水も滴る触手精霊、始めました。   作:ジョン・ドウズ

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最初に言っておくと、今回はエロスは無いです。

触手は力を溜めている………。何せただ無意味矢鱈に触手するとただの性犯罪者で士道の周りに居られませんから。

くるみみみ………。


Date.26「デートの裏側」

「決着を付けるぞ、色無誠ォッ!!」

 

「いや、ノーサンキューで」

 

「闘うのが怖いか!腰抜けの腑抜けか!間抜けめ!ぬけぬけと生きて楽しいよなぁ!?貴様が何度も抜いた一物をその身から引き抜いた気分はどうだ!!ええッ!!」

 

「司令の見た目で躊躇い無く下ネタ言うの止めろォ!」

 

  俺とカマエルは今、互いに相手の両手をがっきと握り締めて睨み合っている。俺は男の姿なので、幼女と高校生がマジ喧嘩しているという何とも情けない構図だが、そんなことは俺達にはどうでも良かった。

 

「貴様が先に入れェェェーーーッ!!」

 

「レディーファーストで譲ってやってんだよォォォォッ!!」

 

  俺達は火花を散らす─────プールの消毒槽の前で。

 

「貴様のッ………貴様の前でだけは無様を晒すつもりは無い!!」

 

「知るかバッキャロー!!まさかここまで冷たいとは思わなかったんだよ!!」

 

  取っ組み合いを演じる俺達の視界の端には、消毒槽の中に沈んでガチガチと震える繰三と真那。先にプールに入るのだと(傍目からは仲良く)張り合って飛び込んだはいいが、一つ大きすぎる問題があった。

 

  俺達が来る前に四糸乃がここを通ったのが原因だと思われるが、水温が限りなく零度に近かったのだ。

 

「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」」

 

  日本の六月に凍える人間を二人も見る羽目になった俺達は、戦慄した。しかし、琴里司令からはきちんとプールに入る上でのマナーを守るように言われている。基本的に司令の言い付けは尊守するという点に於いて行動原理の同じ俺とカマエルは、何としても消毒槽に入ろうとして閃いた。

 

『お前が入って沸かせばいいじゃん』

 

『貴様が入って温度調節すればいい』

 

  ────────、

 

『『何だとォォーーーーッ!?』』

 

 ………と双方が双方の発言にキれ、仲良くお互いを人身御供にしようとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

  そもそも、何故俺がカマエルと仲良しこよし(心にもない)しているかと言えば、理由は昨日に遡る。

 

  俺がふと閃いた名案、『カマエルを司令から排除すればみんな幸せじゃね?』作戦を実行。俺の全霊力の半分を使って、司令の肉体を再現して作った()()()に、カマエルを押し込んで無事成功したまでは良かった。しかし、独立した肉体に追いやられたカマエルが割とマジで〈フラクシナス〉を墜としかねない感じにブチ切れたため、速攻で司令にしょっぴかれた。カマエルに引き合わされるや否や、司令のありがたいお言葉が。

 

「誠、アンタ明日のデート中、カマエルの相手してなさい。カマエル、命令よ。誠と勝負ならしていいけど、誰一人殺してはダメよ」

 

「なん………だと………」

 

  衝撃を受けた。散々司令を苦しめた奴と明日中過ごす?司令の命令でも流石に我慢出来ないね!

 

「あ、主人!?何故だと言うのだ!?私の存在は、主人が望んだからあるというのに!!」

 

  カマエルも愕然としており、どういうわけか気が合うが馬が合わない。こういう奴は何て言うんだ?宿敵?

 

「もう許せるぞオイ!カマエル天宮市(おもて)に出ろや!!」

 

「奇遇だな!こちらも貴様を(ころ)したくて堪らん!!」

 

  カマエルと共に部屋を出ようとするが、司令が素早く〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の柄だけ呼び出して俺達を平等に叩きのめす。脳天を強打され、二人で仲良く(遺憾ながら)床に倒れ伏す。

 

「私はyes以外の返答を認めた覚えはないわ。返事!!」

 

「イエスマム!!」

 

「承知!!」

 

  いやぁ、司令に逆らうなんてバカな真似したね。なあカマエル。全く司令は最高だぜ!

 

「お前ら………本当は仲良いだろ………」

 

「ないです」

 

「有り得ぬ」

 

  士道先輩の寝言は無視し、俺とカマエルは向き合う。どちらともなく手を差し出し、固い握手をする。

 

「仲良くやろうぜ、司令のために!」

 

「その旨を良しとする、主人のために!」

 

  こうして俺達は、司令のデートの裏で二人で行動することになった。互いの手の甲に爪を立てて、敵意は剥き出しだったが。

 

 

 

 

 

 

  とまあそんな経緯で、この栄部駅最寄りのテーマパーク、『オーシャンパーク』で俺はカマエルのお守りをしている訳だ。チッ。

 

「もーー兄貴ってば、年下相手に喧嘩するとかマジに大人げ無さすぎ」

 

「るせぇ、子供は好きだけどこいつは別だ」

 

  傍らを歩く彩がくどくどと俺に説教する。彩の通う仙城大附属高校もたまたま休みだったらしく、またも一生のお願い大安売りで無理矢理付いてきたのだ。話し半分に聞き流しながら、俺は繰三に肩を貸しつつ歩く。 

 

  俺がカマエルとマジ喧嘩している所を、後から着替えて出て来た彩に見られ、共々叱られた。消毒槽が異様に冷たいと二人で言い訳したのだが、喧嘩している間に普通に入れるレベルまで冷めていたために通用せず。何とも言えない痛み分けに終わったのだった。

 

「良いザマだ。実に良いザマだぞ色無誠。肉親に嘲られる気分はどうだ?」

 

「るせー」

 

  脇を歩くカマエルが、良い気味だとばかりに口許を歪めて見上げてくる。すっかり冷えきった真那を容易く背負いながらも、隙有らば俺を蹴り飛ばそうとしている。器用だなお前。

 

「こら!かまえちゃんもそう言うこと言わないの!」

 

  俺がカマエルの挑発を軽くスルーしていると、カマエルを『火万柄(かまえ)』という五河兄妹の従姉妹と勘違いしている彩がぴしゃりと注意した。説教の矛先が自分にも向いたカマエルがたじろぐ。

 

「何、貴様は私の味方では────」

 

「どっちもどっち!それに、そこまで言ったらかまえちゃんが悪者になるよ!」

 

「ううっ………やむを得ん、自粛する」

 

  あれ、何か上手いことカマエルを御してねーか?俺より彩と居た方がいいんじゃないかな。

 

  よし、妹に押し付けよう(クズの発想)。

 

「なあ彩。悪いんだけど、そいつと遊んでやってくんね?俺、この二人をその辺で休ませてから行くから」

 

  俺はカマエルから真那を剥がすと、軽くカマエルの背中を押して彩に寄り掛からせる。抗議の視線が向けられるが、カマエルが何か言うよりも早く、彩がその手を引いて歩き出す。

 

「分かった、じゃあ流れるプールに行ってるから!行こっか、かまえちゃん」

 

「お、おい貴様!?離せ!?私は天使だぞ!?」

 

「うんそうだねー!かまえちゃんは可愛いねー!」

 

「否ァッ!?そうではない!くそっ、色無誠!覚えておけェーーーッ!!」

 

  悪気無く天使発言をスルーされ、彩が精霊を知らない(堅気の人間)と理解したカマエルは、無抵抗に引き摺られていく。流石に一般人に噛み付くつもりは無いらしい。

 

  やったぜ。これで一番めんどくせぇのがいなくなった。彩も離れたから、ちゃっちゃと繰三と真那を回復させられる。

 

「おいお前ら、調子はどうだ?」

 

  手近なベンチに座らせた二人に問う。二人とも未だにガチガチ震えているが、先程よりか体調が戻ってきているようだ。

 

「く、クソテン………鼻水が………」

 

「はいティッシュ」

 

  水着鞄からポケットティッシュを取りだし、真那に渡す。

 

「誠さん………暖めて………」

 

「はいタオル」

 

  水着鞄からバスタオルを繰三の頭にシュートヒム。

 

「いけず………」

 

「他人の目とか気にしろ」

 

「つまり衆人環視が無ければいい、と?」

 

「ちょっと黙っとき」

 

  繰三を放置し、右手の人差し指と中指で真那の額をコンとつつく。指の接触した瞬間に霊力を軽く流し込み、真那の体調回復をする。くしゃみをしかけていた真那が凍ったかのように暫し制止し、すぐに急な体調の変化に驚く。

 

「おぉ!?寒気が一瞬で消えた!?」

 

「治療専門の精霊だからな」

 

「便利としか言いようがねーですね」

 

  同じように繰三にも治療を施そうとすると、両手ではっしと指を掴まれてしゃぶられた。それ以上しゃぶってると撃つぞゴルァ。

 

「くふふぅ………凹と凸が重なって、淫靡ですわね………」

 

「彩の前でやるなよ。妹の教育に悪い」

 

「つまり彩さんの視線が無ければ………」

 

「似たネタを二回もやるな」

 

「み"っ!?」

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

  急に霊力が逆流し、俺に繰三の霊力がほぼ丸々入ってくる。等身大サイズを維持出来なくなった繰三が縮み、掌サイズの二頭身マスコットになって落下する。

 

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「危ね!繰三、何でお前俺に霊力戻したんだ?」

 

「み、みみ!!みーっ!」

 

  水着姿のまま突然縮んだ繰三をキャッチする。曰く、俺に霊力を持ってかれたとか。いや、そんな覚えねーな。とすると、俺の裏人格がやったか。ははぁ、さては裏の俺め、キレたな?()()()()

 

「やり過ぎて俺の裏人格がキレたんじゃね?ちょっと自重しろよ」

 

「み………みみ、るるるみ……」

 

「まるで何言ってるかわからねーんで戻しやがれです」

 

  あ、真那も繰三語分からない?そっかー。今んとこ繰三語分かるのは俺と十香だけなのか。今度四糸乃も試して貰おうかな。

 

  俺がそんなことを考えていると。

 

  ふと、四糸乃の霊力を感じた。

 

 

 

 

 

 

  分からん。

 

  何故、主人は私を戻すように色無誠に命じないのか。

 

  分からん。

 

  何故、私は色無誠の妹────彩とか言ったか────に纏わり付かれているのか。

 

  浮き輪?とやらに乗せられ、人工的に造り出された川を流れていく。

 

「かまえちゃん。難しい顔してるけど、流れるプール好きじゃない?」

 

  私の浮き輪を押して泳ぐ彩が、こちらの機嫌を伺う発言をする。別に嫌いではないが、色無誠にいいようにされているのは面白くない。

 

「………否。考え事だ。気にするな」

 

「そっかー。あ、後でアイス食べない?兄貴に奢らせるから!」

 

「悪くない提案だ」

 

「でしょーー!!」

 

  アイスとやらが何物かは知らんが、色無誠に命令出来るのは愉快だ。奴の事だ、彩が頼み込めば折れるだろう。妹は大切にしているようだしな。

 

  待て。妹?大切にしている?つまりこの小娘は色無誠の弱点そのものではないか?

 

  クックック………バカな真似を。こやつを人質にすれば、色無誠はすぐに言うことを聞くだろう。主人の中に戻り、主人をより強く更に強く尚強くして差し上げるのだ。さすれば意中の相手たる兄君も主人のモノとなろう。泣き虫弱虫だのと嘲られて涙に濡れる日々を送らずとも良いのだ。

 

  右の手刀で十分か。軽く炎をちらつかせてやれば大人しく従うだろう。なに、振り翳したこの手で命を奪うつもりはない。色無誠はともかく、こいつ自体に恨みは何一つ無いのだから───

 

  ん?

 

「あれ?何このウサギのパペット?誰の?」

 

  上流から流されてきた何かを、彩が掴んだ。それはパペット。ファンシーなデザインのウサギのパペットだ。

 

  既視感がある。確か主人の救った精霊に、確か似たようなモノを着けていた者がいた筈。四糸乃とか言う、冷気の精霊─────

 

「ひあぁぁぁあああっ!?よしのん!?よしのん!!」

 

  幼子の叫びと共に周囲の水が音を立てて凍りついていき、彩に迫る。が、当の本人はパペットを凝視しており気付いていない。他の人間は慌てて水から出たと言うに!

 

「十秒沈め小娘ェ!!」

 

「わひゃい!?」

 

  軽く凄んで彩を潜らせる。その隙を突いて、広がる氷塊に手を翳し、宿していた火を放つ。フン。パニックで振るう霊力など、物の数でもない。瞬時に焼き尽くし、水蒸気に変えて霧散させた。

 

「ぷあっ────熱っ!?何これ!?」

 

  律儀に十秒後に顔を出した彩が、視界を覆う湯気に驚愕する。

 

「温水プールの湯でも流れ込んだのだろう」

 

「そ、そっか………」

 

  一応納得したがそれでも腑に落ちない様子で、周囲の湯気を見回す。いや、完全に納得して貰わねば困る。こいつには私がただの人間だと思って貰っていた方が得だ。隙を突きやすい。

 

  プールの縁を掴んで動かない彩を見つめていると、餓鬼が流れてきた。呆然自失の四糸乃だ。突如氷を蒸発させられて状況理解が追い付いていないらしい。

 

「おい」

 

「ひっ!?」

 

  水着の肩紐を掴んで捕らえると、流れに逆らって四糸乃の体を引き寄せる。突然進行方向が変わったことに驚き、更に私を見て震えている。忙しい餓鬼だ。私は彩からパペットを引ったくると、四糸乃に押し付ける。

 

「そんなに大切なら、結束バンドかベルトで手首に固定しろ。次は無いぞ」

 

「いや、結束バンドは無いわー」

 

「(コクッ、コクッ!!)」

 

「頷いちゃうのね」

 

  彩が苦笑いを浮かべる一方、餓鬼は首が取れそうな程に首肯する。いつかその頭蓋が抜けてすっ飛んで行きそうだな。それはそれで愉快だが。

 

「あ、ありがとぅ………ございます………」

 

  パペットを受け取った餓鬼から礼を言われた。ふん、悪くはない。だがそれは主人から聞きたい台詞だ。餓鬼程度の礼で満足するものか。するものか。

 

「礼ならそこの小娘にしろ。貴様の宝を見つけたのはそいつだ」

 

「そ、そうなんですか………?」

 

「いや、大したことしてないよ。かまえちゃんの手柄だってば」

 

  礼くらい素直に受け取らんか。バチは当たらんぞ。彩を睨みつけるが、気付いていない。

 

  と、ここで唐突に彩が手を叩く。

 

「あっ、そうだ!四糸乃ちゃんと一緒に流れないプールを回ろうよ!かまえちゃん、お友達増えるよ!」

 

  よ、余計なお世話だッ!!それより貴様、中々に慇懃無礼な奴だな!?

 

「友達だと!?いらん!!」

 

「えー、でもその歳で兄貴と一緒にいるとか、かまえちゃん友達少ないよね?」

 

「私とついでに兄を馬鹿にしているだろう貴様!?」

 

  私が強く食って掛かっても、彩はまるで気にしていない。四糸乃がプールから上がるのを手伝っている。私以外は乗り気のようだ。くそっ、色無誠が現れてから上手くいかない。やはり奴は好かん。

 

「嗚呼、主人は兄君と上手く行っているだろうか」

 

  渋々続いてプールから出ようとして、思わず口から不安が漏れた。

 

  面白くない。

 

  何故だ。主人は何故私を遠ざける。このような奴等と時間を共にさせる。

 

  私が気に入らないのか。────何か、間違えたか。

 

  私には、力しか無い。

 

  ─────私は、()()なのか。

 

 

 

 

 

 

  それは、凶報であり、吉報だった。

 

  少なくとも、ASTの駐屯地で訓練をしていた鳶一折紙には、吉報だった。

 

「オーシャンパークにて、瞬間だけど大きな霊波反応が検知されたわ。近くに色無誠がいるけど、火を放つ少女がいたという噂がSNSに何件か上がってる。間違いなく別に精霊がいると見ていいでしょうね」

 

「────────!!」

 

  AST隊長:日下部燎子が隊員を集めてブリーフィングを行う中、折紙は頭を強打されたかのような衝撃を受けた。

 

  精霊。炎の精霊。

 

  それはつまり、憎き両親の仇に────〈イフリート〉に、他ならない。

 

  この時を待っていた。

 

  かつて、誠の『精霊は人間』という言葉に、心乱されたことがあった。

 

  しかし、今の折紙に宿った暗い炎は揺らがない。

 

  ─────例え人間であろうと、殺す。

 

「運良く近くに居た崇宮三尉に連絡を取ってるわ。暴れている様子は無いみたいだし、今は様子を見る。作戦決行は一時間後を予定するわ!各自、兵装とCR-ユニットのチェックをしてスタンバイ!解散!!」

 

  各自が己の持ち場に戻る中、ワイヤリングスーツに着替えた折紙は一人、自分のCR-ユニットではなく格納庫の一角へ向かう。

 

  そこでは、十名程の整備員が巨大な兵装の整備を急ピッチで行っていた。

 

「いきなり実戦かよ!!搬入してから〈ホワイトリコリス〉の動作テストやってねぇんだぞ!?」

 

「班長!ミリィに文句を言ってもどうにもなりませんぞ!」

 

「黙って最終チェックしろ!!三尉が戻ったら直ぐに出せるようにしとけ!!」

 

「何故ミリィはダメで自分はいいですかーーッ!?」

 

  上司に急かされ、悲鳴を上げて同僚のミルドレッドが整備するのは、〈ホワイトリコリス〉。理論上は精霊をも倒せるが、精鋭の魔術師(ウィザード)が30分も動かせない、DEM社新開発の欠陥兵器だ。真那ならば動かせるかもしれないとのことで、今はASTで預かっている。

 

  その最高の失敗作を見つめる折紙の姿に気付いたミルドレッドが、工具を振り回しながら声をかける。

 

「んお?おお、オリガミ!どうかしたですか?」

 

「これは、動くの?」

 

「勿論ですぞ!弾薬も十分!火を入れれば今すぐ飛びますぞ!」  

 

「そう─────良かった」

 

  折紙の言葉に引っ掛かるものを感じたミルドレッドだが、しかし全ては遅すぎた。機体正面に居た整備員を押し退け、折紙は〈ホワイトリコリス〉を装着してしまう。

 

「オリガミ!?」

 

「〈イフリート〉を討伐する。出る」

 

  随意領域が展開され、何者も折紙に近付けなくなる。鉄の塊を纏った少女が宙に浮かび上がると、格納庫の壁を突貫して飛び立ってしまう。

 

「何の騒ぎ!?」

 

「オリガミが〈ホワイトリコリス〉で出ちゃったですぞーー!!」

 

「はぁ!?」

 

  騒ぎを聞き付けた燎子が慌てて格納庫に駆け付ける。随意領域に撥ね飛ばされてひっくり返っていたミルドレッドが、ずれた眼鏡を直しながら呆れたと言わんばかりに叫ぶ。

 

「あんのバカ!!誰か今すぐ出れる!?」

 

「舞上勝兔二曹、行けます!」

 

「超特急で折紙を連れ戻して!」

 

「ユニットのスペックが違い過ぎます!速すぎて追い付けませんよ!」

 

「巡航ミサイル抱えてでも追い付きなさい!」

 

「そんな無茶苦茶なぁ!?」

 

「なら、私が行きましょうか?」

 

  実力も装備も劣る舞上が、折紙を追い付くことも、ましてや止めることなど出来る筈がない。そう抗議していた所に、横槍を刺す人物が現れる。

 

「げえっ、執行部長!?」

 

 ミルドレッドが驚きと共に見つめるのは、DEM社執行部長────エレン・M・メイザース。世界最強の魔術師が、CR-ユニットを完全展開して立っていた。

 

「我々も、〈サッカバス〉………色無誠に用があります。悪い話では、ないでしょう?」

 

日下部燎子に、肯定以外の選択肢など、無かった。

 

 

 

 

 

 

 




案の定 DEMに狙われ 最上川

自分でやっといてエレン相手は危険だと思った。流石に七罪ほどあっという間にナツーミ(物理)されないでしょうけど。
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