王狼は荒野に吠える   作:深淵騎士

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アニメ原作組と出会うのは少し先になりそうです。


荒野の咆哮

「情けねぇ、ガキ一人にやられるなんてな!」

 

 

椅子に座り怒鳴る男。その前には、ファングを襲った二人の盗賊が青ざめて立っていた。

 

 

「け、けどボス……奴のゾイドとんでもなく強くて……」

 

「言い訳は聞かねえ、それで?ガキの居場所はわかるんだろうな」

 

「はい!」

 

「よぉし」

 

 

ボスと呼ばれた男はニヤリと笑い、椅子から腰を離す。

 

 

「次は俺が出る、その狼ゾイド、俺がやってやろうじゃねぇか」

 

 

彼の背後には紅に染められたコマンドウルフが居た……

 

 

 

 

砂漠を進む二つの白い影。一つは長くヘビを思わせ、もう一つは雄々しい狼の姿をしている。

 

 

「……何で着いてくるんだよ」

 

 

狼型のゾイド、ケーニッヒウルフから地を這って進むヘビ型のゾイド、ステルスバイパーに通信が届く。

 

 

『君の行く末を見届けたくなりまして、旅に同行させて貰おうかと』

 

 

昨日の敵は今日のなんとやらか、占い師の女性『シィルヴァ』は笑み、ファングにそう答える。

 

 

「……まあ、別に構わないけどさ」

 

 

呆れたようにため息を吐き、正面に向き直る。現在、荒野を抜けて砂漠地帯に足を踏み入れたのだが、野宿をするのに最適な場所が見つからない。ましてやこの一帯は砂嵐が頻繁に起こるため、ファング達は極力それを避けて迂回しながら移動している。

 

 

「それにしても、そのステルスバイパー……『グリント』だっけ、いいゾイドだな」

 

 

シィルヴァの搭乗するステルスバイパーにはグリントという名が付けられており、彼女とはかなり長くそして固い絆で結ばれているゾイドである。

 

 

『フフ……ありがとうございます、君のケーニッヒウルフも素敵なゾイドですよ』

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ、なっケーニッヒ」

 

 

……

 

 

無反応のケーニッヒウルフ。

 

 

「お前なぁ……褒められてるんだから何か言えよ、グリントだって“ありがとう”って返したんだぞ?」

 

『え?』

 

 

シィルヴァはファングの言葉に違和感を覚える。

 

 

『ファングさん、グリントが“ありがとう”と言ったのですか?』

 

「ああ、グリントは素直な奴だな。言葉遣いもあんたと似て丁寧だし」

 

『ッ!?……もしかしてなのですが、ファングさんはゾイドの“声”が聞こえるのですか?』

 

 

本当ならありえない、ゾイドは言葉を持たないからだ。だがこの少年はそのゾイドの“声”を聞けるという。

 

 

「ああ、子供の頃からかな。集中しないとダメだけどそのゾイドの言っていることが解るんだ。住んでた村の側にいた野良ゾイドとよく話してたよ」

 

 

特異な能力だ。それと同時にファングの精神の強さに驚愕する。普通であれば、他の人間が聞こえない筈の声が聞こえたとなれば、まともでは居られないであろう。しかもまだファングは子供、それなのに寧ろゾイドの声を自分から聞こうとしている。

 

 

『強いのですね……ファングさんは』

 

「何か言った?」

 

『いえ……それで今日野宿する場所はどうしましょう?』

 

「確かにどうするか……なあ、ケーニッヒ、昨日のアレで野宿に丁度良いところとかわからないか?」

 

 

グルルルッ……

 

 

「そう怒るなって、流石にわからないよなぁ……」

 

 

暫く進み砂の丘を越えると、何やら広く建物の密集地が見える。

 

 

「何だあれ……遺跡?」

 

「……のようですね」

 

 

遠目でみても、建物には植物が生え寂れており朽ちているのが確認できる。ファングはしめたと笑い

 

 

「野宿はあそこにするか、そろそろここら辺も砂風が発生するだろうし」

 

「賛成です、急ぎましょう」

 

 

 

 

 

 

遺跡内にはケーニッヒウルフ達も入れ、砂嵐をやる過ごすのに丁度良い建物がありそこを今晩の寝床にすることにしたファングとシィルヴァ。

 

横並びにケーニッヒウルフとステルスバイパーを置き、ファングとシィルヴァはその側で夕食の準備をしていた。

 

 

「これでよしっと……ほい、シィルヴァの」

 

 

ファングが作ったのは、パンに野菜と干し肉を鋏んだ物だ。それをシィルヴァに渡し、彼はミルクをコンロで温め始める。

 

 

「ありがとうございます……凄いですね、ファングさんは。こう、手際がいいというか慣れてるというか……」

 

「まあ、小さい時から一人だったからな。基本何するにしても俺が全部やってたよ」

 

 

つまり家族は居ないと言うことだ。シィルヴァは聞いてはいけないことを話させてしまい、ばつの悪い表情になる。

 

 

「御免なさい、君の事を考えずに……」

 

「いいって、気にすんな」

 

 

温め終わったミルクを鉄製のカップに淹れ口に運ぶ。

 

 

「ま、村の皆が支えてくれてたし寂しくはなかったかな」

 

「良い人達の輪で育ったのですね……」

 

「ああ」

 

 

ファングはミルクを飲み終え、またカップに注ごうとするとシィルヴァが遠くを見つめている事に気づく。

 

 

「どした?」

 

「しっ……」

 

 

シィルヴァは人差し指を口にあて、静かにするようにジェスチャーする。彼女は耳を澄ますと跳ね上がるように立ち上がり

 

 

「何か来ます…」

 

 

彼女がそう言い放った瞬間、建物が揺れる。

 

 

「誰かはわからないけど、攻撃されてる……」

 

 

ファングは直ぐに立ちケーニッヒウルフに向かって走る。

 

 

「ファングさん!……ッ!」

 

 

残されたシィルヴァも愛機であるグリントのコックピットへ向かう。

 

 

 

 

 

 

「あれは……!」

 

 

遺跡を出て目にしたのは三機のコマンドウルフ。二体はこの間の盗賊であろう、しかし真ん中に居るコマンドウルフは武装もカラーリングも他のとは違う。

 

 

『ファングさん、あれはもしかして……』

 

「盗賊……また性懲りもなく」

 

 

紅のコマンドウルフが前に出ると

 

 

『ガキ、お前か。俺のところのバカ共を可愛がってくれたのは』

 

「ああ、あんまりにもしつこいから丁重にもてなしてあげたよ」

 

『フッ、小生意気な野郎だ。だが、そのゾイド……良いな、ガキには勿体ねぇ!』

 

 

コマンドウルフは大地を蹴り前へ進み

 

 

『共和国軍にでも高値で売り付けてやるよ!お前ら、後ろのステルスバイパーの相手をしな!』

 

『『うす!』』

 

 

ファングは此方に向かうコマンドウルフを睨み

 

 

「一対一が希望か……乗ってやる!シィルヴァ、手は出すなよ!」

 

『あ、ファングさん!』

 

 

シィルヴァを置いていき、紅のコマンドウルフと相対するケーニッヒウルフ。シィルヴァは動こうとするが

 

 

「きゃっ!」

 

 

危うく被弾するところであった、グリント。コマンドウルフ二機が彼女達の前を遮る。

 

 

『へへへ、お前の相手は俺達だ』

 

「いいでしょう、相手をして差し上げます」

 

『女だからって手加減しないぜ!』

 

「嘗められた物ですね……私達の力を見せてあげましょう……行きますよ、グリント!」

 

 

シャアアアアァァァァァ―――!!!!

 

 

 

 

 

「おおおぉっ!!」

 

 

先に攻撃を仕掛けたのはファングだ。ケーニッヒウルフの鋭い爪による斬撃を与えようとするが

 

 

「遅い遅い!」

 

 

コマンドウルフはケーニッヒウルフを飛び越え、更に胴体を踏みつける。ケーニッヒウルフの背後を捉え2連装ビーム砲ではなく“AZ120mmグライドキャノン”を撃つ。

 

 

「やばっ!」

 

 

横っ飛びすることでグライドキャノンの砲撃を回避する。着弾点は大きな砂埃を巻き上げ、威力を物語らせる。流石をあれを喰らっては不味いとファングは判断し、ケーニッヒウルフをコマンドウルフに向かせる。

 

 

『よく交わしたな、次はこれならどうだ!』

 

 

再びグライドキャノンによる射撃を行うコマンドウルフ。

 

 

「ちっ!」

 

 

回り込むように走り、少しずつ距離を縮めていく。ケーニッヒウルフは急に立ち止まり方向転換し、コマンドウルフに肉薄し牙を突き立てようとするが、後方に飛び交わされる。

 

 

『何だ、そこそこやるじゃねえか、ガキ』

 

 

「……」

 

 

ファングはコマンドウルフの姿を見る。先程の動き、あのグライドキャノンを装備しながらできるものではない。恐らく無理矢理出力を上げ、操作をしていると推測する。そして何よりも……

 

 

「コマンドウルフが嫌がっている……」

 

 

コマンドウルフから聞こえる“痛い”“こんな物を持ちたくない”という悲痛な声……ファングは歯を食い縛り

 

 

「お前は……ゾイドを戦いの道具としか思ってないのか……」

 

『そうだな……半分合ってるが、半分間違ってるな』

 

「何……?」

 

『俺はこいつを生涯の相棒だと思ってる』

 

「じゃあ何でそんな装備つけてやがる」

 

『相棒を強くしてやるのは当然の事だろう?』

 

 

男の言葉にファングの中で何かが弾けた。

 

 

「なんでコマンドウルフが苦しんでるのを理解できないんだ!少しでも相棒って思ってるんなら、んな装備(モン)つけるんじゃねぇ!」

 

『何だと……!』

 

 

操縦桿を握りしめ、ケーニッヒウルフと共に走る。

 

 

「駆け抜けるぞ、ケーニッヒ!!」

 

 

アオオオォォォンッ!!!!

 

 

吠えながらコマンドウルフに接近し、爪に輝きを灯らせていく。

 

 

「クソが!!」

 

 

グライドキャノンで迎え撃とう試みる。しかしコマンドウルフの射撃は一切ケーニッヒウルフに当たることなく接近を許してしまう。射撃を止め一旦距離を取ろうとしたが、コマンドウルフの左後ろ足の間接がショートを起こす。

 

 

「何だと!ちぃ!」

 

「おりゃあああぁぁぁ!!!!」

 

 

オオオオォォォォ―――!!!!

 

 

 

ケーニッヒウルフはグライドキャノンの砲身をその爪を持って切り裂いた。

 

 

「ぐあああっ!!」

 

 

爆散したグライドキャノンにより衝撃に襲われる男。コマンドウルフは大きな損傷を間逃れ、辛うじて動ける状態だ。ケーニッヒウルフはコマンドウルフの前に行き

 

 

「おい」

 

『な、何だ……』

 

「さっさと俺の前から居なくなれ、お前の手下もあの有り様だ」

 

『ッ!?』

 

 

グリントの下に情けなく倒れているコマンドウルフ達。

 

 

『女と侮った貴方達の敗けです』

 

『く……ガキ、名前は』

 

「ファング……ファング・ヴォールフだ」

 

『……俺は『グラウ』……ファング、貴様の名覚えとくぞ!野郎共引き上げだ!』

 

『『へ、へい!』』

 

 

グラウのコマンドウルフが数歩後退し、後ろを向いて去っていき、それを追うように二機のコマンドウルフも走っていく。

 

 

『何とかなりましたね、ファングさん』

 

「ああ……さて、戻って晩飯食い直そう」

 

『賛成です♪』

 




英雄も言っていましたね“ゾイドに本当にその装備が必要かどうかだ”と。

ファングとケーニッヒウルフ及び、シィルヴァとグリントの設定を公開します。

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