水も滴る触手精霊、始めました。   作:ジョン・ドウズ

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触手は無くても、エロはある。

だって、私だって性欲あるもん。






Date.23「ショッキング・ショッピング」

  スリングショット。

 

  マイクロビキニ。

 

  ブラジル水着。

 

  ニップレス。

 

  うむ、迷うな。

 

「士道先輩!!どれがいいと思いますか!?」

 

「ウェットスーツでも着とけ」

 

「聞きましたか折紙先輩!!士道先輩はピッチピチのエロスーツがお好みみたいです!!」

 

「ガタッ」

 

「やめろォ!?」

 

  俺達は今、デパートの水着売り場にいる。司令とのデートは、プールが舞台。折角なので、皆でエロかわいい水着を選んで士道先輩をドキドキさせよう!というイベント開催中である。

 

  いやぁ、この店凄いね。こんないっそ着ないほうがマシなエロ水着揃えてるとか。凄いわ。流石折紙先輩も御用達の店だ。

 

  え?何でそんなこと知ってるかって?ほら、士道先輩が折紙先輩の家に行ったことあったでしょ?あの時に折紙先輩が着てたメイド服、ここで買ったやつなんだってさ(白目)。まっこと都会はスゲーずら。どこ弁だ。       

 

  俺が主にエロ水着を中心に売り場を回っていると、試着室のカーテンが内側から勢いよく開かれた。十香だ。

 

「シドー!!どうだ!?ドキドキするか!?」

 

「お、おう………似合ってるぞ」

 

  十香が選んだのは、黒と紫のビキニ。自分のイメージカラーをしっかり押さえた見事な選択。

 

  ─────だが。ちょいと割り込ませてくれ。

 

「 露 出 が 足 り な い 」

 

「む?そ、そうか?」

 

「お前ちょっと向こう行っててくれ」

 

「十香、マイクロビキニ着てみないか?」

 

「着たらシドーはドキドキしてくれるか!?」

 

「帰れよ」 

 

  十香のパーフェクトバランスボディならば、マイクロビキニの性能を120%引き出せる。そう思ったのだが、淡々と士道先輩に頭を叩かれ続けたので諦める。おのれムッツリスケベめ。へーんだ、俺のようにオープンスケベの方が後からイメージダウンしないから得ですよーだ。へっへー。

 

  十香のいる試着室から離れると、すぐ隣の試着室から手が伸びて、ぐいと引っ張られた。なんだなんだ!?

 

「誠。あなたの意見を聞きたい」

 

「先輩、声より先に手出すの止めて下さい」

 

  折紙先輩だった。心臓に悪い。そして格好は………完全にハイレグスーツです、ナイスタイマニン。俺の冗談を真に受けていらっしゃるが、着こなしてるからとんでもない。堂々としてるから、何着ても勢いで服に()()()()()()()と言うか………。この人、逆に似合わない服探す方が大変だぞ。

 

  しかし………。

 

「これはいいですね。折紙先輩のスレンダーで引き締まった肉体を惜し気もなくアピールするスタイリッシュエロ!………なんですけど、折紙先輩が着るとワイヤリングスーツのイメージと被るんですよね………」

 

「盲点だった」

 

「いや、仕方無いっす」

 

「ワイヤリングスーツを持ってくる」

 

「そうじゃねえです。普通の選んで下さい」

 

  地味な職権濫用になりそうなので止めさせる。コスプレ会場に本職が来るようなもんだ、止せい。何だか真那みたいなツッコミになってしまった。

 

  あ、そうそう。真那と言えばだ。

 

「兄様!これなんかどうでしょう!」

 

「いいんじゃないか?似合ってるぞ」

 

「うぅん………嬉しいけれど照れくせーです」

 

  今日、俺たちの買い物に付いてきているのだ。

 

  昨日、令音さんに呼び出された。何かと思って〈フラクシナス〉に行ってみれば、唐突に真那の治療を依頼された。何と真那の奴、実は魔力処理を施された改造人間で、余命が十年位だったとか。誰がそんなことすんだおっかねえ。

 

  〈フラクシナス〉の計器が不調だの欠陥品だのと信じていない様子の真那だったが、俺が診たら渋々信じた。舞上を治療した実績持ちだからね。

 

  毎度お馴染み【福音(ハエム・ハクドシャ)】で治療した後、経過観察も兼ねて折角なので兄と出掛けるくらいしたらどうだ?と令音さんが提案し、真那は承諾。今に至るという訳だ。

 

  健康的な色気を放つスポーティーな水着を着こなし、士道先輩に披露しつつも照れている。年相応の姿だ。うんうん、これでいい。これが正しい姿なんだ。

 

  兄妹仲睦まじくしている様子に、邪魔にならぬよう、その場を離れる。普通のデザインも中々、と思っていると、いつの間にか男物の水着コーナーに辿り着いていた。

 

  流石に男の水着には食指が動かない。速やかに立ち去ろうとすると、胸の谷間で大人しくしていた繰三が突然胸元から飛び出し、原寸大に変化した。霊装だと目立つので、来禅高校の制服を構築して着ている。折角の霊力をこんなとこで使うなんて。何だ?

 

「誠さん、ちょっとよろしくて?」

 

「はいはい?お前も水着買いたいの?」

 

「いえ─────ただ、わたくし思いましたの。もう少し誠さんは、男性としてのご自身を周囲に意識されるべきですわ。ということで、誠さんは今日、男性用水着を選ばれるべきです」

 

「そうかなぁ」

 

「上っ面は女性、中身は男性であることを望むなんて方、普通なら居ませんわよ。いっそ中身も女性になられた方が楽な位ですわ」

 

  思い当たる節々。これまで、中身が変態でも美少女だったから色々許されてたような気がするし、打ち解けて貰えたような気がする。女になったことを得したと思っている。だが同時に、振る舞い自体は男時代のままなのだ。

 

  言われてみれば、確かに司令からも女性になりたいのでは?と先日指摘されてしまったこともある。ここは一つ、今回のデートは男時代の俺で過ごすことにして、俺も男物の水着見るか(金がないので買わない)!

 

「よし、じゃあ見てみよう。ありがとな繰三!気が利くな!」

 

「いいえ、大したことではございませんわ。────お礼はわたくしに水着を見繕っていただければ」

 

「俺の感謝返せ」

 

  スカートの裾を持ち上げて、仰々しくお辞儀して見せた。どうやら下心有りの助言だった模様。そういや繰三は、小さくなる前からこういう奴だったか。

 

「慎んでお断り致しますわ。ささ、こちらへ。お早く決めて下さいませ?」

 

「へいへい」

 

  俺のことなど知らないと言わんばかりに、繰三は水着選びを急かす。心なしか楽しそうだな。何と言うか………デートでもしてるみたいだな。

 

  一旦試着室に入ると、【整形(マセカー)】を使って男に戻る。司令の攻略のために、念のため〈リリス〉戦の時から〈触抱聖母(アルミサエル)〉を体内に取り込んだままにしていた。つまりぶっといのが挿しっぱ。拡張されちゃう。いやん。

 

  カーテンを開けて試着室から出ようとすると、同じく水着選びに来ていた四糸乃とばったり出くわす。手には子供サイズの可愛らしいビキニ。中々のセンスだ。

 

「おっ、四糸乃。いいの見つけたね」

 

「ひ、ひっ!?」

 

『おにーさん誰?何で四糸乃のこと知ってるの?』

 

  ビビられた。何故だ。

 

  ………………ああそうか、俺四糸乃の前で男になったこと無かったや。これは俺の失態だ。すぐさま変身を解き、四糸乃の良く知るおねにーさんにフォルムチェンジする。

 

「ごめんごめん。脅かすつもりは無かったんだ。ほら、おねにーさんだよー」

 

「ま、誠さん………」

 

  目線を合わせるべくしゃがみ込み、お詫びの気持ちを込めてよしよしと頭を優しく撫でる。若干涙目だった四糸乃も、俺だと分かって安心したのか、ほっと溜め息を吐いた。

 

『やー、おねにーさんがおにーさんになってたとは、気付かなかったねーー』

 

「外見に一致部分無いから、分かったら凄いよ」

 

「びっくり、しました………」

 

「いや、俺の配慮が足りなかったよ。ごめんね」

 

  スーパー四糸乃よしよしタイムに今にも入らんとしていたが、突如首を鷲掴みされた。

 

「誠さァん?」

 

  額に青筋を浮かべた繰三がいた。ヒエッ。ちょっと痛いしわりと怖い。もしかして、お怒りですかァーーーっ!?!?

 

「お、おう」

 

「お早く、と申し上げたハズですがァ?」

 

「さ、サーセン」

 

  四糸乃から無理矢理引き剥がされ、ずるずると引き摺られて行く。繰三が怖かったのか、四糸乃がふるふる震えながらもこちらを見ている。

 

「四糸乃、強く生きろ!そして士道先輩を落とせ!!それが俺の願いだァ!!ぬぁぁぁぁぁっ!?!?」

 

『おっ、おねにーさーーーーん!?』

 

  今生の別れみたいな感じでふざけてみたら、俺の首を握り締める繰三の握力が上がった。わりと痛い。

 

「ふざけてないでご自分で歩いて下さいまし」

 

「イテェ!」

 

  ほぼ放り投げる形で解放された。うつ伏せで床に激突する。怒ってますねこれ。何でや。何で四糸乃と遊んじゃいかんのだ。

 

  寝そべっていることを利用し、人目を避けて改めて変身し直す。元の身体も悪くはない。何せ付き合いは女性の身体より長いからな。

 

  ん?寝そべってる?

 

  つまり、繰三より体勢が低い?

 

「フフフ!油断したな繰三!!だりゃあ!!」

 

「え?」

 

  寝ていた姿勢から海老反りで跳ね起きる変態挙動を披露して立ち上がりつつ、呆気に取られている繰三に対し『流水追剥(りゅうすいおいはぎ)下履一触(したばきひとふれ)』をぶちかます。

 

  つまり、飛び上がり下着ドロである。

 

「きゃあぁぁぁっ!?!?」

 

  繰三もビックリだろう。タイツには一切の傷を付けず、下だけ持っていかれるなんて誰が想像するだろうか。だがこれも霊力のちょっとした応用である。霊力万能説。

 

「か、返して下さいまし」

 

「面白いからヤダ。さぁ、水着見に行こうぜ」

 

  顔を真っ赤にして俺に迫る繰三が見てて面白いので、このままにしよう。実は盗んだぱんつは繰三の服のポケットの中だ。仮に履いてないことが周囲にバレても、ダメージを受けるのは繰三だけ。我ながら意地の悪いことしてるな。

 

「繰三、早くしろー」

 

「も、もう少しゆっくりお願い致しますわ」

 

  右手で口許を、左手でスカートの前を押さえつつ歩く繰三を伴い、通路を進んでいく。内股で足を動かし、人目を気にしてチラチラと視線を動かす繰三だが、恥ずかしがるあまり逆に色気ムンムンなのは言うまでもない。いい絵だ。写真撮った。

 

  さて。俺が向かったのは、男性用でなく女性用水着コーナー。それも、わりと高いものが陳列されているエリアだ。

 

  ここまで繰三にやったんだ、ちゃんとした奴を選んでやろう。繰三の水着姿が見たいというのもあるが。俺のスマホの繰三写真フォルダが充実する。

 

「あの、誠さん?わたくしは誠さんの水着を………」

 

「予算は二万円。好きなの買っていいよ」

 

「えっ、それほぼ全財産では!?」

 

「繰三の食費分は確保してあるし、必要な

らASTから演習なり取引なりしてでもたかるから。気にせず気にせず」

 

「誠さん………」

 

  困惑している様子だが、少し嬉しそうだ。さっき水着欲しいって言ったのは、ダメ元だった模様。瞳を潤ませている。良いもん見た。

 

「ちなみにぱんつはお前の上着の左ポケットに入っている」

 

「折角の雰囲気が台無しですわ!!」

 

「ノーパン娘に言われたくな─────」

 

「あーーーーーっ!?わーーーーっ!?」

 

「必死か」

 

  そんなにノーパンバレたくないなら、寧ろ叫んで誤魔化すなよ、目立つぞ?急に回りからの視線が強くなってるし。通り掛かったご夫婦が、こっち見てニヤニヤしてる。青春の一コマじゃないんです。エロ漫画の一コマです。

 

「おい繰三、大声出すから逆に注目されてるぞ」

 

「誰のせいだとお思いですの!!」

 

「俺だよ」

 

「分かっていらっしゃるようで何より!!」

 

  羞恥のあまり、まるで腰の入っていないパンチで俺をボコスコ殴る繰三。あんまり痛くねぇ。

 

「おいおい、何やらかした?」

 

  と、大声を聞き付けた士道先輩が呆れ顔で駆け寄ってきた。どうやら悪いことしたのは俺と確信してるようです。大正解。まあ俺が男に戻ってたから、それを元に判定したのかもなぁ。

 

「士道さん!!誠さんが────」

 

  ───────ドサッ。

 

  繰三が先輩に抗議をしようとしたその時。

 

  俺たちの背後で、何かが落ちる音がした。

 

 

 

 

 

 

  振り返れば、そこには一人の少女がいた。

 

  さらさらした茶髪のロングヘアーで、袖の無いシャツにホットパンツを合わせている。

 

  年は士道と同年代か一つ下、といったところか。身長は十香よりやや低いが、折紙に近い。目鼻立ちのハッキリした活発そうな少女が一人、士道達を見て驚愕に目を見開き、持っていた鞄を取り落としていた。

 

  そして、口をぱくぱくさせながらも、ようやっと喉から絞り出したという様子で、一言呟いた。

 

「うそ………兄貴………?」

 

  士道の額に、猛烈な勢いで汗が浮かび上がってきた。この流れは、つい先日経験したばかりである。シチュエーションが、真那の時と酷似している。また、新たな妹発覚か。一体、あと何人の妹を抱えなければならないのだろうか。

 

  手の甲で汗を拭い、士道が少女に言葉を掛けようとした時。首を動かしたことで、視界にあるものが映った。

 

「……ヤベェ………ヤベェヨ………ヤベェ……………」

 

「誠さん?」

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()()、誠の姿だった。繰三の声が聞こえていない様子で、少女を見つめて顔を青くしている。

 

「ね、ねぇ、兄貴でしょ?人違いじゃないよね?」

 

  少女も少女で、誠を指差し、恐る恐る距離を詰めていく。

 

  店に流れる軽快なポップスが、静寂を埋め─────曲が終わると同時に、誠が動いた。

 

「人違いです!!」

 

  まこと は にげだした!!

 

「待てバカ兄貴!!」

 

  しかし、タックルで腰に取り付かれ、誠を下敷きに仲良く転倒する。鼻を押さえる誠に対し、少女は首に腕を回して誠を締め上げる。

 

「アーーーニーーーキーーーーーッ!!」

 

「すまん!許して!!マジで!!!」

 

「死ね!マジで一回死ね!」

 

「グェェェェエ!?」

 

「おいおい、やり過ぎやり過ぎ!!」

 

  誠が珍しく本気で痛がっているので、士道は止めに入る。冷静さを取り戻した少女は誠を解放し、涙目の誠が喉を押さえて噎せる。

 

「す、すいません。つい、久々に兄貴のマヌケ面見て頭に血が昇っちゃって………」

 

「やり過ぎだ………。ところで、君は?」

 

  士道が尋ねると、少女は立ち上がって深くお辞儀をする。

 

有栖部(ありすべ)(あや)です。兄貴がお世話になっています」

 

  琴里とのデートの為の、買い物。

 

  しかし。

 

  士道は予期せず、誠の記憶にまた一歩迫ることになった─────。

 

 

 

 

 




シスターズ三人目。誠に妹がいることが発覚。詳しい事情はまた次回。

妹も、時に触手の餌食になる。か?


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