水も滴る触手精霊、始めました。   作:ジョン・ドウズ

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(私の)息抜き回。ちょいと今回は軽め。

チカレタ………。




Date.15「学校へ行こう」

「ごめん、悪気は無かった。というか俺にも『どうしてこうなった?』としか言えないというか」

 

「みー」

 

「いや、悪かったって。この通り!」

 

「みー」

 

  先に言っておくと、俺はネコ相手に平謝りしている訳ではない。

 

「ならどうにかしろって?…………どうすればいいんだろう?」

 

「ざふきえる!!」

 

「いッてぇーーーー!?!?噛んだなコイツ!?」

 

  俺は今、1()0()c()m()()()()()に土下座しているのだ。

 

  先日真那に刺されて倒れた分身の狂三。俺は下水トンネルに水の幕で厳重な結界を張り、俺の霊力を全力で込めた水に狂三を封じて治療した。俺の霊力を流し込んでやると、傷そのものは僅か数秒で塞がった。

 

  しかし、ここで問題が発覚。分身の狂三は精霊には存在しないハズの寿命があり、尚且つ残り数日の命だった。

 

  そこで、狂三の身体を一から構成し直すことに。幸い狂三本体並みの霊力を秘めていたので材料は困らなかった。完璧な身体を作り上げ、もう一人の『狂三』として生まれ変わらせた。霊装のカラーリングは少し弄り、オレンジ色だった部分を白に変えてある。作業も予想外に早く終わったし、これで万事オッケー。

 

  ───────の、ハズだったが。霊力の結晶『聖結晶(セフィラ)』が真珠玉くらいにちびっこくなってしまったせいか、狂三まで急に縮んでちっちゃくなってしまった。

 

  目覚めた狂三はそら怒りますよ。起きたら二頭身にデフォルメされてりゃ。いや、可愛いからいいじゃん。駄目か。俺だって狂三とエロスを堪能したかった。まるで物欲センサーでもあるようだ。ちくせう。

 

  そういや霊力を使い果たす位に全力で狂三を治療したせいか、昨日は疲れて一日中寝てしまったらしい。今朝起きたら士道先輩の家で寝てた。どんな寝相だ。でも司令の夢を見た。椅子でも机でも何でもやらせてあげると言われたので大ハシャギしたが、それ以降の夢の記憶がない。無念。

 

  話を戻そう。

 

「みー!くる!くるみ!ざふきえる!!」

 

「いてっ!だーかーらー、俺にも原因は分からんっての!」

 

  ともかくこんな感じで、俺は公園に帰宅するなり狂三を宥めようと必死なのだ。何せ、身体を再構築したときにスペックが上がったらしく、霊力は本人以下だが肉体スペックは本人以上なのだ。痛い。

 

  幸い、このちびくるみの鳴き声は意味が正確に理解できる。コミュニケーションも取れなかったら終わってる。基本『くるみ』の派生か『ざふきえる』としか鳴かないが。俺以外は理解できんのかこの言語。

 

「まぁまぁ、機嫌直してくれよ。お前の復活祝いに大枚(※500円玉)叩いてケーキ買ってきたんだ。食べようぜ」

 

  俺はスッとケーキの入った箱を取り出す。前に士道先輩から聞いた評判のケーキ屋『ラ・ピュセル』だ。司令も御用達だとか。クッソ高かった。ここで何か買った日には自販機漁って得た俺の財産が露と消える。しかし、狂三の為に奮発した俺を誰か褒めてくれ。

 

「みー!」

 

  あ、食いついた。何だかんだ、女子。甘いものには目がないか。違うか、単にお腹すいてたんですよね。箱をごそごそと開き、中のケーキを御開帳。くぱぁ。

 

「チーズタルトとショートケーキどっちがいい?」

 

「ざふきえる」

 

「くそ、俺が食いたい方を………いいよ!こいよ!タルト持ってけ!」

 

  ぱあぁと顔を満面の笑みで満たし、とてとてと愛嬌のある足取りでケーキ箱の中に入っていく狂三。あらかわいい。

 

  …………んだけど、俺の頭の中にある単語が浮かんだ。

 

 

 

 

──────『狂三ホイホイ』、と。

 

 

 

 

  俺の中で何かのスイッチが入った。

 

「かかったなアホがァーーー!!」

 

  ぱたんとケーキ箱を閉じる。

 

「み!?くるみ!?」

 

  中から驚く狂三の声がするので、見えないだろうがおもいっきし悪い顔をしてみる。

 

「ファハハハハ、まぬけなちびすけめ!出して欲しければタルトを譲れ!お前には過ぎた代物だ!」

 

「ざふきえる!!くるみ!」

 

「え?ちょっと待った!じょぉ~だんですよぉおお狂三さん!?ちょい待ち狂三さん!?!?」

 

  慌てて箱を開くも時すでに遅し。報復として俺のショートケーキのてっぺんからイチゴが消えていた。満足げな狂三がタルトに腰掛けてどやっとしている。ちくせう。

 

「くるくるみ!」

 

「………自分、涙いいっすか………………?」

 

 

 

 

 

 

 

  ちょっと寂しくなったケーキを食べた所で、今日はちとやってみたいことがある。

 

「よし。狂三」

 

「ざふきえる。くーるーみー!」

 

  頭の上に座るちっこい狂三に声を掛けると、名前を訂正された。

 

  以後、『繰三(くるみ)』と呼べ、と。

 

  どうも独立した精霊になったということで、オリジナルと差別化したいらしい。どっちみち発音『くるみ』だから、狂三と繰三が居る場で呼んだらどっちも反応する訳で。あんま意味無いけど、本人が自慢気なので尊重してやる。

 

  因みにどういう訳か知らんが、狂三本体の元に戻るつもりは無いらしい。どんな心境の変化があったやら。俺は同居人が増えて嬉しいが。

 

  ………それにしてもこの繰三、ノリノリである。もうちっこいことに文句言わなくなった。適応早いな。

 

「はいはい分かった、繰三さんよ。今から来禅高校行かないか?」

 

「みー………」

 

  繰三をひょいとつまみ上げ、掌に載せる。体格差で簡単に持ち上げられるのが不服のご様子。頬を膨らます姿も、今はただただ可愛いだけだ。

 

「るるみ?」

 

「おう。一つ、俺の今の頭で高校二年のカリキュラムと果たして渡り合えるかやってみたい」

 

  図書館で本を読み漁り、とうとう学校指導要領をオーバーしてしまったのだ。もし、今の知識で通用するなら、美少女高校生になるのも悪くない。

 

  と言えば聞こえがいいが、実はあんまり図書館にいるせいで、司書さんから「君学校は?」って聞かれるようになってしまったのだ。大学生だからと言おうと思ったが、図書カード作る時にうっかり実年齢で登録してしまっている。下手に騒がれても困るのだ。形の上だけでも何とかしたい。

 

「み」

 

  ………が、繰三に仮に付いていけなくても何ら問題ないと言われた。()()()()()()()()()()()()()()()、と。…………お前ちっこいのに俺より頭良いって何よ。嘘だろ承太郎!?

 

「くるる、みー」

 

「え、お前戸籍偽装までやれんの?偽の転校手続き含めて?」

 

「み」

 

「お見逸れしました」

 

「ざふきえる………!」

 

  ヤバい。初めて分かった。コイツ明らかにオーバースペックだ。ウチのハンコは繰三に預けよう。シャチハタしか無いが。

 

  しかし折角の提案なのだが、俺は高校に()()()()()()()()のだ。士道先輩の側に居るよりも、俺はフリーで動ける状態を確保したい。なので、ちゃっかり授業を盗み聞きしたり、図書室で本を読めればそれで万々歳だ。

 

「みー?」

 

  それを繰三に伝えると、忍び込んでも問題ないのかと聞かれる。

 

  勿論問題ないとも。何故ならば………。

 

 

 

 

 

 

 

 

  チャイムが、昼休みの開始を告げてから五分。士道は何処かへ消えてしまい、十香は一人しょぼくれながら弁当箱をつついていた。指で。十香にとって、士道の作った美味しいご飯も、士道と食べれなければ旨味が半減してしまう。なので一口も手を付けていない。

 

  鳶一折紙が時崎狂三を伴って教室から出ていったので煩わしくはないが、十香にとって本当に静かな昼休みだった。

 

  しかし、その静寂は突如破られる。

 

「来た!」

 

「見た!」

 

「撮った!」

 

  亜衣麻衣美衣が、教室の戸をガラリと開けて飛び込んでくる。その手にスマートフォンを握り締め、決定的証拠を掴んだ刑事ドラマの俳優の如く沸いていた。

 

「みんな、聞いてっ!!遂に現れたわ!!」

 

「来禅高校七不思議八番、『謎の変態美少女』がッ!!」

 

「写真も撮ったわ!!というか撮らせてくれたわ!!」

 

  三人の台詞に、教室がざわつく。廊下からも、注目の視線が三人に向いていた。七不思議が要領オーバーするのは良くある話だ。

 

「マジでか!?写真オッケー!?」

 

  士道の友人:殿町など、拳を天高く突き上げて席から立っている。他の男子生徒も、口々に騒いでいた。一人状況を飲み込めない十香が、目をぱちくりさせて教室内を見回していた。

 

「な、何の騒ぎなのだ………?」

 

  助けを求めるように亜衣麻衣美衣に話しかけると、三人とも待ってましたとばかりにポーズを決める。

 

「ご存知、無いのですか!?」

 

「彼女を知らぬとはとんでもない!!」

 

「知らざぁ言って聞かせやしょう!!」

 

  三人揃ってスマートフォンを操作し、写真フォルダーを開く。

 

「時は四月。彼女は突如として我が校に現れたッ!」

 

「茶に誘われても、名前も名乗らずただ一言。『絶倫ならば、ヤりましょう』!!」

 

「そしてそれから行方も知れず。またも風のように今日現れた!!」

 

  ずずいと写真を十香に見せつける。そこに写っているのは、金髪碧眼の美少女。完璧な身体のバランスを持ち、愛想良くピースサインをカメラに向けている。

 

  制服に身を包んではいるが、紛れもなく十香の知る人物だった。

 

「おお、誠のことだったのか」

 

  なるほど、ならば変態と言うのも合点がいく。十香は笑顔でポンと手を打った。

 

  途端に、水を打ったように教室が静まる。何かいけないことを言っただろうか。十香は思案し、思った。そう言えば誠はこの高校の生徒ではない。それがまずかったのか。どうしよう、と十香が慌て始めた所で、殿町が声を上げた。

 

「十香ちゃん、七不思議と知り合いなのか!?」

 

  それを皮切りに、教室が先程を上回る喧騒に包まれる。

 

「何てこと!?美少女同士は惹かれ合うというの!?」

 

「変態の魔の手からは逃げられない!!」

 

「バイである可能性が微レ存………!?」

 

『ガタッ!!』

 

「教えて十香ちゃん!彼女はどんな娘なんだ!?」

 

「待てい殿町!それより前に、疑って悪かった!このドリンク、使えよ!」

 

「俺のマカを受け取ってくれ殿町!」

 

「お、お前ら!!────頼む、俺に元気を分けてくれ!!」

 

『殿町ぃいいいい!!』

 

  何だか良くわからないうちに、十香がどうこう出来るレベルの話ではなくなってしまう。助けを求めて視線をさ迷わせるが、頼れる相手など─────

 

「おっ、十香ちーっす」

 

  話題の中心こと、謎の変態美少女:誠が現れた。

 

「誠!?」

 

『ナンダッテ!?』

 

  十香の台詞に、教室の視線が一斉に廊下へと集まる。余りの迫力に、誠は思わず一歩引いた。

 

「ど、どうも………変態美少女です」

 

「志村!?」

 

「後ろ!!」

 

「誰もいないけど!!」

 

  目を白黒させる誠の元に、颯爽と現れた影が一つ。漢、殿町。失うものは童貞だけ。友の夢と、熱き思いを乗せて大胆に告白する──────!!

 

「今日ッ!!俺と!!お泊まりしませんか!!」

 

  差し出した右手。誠の視線を肌で感じる殿町。

 

『とっのまち!!とっのまち!!』

 

  高鳴る心臓、友の声。そして、誠の細い指が触れ──────

 

「ムード考えろやぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

  右腕をむんずと掴まれ、鮮やかな上手投げと共に、殿町は床にキスをした。

 

『殿町ぃいいいいいいいい!?!?』

 

  それからのことは、殿町の記憶に無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら………きひひっ、()()()()()

 

「おう。()()()()()

 

「……………何故ここにいるの」

 

「あっ、折紙先輩どうも」

 

「え"っ!?何で誠が殿町の席に!?」

 

「おっ、士道先輩もちーっす。殿…町……?いえ、知らない人ですね」

 

『あいつは確か────いい奴だったよ』

 

「何このクラスの空気!?」

 

「皆さーん、授業始めますよーー………え"、誰ですかあなた!?」

 

「おお、これが噂に名高いタマちゃん先生!!」

 

「えっ、えぇ………?あの、殿町君は?」

 

『さぁ?』

 

「えぇぇぇええええ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざふきえる(やれやれですわ)………」

 

 

 

 




忍び込む(堂々)。
次回から第三章:狂三キラー、真面目加速!!予定ッ!




場面が変わりすぎて時系列がよくわからないとのご指摘があったので注釈を。

・原作三巻開始前(原作日付6/4)
真那から逃げる

繰三治療。霊力低下の疲労で《俺》が寝る

・原作三巻開始初日(原作日付6/5)
《私》出現。

《私》、五河家へ。真那とASTフルボッコ

琴梨の台詞に食い付き《俺》半覚醒。《私》沈静化

五河家お泊り(この辺で狂三が縮んで繰三の出来上がり)

・原作三巻二日目(原作日付6/6)
下水トンネルで土下座

繰三とお喋り、学校へ




それはそうと狂三って単語登録すると変換楽チンね。
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