第20話「紅魔館は歓迎し、乙女は初恋を知る」
Place:紅魔館客室
"ツルギ"SIDE
目の発光も収まり…痛みも消える。
これがこれからまた起こるのだと思うと気分が悪い。
ゼロ『大丈夫か?』
ツルギ「大丈夫なものか…気分が悪い」
ゼロ『そりゃそうだろうな。でも、その痛みで身体を動かせるなんて他の奴はできなかったぞ?』
こいつの前の世代たちのことだろう。
『0と1を行使する程度の能力』を持った奴らは長くて3年程度で死んでいったからな。
俺は現時点で7年か…。
そう思うと長いが、やはり死期が訪れたということは俺の体も持って数年だ。
ゼロ『基本的に死期が発生した後の寿命は1年から5年とされているが、お前は俺と一番適合できてるからな。もっとあるかもしれんな』
実際どうなのだろうか。むしろ低いと思う。7年という時が経っている以上、単純に死期が遅いってだけかもしれない。
コンコン
と…考えている時間もないか。
ツルギ(ゼロ…このことは)
ゼロ『わかってる。誰にも伝えやしないさ』
このことは誰にも言うつもりはない。
自分ですら残りの寿命は分かっていないのだから――――
咲夜「ツルギ様?いらっしゃいますか」
ツルギ「あぁ、入って大丈夫だ。………
咲夜「失礼します」
部屋に入ってた咲夜に疑問符を浮かべざるを得ない。
なんだ、様とは。
咲夜「もう立っても大丈夫なのですか?」
ツルギ「えっ、あぁまあな。ところで何で様付けなんだよ?」
咲夜「ツルギ様はこの紅魔館の溝を消してくれた方……私たちは貴方に感謝しているのです」
ツルギ「よせよ…それに言っただろう。俺は自分の為にやったに過ぎないって」
そう…そもそも俺は救いだのなんだの言っていたが、そんなのは
自分が助けたいと思ったから助ける。それだけなのだ。
咲夜「それでも………私たちが救われたことに変わりはありませんよツルギ様」
ツルギ「…そっか」
感謝されることは嫌いじゃない。
むしろこのためにやっていると言っても過言じゃないかもしれない。
臭いかもしれないけど…俺にとってはそれが救いだったんだろう。
咲夜「では、ツルギ様。お嬢様たちがお待ちです。どうぞこちらへ」
ツルギ「あぁ……」
ツルギ「そういや俺お前たちにツルギの名前名乗ったっけ?」
咲夜「ヴァルバトーゼ様が教えてくださいました」
あ の や ろ う
"咲夜"SIDE
5日前……彼、ツルギ様はこの紅魔館の溝をそのままの意味で
それは従者の私の悲願でもあった。
妹様の狂気を取り消し、レミリアお嬢様の喜ぶ笑顔を見たかったのだ。
それをツルギ様は為してくれた。この紅魔館の誰もができなかったことを……
そして……私を庇って助けてくれた。
なんだろうかこの気持ちは。ツルギ様のことを考えるとモヤモヤしてしまう。
あの人の在り方はかっこいいと思えた。
恐らく自己犠牲の精神なのだろう。だが、そんな彼を守りたいとすら思う。
この感情は一体なんなのだろうか。
ツルギ「なぁ、咲夜さんは……」
咲夜「咲夜、でよろしいですわツルギ様」
ツルギ「…咲夜は俺のことを嫌わないのか?」
咲夜「…なぜでしょうか」
私はつい振り返ってしまう。
その時ツルギ様は少し俯いていた。
ツルギ「本当に殺す気がなかったとはいえ、フランにあんなことを言ってしまったんだぞ。それに対してお前はなんとも思わないのか?」
咲夜「正直あの時は驚きの連続でした。実際、フラン様をすぐ庇ったのも反射的なものでしたが…なぜでしょうね。なぜか嫌悪感は湧きませんでした。ツルギ様のことを…心のどこかで信じていたのかもしれません」
これは嘘偽りない真実だった。実際他の人が言っていたらすぐに私はそいつを切り刻んでいるのでしょう。
しかし、根拠はないが、感じたのだ。彼の暖かい優しさを……。
ツルギ「…そうか」
咲夜「えぇ、そうです。ふふっ」
ツルギ様は窓の方向へとそっぽを向いてしまった。顔を赤くして、私より年上で背も高いけど…可愛かった。
ツルギ「な、何笑ってるんだよまったく……」
咲夜「すみません。しかし、ツルギ様に庇われていただいて今の私がここにいるんです。ツルギ様が庇ってくれなかったら私は死んでいたでしょう」
ツルギ「死ぬのはいいけど、死なれるのは勘弁だからな。だから――――」
それ以上の言葉はいらない。と私は一本の指で彼の口を抑える。
咲夜「死ぬのはいいだなんて、そんな悲しいこと言わないでください。貴方を気に入っている人はたくさんいるのですから……」
ツルギ「俺の正体を知らないからそんなことを言えるんだ…」
咲夜「知っていますわ。ヴァルバトーゼ様から全部ではないでしょうが、ある程度は…」
あの野郎ぺちゃくちゃとこっちの個人情報を喋りやがって――――と
不機嫌な顔も可愛いものです。
人造人間…悲しい出生ですが、それを同情するつもりはありません。
ゼロという男は私の正体を知っていそうですが、ツルギ様は知らないでしょうから。
ですが…彼の人間になりたいという願いは叶えてあげたい。
咲夜「さぁ、いきましょう。お嬢様が怒ってしまいますわ」
ツルギ「おう…」
彼の一つ一つの仕草が可愛くてしょうがない。
本当に面白い人。私も気に入っている人の例外ではないだろう。
あれ…でも……ヴァルバトーゼ様とは違う何かがある気がした。
こう……"異性"を感じるような――――――
まさかこれって……恋……なのではないだろうか。
咲夜「………///」
そう考えると熱くなってしまう。な、なに?この感覚は。
ツルギ「どうした?咲夜」
咲夜「ななななな何でもありません!早く行きましょう!」
ツルギ「…?」
そうか―――これが初恋なんだ。
初恋は甘酸っぱいっていうけど………
割と当たっているのかもしれないわ――――――
Place:紅魔館広間
"ツルギ"SIDE
なぜか顔が紅くなっている咲夜に連れられてドアを開くと
えーとフランドールとそのお姉さんと美鈴、咲夜まではわかるが…それ以外の二人がわからない。
というかヴァルバトーゼとエリザベートもいると思ったのだが、そこには姿を見せていなかった。
レミリア「お疲れ様咲夜…どうした咲夜?顔が紅いが…」
咲夜「いえ…なんでもありません」
そういって咲夜はお姉さんの隣へと歩いていく。
それと入れ替わりでフランが必殺技の突進抱きつきをしてきた。
フラン「お兄様!もう大丈夫」
ツルギ「あぁ…んで?お兄様とは?」
フラン「えへへー私お兄ちゃんが欲しかったんだ!ダメかな?」
やめろめろめろやめろめろ。その上目遣いはお前の美人顔じゃ反則の域だぞ…。
ツルギ「構わん、好きに呼べ」
フラン「やったー!う~んすりすり」
寝ている間に随分懐いたものだな…これもヴァルバトーゼの差金か。
レミリア「ごほん!さて、本題に入ろう。八雲剣。今回の件なのだがお前には感謝しても感謝しきれない!本当にありがとう!」
そう言ってお姉さんは頭を深く下げる。周りはその光景に少し驚いていた。
やっぱり…こうやって感謝されるのも気持ちいいな。
ツルギ「れ、礼なんかいいって…それよりまだ名前を聞いていない。よければ聞かせてくないか?」
レミリア「っと失礼したな。私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットだ。美鈴と咲夜は知っているな?我が紅魔館が誇る大図書館の管理人を紹介する。パチェ?」
そうすると紫色が特徴的な女の子が席を立つ。本を携帯してる辺り読書好きなのだろう。
パチュリー「今回の件に感謝するわ。ツルギさん、私の名前はパチュリー・ノーレッジ。レミィの親友よ。先ほど紹介されたとおりここの図書館を管理しているわ」
ツルギ「親友……」
確か友達の上位互換か?友達の定義がよくわからないが……ヴァルバトーゼの言う友達とはまた違う気がするからな~。
パチュリー「で、この私の隣の子が私の助手。図書館の司書をしているわ」
小悪魔「こ、小悪魔です!コアって呼んでください」
ツルギ「あぁ、よろしく。コア」
美鈴「一応、私も改めて自己紹介をば。紅美鈴です!これからよろしくお願いしますね!ツルギさん!あと今度できればもう一度手合わせをしてもらえると…」
ツルギ「あぁ、よろしく美鈴。俺も練習になるからこちらからも頼むよ」
咲夜「私は十六夜咲夜。この紅魔館のメイドを務めます」
咲夜はさっきの顔色から元に戻っていたので大丈夫そうだ。具合悪そうって感じではなかったが…。
レミリア「私たち紅魔館は…ツルギを歓迎する!」
ツルギ「歓迎?」
レミリア「あぁそうだ。今日はお前のために咲夜が色々と用意してくれる。今日一日は泊まっていくといい。先ほど幻想郷の賢者がここに来てな。終わったら早く帰らせろってうるさかったからな。こちらとしてはもっといて欲しかったが……」
ツルギ「そうなのか…姉さんたちには心配かけたな」
フラン「ねーねーお兄様!遊びましょう!」
ツルギ「いいぞ~何で遊びたい?」
フラン「えとねえとね~何がいいかなお姉様!」
レミリア「そうだなぁ~」
"レミリア"SIDE
フランとツルギは咲夜を連れてチェスをしにいった。お互い初めてらしいが、咲夜が教えてあげることだろう。
美鈴は門番の仕事に戻り、小悪魔は図書館の仕事に戻った。
パチュリー「それにしても……まさかあの魔帝が言うように本当にフランを救うだなんてね」
レミリア「えぇ、ツルギには感謝をしてもしきれない…」
あの男のおかげでフランは自由な生活ができるようになった。一緒にも寝れるし、一緒に紅茶も飲める。なんて素晴らしいのだろう。
パチュリー「…本当に嬉しそうねレミィ。親友の私としてもその顔を見れるだけでツルギさんに感謝しないとね」
レミリア「よせパチェ。私をからかってもいいことないぞ」
この場にいるのは心から信頼する親友だけ。久々にこんな会話をしたことがおかしかったのか。二人で笑い合う。
パチュリー「それにしても……彼の願いはどこか悲しいわね。戦うために生み出されたのに感情が生まれてしまうなんて」
レミリア「あぁ…私たちもできるだけ協力してやりたいところだ。ツルギの人間になりたいという願いを…」
本当に悲しいものだ。人造人間なぞ…あちらの世界の人間は何を考えているんだ。
あちらでたくさんの研究者に囲まれてもいたのだろう。ツルギがどれだけ辛いのかさえ…私たちにはわからない。
パチュリー「恩人とはいえ、貴方が他人に対して協力的になるなんて……まさか恋でもしているのかしら?」
レミリア「!!何を言うパチェ///私は別にそんなつもりじゃ…」
確かにツルギには恩義を感じている。確かに奴を考えると心がチクチクしたりするが…
それは単純にどうお返ししようかと考えていたにすぎない。
決して異性として見てしまったとかそういうわけじゃないもん!ほんとだぞ!
パチュリー「ふふふっ冗談で言ったつもりなのに真っ赤になっちゃって、可愛い親友ね」
レミリア「くっ――――パチェめ……」
親友に一本取られてしまった。いつもからかわれてばかりだ。ここは私も少し乗っかってみるとしよう。
レミリア「そういうパチェはどうなのかしら?」
パチュリー「どう…とは?ツルギさんのこと?」
レミリア「そうよ。パチェが好みそうな人じゃない?」
そう、パチュリーが好きだった小説の主人公は結構ツルギに似たものを持っている主人公だ。
長い髪で、美青年で、身長が高くて、それでいて優しくかっこいい。
たしかそんな主人公だったはずだ。多分。
パチュリー「まぁ…否定はしないわね。ああいう純粋にかっこいい人は私の好みね」
レミリア「ほらぁ…パチェだって私のことを言えないじゃない!」
パチュリー「はぁ……レミィ?好みのタイプだからといってあなたのように恋をしているわけじゃないのよ?勘違いしないでちょうだい」
レミリア「ぐぬっ……う~っ」
パチュリー「はいはい。今日の"う~"いただきました」
今日はどうやら勝負事はまずい運勢らしい。
ここまで完膚なきまでの敗北は久しぶりだった。
パチュリー(まぁ、私も彼については満更ではないんだけれど…ね?///)
咲夜さんに恋とか…ぶっころすぞツルギ!!
↑
作者は大の咲夜さん好き。
ちょいちょい紅魔館イベントしたら八雲家に帰って博麗神社へと行く予定。