もっとシリアス濃いめで書こうと思ったらこうなってた。オレは悪くない。この指が悪いんだ。
「ぜぁぁぁあ!!」
裂帛の気合いと共に放たれた刺突は、狙いを寸分も違わず、爪を弾かれよろけたのグリフォン喉を穿つ。
それにより一瞬グリフォンが硬直し、直後青い光を放って無数のポリゴン片へと散っていく。
「お、レベルアップ」
リザルトの音楽と共に、目の前にレベルアップの文字が浮かび上がる。
「はいはい
あとでやるのも面倒だし、どうせ割り振るステも決まっているから、さっさとステ振りを終わらせて、手に持った槍も鞘に納めて背中に仕舞う。
「………もうこんな時間か」
ウインドウを開いているついでに時刻を確認すれば、すでに20時を回った時間となっていた。
「ふむ」
そこでオレは思考を回す。
どうしようか………
①腹も減ったし帰るか。
②マッピングたのちいよぉぉお!!
③ひゃっはぁ!
④現実は非情である。死ぬ。
…………疲れてんのかな、オレ。
よし帰ろう。帰って寝よう。
そう英断したオレは、そっとウインドウを閉じて帰路に着くのだった。
◆◆◆◆◆◆
誰か………助けて……………僕はまだ…――――
「……………それで? 今回は何時間潜ってたのかな?」
「…………えっと」
「んー?」
「……デス」
「聞こえないなぁ? なんだってぇ?」
「……62時間、デス」
助けて………誰かこの空気からオレを助けてよぉ!
「こんのぉ、おばかぁ!」
「のゎぁぁぁあ!! 待って! メイスで頭はダメだって! や、やめ、やめろぉ!」
「ここは圏内だから平気よ! 逃げるな!」
「逃げるわ! だ、誰か助けてー! このバーサクスミスを止めてぇ!」
「誰が
ドタバタギャイギャイと、狭くはないが広くもない店内を、一組の男女が駆け回る。
とても微笑ましい光景である。
片や迷宮帰りの疲労困憊、片やメイスを振り回す鍛冶屋の店長という構図を除けば、だ。
これは死ぬ。圏内だけど精神的に死ぬ。
だから助けを求めているのだが、さっきからこの部屋にいるもう一人の人物はさっきからただ腹を抱えて笑い転げているだけである。
「笑ってんじゃねぇぞアスナァァア! キリトにあること無いこと吹き込んでやろうかぁ!? あぁん!?」
「構わないわ。副団長権限で揉み消すもの」
「汚い! さすがアスナ汚い!」
「………そう、そんな事言うの…………リズー、実はリューってば12階層攻略の時にねぇー」
「やめろぉぉぉお! オレが悪かったから! 止めろください死んでしまいます!」
振り回されるメイスを避けながら目の前の美少女……………意地の悪いケツ名器士団(♂)の副団長に両手を会わせ懇願する。
と、そこで唐突に、メイスの猛攻が止まる。
何事かと思って後ろを振り替えれば、フリフリの赤いエプロンを着けたピンク髪にそばかすの少女が肩で息をしていた。
「どした、リズ」
「……………別に」
「ほらほら、困ったことがあったらこのフリューゲルさんに行ってみなさい? ンー?」
「いちいち腹立つわねぇ………」
失敬な。こうして親切にもお悩み相談を受けようと思っているのに。
「はぁ、まあいいわ。あんたがウザいのは今更だし。ほら、さっさと槍寄越しなさい」
「ほい」
背中に背負った黒い槍を装備から外し、リズへと手渡す。
「相変わらず軽い槍ねぇ」
「そら、敏捷メインにステ振ったら軽いわな」
オレの愛槍を見たリズが呟き、軽く振るう。
「それじゃ、オレの『ぽんぽん丸』を任せたぜ!」
「なん………ぽ、ぽんぽん?」
愛槍の名前を呼ぶと、何故かリズが固まる。ついでに隣にいたアスナは再び笑いだす。
やっぱり後で鼠にあること無いこと吹き込んでおこう。
「なんだよ可愛いだろ!? 『ぽんぽん丸』!」
「いや、あんたのネーミングセンスが相変わらず過ぎて」
「ほほう、相変わらず素晴らしいネーミングセンスとな。ふははは、そう誉めるでない」
「はぁ……あんたに
「だっせぇ名前だな! ドイツ語で『黒い射手』とか中二病かよ!」
「それをすぐに訳せるあんたは重症ね………メンテだけでいいの?」
「おう、頼む」
頷くと、リズはその槍を持って奥へと引っ込んでしまう。
「んで、アスナよぉ」
「うわこっち来た」
「ナチュラルにそれやられるとオレでも傷つくよ!?」
「で、なに?」
「こないだキリトが小学生位の女の子と歩いてるのを見かけた」
「……どこで!?」
おお、食い付いた食い付いた。
「47層のお花畑。アレは間違いなくデーt……」
バタン! と音がしたかと思うと、目の前にアスナの姿はなく、一陣の風がオレの横を吹き抜けて行った。
合掌。
「リュー、終わったよー……って、アスナは?」
「キリトが犠牲となったのだ」
「あんたねぇ………」
槍をこちらに投げ渡したリズが腰に手を当ててため息を吐く。
「ん、さんきゅ。おお………流石だな、曇り一つ無い」
「ふふん、そうでしょうとも」
「ああ、流石だぽんぽん丸!」
「予想は着いてたけど腹立つ!」
殴りかかってくるリズの拳をヒラリと躱す。
遅い遅い。こんなもん、キリトとのPvPに比べたら止まって見えるわ。
「はぁ………で、あんたこのあとは?」
「迷宮区に突撃訪問?」
「あ?」
「飯食って寝ますですマム!」
「全く。なら、そうね………あたしん家来なさい。料理作って上げる」
「……………毒殺?」
「あたしをなんだと思ってるのよあんたは………最近料理スキルも取ったの。れ、練習に付き合ってよね」
「はいはいツンデレツンデレ」
「………っ!」
「いっだぁ!? 痛くないけど足の小指は反則だと思うんです!」
「うっさいわよ!」
「なして怒ってるん?」
「ふん!」
なぜだ。からかっただけじゃないか。解せぬ。
むう、女心は複雑ね。
……………何か今、アルゴが『これだからフー坊は童貞なんだ』って言ってる幻覚が見えた。
ど、どどど童貞ちゃうわ! あと今童貞関係無いだろぉ!
「まあ、食えるんなら何でもいいわ。行く」
「ん」
リズは頷くと、看板を「close」に設定して戸締まりをする。
彼女が外に出るのを待って、オレも外に出る。
「はー、真っ暗ねぇ」
「もう10時越えてるからなぁ。早くお家帰らなきゃ。補導されちゃう」
「はいはい」
鍛冶場からリズの家に向かう間も、一応武器は装備しておく。
ゲームに閉じ込められるという以上事態にも関わらず、こんな時間帯はどこかがとち狂ったDQNどもが跳梁跋扈する時間帯だからな。
「さぁて、リズベットさんのゲテモノ料理楽しみだなひゃっほい!」
「ゲテモノ言うなし!」
「げふぉ! み、見事なレバーブローで…………がふっ」
これがオレの、フリューゲル/
こんなクソみたいにふざけた世界だからこそ、オレは楽しく生きていこう。
やりたいことを、やりたいように、笑顔を絶やさずに生きていこう。
なぁ、アキ姉、オレ今日も頑張れたよ。
今日も―――ちゃんと
「で、食材は?」
「えっとね……《スカベンジトードの肉》? と《肉食蜂の蜂蜜》と《マンドラ人参》、《爆発タマネギ》、《ジャガイモ》があるわ」
…………………………。
「やっぱりゲテモノじゃないかぁ! て言うかジャガイモはもう少し頑張れよぉ!」
好評のようなら多分連載します。
けど、今抱えてる連載があるから、やるなら気が向いたときにこっそり続きを投下するはず。