Fate/ZERO-NINE【休載中】   作:縞瑪瑙

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 これで第一章改訂終了です。しばらく空けて第二章に移ります。


Fate/ZERO-NINE 1 interlude

 切嗣の姿はアインツベルンの城へと戻っていた。

 森の奥深く、魔術的な人払いの結界に加えて、侵入者を迎撃するシステムや切嗣が設置した爆薬やカメラなどが仕込まれているさらに奥は、一般人が知ることがない城があった。

 ランサー陣営の打倒を狙いハイアット・ホテルの爆破は舞弥の手によって実行され、切嗣は舞弥の撤退を確認したうえで撤収していた。急いで、と付ける必要がある。設定していたルートを何度か迂回し、追尾してくるであろう追手を警戒していたために夜遅くになってしまった。

 

 ……何者かがつけているな。

 

 ランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは少なくとも爆発の中へと消えたことは確認できた。しかしランサーとロード・エルメロイの婚約者はなぜか先に脱出していった。どう考えても、何者かが情報を漏らしたのだ。自分たちが建物ごと吹き飛ばすことを。

 

 ……キャスターか、あるいはアサシンか……

 

 候補は二つ。

 だが、少し考えれば一瞬で否と断定できる。舞弥に指示を出した時、通信機を使っていたのであって、使い魔や魔術礼装などキャスターに介入される様な手段は使っていないし、アサシンはマスターともども遠坂時臣とグルだ。ランサーの脱落はいずれ狙うのだからわざわざ逃がす必要などない。

 では、と切嗣は言葉を作りつつ城内の廊下を走る。

 

 ……では、一体どの陣営がもらしたか、だ。

 

 あのアーチャーは、とてもではないがそんなちまちました行動をするとは思えないし、他のサーヴァントにも嫌悪感をあらわにしていた。またセイバーもアイリスフィールと行動を共にしている以上そんな事をしている暇などあるはずもない。バーサーカー陣営は、あのどう考えても急造の魔術師がそこまでやるような余裕を持つとは確率としては低いし、アーチャー陣営同様、ランサーの脱落を狙うはずだ。

 そして残ったのは、ライダー陣営。

 未知の能力。

 そう断定するしかない。なんら証拠があるでもなく、ましてや、確認をとったわけでもないが、消去法としてこれしか残っていなかった。

 

「舞弥」

 

 呼んだ先、気配も、表情もない黒髪の女性がいる。自分を構成するパーツに切嗣は問う。

 

「どう思う」

「ライダーの手によるもの、と見るのが妥当です。信じたくはありませんがライダーがはるか未来の英霊で、現代の手法に対し対抗する能力を持っているとすれば、あるいは」

「未来。なるほど、ありうるな」

 

 未来。科学と魔術が相反するものであり、また科学が進歩した現代では英霊となるような偉業を成し遂げる人間は非常にまれになっている。かといって、ゼロというわけではない。方法があるのは知っている。

 一つは自力で、本当に英霊となりうる偉業を成した。

 もう一つは、“世界”と契約した。

 どちらも、此方の知識を超えた力を持ちうるものだ。廊下を移動しながらも切嗣は思考を速めていく。

 

「どんな能力かは、初戦においては見事に隠匿されたまま。しかもランサー陣営に貸しを作り、他のサーヴァントの能力について情報をえて撤退か」

 

 対し、こちらのサーヴァントは真名を看破され、おまけに治癒が効かない傷を負った。

 ランサーの脱落工作は失敗し、アーチャーは真名がむしろ不明となった。

 バーサーカーはセイバーとの関係が考えられるが、ステータスすら不明。

 アサシンはまだ生きており、キャスターは姿を出していない。

 

 ……戦略的敗北だ。

 

 唯一ランサーはマスターが令呪を一角使用し真名も判明したがセイバーよりもマシ、と判断できる。

 

「舞弥、ライダー陣営を探すぞ。あれは何としても排除する」

「はい」

 

 知らず、歯ぎしりをした切嗣は戦略の練り直しを始める。最優たるセイバーを如何に使うかを。

 

 

 

 

  ●

 

 

 

 古い民家があった。あまり手入れがしてあるとは思いにくいが、それでも住居としては申し分ない。

 

「ソラウ様、どうでしょうか」

「そうね……工房としてはいまいちだけど、少なくとも隠れるにはちょうどいいわね」

 

 そこにはランサーとケイネスの婚約者、ソラウの姿があった。ライダーの協力者の手引きで、二人はハイアットホテルからこの住宅街の一角へと避難していた。それなりに広く、持ち出せた魔術品はなんとか誰かが入って来ても目立たないように隠せた。

 

「便利よね、機械だなんてあまり使ったことがないから知らなかったけど」

 

 ドクターと名乗る人物が、科学的な監視システムを設置していったのだ。一番奥の部屋、ランサーが安全だと判断したそこにはいくつものモニターが置かれ、部屋を出ることなく外の様子を見ることが出来た。

 

 

「暫定的な同盟ですが、われわれとしては損がありません。ライダーには感謝すべきでしょう」

「……ちょっとここまでされると、むしろ疑っちゃいそうだけどね」

 

 支度金、という名目でちょっと驚くくらいの札束を渡され、銀行口座も用意された。曰く、ライダーが自分で稼いだらしいが、

 

「……ハイアットホテルのカジノとかで、ここ数日なんだか盛り上がっていたけど。もしかして」

「あそこで稼いだ、かもしれません。真っ当とは言い難いですが、我々はそれもまた手段だと割り切るしかありません」

 

 彼女たちとしては非難しがたい手段だ。しかし、こうまでされて咎めるのも心苦しいことで、結果的に頼ることにしたのはこちらだ。

 

「ケイネスは無事なようだし。ランサー、明日からケイネスの捜索をお願い。ライダーとの同盟については私がなんとか説得するわ」

「はっ」

 

 こうしてケイネスを除いたランサー陣営は、漸くの安心を得たのであった。

 

 

 

 

 

   ●

 

 

 

 遠坂時臣は手にしていたものを机に投げ出した。乾いた音を立てたそれは人の顔の一部を模していた。

 

「これが、冬木の教会に?」

『はい。しかも複数置かれていました』

 

 吐息とともに時臣はそれを見て呟く。

 

「露見していたのか……」

 

 それはアサシンの付けるマスクやダーク、あるいは体に巻くバンドや装飾品。それが態々監督役の元へと送られてきた意味はただ一つだ。

 

「あのライダー、と見るべきか。警告してきたな」

 

 アサシンが脱落したと見せかけるのは時臣が考えたことではあったが、早晩に崩れるとはあまり予想してはいないことだった。

 

『ランサー陣営が拠点としていたホテルは何者かに爆破されたようです。おそらく衛宮切嗣によって』

「……監督役から警告はできないのかね? 一般人への被害が大きくなると思うのだが」

『魔術を使うならいざ知らず、純粋に爆弾を仕掛けたもので、魔術の秘匿という原則は守られています。一般人も退避させたようですし、魔術師としては落ち度はありません』

 

 唸る時臣だが、確かに衛宮切嗣は魔術の隠匿という法を守っていると納得せざるを得ない。ここで大きく出ると、むしろ怪しまれるだろう。

 むしろ、そういった手段に走る魔術師だとわかったことをよしとすべきだろうか。

 

『……』

 

 他方、綺礼はある意味悩んでいた。アーチャーがあのライダーに興味を抱いていることを、話しておくべきか否かを。もしも、師がライダーを倒すためにアーチャーを動かそうとしても、おそらくアーチャーは抵抗するだろう。令呪を使ったとしても殺害後に師が無事である保証はない。

 何より、倉庫街での戦闘から無理やり引き戻したことで、アーチャーの師に対する評価は底値を割っていると思われるのだ。

 

 ……師はどうやら令呪を残そうとしているそぶりが見られる

 

 戦略的な意味からか、他の意味があるかは不明だ。もしもの時のため、かもしれない。

 

「ともかく、ライダーには警戒をしておこう。アサシンのトリックがばれているなら下手に手出しはできない」

『はい』

 

 

 

 

   ●

 

 

 

 アイリスフィールはブッ飛ばしていたメルセデスベンツ・300SLのガルウィングドア型からようやく降りた。彼女としては、まだまだブッ飛ばし足りなかったのだが、セイバーのいさめもあってようやく本来の本拠であるアインツベルンの城へと戻ったのだ。

 しかし二人の表情は硬いまま。先ほど遭遇したサーヴァントの存在が大きかった。

 

「キャスター……自分から名前を名乗るとは思わなかったけど」

 

 ジル・ド・レイ。

 アイリスフィールはおぼろげだが知っている人物だ。本名をジル・ド・モンモランシ=ラヴァル。フランスとイギリスの間に起こった百年戦争でジャンヌ・ダルクとともに戦ったフランス元帥だ。紆余曲折を経て、戦争を終結させた英雄である。

 

「あれはどう考えても反英霊として呼ばれてるわね……」

 

 やったことの半分、ジャンヌ・ダルクに協力して戦ったことはもちろん英霊クラスの偉業だ。しかしその後が問題だ。錬金術や黒魔術に傾倒し、子供を次々と拉致した。その子供の数は千人にも上るとか。一説では、ジャンヌ・ダルクが異端として処刑されたことで心を病んでしまったための反動ともされる。

 つまり、“英雄”として名をはせたころよりも、晩年の、殺人鬼“青髭”のモデルとなった精神異常者だったころを再現している。

 

「私を別人と間違えていましたね……ジャンヌ・ダルク、ですか」

「セイバーは、どうやら聖杯から知識は得ていないのね。……アーサー王の最期を考えれば当然だけど、まさかのちの歴史を知らないなんてね」

 

 車庫がないためそのまま駐車し、二人は城の中へと急ぐ。

 聖杯戦争、初日から大いに動きがあり、そして集結の一途をたどる。冷たい夜風に身を震わせたホムンクルスは、セイバーを伴い城へと消えた。その震えに、恐怖が混じっていたのは間違いないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fate/ZERO-NINE 1 END

 

 

 

 

 

 

 

 

     ◇

 

 

 

 

 

 

ごちゃついてきたので現状を整理

 

 

・セイバー陣営

 セイバーが左腕を負傷し真名がばれ、さらには宝具についてもほとんど暴かれている。初戦における実質の敗北者。

 アインツベルン城へと撤退中キャスターと遭遇。

 

・アーチャー陣営

 マスターの評価が底値を割る。アーチャーはライダーを気に入っており、調べる。

 

・ランサー陣営

 ケイネスはホテルごとドカンとふっ飛ばされ、消息不明。ソラウとランサーは逃げ出して、ライダーとの同盟関係を得て冬木に潜伏。

 

・アサシン陣営

 英雄王の扱いにマスターが困惑。その他は原作を踏襲。ちなみに、舞弥とは戦闘していない。

 

・ライダー陣営

 能力をほとんど隠匿し、一番利益を得た。バーサーカーのマスターをドクターが確保し、大幅な戦力アップか。全てのサーヴァントがそろうまでに、冬木のカジノなどで現金を稼ぐ。

 

・バーサーカー陣営

 おじさんはドクターの治療を受けて、実質脱落状態。作者としてはバーサーカーを如何に決着つけるか迷ってたりする。

 あとは桜ちゃんをどうすべきか。

 

・キャスター陣営

 原作を踏襲。マスターも変更無し。

 

・その他

 冬木への到着順

 

時臣・綺礼・雁夜・龍之介・舞弥>ウェイバー>ケイネス>>アイリスフィール>切嗣

 

 

 

・時系列

 ここからは、倉庫街での戦いの日を0として順番に書いていきます。原作の日付のずれとか原作との多少のずれは気にしないでください。

 

 

 

-8以前:

 ウェイバー、舞弥ら冬木に到着。

 

-7:

 サーヴァントの一斉召喚(セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカー)

 

-6~-2:

 各陣営が使い魔を放つなどして拠点の設置や戦闘準備。

 ケイネスがランサーらとともに冬木に到着。

 

-1:

 切嗣、セイバーたちとは別ルートで先行して到着。

 アサシンの脱落偽装。

 キャスターが召喚される。

 

0:

 セイバーら、冬木に到着。

 倉庫街での戦闘。

 ランサー陣営のハイアットホテルが爆破され、ケイネスが行方不明に。ランサーとソラウは脱出。

 間桐雁夜、ウェイバーらに確保される。

 

+1:

 ランサー陣営はライダーの用意した住宅に避難、暫定的な同盟を結ぶ。

 

 

以下予告。

 

 

「ライダーには借りがあるのでな、手を貸そう」

 

 アインツベルン城にて共闘する騎兵と槍兵。

 

「今ここでライダーを倒さねば……僕たちは脱落の確率が高くなる……」

 

 銃口の先にライダーを捕らえる切嗣。

 

「おお、ジャンヌよ……!」

 

 狂気にとらわれたキャスター。

 

「僕には何にもできない。魔力だって足りてないだろ?」

 

 優秀すぎるサーヴァントを従えるが故の、葛藤。

 

 

次章Fate/ZERO-NINE 2 解凍

 

 




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