編集に使っていたスマホが調子悪くなり、操作もろくに出来ない状態になってました。機嫌が良い時を見つけて編集して、やっと投稿に漕ぎ着けました。次からはパソコンでやってみます。
さて、今回は触手もエロもチャージ中ですが………長らくお待たせした『でった』の正体、明かさせて頂きます。
では。
………そろそろみーみー鳴いてる繰三を出したい。
これは、今から大体三年半前の話です。
私、有栖部彩は当時小学六年生。
夏休みも終わり、友達との会話に、自分達が進学する中学の話題が混じり始める頃。
私は家族を喪いました。交通事故です。
え?兄貴?ああ、兄貴は実の兄じゃないんです。だから、この時点ではまだ顔も知りません。私にとって色無誠という人は、正しくは
私、吹奏楽が好きで、小さい頃からトランペットを習ってたんです。あんまり上手くありませんけどね。
父と母を喪った日は、トランペットのコンクールの日でした。
会場までは、わざわざ有給を取った父が送ってくれました。父は、パートの終わった母を迎えにいくからと、私の受付を済ますとすぐに会場を車で後にしました。
それが、私と父の最後の会話。
母との会話なんて────思い出せないほどありふれたものでした。多分、私の「行ってきます」に、母が「頑張ってね」………と返したような。
二人とも、私の元に来ることはありませんでした。私を迎えに来る前に、二人に迎えが来てしまったんです。
コンクールは、何の賞も貰えない、極めて凡庸な結果で。浮かない気分のまま、来ない両親を三時間以上も待っていて………。ようやく来たのは、憔悴した表情の学校の先生。
それから数日で、私は小さな施設に入所しました。父方の祖父母は存命でしたが、二人とも老人ホーム暮らしで、私の面倒を見れる状態ではなく。他に身寄りのない私には、行き先はそこしかありませんでした。
施設で待っていたのは、歓迎ムードの職員が五人ほどと、同じく身寄りのない子供が八人程。
その子供の中に、兄貴はいました。
兄貴は、バカでした。
ええ、バカでした。
私の歓迎会での様子からしてバカ丸出しでした。
隙あらば若い女性職員の身体を触っては拳骨を貰っていました。
他の子も、我儘に振る舞ったり逆に何を見てもやっても無反応だったりと、お世辞にもいい子は居ませんでした。
心の中で、ああ、終わったな、と呟く自分がいました。何がという明確なものはありませんでしたが、自分の人生が決まったように思ったのです。
入所してから半月。私は一度もトランペットを触りませんでした。私がトランペットなんて習わなければ、両親は死ななかったのではないか、と塞ぎこんでいました。
職員の人がどんなに優しくしてくれても、言葉尻に他所他所しさを感じて他人としか思えない。施設に於いて、楽しいと思える瞬間は全くありませんでした。
学校でも、先生やクラスの皆が私に気を使っているのがあからさまで、私は孤独を感じていました。
丁度その頃から、兄貴が私に妙に構って来るようになったんです。俺のオヤツ食う?とか。今週のジャンプ読む?とか。とにかく鬱陶しい程に私に話し掛けてきました。
ウザったくて断るのですが、拒否されても食い下がり、私が逃げても追いかけてきて、何度も何度も構ってきました。
そのうち抵抗する方が面倒になって、されるがままになっていました。兄貴は気を良くして更にあれこれ構うようになりましたが、私はまるで気を許してはいませんでした。
ある日、兄貴が福引券を貰ったからと言って、近くのスーパーまで私を引き摺って行きました。福引所で券を渡すと、兄は私に福引をやらせました。
何も欲しくないと思っていた私が無欲に福引の抽選機を回すと、出てきたのは二等の玉。私は大型テレビを引き当てたのです。
正直、要りませんでした。私は持てないからと断りました。
しかし、兄は私を凄い凄いと誉めちぎり、欲しいと言い出しました。小学生二人でも、持つに大変な大型テレビを、です。
福引所の大人も心配しますが、兄貴は
「二等ですよ?テレビですよ?部屋でゲーム出来るじゃないですか!俺が持つんで大丈夫です」
と譲らず、勢いで受け取ってしまいました。汗水垂らし、手を赤くし、半ば引き摺りながらもとうとう持って帰ったのです。そんなに欲しいのかと、欲の深さに呆れてしまいました。
施設で開封してみれば、テレビの端に荒い傷が付いていました。欲張るからこうなるのだ、と私は内心鼻で笑っていました。
しかし、兄貴はただ一言、
「ごめん!!小遣いで弁償する!!」
私に謝ったんです。
私は勘違いしていました。兄貴は、私が持って帰れなくて悔しいと思っているのだと考え、自分が持つと言い出したのでした。
正直呆れました。
この人は、何てバカなんだろう、と。
何で私なんかに構うんだろう、と。
この時初めて、兄貴に興味を持ったんです。
だから、聞いてみたんです。何故私に構うのか、と。
すると兄貴は、
「お前の笑ってるとこが見たかったから」
そう、笑って答えました。
聞く前よりも、兄貴をバカだと思いました。
だから、
「バーカ」
「なっ、何だよ……こっちだって恥ずかしいんだぞ」
私は笑顔で、思ったままを口にしてやりました。
だって、施設に来てから、本音で接してくれたのは、兄貴が初めてだったから。
「─────それから、兄貴と話すようになったんです。この時点ではまだ、仲良くという程ではありませんけど」
滔々と語っていた彩がアイスティーを口にする。頬杖を突いて話を聞いていた繰三が、不機嫌そうに口を開く。
「まだ続きますの?」
「今は邂逅編なんで。次、義兄妹編です」
「もう止めて!!恥ずかしくて俺死んじゃう!!」
彩の隣にいた誠が、羞恥に顔を赤らめながら悶えているが、彩は知らぬ振りだ。
「いい話だ………」
「どの辺がだよォ!?もう青き日の俺の過ちを掘り起こさないでェ!!」
何せ、十香という反応のいいオーディエンスを得てしまって調子に乗っているのだ。誠が昔話に悶える度に彩がしたり顔になるので、それも影響していると思われる。
本題に入るまでが長そうだ、と士道は頭を掻く。彩は話し始めると自分の語りにのめり込むタイプだった。取り敢えず気の済むまで話してもらおう。士道は胸中で決意した。
水着売り場を離れた士道達は、フードコートの一角にいる。彩から、誠の過去について聞こうという目的だった。しかし、彩に怪しまれないようにするには馴れ初めから聞かねばならず、こうして本題とは脱線した話を聞いているのだが。
一応、彩の知る範囲で誠の過去を聞くことは、誠本人にも承諾は得ている。かなり渋られたが、琴里の水着写真で手を打った。明日にも、誠の携帯に琴里が着るであろう水着の写真が届く筈だ。
「思ったより兄貴していやがったんですねぇ、クソテン」
「確かに、その点は意外」
「ヤメロー!!シニタクナーイ!!」
真那や折紙にまで弄られて顔を押さえているが、彩は容赦せず洗いざらい吐いている。もう一度トランペットを吹き始めたこと、施設の職員と打ち解けたこと。その全てに誠が出てきており、いかに誠が彩を妹として大切にしているかが滲み出ている。
それから、各々が頼んだドリンクの氷が溶け、温くなる程に話した頃。
「で、私はそれから兄貴を『兄貴』と呼ぶようになったんです」
彩の語りがようやく結末へ辿り着く。多くの脱線。彩を饒舌にしてはいけないと、十香以外が決意した。
「誠、私はお前を見直したぞ!」
「俺はたった今瀕死だけどな!!」
十香は一人、ハンカチで鼻をかんでいた。当の誠は、テーブルに突っ伏した顔を上げることすらせずに返事しているが。
さて、これまでわざわざ耐えたのだ。士道はすかさず、彩に質問を投げる。
「なあ彩。彩が会う前の誠の話って、何か知ってるか?」
振られた彩は、困ったような顔をした。人の昔話に触れるのは確かに細心の注意が必要だが、士道は彩の表情に
「私が会う前、ですか?少しなら施設の人に聞いたんで知ってますけど………兄貴、いいの?」
助けを求めて兄を見るが、打って変わって誠は平然としていた。
「おう。俺、今から席外すから。終わったら呼んでくれ」
「でも………」
「忘れた記憶に興味はねーよ。捨てる程に価値のない内容なんだろ?」
「………兄貴がいいなら、構わないけど………」
「決まりだな」
聞く気のないらしい誠は迷わず立ち上がり、近くにあったエレベーターで上階に登っていく。誠が消えたのを確認し、彩が口を開いた。
「兄貴は、私が施設に入る半年前に、施設に入所しています。理由は兄貴の名誉のため、と教えてはくれませんでしたが─────」
彩は一度、躊躇って言葉を止める。雑念を払おうとするように頭を振り、深呼吸してから言葉を継ぐ。
「──────入所前とその数ヵ月後とで、性格がまるで違ったそうです。まるで、人が変わったみたいに」
『…………!!』
一同が息を呑む。誠の二重人格のルーツが、見えた。
「昔の兄貴は────施設の人に我儘放題。叱られても反省なんて全くしない。尊大、傍若無人。とにかく女装しようとしていて、口癖は『女の子は愛されなきゃいけない』………今の兄貴からは、想像出来ないです」
「じ、女装………」
士道の頭の中を、金髪碧眼で
「それが、結構似合ってたらしいですよ。小さい子って、顔付きだけだと男女判別出来ない子もいるじゃないですか。兄貴もそれに漏れなかったとか」
「一人称は?」
ここで、誠と〈リリス〉の関連性について疑念を抱いていた折紙が参戦。恐らくは自分を『でった』と呼ぶ個体に関して聞き出そうというらしい。
「え?………『私』、だったかな?私が会ったときには、既に『俺』になってました」
「そう」
しかし、これは空振りに終わる。『でった』という個体は、どうやら誠のいた施設では確認出来ていないらしい。
これで、彩から聞けることは粗方出し切った。士道が誠を呼ぼうとスマートフォンを取り出そうとするが、それを遮る手が隣に座る人物から伸びてきた。
「で?あなたは誠さんのことをどう思っていらっしゃいますの?」
右手で士道を制しつつ、左手の人差し指でトントンとテーブルを執拗に突いている。表面上は笑顔だが明らかに不機嫌で、ピリピリとした雰囲気に四糸乃が怯えている。
「どう、とは………?」
「異性として、ですわ」
しかし、繰三の刺すような視線の圧力を、彩は全く気付いていない様子で笑って返した。
「え?なーんとも?」
「えっ」
「だって兄貴ですよ?バカを濃縮して不純物を抜き取ったような謹製バカの兄貴ですよ?兄扱いはしても、異性としてまで意識は出来ませんよーー」
「そ、そうですの………」
清々しく断言され、拍子抜けした繰三が、引きつった笑みを浮かべていた。一方で話のネタを見つけた彩が、目を光らせて繰三に迫る。
「それで?兄貴のどこがいいんです?」
「べっ、別っ、別にわたくし、誠さんのことを好きだなんて一言も言っておりませんわよ!?」
「確かにそうですね。で、好きなんですかぁ?」
「べっ、だっ、へえっ!?そんなことありませんわ!!違います!!違いますわ!!」
焦るあまり、逆に露骨になってしまった繰三。ニヤニヤと笑う彩を見て、士道はもうしばらく誠を呼べないな、と溜め息を吐いた。
◇
そのエレベーターが屋上に着いた時、中から降りてきたのは二人組の少女だった。
「でった、おなかすいた」
「今はダメ。後で好きなだけ食べていいから。ね?」
「うん………でった、いいこにしてる」
一方は、ショッキングピンクの髪をトリオテールに分けた上で三つ編みにした、ジュニアアイドルのような小柄な少女。
一方は、長く伸ばした真珠色の髪を縦ロールに巻き上げた、人形のような装いの少女。
対照的な二人だが、どちらも極めて目を引く格好と、見る者の目を奪う美貌を備えている点に関しては一致していた。
ショッピングセンターの屋上には、偶々誰もいない。二人は我が物顔でテラスのテーブルを占拠する。
「ねえ。あや、みんなにしゃべってたよ?いいの?」
「いいの。彩だから許すの。でったもダメだよ、彩に手を出しちゃダメって私の言い付け忘れたら」
「だいじょうぶ。でった、おぼえるのとくいだもん」
でったと名乗る少女は、小さくガッツポーズをして自信の程をアピールする。しかし、対する少女は余りいい表情ではない。
「そう言うけど、でったは良く
「うー………でった、おぎょうぎいいもん。もうしないもん」
三つ編みの少女は、『でった』の膨らませた頬をつつき、ぷひゅうと空気を漏らさせて遊ぶ。
「まあ、いいの。でったの食べこぼしくらい、大したことないから」
「しないもん!!」
「はいはい。これから先、彩が
「でったががんばる!!」
諸手を天高く突き上げ、ブンブンと振る少女に、微笑みを返す。綿のようにふわふわとした髪を撫でてやると、腕の振りが大きくなった。
「いい子。でったはお利口さんだね」
「えへーー!むふーー!!」
「じゃあ、お願いね。
「うん!行ってきます!!」
首が抜けそうな程に力強く首肯すると、人形を思わせる少女は座っていた座席を粉砕して飛び立つ。
残された少女は、振り返ることなく背後の自動販売機に右手を翳し、中指を折る。金属を突き破る鈍い音と共に、双刃の薙刀のような武具が二振り現れ、自動販売機を貫く。
席を立った少女は、損壊した自動販売機からドリンクを抜き取って飲み始める。飲み干しては缶を握り潰し、投げ捨てを繰り返す。
内蔵していたドリンクを全種類飲み終えた頃、持っていたスマートフォンが振動した。確認してみれば、士道からの戻ってくるようにとのメールだ。
「私が遊ぶには、《俺》の殼が邪魔だからなぁ。今日はここまでかぁ。じゃあ、またあの子を信じて待ってないと」
軽くスキップしながらエレベーターに乗り込む少女の名は、色無誠。
「頑張ってね、私の天使────『
いとも容易く
エレベーターの扉が再び開く頃には、その姿は、何処にも無かった。
次の投稿、どうなるんだろう。なるたけ頑張って早く投稿しますが、就活ががが。