水も滴る触手精霊、始めました。   作:ジョン・ドウズ

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諸君。触手好きの諸君。

お ま た せ 。


Date.10「いつから俺は便利屋になったのか」

  士道先輩去勢未遂から、二日後。

 

  事件は、起こった。

 

「何だ?」

 

  俺がいつも通りコンクリの山の中で読書して過ごしていると、道路工事のような激しい音が公園に近付いてくるのが聞こえてきた。恐ろしいことに、誰かの足音らしい。

 

  その足音はコンクリ山の前で止まる。

 

  おう、俺正直おっかなくて怖いんだが。誰だよ。そんな人間重機みたいな奴。

 

「誠よ!いるか!」

 

  あ、十香だった。悪い、美少女をデカブツ扱いして。ほんに申し訳無い。

 

「ここにいるぞーー」

 

  山のトンネルのうち一つを開き、ヌッと顔を出す。そこには、雨が降っていると言うのに傘も差していない十香が、仁王立ちしていた。

 

「おうどうした十香、遊びに来るなら傘くらい使えって。ほれ入った入った」

 

「む、邪魔するぞ」

 

「靴は脱げよ」

 

「分かっている」

 

  ただ遊びに来たという感じでは無かったが、取り敢えず中に入れることにした。流石に二人も入ると少し手狭だ。最近来客が続くので、コンクリ山の中をすこーしだけ掘ってスペースを広げたのはナイショ。

 

  茶請けに乾パンを用意。ペットボトルに入れたサクマ水(サクマドロップを水に溶かした)と共に出しつつ、十香に話を聞くことにする。

 

「………んで?どうした急に」

 

「誠よ、頼みがある。私をここに置いてくれ!!」

 

「何かと思えば家出かよ!?」

 

  拍子抜け。

 

  さて、何が原因やら。

 

「うむ。もうシドーなんて知らん。ばーかばーか」

 

「成る程、先輩がなんかやらかしたか。恥ずかしい所でも覗かれた?おっぱいでも触られた?一発ヌかれた?それともご飯抜かれた?」

 

「いや………その、見られたし触られたが…………その………ええい!それは違うのだ!」

 

「違うのかよ、寛容だなお前」

 

  正妻の余裕か?というのは言わないでおく。十香だとこの手のフリは反応鈍いから、多分聞き返される。

 

  さて………それが違うなら、何だ?

 

「別に、もうシドーのことなど気にはしておらん!他の女とイチャコラしてようが、もう私には関わりが無いことだからな!」

 

  思い切り叫んで、サクマ水を煽る。おーいい飲みっぷり。お代わりいるか?

 

「成る程………いや待て、俺はまだOK出してねぇからな?」

 

「私には関わりが無いことだからな!」

 

「………あーはいはい、わあったよ………」

 

  こうなったら十香はガンコだ。本人が納得するまでは梃子を粉砕してでも動かないぞ。先輩、今度何か奢ってくれても良いんですよ、ここまで来ると。

 

  そんじゃ、変態によるカウンセリング、始めましょうか。

 

「十香。その、先輩がいちゃついてた女ってのはどんな奴だ?折紙先輩か?それとも、見たこと無い人か?」

 

「見知らぬ女だ。鳶一折紙ならば今頃殴り込みに行っている」

 

「だろうね」

 

  とは言ったが、お前先輩の家知らないだろ。俺は知ってる。いや、一昨日知った。『先輩にご奉仕好きの可能性が微レ存』てメールしたら、地図を添付した返信で呼び出され、

 

「士道はメイド好きと聞いていた。今回の情報はそれを裏付けるには充分。感謝する」

 

  と言うなり、男目線で惹かれるメイド服はどれかと二時間位ファッションショーに付き合わされた。いや、どれも似合ってたけどね。無茶苦茶似合ってたけどね。『お部屋をお連れします』と言わせたくなる位には。

 

  流石に胸元殆ど隠してないエロメイド(というか裸エプロン)は士道先輩の為に止めたが、ミニスカート+ガーターベルト+ハイソックスは譲れなかった。

 

  これの破壊力嘗めんなよ。コロニー落とし級だぞ。確かにロングスカートも素晴らしいが、性欲を掻き立てる『魅せるスカート』としてはミニスカートのパワーは計り知れない。動いた時にフワリと浮き上がり、伝説の秘境:女子の三角地帯(ショーツ)が見えそうで見えないというこの黄金比。ガーターはスカートの中への道標であり、瑞々しい太股を強調すると共に男を誘う。ハイソックスは清楚さをアピールしつつ、足のラインをよりハッキリと浮かび上がらせつつの、爪先をスリムに見せエロスを掻き立てるイケナイ装備。ガーターと合わせることで、清楚さと大人の魅力が加わりそのエロ(チカラ)は無限大。イデ発動。これぞメイド下半身三種の神器。

 

  ────と力説して、先輩が最後に選んだ奴を推したら次の瞬間固い握手してた。そして、

 

「以後、折紙と呼んで」

 

  と、けっこう心開かれた。それでいいのか折紙先輩。

 

  ────話を戻そう。

 

「そんで?じゃあどんな娘だったんだ?」

 

  十香は暫し頭を捻ると、かなり嫌そうな顔をして答えた。

 

「小柄だった。左手にウサギの手袋をした、口の悪い無表情な女だ」

 

  うわぁ。

 

  より詳しく聞けば、空間震警報が響く中、避難もせず何処かに消えた士道先輩を追った所、その女とキスしてる場面に遭遇してしまったとか。

 

  嗚呼、四糸乃ってか、よしのんが喋ってる時の四糸乃しか思い浮かばねぇ………。確かによしのん、ノリが軽いからなぁ。ちょっとからかったりフザけたりしても、相手によっては馬鹿にしてるようにしか聞こえないからなぁ。

 

「なあ。そいつ、よしのんって名乗らなかったか?」

 

「知っているのか誠!?」

 

「当たりかよ………」

 

  こりゃあ放っとくとメンドクセーことになりそうだ。士道先輩は四糸乃に接触せざるを得ないのに、十香は四糸乃にお冠。勘弁して下され。

 

「あー、十香?よしのんというか、四糸乃のことなんだが」

 

「聞きたくない」

 

  説明しようとした途端、両手で耳をガードしやがった。十香、そんなに嫌か。

 

「いいから聞け。四糸乃も精霊だ!」

 

  イヤイヤする十香に無理矢理手をひっぺがして聞かせると、目を剥いて驚かれた。

 

「な、何だと!?」

 

「お前とほぼ同じ状況だろ、察しろよ」

 

「む、むう………」

 

  旦那が浮気してると思ったら、ちゃんとした仕事でしたというオチに納得が行かない奥様のような、何とも言えない苦い表情の十香。まあ、そりゃそうだろ。好きな男が他の女とイチャコラするのを、壮大な理由で正当化されても納得いかねぇよ、普通。

 

「だが………あのよしのんとやら、私を『シドーに飽きられた』とか、『もう要らない子』と言ったのだ。それをシドーは否定しなかった。寧ろ、あやつを気遣ったのだ。その後も煮え切らん態度ばかり。やはり、私は………精霊だとか関係なしに、シドーには要らないのでは」

 

  そう言うと、寂しそうにペットボトルを口に付けた。

 

  十香は、自分の恋に無自覚だ。士道先輩を全面的に信頼し過ぎるが故に、恋人と友達と親と兄弟を引っ括めたような存在に見ている。そこに恩というオプションが加わり、士道先輩を見る目に何処か期待のフィルターが掛かっている。

 

  だから、士道先輩に大事にされないと悲しいし、悔しい。腹立たしい。でも、直接言うのも恥ずかしいような、言わなくても分かって欲しいような………。色んな感情が纏めてやって来て、まだ精神的に未熟な十香のキャパシティを容易くオーバーしてしまう。

 

  よしのん。今度覚えとけ。火が移るギリギリまで焚き火に近付けてやる。四糸乃には悪いが、ちょっとやりすぎた。人を傷付けてまでからかっちゃいけない。

 

「十香。友達として言えることは一つ。先輩は、お前のことを嫌いになるなんて無いよ」

 

「何故、そう言える」

 

  自棄になって乾パンを流し込むように一缶丸々一気食いした十香が、口許を拭きつつ聞いてくる。

 

  そんなの、分かりきってるだろうに。

 

「簡単だよ。先輩がお前を封印した日のこと、忘れてないだろ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()お前を、どうして嫌いになるんだよ」

 

「──────ッ!!」

 

  目を丸くし、息を詰まらせる十香の頭に、ポンと手を乗せる。

 

「あの人はバカだから。赤の他人も精霊も救おうとしちゃうバカだから。他人の笑顔を見て幸せだって豪語出来る程のバカだから。だけど、そんなバカだから、俺も十香も士道先輩が好きだ。違うか?」

 

「─────違、わない」

 

「だろ?お前がこうやって浮かない顔してりゃ、絶対に探しに来る。見てみ?」

 

  俺のスマホをずいと十香の眼前に突き出す。表示されているのは、話している間に来たメール達だ。

 

『十香、来てないか?』

 

『十香がどっか行っちまったんだ。見かけたら教えてくれ』

 

『今どこにいる?駅の辺りでは見なかった』

 

  これ以外含め、たった三十分で十通。相当必死で探してるらしい。最も、かなり見当違いの所を当たっているようだが。近場来なさいよ、先輩。

 

「愛されてるだろ、な?」

 

「う、うむ………済まない誠。やはり帰るとする!あてっ!?」

 

  すっくと立ち上がろうとして、低い天井に頭をぶつけた十香。涙目になっているが、それもまた愛嬌がある。

 

  先輩。こんないい子不安にさせちゃあ駄目ですよ。

 

「おう、しっかり謝って、しっかり文句言ってこい!」

 

「うむ!行ってくる!」

 

  来たときと同じく、けたたましい程の足音を立てて、十香は去っていった。うっわ、見えなくなるの早いなぁ。瞬きしたら消えたレベルだ。

 

「本ッッ当に忙しいお方ですわね」

 

「まあ、元気なのが十香の長所だからな」

 

  先輩に十香が帰ったことをメールし、溜め息を一つ。学年で言えば、今では十香も先輩っちゃ先輩だ。けど、デッカイ妹のような、抜けた姉のような………まあなんだ。世話の焼ける家族みたいってのは変わんないか。

 

  ………………………ん!?

 

「誰!?」

 

「狂三ですわ」

 

「ホいつの間に!?」

 

  十香を見送っている間に、いつの間にかコンクリ山の中に狂三がいた。全く気付かなかった。どっから湧いて来た。

 

「お前………えぇ………(困惑)何しに来たんだよ」

 

「今日も誠さんを戴きに。天使も展開していらっしゃらないようですし」

 

「あ、そう」

 

  狂三は俺の頭に歩兵銃を突き付ける。しかし、今回は俺も最初から黙ってない。触抱聖母の応用、ちょいとばかしご覧に入れようか。

 

「【棘鞭(ザナヴ)】」

 

  右手の人差し指と中指を揃えてピンと伸ばす。指と指の間から、超高圧力が掛けられた水が吹き出す。

 

「なッ!?」

 

  水は銃を容易くカットすると、狂三のドレスの肩紐をちゃっかり切り裂く。

 

  これぞ、戦闘用に調整した触手【棘鞭(ザナヴ)】。触手に圧力をかけて高速で射出することで、ウォーターカッターのように物体を切り裂く。

 

「先手は貰った。どうする?俺としては先月の借りを返したいんだけど」

 

「くっ………」

 

  ドレスが擦れないように胸元を押さえる狂三。あら、これくっころじゃないの。きみ、いいからだしてるね!くっころしないかい!

 

  と思っていると、狂三はケタケタと笑い始めた。

 

「やはり、あなたは『対人』に長けた方ですのね」

 

「…………もしかして、今回は偵察?」

 

「ええ………ですので、今回は思いっきり抵抗させて頂きますわ。わたくしは何度でもリベンジ出来ますので、不安要素はとことん攻略させて頂きますわよ?」

 

  言うが早いか、狂三は俺を突き飛ばして山を飛び出し、トンネル越しに俺を両手の銃で連続して撃ってくる。

 

「何だお前………くっころの天才か?」

 

「それは不名誉な称号ですこと 」

 

  ならば此方もデータは貰おう。ということで、狂三の弾丸をガードせずそのまま受ける。なるほど、()()()()()。一応部分展開した霊装に命中したが、鈍い痛みが走った程度で出血無し。フィジカルには自信がある。

 

  狂三の攻撃は、霊装+俺の耐久力があれば余裕で凌げる。何てことはない、驚異ではないな。

 

  第二射が来る前にコンクリ山を出ると、狂三はジャングルジムの上に立ち、欠けた歩兵銃と短銃を構え、わざわざ俺を待っていた。

 

「きひ、きひひ!!わたくし()()()()()()()と思っておりましたので、折角ですから本気で参りましょう。このわたくしの限界値で!」

 

「そうかよ。じゃあ、こっちは天使無しでもどこまでやれるか、試させて貰うぜ!」

 

  霊装展開。〈神意霊装・無番(アーシラト)〉。さあ、俺もヤル気出すぜ!!

 

 

 

 

 

「─────なぁんてなぁ!!」

 

「は ?」

 

  俺は、足元の水溜まりに足を突っ込み、霊力を流し込む。すると、少なく見積もっても五メートルは離れていたジャングルジムから、水触手が二十本程生えてくる。その姿はまるでイソギンチャク。素早く狂三の手足に巻き付くと、動きを制約。更に、両手の銃を奪い取ってしまう。

 

「………………え"?」

 

  触手の鮮やかな手際に、狂三が呆気に取られているうちに準備は完了。狂三はジャングルジムの側面に磔にされるように、触手に押さえ付けられていた。雨の日は、辺り一面濡れている。遊具が雨ざらしの公園は、全て俺の攻撃可能範囲であるということだ!!

 

「あのさぁ。雨の日の俺に挑むのは無謀だぜ。覚えて帰んな。大体八時間後位に」

 

「前回より延長しておられませんこと!?」

 

「このところ清純派ばっかで肉欲が足りないんだよ」

 

「『ちょっと最近タンパク質足りてないんだよねーー』みたいな表現しないで下さいませんかしら!?」

 

  これから起きるであろうことに、脂汗を垂らす狂三。俺は、彼女に覆い被さるように、鉄骨の一本を掴んで狂三に詰め寄る。言わば壁ドンだ。ジャングルジムでやったら鉄骨ドン。骨ドン?クリティカルに痛そうな響きだな。

 

  狂三の顎を指で引っ掛けてくいっと持ち上げ、俺と無理矢理視線を合わさせる。

 

「お前さぁ、本当に精霊?前回も今回も、ここまで追い詰められても天使使わなかったよな。どういうつもり?」

 

「あら、わたくし言いませんでしたかしら。偵察だと。必要無いんですのよ」

 

  狂三は笑って見せるが、圧倒的不利は分かっているはず。それでも尚使おうとしない。

 

()()()()使えない、とか?」

 

「さて、どうでしょう。条件付の天使?同じ精霊が何人もいる?ご想像にお任せしますわ」

 

  ハッキリ言ってないが、恐らくこの狂三。分身か何か、だ。『()()わたくし』って自分で言ってたからな。

 

  オーケイ、後は楽しむとしよう。

 

「なあ。人間、脇腹を擽られると笑っちゃうってのはよくあるけどさ。お前、腰回りらへんでもイケそうかなって思ったことはある?俺はある」

 

「えっ、と………つまり……」

 

  ひきつった笑顔に、満面の笑み(オリジナル笑顔)で返す。

 

「今回は腰とおへそ回りを重点に楽しませて戴きます」

 

「お止めになってぇぇぇぇ!?!?」

 

「スカートの衣擦れで悶々出来るようになるまでやるから」

 

「人として終わるっ!?」

 

「あ、そうそう。俺のスマホ特別製でね、水中でも使えんの。じゃあ、始めようか。まずはおさらいからね」

 

「な、何がじゃあですのっ!?い、あっ、んああぁんっ!!やぁっ、あっ、あああっ!!背筋らめぇぇぇぇっ!!」

 

  ドレスの胸元から、裾から、スカートの中から、するすると入り込んで行く触手。この後特に来客も無かったので、雨の中延々触手祭りした。

 

  正直、コラーゲンだのサプリメントだのより、こっちの方が肌ツヤツヤになると思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ、はあっ、あっん、ぁ………も、戻りましたわ、っ、わたくし」

 

「前回より酷い有り様ですわね、わたくし」

 

「そん、の………っあ、すかぁとが、あっ…んっ………でっ、ですがっ!目的自体は、っ、果たせましてよ!」

 

「そうですの、それは良かった。身体を張って、よがって帰ってきただけでしたら、流石に引きますわよ。で、どうなんです?」

 

「はぁ、ふぅ…………ええ。やはり、誠さんの触手で触れられた結果、数時間分ですけれど、わたくしの『存在できる時間』が()()()()()よ」

 

「あらそうですの。勘違いではなかったということですわね」

 

「ええ。では、そろそろ時食みの城で休んでもよろしくて?」

 

「だァめ、ですわぁ………お土産があるでしょぉぉぉぉぉう?」

 

「…くっ…………こちらですわ!(トロンとした顔の狂三と誠のツーショット写真)」

 

「ぶっは!!きひひぃ!!きひひひひひ!!派手にヤられましたわねぇ!?」

 

「くぅぅぅぅっ!いっそ殺して戴きたいですわぁ!」

 

「くっころ(笑)」

 

「本当にどちらの味方でして、わたくし!?!?」

 




当SSの狂三=ライバル+くっころ

安心してくれ諸君、これは前菜だ。

次は行こうか、酒池肉林(オードブル)
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