人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り)   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

うん、これを読んだ人が言いたいことはわかっています。はい、2,3週間前に未完設定にして活動報告で書けないと言ったのに、こうして投稿できています。

うん、あれだ。下手に活動報告に言わない方がいいね。いつインスピレーションとモチベーションが上がるか分からないからね。すまんぼう。

それではご覧ください。


19話:天才との闘い

「おはよう、皆!」

 

先頭に立つキリヤが教室に入り、皆に挨拶をした。それに応えるようにクラスメイトも挨拶を返す。

 

入学してから2ヶ月経ち俺らのグループは噂になり、それと同時に有名になってしまった。噂の感染ぶりは小学生のトラウマが掘り返される。

 

「おはよう、比企谷」

「あ、ああ。おはよう…」

 

こうして俺にも挨拶がくるようになった。今までおはようなんて教室で言われた事なかったから新鮮だ。

 

「シズクー、朝チューしたの?」

「してないよ!まだ早い!」

「今時だともうしてておかしくないんだけどねー」

 

シズクもクラスメイトにからかわれる始末。お願いだからそういうのは彼氏である俺の前で話さないでほしい。恥ずかしいだろ。

 

いつの間にか、俺達の周りには人が集まるようになっていた。

 

「あれ?比企谷は?」

「え?ここにいなかったか?」

「また急に消えたんだけど、あいつ影薄いのか?」

 

時にこうしてディセイブを使い、自分の机で本を開いている。

 

「ここにいるぞ」

「いつの間に……」

 

そしてキリヤに首根っこ掴まれ、集団へと連れて行かれる。周りの奴らは毎回の事なのに、飽きることなく笑っているのが不思議だ。

 

 

「クレア、俺に稽古つけてくれないか?」

「へ?」

 

晩飯を食べ終え、シズクとキリヤが寝付いた頃、部屋で本を読んでいたクレアにある頼みをした。

 

「私に魔法を教わりたいの?だけど、八幡はもう十分魔法を使いこなせてるよ」

「具体的に言うと俺と闘ってほしい。いや、クレアと闘いたい」

「……本気?自分で言うのもなんだけど、私強いよ?」

「そんなもんずっと一緒にいる俺が一番分かってる。だからこそ、強くなるために俺はクレアと一戦を交えたい」

 

このクレア=フローランという人物は、天才だ。平凡な田舎生まれにして優れた魔法で有名になり、キリヤ達が生まれた大都市ウェルサクスでも名を馳せる程の魔法使いになった。そんな人が目の前にいて何もしないのはもったいない。

 

「面白いじゃない。その目、本気だね」

「腐ってるぞ」

「ううん。今の八幡の目は強者の目。……全く、この数年でここまで魔法馬鹿になるなんてね」

 

しょうがないだろ。日本人だもの。

 

「じゃあ、そうね……。明後日に私が卒業した大学に行こうか」

「分かった。ありがとな、我儘を聞いてくれて」

「私も八幡がどれだけ強くなるのか楽しみだからね♪」

 

 

 

 

 

 

学校の昼休み。普通に閉まっている屋上へのドアも俺らには何の意味も無いから、昼食をとる俺達だけの場所になっている。

 

『クレアさんに修行をつけてもらう!?』

 

昨日の夜の事を言った途端、キリヤとシズクが吹き出しそうになった。正面に座っているから危うく浴びるところだった。セーフ。

 

それにしても、キリヤとシズクがそこまで驚いていることに驚いている。

 

「お前無茶だろ。せめて自分よりちょい上の実力者と修行ならまだわかるけど、限度ってもんがあるぞ」

「クレアさんがどれだけ強いか知ってるでしょ」

「そんなに凄いんだ。そういえばさ、その実力とかってどう知ればいいの?見た目とかじゃ分からないよね」

「そういや説明してなかったな。まぁ相手の実力までは分からないが、自分のならいくらでも調べられるんだ。このビーコンを使ってな」

 

そう言って懐からビーコンを取り出し、生成した魔力玉を乗せた。適正系統とか強さとかも全部魔力玉なのか。

 

「結果がでた。お、この間よりもちょっとだけ上がってるな」

「魔法力しか表示されないんだな」

「さすがに身体能力まではね…。限界があるから。私もやってみよっと」

 

苦笑するシズクもビーコンを取り出し、調べ始めた。便乗し、俺もビーコンを起動する。

 

魔法力の数値というのは1から500まであるらしく、単純に数字が大きい程魔力や濃密度が多い。濃密度というのは、魔法の強さだ。濃ければ濃い程威力は増す。

 

シズクの結果はあまり芳しくなかったようだ。ほとんど闘わないから当然っちゃ当然の結果だと思う。強い魔法使いを目指しているわけでもないからな。それに比べて俺の方はキリヤとそこまで差がない。ずっと2人で組み手をやっていたのが理由だろう。

 

明日の修行の時、クレアの数値を聞いてみることにしよう。

 

 

日曜日、学校の休みの日にクレアに早朝から起こされた。何と5時だ。そして俺が目を開け、クレアの姿を確認した途端、修行に行くよと言われた。中々に鬼畜な事をしてくれたもんだ。ソフィーラでの私服である外套を身に着け、開け閉めを繰り返す目をこすりながら、クレアについていくこと1時間。連れてこられた場所は、横も縦も広くてデカい建物だった。

 

「ここは?」

「私が通ってた大学。ちょっとここの訓練場を借りるの。ほら、あそこがそうだよ」

 

なんか俺の知らない所で凄い規模になっているのだが…。確かに本気で頼み込んだけど、ここまで本格的にされるとビビるんだけど。この訓練場も大会でも開くんじゃないかというくらいだだっ広い。

 

訓練場に入り、クレアと俺は対峙する。

 

「目は覚めた?」

「おかげさまで。じゃ、よろしく頼む」

「うん。じゃあまずは前座として、私に魔法を撃って」

「ああ」

 

左手に鎖を生成し、構えをとる。それに対してクレアは杖を地面につけながら持ち、何の構えも取らない。はっきり言ってどこからでも狙えるくらい隙だらけだ。

 

鎖を力強く振り、斬撃波をクレアに放った。当たれば服は破れて切り傷は免れない。しかし、クレアはその場から微動だにせず、ただ受けるのを待っているようにしか見えなかった。

 

「ハァッ!」

 

一瞬の出来事だった。クレアは俺の斬撃波を受け止めることなく、躱すことも跳ね返すことも無く、気合で消してしまった。いきなり格の違いを見せられたが、すぐに次の行動に移る。続いて鎖に魔力を練りこみ、振ることによって魔力弾は拡散弾となりクレアに襲い掛かる。

 

「意外と速いなー。さすがにこれは避けきれない」

 

クレアは何か小さく呟いたようだが、距離はかなり離れているためそれは聞き取れない。だけど表情は崩さず、余裕の笑みを浮かべているようだった。

 

俺の放った魔力弾は、最低限の動きで躱され、避けきれなかった物は素手で弾かれてしまった。わざと大きな格の違いを見せつけてきたクレアを睨み、鎖を握りなおす。

 

「じゃ、今度はお互い本気でやろっか」

「……分かった」

 

クレアに向かって一直線に走りだし、鎖を叩きつけた。それを杖で受け止め紫色の粒子が散る。そこからはキリヤとの組手でもしている縦、横、斜め、全方位で鎖の猛攻をするが、クレアは杖の上部で全て受け流す。

 

「せいっ!」

「っ、げほっげほ!」

「手に意識がいき過ぎて他が疎かになってるよ」

 

クレアは攻撃を受け流しつつ、弾いた途端、杖の石突で俺の腹に当てふっ飛ばした。すっかりクレアも地球の重力に慣れていて、しっかりと反応できている。

 

「刺さったらどうしてたんだよ……」

「大会だとそんな甘い事言ってる場合じゃないよ。それにちゃんと加減は考えてるって」

 

キリヤから聞いた大会のルールでは相手が戦闘不能になるか降参するかで決まるから、確かにそんなこと言っている場合ではない。ルールがルールのため、死ぬ可能性もあるらしい。何それどこの天下一武道会?怖すぎる。

 

「じゃ、次はこっちからいくよ」

「……こい」

 

俺が構えをとった瞬間、クレアはこちらに一直線に走ってきた。てっきり最初と同じで魔法撃ってくると思っていた。あんな魔導士みたいな恰好して肉弾戦かよ……。

 

一気に詰め寄ったクレアは杖を振りかざす。避けきれないと思った俺は鎖を両手に持ちガードの体勢に入る。

 

しかし、俺の鎖はクレアの杖によってあっさりと砕かれた。

 

「隙あり」

「ぐっ!がはっ!」

 

鎖を砕かれ、バランスを崩した俺に、クレアは魔力を込めた手で腹を直接殴った。俺は体をくの字に曲げ、腹を手で押さえる。

 

「とまぁ、このように体の一部に魔力を込めることによってダメージが増加する。どう?」

「もうちょいで吐きそうになった」

「あはは。久しぶりに闘ったからつい気合入れすぎちゃった」

 

年に似合わず日本特有のてへぺろをしたクレアに引く俺。いい大人がやるとこんなにもため息がでるのか……。シズクがやったら可愛いかもしれない。今度やらせようか。やってくれるか?

 

下らない思考は一旦置いておき、再び鎖を生成する。

 

「お?まだやる?」

「まだ30分も経ってねえし。後2時間はやる」

「死なないでよ?」

「死なない程度でよろしく」

 

クレアに掌を向け、足に鎖を生成し、足を拘束させた。おそらくクレアならすぐに解いてしまいそうだが、それも構わず俺は全力で走り出す。左手に持つ鎖をクレアに思い切り振った。しかし、先程と同様杖によって塞がれる。

 

「今だ!」

 

魔力をふんだんに込めた右手をクレアの腹に放った。会心の手応えだ。けど、掴まれている感触がある。そう、杖を両手で持っていたはずなのに、防がれていた。

 

「何でだ?」

「右手を振るうとき、左手の力が抜けたからだよ。おかげで片手を離すことができたの」

 

俺は一旦クレアと距離をとる。

 

「それにしてもそのパンチ。さっき言った事すぐにできちゃうんだ」

「まぁ、なんとなくで」

「秋葉原にいる魔法系のアニメが好きな人に魔法教えたらどうなるんだろうね?」

 

クレアは笑いながらそう言った。俺の予想だと才能次第で人類最強の魔法使いが誕生するだけだ。

 

「やっぱり慣れない事はするもんじゃないな」

「んーん、違うよ。慣れない事を慣れさせるのが修行。思いついたのはどんどん私に見せて」

 

どうせ全部受け止めちまうだろうが……。この短い修行で思い知った。俺はまだクレアにダメージどころか触れられやしない。

 

「そういや、クレアの魔力数値っていくつなんだ?」

「あ、数値のこと知ってるんだ」

「この間キリヤから聞いてな。俺はまだ70あたりだ。キリヤも同じくらい」

 

中一から魔法を始めたのに、俺はまだたったの70程度。400越えの人ってほとんど中年とかじゃないの?やはり数字というのは事実を突き付けられていると思ってへこんでしまう。

 

「私の数値は最後に測ったやつで400ちょいだよ。確か大学卒業するときに測ったんだっけ?」

 

フフンと胸を張るクレア。おいおい嘘だろ。俺と初めて出会った時からすでに400越えだと……。

 

改めてクレア=フローランという天才を認識した。才能に溺れることなく努力を続け、一流大学の頂に立った大魔法使いを。卑屈でネガティブで目が腐っている俺が、自然とそこに目指したいと柄にもない事を思っていた。俺の中身も魔法で変わってしまったのかもしれない。

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

もう未完にはしません。活動報告に書いて大袈裟にしません。許してください何でもしますから!(なんでもするとは言ってない)

また次回。

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