Fate/ZERO-NINE【休載中】   作:縞瑪瑙

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まだまだ続くよ、縞瑪瑙の怒涛の連投。
この作品を知った大学の仲間たちからもエールをもらっていますので、
俄然やる気もわいてくるのです。いや~親友とはいいもんですね。

そんな感じで、いよいよキャスター戦に決着です。


Fate/ZERO-NINE 2-3

 きぃきぃと、耳をつく奇声が上がる。

 クトゥルフ系の海魔の声は、森閑としていたアインツベルンの森の中に

生じた戦場に響き渡っている。悪意そのものが生物となり具現化したようなその

不気味なそれは、ヒトデや蛇、あるいはナメクジなどを連想させるような

巨体をぬめぬめと動かしていた。

 

 「はぁっ!」

 「ぬん!」

 

 そして海魔の群れの中央には、二人のサーヴァントが即席とは思えない絶妙な

コンビネーションで百を超える敵に対して悠然と戦い続けていた。槍と剣が一閃される

たびに次々と真っ赤な血の花が咲き、半径三メートルほどのテリトリーには倒れ伏した

海魔の肉片がおびただしい量転がっている。十倒したか、二十倒したか、あるいはとっく

に百までいったのだろうか。それでも双方にあまり疲労はない、すでに安定して戦うスタ

イルを双方が確立し、それに修正を加えつつキャスターのほうへと迫っているからだ。

 さらに、セイバーもランサーも歴戦の戦士であり、この程度の戦闘で疲労し体力を消耗

するほど弱くはない。海魔は単なる突撃と物量頼みの戦術。倒された海魔の血を元手に

さらに海魔が呼び出されるが、呼び出された先から次々と剣と槍の餌食となってそこら

じゅうに体液をまき散らしつつ死んでいく。

 

 「くぅぅッ!」

 

 キャスターは、しかし、何もできない。彼とて狂ってはいるが、戦力差を誤るほど

愚かではない。かつては戦士だったとはいえ今サーヴァントとしての身ではかつての

力を出しても目の前の二騎を相手にしても、勝てないことは明白だ。

 

 「だいぶキャスターも焦れてきたな」

 

 ランサーは槍を引き戻す動きの中で、セイバーに声を飛ばす。

 

 「仕掛け時か?」

 「これだけの海魔、突撃したところで包囲されるのがオチだとは思うが?」

 

 切り伏せ、飛び下がって紫色の触手を回避したセイバーもまた、余裕の表情で応じた。

 だが、彼女もそろそろ倒すための行動をすべきだと判断していた。振り下ろした剣を

返す動きで、二体まとめて切り裂く。そこへ横から飛び出してきたが、

 

 「俺の目を甘く見たな」

 

ランサーの槍が神速の勢いで繰り出され動きを止める。左の必滅の黄薔薇は

くるりと向きを変えると背後の一体を串刺しにした。

 

 「そこだ!」

 

動きが止まったランサーをカバーするように、セイバーは踏み込んで飛び上がって

襲い来る海魔を一刀両断にする。

 

 「ではどうする?」

 

剣についている血をふるう動きで振り払い、ランサーの問いにセイバーは答える。

 

 「策はある。ランサー、風を踏んで走れるか?」

 「ふん、その程度ならば問題はない。最速のサーヴァントの名は伊達にしてはいない

  つもりだ」

 「頼もしいな」

 

 軽口をたたきつつも、二人は突撃の構えをとった。槍を低く構え、右足を前に一歩

踏み出した姿勢のランサー。透明になった剣を、まるで突き出すようにして構えた

セイバー。それはまるで砲台。しかも、遮るものを次々と仕留めていく魔弾を

発するかのようだった。

 キャスターはこれを好機と見た。一刻も早く、自分を導いてくれたあの聖女を

復活させたいという願いがそれに拍車をかけた。

 

 「さあ、その声を聴かせてください、ジャンヌ!」

 

 一斉突撃。耳をつき、頭に響くような奇声を上げる海魔。しかしそこに勇敢さに

満ちたセイバーの声が轟いた。

 

 「風王鉄槌(ストライク・エア)!」

 

 風の鉄槌は、突き出された剣から暴風のごとく走り抜ける。セイバーの剣を隠す風王

結界。それは単純な透明化だけでなく剣の速度の加速やこのような攻撃転用もできるも

のだ。収束されて解放された一撃は、数十を超える海魔を吹き飛ばしキャスターへの

最短ルートを一挙に構築せしめた。

 

 「オオっ!」

 

 そして、しばらくの間構築された風の道。並の人間ならば吹き飛ばされかねないよう

なそこを突っ走るのは、風の速度を凌駕する二槍を携えたサーヴァント。

 

 「いけ、ランサー!」

 

 返答はないが、セイバーはランサーの動きに返事を見た。ランサーの脚力、跳躍力、

そしてそれに上乗せされた風によるブースト。そしてキャスターを討ち取らんとする

その強い意志。

 

 一歩が、もはや十メート以上にも達した。

 

 飛んでいくように走るランサーも、未知の体験に少なくはない感動を覚えていた。

 

 軽いなどという生易しい表現すら追いつかない。

 

 飛んでいることを、認識できないほどだ。

 

 地面に立つような気軽さで、宙に浮いていた。

 

 ただわかるのは時折つく地面の感触がやけに軽いこと。

 

 これが、鳥の感覚なのか、とわけもなくランサーは納得した。

 

 だが、それほど長くはない。

 

タイムにしてわずか二秒あるかないかの時間でもって、キャスターが徐々に下がり続けた

事で開いた百メートル前後を駆け抜けた。邪魔するものは何もない。キャスターの

動きは遅い。ならば、

 

 「抉れ、必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)!」

 

 ランサーは左手の槍をその速度のままに繰り出す。確実に仕留め、倒せなくとも負傷

させることで右手の破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)によってとどめをさすことを狙った動きは、

精神を病み、キャスタークラスであったジル・ド・レイにはあまりにも速過ぎた。

 

ブシュッ!

 

螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を持つ腕が飛び、続けて腹部を抉り取るような一閃。返す動きで、人の皮を

使った表紙を持つまがまがしい本を破魔の紅薔薇が刺し貫く。宝具の効果を打ち消すその槍に

よってすぐさま形を失った螺湮城教本に応じるかのように、海魔たちも苦しげな声を

挙げて崩れ落ちていく。おまけとばかりに、必滅の黄薔薇がキャスターの背から腹に

向かって貫き、引き抜かれた。噴き出す血を無視し、着地し制動をかけつつ滑っていく

ランサーは、もはや振り向かない。

 

 「とどめだ、外道」

 

 風の結界によるブーストを得て、ランサーにこそ劣るが素晴らしい速度で肉薄した

セイバーが剣を振りかぶってキャスターの目の前にいた。

 

…ああ、ジャンヌよ。

 

 死の直前。ジル・ド・レイは刹那の間、正気へと戻っていた。

 それは、剣をふるう凛とした姿に、ある少女を重ねた故だった。

 

…あなたのような乙女は、多くいたようです…

 

 今になって考えれば、この少女はジャンヌではない。だが、その在り方は、気高く戦う

その様は、自分のあこがれたジャンヌそのもの。

 

…だから、間違ったようです…お恥ずかしい…

 

 『いいのですよ、ジル。さあ、おいでなさい』

 

 そんな声が、聞こえた気がした。やさしく自分を包み込むような母性に満ちた

あの聖女の声と姿を、一瞬知覚した気がした。ふっと笑みを浮かべたジルは、ただ

その英霊の剣を負傷した肉体へと受け入れた。

 

 「見事です、アーサー王よ。いや素晴らしい」

 

 それが消滅直前に言った、最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

    ●

 

 

 

 決着した場で、セイバーは静かに黙礼を送っていた。それはランサーも同じだった。

二人とも、最後の瞬間に見せた、本来の英霊としての姿を目撃したからであった。

 だから、いかに悲惨な事件を起こしているとはいえ、討ち取った二人には少し

ばかりの後悔があったのだ。

 

 「…安らかに眠ってくれ、ジル・ド・レイ」

 「できれば、戦士として戦いたかった」

 

 最後の魔力の塊が消滅し、ようやく平穏が森の中へともたらされた。最後に浮かべて

いた笑みだけは、まぎれもない本物だったのだと、二人は心に刻んだ。さて、と身構え

たのはしばらくしてからだ。互いに阿吽の呼吸で戦っていたのは先程までのこと。

 次は、目の前の強敵と戦うことに集中するのみだ。

 

 「やるか、ランサー」

 「ふん、おもしろいな」

 

 休戦命令は、キャスターの討伐までとされている。ならば、キャスターが討滅された

この環境、この場所、そしてほかのサーヴァントの介入の危険性がない一対一の

願ってもないチャンス。

 

 「ッ!?」

 

 しかし、そのにらみ合いは一瞬で崩れた。ランサーが不意に、何かを感じ取ったのだ。

レイラインを通じて、自分が仕えるマスターの身に何かが起きたことを。

 

 「セイバー…」

 

槍をゆっくりとおろして眉をひそめたランサーに、騎士王もまた武器を下ろすことで

応じた。

 

 「マスターの危機なのだろう。ならば、行くがいい。勝負はまたお預けとなったが」

 「またいつか。フィオナ騎士団の一番槍の力を見せよう」

 「受けて立つとも。ブリテンの誇りにかけて」

 

すぐに霊体化したランサーの気配は消え、ようやくセイバーも息をつくことができた。

左手の感覚が先ほどまでの戦いで消えかけていたのだ。あのまま戦っていたらどうなって

いたかは、正直不安があるところだ。

 

…次こそ、決着を。

 

右手でかばいつつも、剣の英霊、セイバーは決意を新たにしていた。

 

 

 

 

 

    ●

 

 

 

 

 そして、三組目の侵入者がこの夜にはあった。

 

 「…」

 

 無言で森の中に立つのは、カソック服をきた一人の神父言峰綺礼。

脱落したと見せかけたアサシンのマスターは、その手に独特の武器黒鍵を持っている。

代行者として過ごしていた時代から愛用する、投擲のための剣だ。

投げつけることを主眼とし、重心を剣の先に持たせ、さらには術による属性付加(エンチャント)

つけることで、死徒などの特殊な相手にも有効な武器となっている。

アインツベルンの城への侵入は、独断専行に近いものだった。

 しかし言い訳も考えてある、キャスターの討伐のため、というものだ。アインツベルンの

森に出没したとアサシンからの報告があったときは、もはや無意識に動いていた。

 アインツベルン陣営と手を組んでいる、あるいはアインツベルン陣営のマスターである

と睨んだ彼は、切嗣を探していた。自分にとって求めなければならないものが、そこには

ある気がした。確証はないが、確信はある。

 

…問わなければなるまい…何を見つけたのかを。

 

 そして、先ほどまでの戦闘でとらえたのはアインツベルンのマスターである

ホムンクルスだった。もう一人はあちらの地面で転がっているが、今はどうでもよい。

聞き出すだけ聞き出したが、事実の確認でしかなかった。いかに頑丈なホムンクルスと

いえど、体の主要な骨を折られ、内臓にまでダメージを負った状況なら長くはもつまい。

とどめのように黒鍵を腹部へと突き刺しそのまま地面へとホムンクルスを投げ捨てた。

 

 「戻るか…」

 

 無意識に落胆が混じった声を漏らした綺礼は、しかし、ぴたりを動きを止める。

 理由はない。直感だった、この場に自分とホムンクルスと、衛宮切嗣の使う女以外にも

この場を覗くものがいると。

 

 「…!」

 

 カソックの袖から出た両手が持つのは、新しい黒鍵の柄。魔力を供給されて刃が形成

されると同時にそれをなげうった。空気を切る音は、しかし途中で銃声によって

途切れて地面へと転がる音へと変じる。鉄甲作用によって高い威力を持つ黒鍵を同時

に六本も拳銃に落とす能力を持ちうるのはこの聖杯戦争においてたった一人しか

ありえなかった。

 

…ライダーか。

 

銃声は一瞬のうちに十数発響いた。あの威力を持つものをほぼ二発の銃弾ではじくなど

考えたくもない技量だ。しかも同時に六本も、だ。それに加えて、自分はアーチャーに

手を出すなと言われている。強制力こそないが逆らうとどうなるか分かったものではない。

耳をついたのは弾倉をリロードするかすかな金属音、倉庫街での銃撃がもう一度襲ってくる

かもしれないという危機感が、綺礼に撤退を選ばせた。

 

 

 

    ●

 

 

 「ギリギリ…いや、少し遅かったか…」

 

 死に体のアイリスフィールの五感へと届いたのは、渋い男性の声だった。

地面にうつ伏せとなった状態では上を見ることはできないし、視界も狭いまま

だったが、それだけははっきり届いた。

 

---大丈夫かしら?

 「…まだ息はあるな。さすがに魔術によって生まれたホムンクルス。並の人間なら

  死んでもおかしくはないな」

 

 二つの声。片方は恐らくライダーだろう。倉庫街で直接ライダーを見たアイリスフィ

ールはぼんやりする頭でそう考える。もう一人は、マスターなのだろうか。深い知性を

感じる不思議な声で、ずっと聞いていたくなる。しかし、不思議なことに耳に届く

足音はライダーのものしかない。まるで宙に浮いているかのように足音をさせない声

の主に、アイリスフィールは俄然興味がわく。

 

 「アインツベルン製のホムンクルス、さすがに聖杯の知識にあるようなもの

  とは別格だな。なんというか、人により近い」

---ウフコック。

 

 咎めるような少女の声に、肩をすくめたような気配がする。姿を見たい気持ちはより

強くなったので、力を振り絞って顔をずらす。数節の呪文で体の痛みに麻酔を入れ、

絶たれた筋肉をいくつか修復する。すごいことだ、自分の中のとあるモノに、

ほんの少し前に中身が注がれたばかりだというのに。

 

…見える?

 

 見えたのはピクリとも動かない舞弥の、包帯によって手当てを受けた姿だった。

目を閉じたあの一瞬で巻いたのだとしたらとんでもない速さだ。こちらに歩いてくる

ライダーはいたわるような雰囲気を持っていた。先ほどまでの戦闘のことなど

微塵も感じさせないような無害さで。そして、不意に血が引くような感覚とともに

意識が闇に飲まれる直前、アイリスフィールの瞳はやっと声の主を見つけた。

 

…え…ネズミ?

 

 当たり前のように二本足で、ライダーの白い戦闘服の肩の上に乗るのは、暗闇の中

でも金色に輝くネズミだった。それをもっとよく見ようとしたときには、負傷した

体と精神はもう抗えなかった。気を失った。

 それを見たライダーは慌てて脈を診るが、問題はなかった。

 

---慌てて損したみたい。

 「まあ、それよりも早く治療をしてこのホムンクルスのご婦人の体を調べさせて

  もらおう。先ほどから嫌なにおいがプンプンする」

 

 ウフコックのここでの匂いは、決して生活臭などの匂いではない。相手の放つ

魂の匂いを嗅ぎつけるのがネズミの能力だ。ライダーが両手をそっとアイリスフィール

の体に当てると、手袋となっていたウフコックは自分の体内から包帯やガーゼ、

消毒液などを順々に取り出して一瞬で巻き付け負傷を覆っていく。そうしてアイリスフィ

ールの背中の上に降りたったウフコックは、スンスンと鼻を動かしつつあちらこちらと

動き回る。

 

 「…やはりか。無色の魔力に満ちていない。…それに、やはり俺の推測は

  当たっていたようだ」

---どういうこと?

 「ライダー。ご婦人の体内を、内部の機構に触らないように探ってみてくれ」

 

 頷いたライダーは、いったん息を深く入れて意識を集中する。

 ホムンクルスは、人間のように動く精密な人形にも等しい。しかもきちんと食事をとり

代謝系を動かし、本物の人間以上に活動的なのだ。このアインツベルンの森に

乗り込んだ時にライダーが仕掛けられた魔術を解除していった時とはわけが違う。

探るだけでも、ただ探るのではない。

 

 『…もっと深いところに…余計な情報に足を引っ張られるな…』

 

 とある楽園でであったイルカの言葉を思い出す。そう、余計な情報に、人間らしい

活動をする表面的な機能に惑わされずに、もっと深い位置にある重要な情報を

探っていくことが必要だ。

 人間らしい機能はそろっているが、それらは生命としての機能だけでなく

魔術的な要素も含んでいる。心臓は血液に混ぜた魔力を流すポンプであるし、消化

器官には食べたものに含まれる魔力を効率的に取り込む仕組みがつけられている。

眼球には魔力を感知しやすくする工夫があるし、数年前まで子供が入っていたと

思われる子宮には親の持つ魔術的能力を遺伝させやすくする複雑な術が埋め込まれ

ているのがわかる。負傷している状態であるためか、体内では肉体の機能を維持

しようとする術が自動で働いている。

 これほどまで作り上げるのは、やはり長い歴史を持つアインツベルンならでは

の卓越した技巧だろう。これらを手掛かりにライダーは探知を続ける。

 

 『以心伝心(セマンティック)に探ってみるんだ』

 

 そう、意味論的(セマンティック)に。得られる情報を統計的に、そして有機的に

整理する。楽園のあのプール型の情報端末に一体化した時の感覚を皮膚で思い出し

ながら、更なる深みへ。脳、脊髄、肺、消化器官、耳、目、上皮組織や子宮などの

女性としての機能。各種臓器や体毛、分泌系や神経系までもが本物そっくりだ。

体中に張り巡らされた魔術回路はライダーの皮膚による干渉に反応してわずかながら

動きを見せている。

 そして、ライダーの感覚は体の最も重要な機関である心臓の内部へと。強力無比な

魔術的な保護とプロテクトを何十によって包み込まれた部位へと達する。かなり厳重だ。

イメージは城の壁や砦。しかしそれは無骨ではなく、魔法にも近いレベルの魔術が

組み合さって構築された芸術的なものだった。

 

…もっと深く…

 

 これを強引に突破しては、多分中身は丸ごと崩れるだろう。地面にたたきつけた

卵のように殻と黄身と白身がごちゃごちゃになるように、これもまた繊細な接触が

必要だった。かつて“楽園”で体験したものよりも流動的であるが、同時に”楽園”

以上の予定調和を感じる。まるで、中央部だけが完璧に茹で上がった卵だ。

 外とつながるわずかな道を、ライダーの感覚が通り抜けやがて中央へとたどり着いた。

 

---これって!?

 

 そして、それら(・・・)を認識した直後に、ライダーは身の危険を感じて一気に意識を

自分の体の中へと引っ張り上げる。思わず叫んだライダーに、ウフコックは重々しく

うなずいていった。

 

 「ああ----アインツベルンが用意する、聖杯戦争のキーとなる儀式用の礼装。

  このご婦人の体内には小さな聖杯が入っている」

 

 ウフコックが宣告した内容は、あまりにも衝撃的な内容だった。なぜわざわざ

ホムンクルスがこの冬木にまで来ていたのか、その理由がこれだ。倉庫街で、そして

アインツベルンの城で、ひいては冬木の町に満ちていたよくわからない匂いの正体。

 それはこの街を散策したアイリスフィールが、我知らずとまいた匂い。地脈から

地表へと染み出た聖杯のバグによる影響。この聖杯戦争が、すでに崩壊の危機を

迎えていることの証。

 

 「単純な器のような機能でまさしく聖杯だな。これ自体には、まだ中身が一つ分

  しか満たされてはないが、外からの魔力によって満たされれば間違いなく

  願望機となる仕掛けだ…」

---でも、なんでアインツベルンは聖杯とその中身を準備できるのに、わざわざ聖杯

  戦争を始めたの?

 「…それはまだ、俺の中では推測段階だ。ここでは何とも言えない。だが」

 

ウフコックは赤い目でライダーを見上げる。

 

 「このご婦人の体の聖杯と、この冬木の地下にある聖杯は魔術的にリンクしている。

  さらには、本体の地下にある聖杯にはバグが起こっていて、それが原因で…」

 

呟き、消えていく声は、しかし突如声音を変えた声によってさえぎられた。

 

 「殺意の匂いだ!来るぞ!」

---ッ!

 

 急速に高まったその匂いにウフコックが叫び、ライダーの体に飛び乗った瞬間。

それは、闇を切り裂いて、無防備だったライダーへと襲い来た。

 

 

 

 

 




 みなさん、こんばんは。
 オリジナル展開がいよいよ迫ってきています。ライダーとウェイバーの主従は
一体どうなっていくのでしょう?今回はケイネス先生がちょっと省かれています。
きちんと補完するのでお楽しみに。といっても原作とはあんま変わらないかもしれま
せんが、ソラウの状況が違うのは原作との剥離点ですね。
 今回の話は、この小説の平均文字数を大きく超える七千文字以上の、力作ではないかと
我ながら考えています。キャスターであるジル・ド・レイの最期は
いかがなものでしたでしょうか?感想で一言言っていただければ作者は
非常に喜びますので、気が向いたらお願いします。

 最近は作業用のBGMとして、Zeroのオープニングを聞いています。
もしもあの映像にライダーことバロットたちが混じっていたらどうなるのかと、
妄想は止まらん次第であります。

 しかし、昨今のアニメのオープニングではいい曲に会いまくる状況です。
ヴァルブレイブ然り、刀語然り、もちろんマルドゥック然り。
原作を読むとより面白いのがマルドゥックですので、お勧めします。

 では、しばらく空くかもしれませんが、次話をお楽しみに。

五月十一日、誤字修正をしました。
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