだね」
「利根さん、お久しぶりです。本日はよろしくお願いいたします。さぁ、みんなも……」
――よろしくお願いします!
「こちらこそよろしく……元気な子達を連れてきたね」
「その件はありがとうございました。すみません、いきなり無茶を言ってしまって」
「いやいや、いいんだ。他のアイドルの頼みなら突っ返しているところだが……君が今度はどんな原石を見つけたのか、私たちも興味があったんだ」
意味ありげに眼鏡を押し上げつつ、鋭い視線を三人に向ける。
仕事人なところは嬉しいが、かっちこっちに固まっている莉嘉ちゃんたちはかわいそうだ。
「利根さん。みんな固まってるので、少し視線をやわらげてくれると嬉しいんですが。あと、この娘たちを見つけてきたのは武内プロデューサーです。僕はあとから唾をつけたにすぎませんよ」
「ああ、すまんね。私の悪い癖だな。しかし、私の目からみても彼女たちは……光るな」
「そうですね。ここにいる三人に限らず、CPのみんなは新しい時代を作ってくれると信じています」
「新しい時代、か。君が言うと本当に来そうな気がしてくるから不思議なものだ」
フッと笑ったのも一瞬で、利根さんの顔が瞬時に仕事用に切り替わる。
「さて、あまりしゃべっていては押してしまうから始めようか」
「はい。じゃあ、みんな衣装はそのままでいいけど、メイクとか済ませようか」
スタッフさんが何も言ってこなかったので、このままの服装で失礼させてもらおう。
一緒にメイクアップアーティストさんにお世話になる。
みんなもとがいいから、軽くメイクを施すだけですごく見栄えが良くなる。
そういえば、こちらの世界の多くの人は顔が整っていると思う。
それが創作の世界が原因なのかはわからないが、髪色は元日本人としては考えられないぐらい奇抜な色もある。
今も日本人だが鏡に映る自分の髪色は真っ白。
この髪を見ても「綺麗な髪ですね」と言ってくるあたり、やはりどこかずれていると思う。
いや、感覚がずれているのはこの世界ではたった一人、自分だけなのかもしれない。
「お疲れ様でした。メイク終わりました」
「ありがとうございました」
担当してくれた女性にお礼を言いつつ立ち上がる。
他のみんなは女の子ということもあってか、自分より先に終わっている人はいなかった。
それなら申し訳ないけれど、一人用の撮影を終えてしまおう。
「利根さん。お願いしてもいいですか」
「おぉ、久遠くん。では、始めよう」
「はい」
カメラを向けられたとしても、変に意識せず自然体で――いつも心がけていること。
自分を撮ってくれている人もプロのカメラマン。今回にいたっては利根さんだ。
この瞬間、という一コマで確実にシャッターを押してくれる。
だから、こちらも特に意識することも無くさまざまなポーズをとることができる。
十数枚ほど撮ったところでOKをもらう。
終わりのほうはメイクが終わった三人もみてくれていたようだし、雰囲気は伝わったと思う。
あとは四人で軽く撮影してから終わりだ。
雑誌の中で新人アイドルの特集を組むようであれば、三人だけの撮影もしてもらおうか。
あっても面白いと思うけれど、そういった事情は上の人たちに任せよう。
待っていたみくちゃんたちを手招きでこちらに呼ぶ。
両目を輝かせた年少組二人が、笑顔で走りながら片腕に一人ずつ抱きついてくる。
右腕にみりあちゃん、左腕に莉嘉ちゃんの構図。
少し遅れて歩いてきたみくちゃんも、莉嘉ちゃんの後ろで腰に手を当てながら苦笑を浮かべている。
しょうがないなぁと言った慈愛の笑みは、まさしく二人のお姉ちゃん役そのものだった。
そんな三人の様子に自然と笑みがこぼれた。
タイミングを見計らったようなシャッター音がスタジオに響く。
どこかその音が大きく感じられたのは気のせいではないだろう。
「ふむ、いい画だったよ。今日のは、これでいいかもしれないな」
「え? もしかして、もう終わっちゃった?」
「え? ホントに?」
「まさか、一発OKにゃ?」
「う~ん、そのまさかかもしれないね」
全員で送られてきたデータを確認する。
自分で見ても、明らかに一人で撮ったときよりも数倍いい画がそこにはあった。
本当は何枚も撮影してOKをもらうようなものだけれど、こういう日があっても悪くはないか。
しかし、経験を積んでもらうという意味では首をひねる結果に終わってしまった。
なので、利根さんにお願いして三人バージョンも十枚ほど撮影していただいた。
後日発売の雑誌の表紙を飾ったのは、やはりというか四人で撮った最初の一枚になった。
見出しは「美城プロ特集! あの久遠を困らせる新人アイドル現る!?」と書かれていた。
急遽、中の記事に新人アイドル特集をねじ込んだらしい。三人での写真もそこに数枚載せられている。
CP全員が大々的にデビューした際には、また全員でお願いしますと言われていた。
美嘉は「妹の雑誌デビュー!」と二冊購入し、みりあちゃんの父親にいたっては保存用・観賞用・布教用の三冊を購入したそうだ。
みりあちゃんが発売後に恥ずかしそうに教えてくれた。
懸念だった二人――特にみくちゃん――についても、いい具合にガス抜きができたようで攻撃的な態度を向けることはなくなった。
しかし、CPの先行デビューはnew generations(NG)の三人とLOVE LAIKA(LL)の二人が先だ。
デビュー順によって、あのストライキ騒動につながるようであれば、また何かしらフォローが必要になってくるかもしれない。
しかし、当初の目的としては及第点をつけられる結果に終わったと思う。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でした~」
レッスンを担当してくれたトレーナーさんにお礼を言い、退室する。
シャワーを借りて時間を確認したところ正午過ぎ。
今日は卯月ちゃんたちの初ステージ。
正午ちょうどから物販などの催しは行われているようだが、ライブ自体はリハの関係もあいまって夕方から。
今から出ても十分に間に合う。
先日、今西部長に当日はお邪魔することを伝えると、関係者のモニター室から様子を観るか尋ねられたが、丁重にお断りした。
今日は一人の観客としてライブを楽しませてもらいましょう。
交通機関を乗り継いで目的地に向かう。
プロデューサーから会場まで車を回そうか提案されたが、完全な私事なので断っておいた。
仕事とプライベートはわけないといけないと思う。それに、彼にも何かとやることがあるので申し訳ない。
以前の雑誌の際に無茶な頼みにも応えてくれたし、こんな時ぐらいは自分の時間に使って欲しい。
本当に自分にはもったいないプロデューサーだと思う。また何か御礼でもしないといけない。
「はい。問題ないです。今日のライブ楽しんでいってくださいね」
「ありがとうございます」
持ち物検査をしてくれたスタッフに頭を下げてから会場入りする。
ごった返している物販スペースは避けて通り、早々にチケットに書かれた自分の席を探す。
このチケットは仕事を回してくれた謝礼として、武内さんから頂いた。
彼からもらったものなので、おそらくはCPのみんなと同じかもしくは近いスペースのチケットなのだろう。
声をかけるかどうかはあとで決めるとして、まずは腰を落ち着けることにしよう。
ライブがはじまったら、きっと自分も周りの熱気に当てられてしまうだろうから。
スマホを取り出し、出演者の川島さんたち全員に「会場で応援しています。頑張ってください」とメッセージを送る。
時間的に見てくれるかどうかは微妙だけれど……
自分が初めてステージに立ったときは、直前に応援メッセージが届いたときはそれだけで嬉しかった。
ベテランの彼女たちが同じかどうかはわからないけれど、不快に思われることはないはずだ。
スマホが震えてメッセージを受信する。
美嘉から一言「まっかせなさい!」と、返事があった。
あと少ししたら開演なのに、この時間でも返してくるあたりが美嘉らしい。
二列前には予想通りCPのみんなも座っているようだし、会場も満員御礼と言うにふさわしいほど多くの来場者がいる。
まわりの方の迷惑にならないようにスマホの電源は切っておこう。
人がたくさんいるにもかかわらず、嵐の前の静けさのような静寂が会場を包んでいる。
しかし、それも照明が暗くなり、"お願いシンデレラ"の前奏が流れることによって破られる。
演出としてスクリーンに時計の針が映し出され、同時に舞台の幕が上がる。
ステージにメインの五人が現れたことによって、会場の温度が上がったかのような感覚を抱く。
まず一曲目を歌い上げた五人はまゆちゃん一人を残し、舞台袖に一旦はける。
このあとのプログラムでは、まゆちゃんが持ち歌を披露して川島さんが引き継いだあと、件の美嘉のステージになるはずだ。
まゆちゃんが持ち歌の"エブリデイドリーム"を抜群の安定感で歌い上げる。
歌詞のような恋をするかはわからないけれど、まゆちゃんに愛されている彼女のプロデューサーにはいろいろな意味で頑張ってほしい。
彼の友達が胃薬にならないことを切に祈る。
そんなまゆちゃんも、観客に片手を振りながら舞台袖に戻っていった。
それと入れ替わりに川島さんが舞台に上がり、"Angel Breeze"を歌い始める。
川島さんが曲調にぶつぶつ言っていた時期があったが、歌い続けると愛着がわくようで今では自慢の持ち曲だ。
その思い入れがある曲を歌い終えると、観客たちから割れんばかりの歓声が沸いた。
会場はこれでもかというぐらいに暖まってきている。
こんな場面での登場は、新人では緊張でやられてしまいそうな印象が持てる。
今、あの三人は何をしているだろう。
茜ちゃんと美穂ちゃんに掛け声のことでも教わっただろうか。
見えない舞台裏のことを考えても仕方の無いことだが、心配なものは心配だ。
一応は可愛い後輩の晴れ舞台なわけだし……
あれこれと考えているうちに"TOKIMEKIエスカレート"のイントロが流れ始めた。
美嘉がステージに上がると同時に歓声が会場を包み込み、あっと思う暇も無く三人が舞台に飛び出してくる。
自分の思いなど杞憂だったようで三人は見事に着地し、美嘉にあわせてダンスを踊り始める。
自然とサイリウムを握る両手によし! と力が入った。
そこからは本当にステージを楽しんでいたのだろう。
目立ったミスも無く、笑顔でステージを終えることに成功した。
初舞台がこんな大舞台になったにもかかわらず、踊りきった彼女たちの胆力を賞賛したい。
「最っ高ー!」
美嘉にマイクを向けられて答えた三人の心の叫び。
本当の笑顔というのは、こういうものを言うのだろう。
こんな逸材を見つけ出してくる武内さんは、やはり凄腕のプロデューサーなのだと再認識する。
「たまには城から出て、星を見上げるのも悪くない……か」
確かに、同じ舞台の上や城からでは見えない輝きがそこにはあった。
そこから熱せられた空気が引くはずも無かった。
美穂ちゃん、茜ちゃんとバトンを渡していき、最後に五人揃って一曲を歌うことでプログラムはすべて終えられた。
余韻に浸る観客たちがいる中、足早に移動するCPのメンバーを視界の端にとらえながら、ステージに目を移す。
「……いい笑顔だったね」
武内さんの言葉を借りて、肩の力を抜く。
原作を知っているとはいえ、いつどこでそのレールが道を外れるかはわからない。
自分でも知らず知らずのうちに、身体に力が入ってしまうのは仕方の無いことだと思う。
今は無事に、彼女たちが一歩を踏み出せたことをかみ締めたい。
これで原作で言えば三つ目の物語が終わったことになる。
次は彼女たちのPR動画の撮影だが、おそらく自分がかかわることはないだろう。
何かが起こるのはストライキのときか、はたまたNGとLLのライブのときか。
異分子である自分は、どれだけ彼女たちに接していいのだろうか。
「本当に悩み事は尽きないですね」
呟いた声には疲労の色が混じっていた。
それはライブを楽しんだ、というだけではなさそうだった。