Place:紅魔館
"ヴァルバトーゼ"SIDE
ヴァルバトーゼ「咲夜君、このあとデートとかどうだろう」
咲夜「申し訳ありませんヴァルバトーゼ様。私はこの館から出るわけには参りませんので…」
ヴァルバトーゼ「そうかぁ。実に残念だ」
私はツルギが来るまで暇だったのでナンパをしていた。
十六夜咲夜…。この紅魔館でレミリアに仕えるメイドだ。
その姿はとても美しい淑女。まさに銀色の磨かれたナイフを彷彿とさせる。
咲夜「ヴァルバトーゼ様はお嬢様と妹様と暮らされていたのですよね?」
ヴァルバトーゼ「あぁ、何百年も前の話だ。まだ君がこの世にいないときさ」
見たところ十六夜咲夜は人間の18歳といったところか。
ツルギよりは年下だろう。
ヴァルバトーゼ「レミリアやフランの父君…スカーレット卿とは友人だった。少し面倒を見て欲しいと言われたことがあって40年の時を一緒に過ごした。吸血鬼にとっては一瞬の出来事だったが悪くないものだったな」
あの頃は今よりもっと小さい。それこそ人間に例えるなら5歳ぐらいだろう。
咲夜「ヴァルバトーゼ様にも娘はいらっしゃらなかったのですか?」
ヴァルバトーゼ「こう見えて恋愛運は持っていないようでな。なかなかそういう相手もいなかったが…義娘ならいるぞ?」
咲夜「義娘…ですか?」
ヴァルバトーゼ「あぁ、その子も私と同じ吸血鬼だが…少しやんちゃでね。君もレミリアとフランの相手をするのは大変だろうに」
咲夜「いえ、そんなことはありません。私は拾われた身ですので」
ほぅ。この子も拾われたのか…。十六夜咲夜というネーミングからして名づけ親はレミリアなのだろう。
悪くないいい名前だ。
咲夜「お嬢様はともかく…妹様ですね。私もどうにかしたいとは考えているのですが……私のような者ではやはりどうにも」
フランドール…。昔は人と話したり絵本が大好きな元気な子だった。
それが今では狂気に侵食されているだとかで地下に幽閉されている。
スカーレット卿に託された子達だ。吸血鬼狩りから守りはしたが、そのあとは自分たちでやらせ、独立させるという名目で私はこの館から離れた。
まぁ…しかし、彼女が救われるのは遠くもない未来だ。
ヴァルバトーゼ(さてツルギ、お前ならどうやって彼女を救う?)
Place:霧の湖
"ツルギ"SIDE
ツルギ「…っ!?」
チルノが放つ弾幕から、なんとか身を躱しつつ弾丸でチルノに当てようとするが
自分に当たりそうな弾幕を弾丸で相殺するのが精一杯だった。
チルノ「逃げてばっかりじゃつまらないよ!」
ツルギ(くそっ、見つけろ…!反撃の隙を)
本来ならもっと動けているのだが、あのチルノが放つ冷気がかなりのものだ。
俺たち人造人間は寒さに強くはあるが、さすがにあそこまでの冷気は慣れないものがある。
ツルギ(長期戦はこちら側が圧倒的に不利だ。どうする、弾幕の基本を思い出せ…)
確か弾幕は、綺麗に見せるものであって効率的に敵を倒すものではないと聞いた。
それなら隙を付ける部分は十分にあるはずだ。
チルノ「ふふん、やっぱあたいってさいきょーね!」
ツルギ「一応、俺も外の世界では最強と謳われていたのだがな」
チルノ「えー、そうなの?でもあんた弱っちいじゃん!やっぱり私に敵う相手なんて
ツルギ(…?)
なんだこの違和感を覚えるような感覚は……なにか
さっきまで強気だったこいつの発言が、あの"誰もいない"という言葉からは
ツルギ「お前…寂しいのか?」
チルノ「えっ?そ、そんなことないもん!さいきょーは泣かない!」
ツルギ「チルノ…お前は最強のことを誤解しているぞ」
最強というのは力が強すぎるあまり、周りはいつしか自然に離れていくようになる。
あちらの世界ではそもそも一般人は、人造人間のことを化物にしか見れないらしいが…。
俺も最強の人造人間として…仲間が赴けない重要任務も任されていた。
もちろん…
別に悲しかったわけでも苦しかったわけでもない。
あの感情を表すなら…それはきっと寂しさなのだろう。
ツルギ「最強というのは孤独なものだ。誰からも理解されることはないし、誰も傍によってこない」
チルノ「ち、ちがうもん…チルノは一人なんかじゃ……」
ツルギ「それなら、なんでそんな顔をする。お前は…最強じゃなくてもいいんじゃないか?」
チルノ「うっ…うぅちがうもん!私はサイキョーなんだもん!!」
ツルギ「―――っ!?」
なんだこの感覚!?弾幕を放つとはまた違う…。
これがまさか――――
チルノ「氷符『アイシクルフォール』」
スペルカードとやらか!
先ほどとは比較にならない量……だが
ツルギ(なんだ…当たらない?)
氷の弾幕が降り注ぐ中、俺は棒立ちしてても弾幕が当たることはなかった。
ツルギ(なるほどな)
馬鹿がスペルカードを作るとこうなるのか。
それにしても、チルノ。
俺にはお前の気持ちが分かるぞ。
俺に真の友などいなかった。仲間はいたが…それでも俺の心の隙間は空っぽのままだ。
だが――――――
藍『これ以上ツルギに…家族にちょっかいを出すのなら―――』
ヴァルバトーゼ『我が友ツルギよ』
あの言葉たちは……
俺の心の隙間に温かく入っていった気がする。
ツルギ(お前の氷を溶かせるかどうかはわからない)
俺は左手の銃をチルノに向ける。
チルノ「な、なんで当たらないのよ!?」
ツルギ(この温かさの度合いは…別に氷を溶かせるようなものじゃないけれど)
左手の銃のモードを"燃焼弾"へと切り替える。
ツルギ(それでも、お前に届くといいな――――)
俺の放った燃焼弾は弾幕を削り、弾幕を超え
チルノに届いた。
◆◆◆◆◆◆
チルノ「ぐすっ…うあぁぁ」
泣いてしまった…。いや氷の妖精なら火が弱点ではと燃焼弾を使ってしまったが…
まさか当たった箇所が溶けるのは予想していなかった…。
チルノの左腕は水浸しになって溶けてしまっている。
ツルギ「いや、悪かったって…」
今は少しでも泣かせないために、仮面を脱いでいた。
仮面をつけた怪しい奴が幼女に近づいたら泣かれるのは必定というものだ。
チルノ「すんっ…ゼインはさ、友達いないの?」
ツルギ「俺にはまず友の定義がわからんからなんともな」
チルノ「てーぎ…?」
ツルギ「要は友達っていうのはなんなのかすら俺にはわからん」
チルノ「ずじゅじゅじゅっ…うーん、一緒に過ごして楽しいのを友達っていうんじゃないかな?」
ツルギ「さりげなく俺の服で鼻水をかむんじゃない……。俺には友達や家族だっていなかったよ。お前とおんなじだ。孤独っていうわけじゃないけど…心のどっかでは一人なんだって感じてしまっていた」
チルノ「………うん」
ツルギ「でも、この幻想郷は受け入れてくれたのさ…。俺みたいな奴でも」
それでも、まだ俺の心の闇はまだ晴れそうもないが…
チルノ「わたしはさいきょーだから…友達…いらない」
ツルギ「いらないって顔じゃないぞチルノ。意地を張らずに作ろうとしてみろ。俺と違ってお前なら望めば手に入るはずさ」
チルノ「ゼインと違って…?」
ツルギ「俺の世界では望んでも得られなかったことだ。でも、ここは幻想郷だ」
俺はチルノに左手を伸ばす。
ツルギ「お前に友達ができないんなら…まずは俺がその第一号になってやる」
チルノ「あ……あたいは」
どうやらまだ迷っているようだ。
まぁ、強迫観念に近いものがあったのだろう。
それを払拭するのはなかなかに厳しいものだ。
チルノ「あっ」
だが、そんなことを気にしていては前に進めない。
俺は無理やりチルノの手を引っ張って立たせた。
ツルギ「大丈夫だ。お前のように可愛らしい妖精なら…友達はたくさんできるさ」
チルノ「かわ…いい?」
そういうとチルノの顔は真っ赤になる。
おかしいな燃焼弾は打っていないのだが
チルノ「わ、わかった!わかったから離してよもう」
ツルギ「わ、悪い…」
流石に女の子の手を握り続けるのは失礼だったな。
相変わらずそっぽ向いたままだし
ツルギ(まぁ、とりあえず)
チルノ「えっなに?」
チルノの左肩に触る。
俺が溶かしてしまった場所だ。
チルノ「これ?大丈夫だよ?自然にそのうち治るだろうし…」
ツルギ「俺がやっちまったもんだからな…それに治るまで不便だろ」
そう言って俺は左肩に『0と1を行使する程度の能力』の力を流し込む。
そうするとチルノの肩から白い結晶が腕のように生えていき、それが砕けると…
チルノ「えっ?すごーい!あたいの腕生えた~!?あはは!」
ツルギ「それで一応許してくれ」
チルノ「これゼインの能力!?」
ツルギ「あぁ、あとゼインはこの仮面付けてる時だけの名前だ。こういうふうに友達としてはツルギって呼んでくれ」
チルノ「わかったー!ところでツルギの能力ってすごいねー!どんな能力なの!?」
先ほどとは打って変わったテンションでぴょんぴょん跳ねている。
子供だから仕方ないのだが…スカートの中が見えそうになって怖い。
ツルギ「ま、それはまた今度な。ところでチルノ、お前は紅魔館という場所を知っているか?」
チルノ「こーまかん?」
ツルギ「真っ赤な家なんだが、知らないか?」
チルノ「あー!それならわかるよ!ついてきて!」
ツルギ「ありがとな」
こうして…俺の初めての戦闘はあっけなく終わってしまった。
氷の妖精チルノとの初めての出会いと俺の幻想郷での初めての能力を使った場所になったな…ここは。
今回の戦闘シーンも少なめです。
・・・戦闘シーンに自信ないとはいえ、これでいいのだろうか。