魔法少女リリカルなのはHidden―ヒドゥンー 作:沢村崇@
部屋を出て少し走り、階段を駆け上がった。
廊下に出る直前、急ブレーキをかけ、敵を警戒して壁に身を隠す。
壁から少し顔を出し、辺りを見回す。
見たところ誰もいないようだ。
が、曲がり角の向こうから足音が3つする。
「・・・アルテミス。」
右手を胸の前まで持っていき、小声で名前を呼ぶ。
『
それにアルテミスが応え、側面にある藍色のラインが光る。
その光が体を包み、形を成していく。
光が弾け、中から金の金具がところどころに施された紺色のロングコート型のバリアジャケットを身に纏った状態で現れる。
その両手は黒い布地に紺色のラインが入った手袋―アルテミスがしてあった。
「アルテミス、ディートフォルマ。」
『
ラルゴの命令に応え、アルテミスのラインが青く光り、指先が鋭い爪のような形状に変化する。
左手を握ったり閉じたりしながら手の馴染みを確かめつつ顔を上げると、
「っ!!」
その場から顔面目掛けて動き出した光球を咄嗟に頭を横に曲げて何とか避ける。
光球が壁に鈍い金属音と共にめり込んだ。
身を翻して壁から廊下に飛び出て臨戦態勢をとりつつ振り返る。
黒ずくめの人物が三人、その内一歩後ろに立つ人物だけはフードを深く被ったままで、両脇の二人はフードを外した。
その中には、四つの丸いガラスを張られただけの粗雑な黄色い眼が光っていた。
「御つきの二人は機械のようで?」
構えを解いて、話しかける。
これで攻撃してくるのなら徹底抗戦するまでだ。
「・・・そうだ。お前の所の白い悪魔、エース・オブ・エースにやられたのと寸分違わぬ同じ物だ。」
中央の、声から察するに男が答える。機械ではないらしい。
てか、白い悪魔・・・確か、高町さんのことか。
まだ呼ばれてんの。
「それは悪い事したな。その敵討ちに来たのか?」
「馬鹿を言うな。所詮は機械、複製品だ。この二体と同じようにな。代えはいくらでも利く、無限にな。」
無限。
その単語である事が理解できる。
男が両手で脇の二体を指さす。
と、その二体が同時に砲口がある右手を突き出した。
「さぁ、与太話はここまでだ。俺の目的を果たさしてもらおう。」
「目的って」
こちらが言い終わる前に男が右手を挙げ、両脇の二体の手から光弾が放たれた。
「俺の話はまだ…終わってねぇ!!」
放たれたそれらを全て避けつつ接近、二体の懐に入ったとこで両腕を機械人形の頭目掛けて振りぬく。
金属同士がぶつかる音がし、機械人形が外に向かって頭から廊下の壁に激突する。
その際、二機とも腰辺りまで砕け散る。
間髪いれずに男目掛けて鋭い左アッパーを繰り出す。
それなりの速度で打ったが、後ろに跳躍されて黒衣を舞わせながら避けられる。
「いい一撃だ。あの頃よりは強くなってるようだな。」
「はぁ?お前誰だよ。」
いきなりあの頃とか訳が分からないことを言われ、つい声を荒立てて返してしまった。
「そうか、まだ見せていないな。」
言いながら、男がフードを外す。
そして、やはり人の顔が現れる。
が、
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
互いに沈黙が走った。
正直な話、誰か分からない。
だが、どこかで見た顔だ。
「あ!隣の隣の家のおっさん!!!」
「違う!!!!」
心当たりがあったので言ってみたが、違うらしい。
少し鋭いつり目、翡翠色の髪、硬く閉じられる口、少し老けた顔。
そして、頬に残る切り傷の痕。
違うのか・・・
「忘れたとは言わせんぞ、この傷・・・貴様のせいで付けられたこの傷・・・あの苦しみ・・・」
男が傷に触れながら言う。
しかし、いや、思い出した。
さっき丁度思い出していたじゃないか。
徐々に驚きが顔に出るのが分かる。
昔の相方、
「ヴィネス・エウドキア・・・」
「やっと思い出したか。
そうだ、前に貴様の執務官補佐として任務に就き、貴様のせいで大怪我を負わされた、ヴィネス・エウドキアだ。」
自分の顔がどうなってるか見ているようによく分かる。
「さぁ・・・あの時の礼をさせてもらおう。
構えろ。」
低めの声に言われるがままに従い、構える。
考え事は後、今は目の前の戦いに集中すべきだ。
「ヴィネス・・・」
「全力で来い。さもなくば・・・死ぬぞ!」
いきなりではあるが、構えもないままこちらへ向かって跳んでくる。
そして、全身を覆っていた黒衣を一瞬で脱ぎ、投げてくる。
飛んできたそれを右手で払い、左手を引く。
その際、両手のアルテミスの線が青く光り、左手に小さな円形の魔方陣が生じる。
『
そのままヴィネス目掛けて左手を勢いよく突き出す。
黒衣を脱いだヴィネスは、前と変わらない、一般的な魔道服のままだった。
しかし、利き手であるその左手にはあの頃見たデバイスはなく、代わりに両手に自分と全く同じ形状の手袋、アルテミスがはめてあった。
「っ!」
予想外の出来事とはいえ、打ち出した拳を止めるわけにもいかなかった。
「重いな。だが、この場合は相手が悪い、そうだろう?」
一撃で決めるはずだった一撃は、ヴィネスの体には届かず、右手だけで受け止められた。
アルテミス同士がぶつかり合う。
「ディートフォルマの領分は防御。攻撃時は防御に使う盾を相手にぶつけるから、自然と殴りに行く。」
「だが、攻撃に使う時以上に防御の方が位置を固定し、厚く張れるため圧倒的に硬い。つまりぶつかれば守ったほうが勝つのは当然。違うか?」
こいつにここまで説明した記憶はない、いや、まずこいつといた頃ディートはまだなかった。
よく研究してやがる。
「ふん、こんなものか?期待外れだな。」
鼻で笑い、ヴィネスが分かりやすい挑発をしてくる。
ゲネシスのこともあり、あまり情報を与えるのは気が引けたが、調べられているなら話は別だ。
挑発に乗るとしよう。
「言ってろ!!」
左手を押さえられたまま蹴りを相手の顎目掛けて放つ。
左手ごと押され、倒れ掛かり蹴りは外した。
が、そのまま受身を取りつつ周囲に青い誘導弾を作り出す。
「フリージング・シューター・・・」
『
青い残光を引きながらヴィネス目掛けて数発の誘導弾が飛んで行く。
「届くと思ってか!」
それらは全て青く丸い魔方陣の盾で防がれる。
フリージング・シューターの特性、接触時に対象を凍らせる能力が発動し、盾に氷が張る。
「思ってない!!」
凍った盾を廊下の天井すれすれまで跳躍して超える。
その場で右手を出し、手のひらに魔方陣を生み、そこへ魔力を収束させる。
『
収束された魔力を大きめの光弾として放つ。
(入った!)
ヴィネスの真上を越えつつ、緩やかに着地する。
その後ろで、放った光弾がヴィネスに触れる。
と、同時に大きな爆発が起き、辺りが爆煙で見えなくなる。
「つまらんな。」
「!?」
背後から先程まで前にいたはずの声が聞こえ、慌てて振り返る。
後ろに立つヴィネスの手には身の丈程ある蒼い刀身の大剣が握られていた。
「転移を使ったか・・・」
「この形態、スパーダフォルマの領分は転移、転送、回復など補助魔法。そう、アルテミスは形態によって使用できる魔法が変わってくる。だろう?」
徐々に煙が晴れていく中、剣を持ち上げ刀身を眺めながら語りだす。
これが・・・
「これが『ゲネシス』の力か・・・」
そう、先程から自分の
そして、向かい合うヴィネスの首元からはひし形のクリスタルのような物がぶら下げてあった。
「そう、何もかも、人すらも完全にコピーするロストロギア。
既に貴様の相棒は俺の物でもあるな。」
小さく笑いながら低めのトーンで語ってくるヴィネス。
「ちっ・・・」
舌打ちをして、無駄だと分かってはいるが距離を取るために後ろへ跳ぶ。
勝機がないわけではない。
俺のも奴のも、
はやてだ。
鍵ははやてが握っている。
念話なりなんなりが使えれば話は早いが、ジャミングのせいでそうもいかない。
直接言いに行くしか手はないが・・・
「逃げようなどとは思うなよ?もっと貴様の力を見せてみろ!」
「めんどくせぇなぇ・・・ま、やるしかねぇか!」
構え直し、足に力を入れる。
姿勢を低くし、力を溜め、地面を蹴り、標的との距離を詰める。
「スフェッラーレ・ウン・プーニョ!!」
魔方陣が生じた右手でストレートを放つ。
が、剣で受け止められる。
しかし、これで終わりではない。
『
「カルチャーレ!!」
膝からつま先までが硬い防具で包まれる。
左手で大剣を弾き、その勢いを活かして強化されたその足で後ろ回し蹴りを放つ。
「どうやらここまでだな。」
ヴィネスがアルテミスを大剣から手袋に変え、放った蹴りが止めらる。
そして、もう片方の空いた手で叩きつけられる。
「がっ・・・!?」
「もう終わりだ。」
そこから宙へ引っ張られ、連続攻撃をくらい、最後にこちらと同じように強化した足で回し蹴りをくらい、廊下の突き当たりの壁にまで飛ばされる。
「ぐぁっ・・・・ぐっ!!」
体を打ち付けられ、呼吸が一瞬止まる。
「砲撃は・・・これだな。」
ランチャフォルマ、ー砲撃、突撃に特化した槍の形状にアルテミスを変え、こちらに向ける。
槍先に赤い魔力が収束されていく。
「死んでおけ・・・。」
冷たく言い放ち、溜めた魔力を開放、放たれる。
防御は間に合わない。
体も思うように動かせない。
仕方がない、受けよう。
静かに眼を閉じ、意識を手放した・・・・。
薄れ行く意識の中、大きな爆音と、ほんの少しの痛みだけを感じていた。
――三話に続く――
以上、2話―強襲復讐者―でした。
駄文ながら最後まで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m
次話も可能な限り早く上げたいとは思っています。
が、何分忙しく・・・(汗
予告をしておくと、3話は、シグナム、ヴィータ、フェイト、なのは達外組みの話です。
ではまた次話でノシ