魔法少女リリカルなのはHidden―ヒドゥンー   作:沢村崇@

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1話―始まりの一戦―(前編)

大規模都市型テロ『J・S事件』が解決してから約1年が過ぎた・・・

時空管理局のエース達はその羽を休めることができるほど、ここミッドチルダは、表向きは平和である。

しかし、裏ではいくつも存在する他の世界と同様の「ある事件」が起き始めていた。

『デバイス強奪事件』。

一番最初に事件が起きたのは約2ヶ月前。

管理局が管理している世界の一つからだった。

第61管理世界スプールス。

自然豊かで希少生物の楽園だが、それゆえ密猟も発生しやすい世界だ。

そこにいた密猟者が何者かによって襲われ、所持していたデバイスを強奪されたらしい。

そして、次に起きた場所は約4週間前、ミッドチルダのアルトセイムにあるデバイス開発所。

ロールアウト間近のデバイス23機が同一犯と思われる何者かに全て奪われ、そこに居合わせた局員も何名かが殺害された。

現場は封鎖され、また犯人も捜索中である。

なお、今回の捜査はロストロギア『ゲネシス』の回収が最終目的である。

「こんなもんかいな?」

解体されたはずの部隊「機動六課」のオフィスにて、管理局本局の青い制服を身に纏った―八神はやて二等陸佐が文章を打っていた。

最後に『以後、捜査は我々に一任されるため、協力を要請する。』という文章を付け加えてから相手に送り、画面を閉じる。

そのまま座っている椅子に体を預け、一息つく。

その時、二回、軽やかに扉をノックする音が鳴った。

「はやて部隊長、よろしいですか?」

「リインやな?構わんでー」

扉を開け、部屋に入ってきたのは、はやてと同じく本局の青い制服を身に纏った―リインフォース(ツヴァイ)だった。

その手の中にはタブレットが握られていた。

「部隊長。上の方から申請と要請の催促です。」

「まだ違うでー、リイン。」

「人の揚げ足とらないでください、はやてちゃん。」

可愛らしく少し頬を膨らませながら、はやての元へ寄るリイン。

それから、どうぞ、とはやてにタブレットを差し出してくる。

「いきなり捜査のために作れ言うたり、そのくせオフィスはまだ残っとる六課のを使えだの・・・随分身勝手な人達やなぁ」

はぁ・・・と溜息をつきながらタブレットを受け取る。

画面には『部隊申請』と表示され、いくつか空白の入力欄があった。

それを読み飛ばし、次のページを開く。

そこには『人事要請』と記されており、先程同様に空欄があった。

「まぁまぁ。その代わりに好きな人を解決までとはいえ所属させれるんですから」

苦笑いしつつ、はやてをなだめるリイン。

「ま、もちろん六課再編やけどな。」

と、笑いながら元機動六課の面々の名前を打ち込んでいく。

「ですが、予定が合わない人も出てくるのでは?何分急ですし・・・」

「わかっとるよ。せやから、その分を補って余りある人も呼ぶよ~♪」

「ひょっとして、あの方ですか?」

「多分合っとるよ。」

打ち込む手を止め、タブレットから顔を上げるはやて。

画面には最後の空欄があった。

「ちゃんと来るんですか?あの人は口癖からしてもう・・・」

心配そうな顔をするリイン。

それを見てから、はやては再びタブレットに顔を向ける。

空欄に触れ、文字を打ち込み始める。

「それなら、もう手は打ったよ♪」

「?」

キョトンとしたままはやてを見つめるリイン。

視線の先の、はやてが持っているタブレットには、『ラルゴ・ネーヴェ・バッターリア執務官』と、打ち込まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―ミッドチルダ南部―

 

とある場所にある小さな一軒の平家。

その平屋の中からメールの着信音と思しき電子音が鳴り響いた。

「あ?」

ベッドの上でTシャツとズボンの姿で寝ていた人物が上体だけ起こす。

そして右手の腕輪を触る。

すると、空中に画面が表示される。

「あぁ・・・またか。しかも今回は本気のだな。」

気だるそうにベッドから降り、立ち上がる。

「内容から見て、今は局にいるな・・・よし、家に行くか。」

そう言って顔を上げる。

目元まで伸びた艶やかだが寝癖が残る黒髪、綺麗に水色の光を放つが前髪に隠れて目つきの悪い眼、悪そうな笑みを浮かべる鋭い口元。

「さて、それなら膳は急げ、だっけ?」

ハンガーに掛けてある執務官の黒い制服を取り、肩に掛けて部屋を見渡す。

ベッドと円卓しかなかった。

「忘れる物がまずなかったか。」

苦笑いしながら部屋を後にする。

そのまま廊下を通って玄関から外に出る。

閉まると同時に玄関のドアの鍵が自動で掛かった。

「ん?」

眩しい日差しを空いてる手で遮り、顔を上げる。

視線の先には、本局の制服を身に纏った仰々しい表情をした女性が立っていた。

「・・・」

女性は無言のまま桃色の髪を纏めたポニーテールを揺らしながら近づいてくる。

その表情は、不機嫌ではあるものの、剣のような鋭さを放っている。

「・・・よぉ、シグ姐・・・」

引きつった笑顔を向け、日光を遮っていた手を挨拶代わり上げる。

「あぁ、久しぶりだな。」

先程とは一転して、シグ姐と呼ばれた女性―シグナムがクールな笑顔で返してきた。

「じゃ、俺仕事行くからー・・・」

そう言い放ちシグナムの横を通り過去ろうとする。

が、ちょうど真横で腕を掴まれ、引き止められた。

「どこに行くんだ?」

「え、し、仕事デスガ?」

あまりの威圧を受け、つい片言になった。

握られた腕が痛い。

「普段引きこもったまま仕事をこなす貴様が、何故急に外で仕事を?」

笑顔が怖い。

そしてそのまま続ける。

「仕事、じゃないだろ?」

「は、はやてに呼ばれたんだよ・・・」

冷汗が頬を伝って落ちる。

「ほぉ、いつも適当にはぐらかして結局会いにこない貴様がか?」

「は、ハイソウデスガ?」

「やっと会う気になったと。ならちょうどいい。私の車に乗っていけ。私も局に戻るとこだ。」

握られている腕が更に痛みを増す。

冷汗の量も増えてきた。

「シグ姐、こうしよう。今から魔法抜きで一本勝負だ。負けた方が勝った方の言うことを聞くんだ。」

「・・・」

考えている素振りを見せるシグナム。

「・・・いいだろう。武器はどうする?」

「デバイスで」

「逃げるなよ?」

そう言い、距離をとるシグナム。

やっと腕の痛みから解放された。

これは勝つしかないな、純粋な剣術で。

「じゃ、早速やるか、シグ姐?」

「受けて立とう。」

シグナムがポケットからアクセサリーのような物、デバイス『レヴァンティン』を取り出す。

「さぁ、構えろ。」

「へいへい」

執務官の黒い制服に袖を通し、右手の腕輪をシグナムに向ける。

「必ず主の下へ連れて行く。」

こちらを見るシグナムの眼に力が入る。

「覚悟しろ、ラルゴ。」

「あれ、俺死んじゃうんじゃね?」

鋭い目つきでこっちを睨みつけるシグナムと、それをへらへらと笑い飛ばす俺―ラルゴ・ネーヴェ・バッターリア。

シグナムに向けた右手にある銀色の腕輪、デバイス『アルテミス』が輝き、光の粒子となって散り、棒状となって右手に集まりだす。

「来いよ。」

軽い挑発を仕掛ける。

「いいだろう・・・行くぞ!」

そして、互いにデバイスを武器へ変え、一気に距離を詰め、高い衝突音を出しつつぶつかりあった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナムとラルゴが話していた頃。

ミッドチルダにある、高級住宅地を思わせる庭付きの一戸建てに一人の長いポニーテールを揺らす女性が買い物袋を両手に持って帰ってきた。

名前は、『高町なのは』。

言わずと知れた、『エース・オブ・エース』の称号を持つ管理局の(鬼)教官である。

今はその羽を休めている真っ最中である。

「今日の晩ご飯はど~しようかな~?」

鼻歌交じりで、片手の買い物袋を置いてドアの鍵を開ける。

そのまま開けようと手を出した。

が、そのまえに手が止まる。

背後に気配を感じ、もう片方の買い物袋を置いて振り向く。

「あの・・・どなた、ですか?」

なのはの後ろにいたのは、寒いわけでもないのに真っ黒なロングコートを纏い、フードを深く被って顔を隠している長身の人物だった。

「・・・・・・・」

なのはの問いかけに対し、相手は何も言わず一歩踏み出す。

が、歩き方がぎこちなく、足音も普通とは違う、擦れる音がした。

「それ以上何も言わず近づくようなら、不審者としてそれ相応の対処をさせてもらいますよ?」

上着のポケットから、紅い球体状の彼女の愛機、『レイジング・ハート』を取り出す。

それを見るなり黒ずくめの人物は歩みを止め、右手を突き出してきた。

その手には、砲口(・・)のような穴があった。

「・・・っ!!」

なのはが気づくと同時に、その穴から一発の()()が放たれた。

「レイジング・ハートッ!!!」

なのはの叫びとほぼ同じタイミングに玄関の前で爆発と爆音が起きた。

 

 

 

 

―――――後編へつづく――――――

 




後編まで読んでもらえると幸いです。m(_ _)m
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