赤鬼転生記~異世界召喚・呼び出された赤鬼は聖剣と魔剣を持っていない~   作:コントラス

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第1章~異世界ユース~
第一鬼


 太陽が地平線から顔を覗かせ始めた薄暗い時刻。

 

 ギイィィンッ! ギイィィンッ!

 

 円形の闘技場に金属をぶつけ合う音が響いていた。

 半径200mほどの広さのそこは、複合都市・マグガレンにある王城傍にある。

 普段はマグガレンに常駐している騎士団の演習場として使われているが、2年に一度行われる武闘大会の会場として使用されることもある。

 

 その闘技場には現在二つの人影があった。

 一つは頭から爪先まで赤を基調とした重鎧を身に纏った大柄の体躯を持つ者。

 もう一つは、白のブレザーとスラックス、青のチェックのネクタイが、清涼感と清潔感を感じさせる高校の制服を身に纏う青年だ。

 二人は互いに剣を持って対峙していた。

 

 

「おおおおっ!」

 

 

 赤の全身鎧が雄叫びを上げて、右手に持つ大剣を振りかぶって青年に襲い掛かる。長く、幅広く、厚みのある赤い刀身を持つその大剣は、非常に重い。

 それを片腕で軽々と振り上げる全身鎧の力は凄まじいの一言だ。

 そして大剣の重みと、重心を前に掛けた腕の振り下ろしがとてつもない威力を生み出す。

 

 対する青年は、剛速で迫る大剣を両手で持つ直剣の切っ先を斜めに倒して備えていた(・・・・・)

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

 ギイィィンッ!

 

 絶妙な角度で備えられた直剣の上を大剣は、青年に当たることなく火花を散らして滑り落ちていく。

 しかし、上手く受け流しはしたが、青年は両腕に伝わった衝撃に少し顔を歪めた。

 

 だが、そんなことに構う暇はなかった。

 全身鎧はそのまま地面に落ちる筈の大剣を、力に物を言わせて跳ね上げていたからだ。

 

 

「っ!」

 

 

 青年は予め(・・)二歩下がることで躱したが、振り上げられる大剣と青年の胸の距離は小指の爪ほどしかない。

 少しでも下がるのが遅ければ、青年は横っ腹から肩に掛けて斜めに斬られていただろう。と言っても、この大剣は十分に刃引きされた鍛練用なので肋骨が折れる程度だろうが。

 

 

「ほう、流石ですね。私の次の手を予見(・・)して躱しますか」

 

 

 全身鎧から感嘆の溜め息と称賛が溢れる。

 全体を覆う兜から漏れ出る声はくぐもっていて性別が判断し辛い。

 

 

「偶々……です、よっ!」

 

 

 今度は此方の番! そう言わんばかりに、青年は一歩踏み込んで鋭い突きを放つ。

 無駄な動きなどなく、最小限の動作と最短の距離で放たれた突きは、全身鎧の左肩、鎧と鎧の僅かな隙間を狙う。

 

 

「偶々、ですか。まぁ、そういうことにしておきましょう。……狙いは良いです。騎士団に配給される騎士剣・グレートソードでは私の鎧に傷を付けることはできません。故に、脆く弱い部分を狙うのは定石……ですが」

 

 

 全身鎧は一気に捲し立てると、左足を半歩引いて青年の突きを紙一重で躱してみせ……。

 

 

「【隼斬り】!」

 

 

 大剣を持つ右手がブレた。その刹那的時間で青年の直剣、グレートソードは下からかち上げられて宙を舞い、回転しながら落下して20m離れた地面に突き刺さる。

 

 

「……まいりました」

 

 

 それを見届けることもできず、青年は首元に大剣を突き付けられて敗北を宣言したのだった。

 

 ◇

 

 複合都市・マグガレンの中心にある王城敷地内にある勇者専用の寮、その一階部分にある食堂へと向かう二つの影があった。闘技場で対峙していた青年と全身鎧だ。

 青年の姿に変わりはない。

 変わったと言えば、持っていた直剣を、制服の上から斜め掛けにしたベルトに付いている鞘に納め、背中に背負っている程度だ。

 

 赤の全身鎧だった大柄な者は兜を取り払い、大剣を背中に背負っていた。

 その素顔は意外にも端麗な女性で、凛々しさを際立たせる整った顔立ちをしていた。

 この世界、ユース特有の魔人族の青白い肌を持ち、その肌の色に映える緋色の長い髪をポニーテイルしている。瞳の色は暗闇でも輝きそうな金色だ。

 だが、その武人然とした美貌もさることながら、頭に生えた獣の耳も彼女を引き立てる一因を担っている。

 彼女は、魔人族の母と獣人族の父との間に生まれたハーフだ。因みに父親は狼獣人だ。

 

 

「勇者コーイチ、今日はどうするのですか?」

 

 

 赤く重厚な鎧を身に纏った大柄な女性が隣を歩く猫背の青年に問う。

 

 

「ギルドで依頼を受けようかな、って思ってます」

 

 

 猫背の青年、山口 宏壱が小声で答える。隣を歩く大柄な女性がギリギリ聞き取れる声量だ。

 

 

「そうですか……」

 

 

 大柄な女性は猫背の所為で自分より身長が低くなっている青年を見下ろして短く答える。

 

 大柄な女性は、途切れた会話に困り話題を探すように視線を泳がせる。

 

 

「も、もう慣れましたか?」

 

「まだまだです。ギルド登録もしたばかりですし、簡単なものしか受けられませんよ」

 

 

 宏壱はこの世界にある冒険者ギルドというものに所属している。

 登録時に配布されるギルドカードというものは身分証明にもなるのだ。

 

 冒険者の殆んどはギルドに登録していて、E~A、更にAA、S、SSと続くランクがあり、最底辺がEランク、最高がSSランクとなっていて、謂わばこれは冒険者としての力量を表している。

 数多あるダンジョンの攻略度、村や街の防衛、魔物や魔獣、盗賊団の討伐、素材採取、他にも幾つもの依頼がギルドに寄せられ、それの達成回数や討伐魔物の脅威度等でランクは上昇する。

 因みに、まだ駆け出しの宏壱はEランクだ。勇者ではあるがそこに贔屓はない。

 

 冒険者ギルドに加入すれば魔物討伐で得られる素材(皮や骨、爪、角、肉、鱗、魔石と呼ばれる魔物から採れる結晶体等々をギルドで買い取ってくれる制度がある。これはギルド登録していなくても使用可能だ)をギルドで売る際にギルドランクに応じて加算されたり、ギルドランクに応じて宿泊費の減額、ギルドランクが高ければ武器防具の減額も可能である。他にも色々とお得なのだ。

 

 

「あの、そうではなくて……」

 

「分かってますよ。大丈夫、それなりに馴染めたと思います」

 

 

 そう言ってくっくっく、と喉の奥で笑う宏壱。

 それを見て、(からか)われたと分かった大柄な女性は、青白い肌をかぁっと朱に染めて、「もう」と頬を膨らませる。

 

 

「貴方は意地悪です、本当に」

 

「そうは言いますけどね、この世界に来て二週間、13回目ですよ? その質問」

 

 

 宏壱が言うように、宏壱、そして担任の陵子とクラスメイトがこの世界に来て既に二週間が経っていた。

 

 宏壱達が召喚された場所は、王城の上部にある玉座の間だった。

 前情報があった分、生徒達の混乱は少なかったが、五人の王、女王が待ち構えていたのは予想外だった。

 多少の混乱はあったものの、五人の王、女王が名乗り、続いて陵子が、そして出席番号順に生徒達が名乗る。

 その際に生徒達は王、女王、彼らの側近に見えるように聖剣、魔剣を見せびらかした。宏壱が聖剣、魔剣を持たないことで王、女王……ではなく、彼らの側近が少し難癖を付けたものの、問題なくことは進んだ。

 その日は、疲れもあるだろうという配慮で互いの顔合わせと、勇者達に対する扱いの説明と、今後の方針を軽く話しただけで済ませられた。何せ宏壱達が召喚された時刻は夜の帳が下りきっていたので、王、女王らにも若干の疲れがあったのだ。

 と言うのも、彼らは複数人の宮殿魔法使い(国お抱えのエリート魔法使い)と早朝から休むことなく召喚の儀を行っていたためである。つまり、宏壱達に対する配慮と言うよりも、王、女王の翌朝から始まる政務活動への影響を気にしての行動だ。

 そうして宏壱達はそれぞれ使用人を宛がわれ、城外に建てられた勇者のための寮へと案内され、そこで就寝となった。

 

 そして翌日、朝日が昇り、寮内にある食堂で朝食を食べた宏壱達は王、女王の代理と名乗る者にこの世界ユースの詳しい説明を受けた。

 その時に受けた説明でこの世界独特のルールがあることが分かった。

 それは、ステータスだ。ゲームのようなステータスが存在していた。

 ステータス、と念じると眼前に透明のディスプレイが展開され、自分の能力が数値化されて表示されるのだ。熟練度がレベルとして表示されたり、使える技や魔法なども表示される。

 

 例えば宏壱であればこんな風に……。

 

 ◇◆◇

 

 Lv:1 名前:コウイチ・ヤマグチ(♂)

 

 年齢:16

 

 種族:人族

 

 HP:235

 

 MP:156

 

 SP:100

 

 STR:150(+100)

 

 DEF:230(+2000)

 

 INT:132

 

 AGL:253(+200)

 

 DEX:93

 

 MND:218(+2000)

 

 LUK:23

 

 《スキル》

 

 六式(指銃 LvMAX SP5・嵐脚 LvMAX SP5・紙絵 LvMAX SP5・鉄塊 Lv SP5・剃 LvMAX SP5・月歩 LvMAX SP1)

 

 六式奥義・六王銃 LvMAX SP30

 

 《魔法》

 

 なし

 

 《ユニークスキル》

 

 見聞色の覇気 SP40 LvMAX

 

 武装色の覇気 SP35 LvMAX

 

 覇王色の覇気 SP70 Lv5(固定)

 

 《ユニーク魔法》

 

 雷神槍 MP10

 

 炎神槍 MP10

 

 氷神槍 MP10

 

 雷神 MP5(使用中継続的毎秒消費)

 

 炎神 MP5(使用中継続的毎秒消費)

 

 氷神 MP5(使用中継続的毎秒消費)

 

 《称号》

 

 多重転生者・赤鬼・不死者・ハーレム王・殺戮王・勇者・聖剣を持たない者・魔剣を持たない者

 

 《装備》

 

 武器:なし

 

 防具:頭・なし

   上・内宮東高校制服ブレザー(DEF+1000 MND+1000)

   下・内宮東高校制服ズボン(DEF+1000 MND+1000)

   足・内宮東高校指定革靴(STR+100 AGL+200)

 

 ◇◆◇

 

 といった具合だ。見たい項目を注視すれば、その項目の説明文が別枠で表示される。

 STRを注視すれば……。

 

 ◇◆◇

 

 STR……力の強さ

 

 ◇◆◇

 

 と、こんな具合で、スキルでは……。

 

 ◇◆◇

 

 六式……超人に至るための体技。指銃・嵐脚・紙絵・鉄塊・剃・月歩の六つの技を基礎として多く派生していく。訓練すれば誰でも習得できるのが特徴だが、生半可な努力では六つ全てを極めることは困難である。

 

 ◇◆◇

 

 という感じだ。

 スキルの横に表記されているSPは消費SPのことで、指銃を使うとSPが5P消費されるという意味だ。

 それはユニーク魔法の雷神槍という魔法の横に表記されているMPも変わりない。

 

 騎士団、冒険者ではない一般の農夫や商人といった武器を持たない成人男性(ユースでは15歳から成人とされている)のSTRは50前後。

 宏壱はその三倍の力があるのだが、聖剣、魔剣を持つ他の生徒達は、宏壱を更に上回るステータスを保持している。聖剣、魔剣による恩恵だ。

 

 このステータスを元に勇者達には一人ずつ指導役が宛がわれた。

 それぞれエリートばかりで、勇者達の成長は著しいものがある。

 宏壱もこの二週間でレベル7まで上げることに成功していた。

 レベルを上げるための経験値は魔物討伐や冒険者ギルドのクエストをクリアすることで得られるが、単純に鍛練するだけでも得ることが可能だ。

 

 閑話休題。

 

 

「リーナさんは今日はどうするんですか?」

 

 

 宏壱は自分の指導役である大柄な女性、リーナ・バコフに聞く。

 

 彼女は魔人族の騎士隊、紅蓮騎士隊・二番隊副分隊長という地位にいる人物だ。軽装、重装問わず、赤を基調とした鎧を身に纏った騎士団だ。

 この世界、ユースでは、人族と魔人族は部隊を鎧の色で区別している。

 魔人族には紅蓮騎士隊の他に、黒を基調とした鎧を身に纏った暗雲騎士隊。青を基調とした紺碧騎士隊。深い緑を基調とした龍爪騎士隊。

 この四色の騎士隊が魔人族の大半を占めていて、それぞれに約1000人ほどの騎士がいて10の分隊に分かれている。

 

 四色の騎士隊には特徴があった。重い攻撃を重視する傾向にある紅蓮騎士隊。速さを重視する傾向にある暗雲騎士隊。攻撃魔法や弓矢による遠距離攻撃を重視する紺碧騎士隊。回復魔法や補助魔法などのサポートを重視する傾向にある龍爪騎士隊。

 これらは、各騎士隊の隊長陣が得意とする分野で、自然とそこに同じ分野の騎士が集まるだけだ。

 謂わば、リーナもその一人である。

 

 またも閑話休題。

 

 

「今日は部隊での用事もありませんし、勇者コーイチとご一緒できればと思います」

 

「……そっか」

 

「はい」

 

 

 リーナに素っ気ない返答をする宏壱。特に気を悪くするでもなくリーナは宏壱の隣を並んで歩く。

 

 

「あっれぇ~? 山口くんじゃん」

 

 

 食堂の入り口が見えた頃、そんな声が廊下に響く。

 石造りの壁に反響して妙にウザく聞こえた声に、リーナは顔を顰めた。

 食堂はT字路の左側にある。宏壱とリーナは右側から一直線に食堂へと向かっていたのだが、曲がり角に差し掛かった場所で、Tの棒の方の通路から声を掛けられた形となった。

 宏壱は立ち止まって視線だけを声のした方に向ける。

 そこには当然声の主である茶髪の青年、谷村 誠也がいて、傍らには彼の指導役である150cmサイズの二足歩行のネコがいた。




――キャラクター紹介――

リーナ・バコフ

身長:179cm

体重:49kg

B:93 W:61 H:84

紅蓮騎士隊副分隊長。現在の任務は宏壱を鍛えること。魔人族でも実力は上位に位置する。
実直な性格だが、メンタル面に難あり。宏壱によく誂われている。宏壱の素顔(性格という意味で)を少しだけ知っている。

リーナさんのステータスはいずれ本編に載せます。(予定)
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