赤鬼転生記~異世界召喚・呼び出された赤鬼は聖剣と魔剣を持っていない~   作:コントラス

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遅くなって申し訳ないです!


第四十六鬼

 ズドン!

 

 サテナの放った貫通矢【スピンアロー】がミノタウロスの左胸、人間であれば心臓があるその位置を、拳大の穴を開けて貫いた。

 宏壱が横薙ぎの大斧を屈んで躱した直後である、その瞬間を狙ってのことだった。

 

 赤黒く、獣臭い血を地面にボタボタと溢しながらミノタウロスは膝を突き、前屈みに倒れる。

 地面に接した瞬間、炭が砕けて灰を散らすように、ミノタウロスの身体は粒子に変わった。残ったのはミノタウロスのドロップアイテムである、《ミノタウロスの角》ひとつと、拳大の“魔石”だけだ。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、っ⋯⋯ふぅ」

 

 

 少し曲げた両膝に手を突いて荒く、浅く繰り返していた呼吸を整えるように、深く息を吐く宏壱。額から吹き出る大粒の汗を、左腕の袖で乱雑に拭う。

 頬や首、露出した腕に細かな切り傷が多数。白いスラックスにはじわりと赤い色が滲んでいる。

 

 

「しぶとかったな」

 

 

 屈んでいた姿勢からぐぐっと腰を伸ばし、同じように荒く呼吸を繰り返していたサテナに振り返って笑う。

 笑顔には若干の疲れが見える。

 

 

「普通なら、逃げる、相手よっ。一目散に、ねっ」

 

 

 いまだ呼吸を整えられないサテナは、区切りながら言葉を返す。

 SP欠乏。酷いスタミナ切れのようなもので、SPを使いすぎれば、一時的な酸素不足のようなものに陥る。

 宏壱がミノタウロスの攻撃を引き付け、サテナが後方からの援護で攻撃直後のミノタウロスにダメージを与える。

 それを数十回と繰り返した結果、宏壱は細やかな傷を身体中に作り、サテナはSPを大きく消費した。所持する矢も残り僅かである。

 

 

「⋯⋯だな。そもそも連戦するには適していない場所だ。レベリングにちょうど良いと思ったんだが、あてが外れた」

 

 

 サテナの言葉に頷く。

 こうも消費が激しい戦闘は、数度と繰り返すことはできない。ましてや、ミノタウロスは一体だけではない。メアを頼りに、一体ずつ戦ったとしても、一体に時間が掛かりすぎる。

 それでは、効率的とはとても言えない。

 

 そう宏壱は考えた。だからこそ、決断は早く、迅速に行われる。

 

 

「退くぞ。ここでのレベリングは危険すぎる。もっと良い場所を探そう」

 

 

 異論は出ず、サテナは手早く周囲の状況を見て落とした物がないか確認する。メアは意識を外に向けたまま、“魔石”とミノタウロスの角を拾い、ポーチに入れる宏壱の傍に寄った。

 

 

「⋯⋯」

 

「どうした?」

 

 

 じっと見上げるメアに視線を合わせて、問い掛ける。

 宏壱の問いに答えを返さず、メアは一人で納得したようにこくりと頷くと、ふるふると首を横に振って視線を正面に戻す。

 

 

「んー?」

 

「どうしたのよ?」

 

 

 意味が分からず首を傾げる宏壱に、粗方周囲を確認し終えたサテナが寄ってきて声を掛ける。

 

 

「⋯⋯いや、なんでもな⋯⋯。誰かこっちに来るな」

 

「っ。誰か? 魔物じゃなくて?」

 

「ああ、魔物じゃないな。この気配は人だ。凄い速度でこっちに⋯⋯。これは⋯⋯」

 

 

 幾度か掛け直した【見聞色の覇気】が持続していた宏壱は、察知圏内に入り込んだ幾つかの気配を感じ取る。

 数にして五つ。内二つは宏壱にも覚えのある気配だ。

 

 時折、魔物の気配とぶつかりながらも距離を縮めてくる五つの気配は、明確に宏壱達を目指して進んでいる。

 

 

「ドーガとティナか?」

 

 

 宏壱の脳裏に浮かぶのは、先日偶然同じ護衛依頼を受けた一組の男女、銀狼獣人のドーガとドワーフの少女、ティナだ。

 知った気配であると分かり、宏壱は警戒を少し緩める。

 

 

「あの二人? どうして?」

 

「さぁな。まぁ、考えられるのは、ギルドがこの事態を把握して迅速に動いたってところか。多分、調査隊だろうな」

 

「⋯⋯ねぇ、もしそうだとしたら、今朝のうちにはその情報がギルドに入ってたってことじゃない?」

 

 

 若干、声を震わせたサテナが、目を据わらせて宏壱の顔を覗き込む。

 

 

「⋯⋯ま、まぁ、そうなんじゃないか? て、転移魔法陣で10層に来るにしても、この島には船で来ないといけないわけだしな」

 

 

 視線を逸らしながら返す。が、言葉を幾度か詰まらせ、声を上擦らせていれば、宏壱の言葉はサテナにとって逆効果にしかならなかった。

 

 

「外にいれば、こんな大変な思いしなくてもよかったわよね?」

 

「⋯⋯」

 

「⋯⋯」

 

「そう、だな。ああ、うん、認める、認めますよ。俺の判断ミスだ。グールの経験値欲しさに入りづめはよくなかった。5層で出てればよかったな」

 

 

 事実、夜通しでダンジョンにいなければ、調査に乗り出したギルドから派遣された冒険者達と接触して、事前にミノタウロスの情報を得られていたはずだ。

 と、サテナが宏壱に抗議してくるのを察して、己の非を認めた。

 

 

「まぁ、こうしてても仕方がない。出るぞ」

 

 

 メアとサテナにそう促し、異論がないのを確認した宏壱は近付いてくる気配に向けて足を進めた。




遅い上に短い! お久しぶりです、コントラスです。

遅くなった言い訳を活動報告の方で、つらつらっと書いているので、興味のある方はどうぞ~。
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