人間不信になった俺は魔法使いに出会いました(打ち切り)   作:”アイゼロ”

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はい、どうも、アイゼロです。

3話突入。

後、名前無い方が読みやすいとのことだったので、入れないようにしました。

それではご覧ください。


中学生編
3話:スーパーのヒーロー


中学校入学式当日。校長の長い話、在校生代表の歓迎の言葉、教師紹介等の面倒なことも終わり、1年B組の教室に、俺はひっそりと座っている。周りはグループ形成のため、いろんな人に駆け回り、声をかけている。よくそんな面倒なことができるものだ。

 

俺が通っていた小学校よりも結構遠い、クレアの家から歩いて30分の中学校。さすが、ほとんど見覚えのない人物だ。良きかな良きかな・・。

 

そんな俺は今、イヤホンを耳に装着し、本を読んでいる。こうすることで自分の世界を創りだし、誰も話をかけられない状況にする。

 

クレアに魔法を教えてもらうことになった日から、俺は毎日修行をしている。おかげで入学前には、魔力玉を作り出せるようになった。米粒サイズだけど・・。うん、しょぼいね。

 

早く〈ディセイブ〉を使えるようになりたい。誰にも見られず、平穏に生活を送りたい。聞いたところ、あれって結構難しいらしい。

 

「比企谷八幡です」

 

嫌いな自己紹介も質素に終わらせ、何の特徴もない男と認識させた。

 

午前中で学校は終わり、家路へ就く。

 

 

「ただいま」

 

「おかえり。どう?中学校は」

 

「同じ小学校だった奴もほとんどいないし、何事もなく過ごせるとは思う」

 

「そっか。もし、何かあったら言ってね。私が成敗してあげるから」

 

うわぁ、かつてここまで頼もしい人はこの世にいたのだろうか。心強いな。あまり守られるのも、男としては複雑だけど。

 

「なるべく、そうならないようにするよ」

 

 

今日も今日とて魔力の練習だ。毎日魔法の練習なんて、地球上で俺だけなんだろうなぁ、と優越感に浸っていながら、胡坐をかき、手に力を込め、集中する。

 

う~ん・・相も変わらず、小さいな。もうこれ4日間続いてるぞ。もしかして、これが限界なの?なにそれ超悲しい。

 

「うお!」

 

なんてネガティブ思考になっていたら、米粒サイズだった魔力玉が、突然野球ボールのサイズになった。

 

その時、俺の頭にある1つの仮説が生まれた。もしかしてと思い、もう一度ネガティブ思考になってみる。

 

すると、野球ボールサイズだった魔力玉が少しだけ、また大きくなった。

 

「凄いじゃない!八幡」

 

俺の修行を一部始終見ていたクレアが、驚いたように声をあげて、寄ってきた。

 

「魔法ってね、感情によって影響されることもあるの」

 

やっぱりな。俺の立てた仮説はほぼ正しかった。『負の感情』だ。俺の魔力の源は・・。もっとカッコいいのが良かったんだけどなぁ。

 

けど、まだこの大きさが限界だな。今はもうこれ以上大きくならないと、体で感じる。

 

取り敢えず、今日はここまでにしとこう。

 

「今日は何が食べたい?」

 

「ん~、そうね。・・・ハンバーグがいいわ」

 

実は、中学に上がる前に、料理は俺が担当することになった。クレアはソフィーラで仕事があるし。魔法の研究をしているのだってさ。自分で作った魔法もあるらしい。すごいよな!そんな人の指導受けてる俺って相当恵まれてるんじゃない?

 

そして、クレアは日本の料理に感動したらしく、今ではすっかり日本食に舌が肥えてしまった。

 

ちなみに俺の料理の腕前はクレア曰く、『店に出てもいい』というレベルまで上がった。

 

じゃあ、材料を買いに行ってきま~す。

 

 

近くのスーパーにやってきた。ここは品ぞろえもいいし、夕方になると半額になる。おかげで、おばさんとの奪い合いに参加せざるを得ない。それはもはや戦場だ。

 

挽肉に卵、玉ねぎ等を入れ、もう一品のおかずを思索中。・・・お、レタスが安い。サラダでいいだろう。トマトは入れない。ボクアレキライ。

 

スーパーのレジは真ん中がベテランだという情報を知っている俺は、真っ先にそこをとり、おばさんの後ろに並んだ。

 

 

会計を済ませ、外に出ようとした瞬間、店内に怒鳴り声が響いた。

 

「またミスをして!ちょっとは学習しないか!!」

 

「す、すみません・・・」

 

今の怒鳴り声の正体は、おそらく店長であろう男の人と、そしてもう片方は店長に叱責を受けている、女性だ。バイトの人かな?若いし。

 

「いつになったらまともに覚えるんだお前は!!」

 

うっわ。最悪だ、見ろよ周りを。静まってんじゃねぇかよ。バイトの人も涙目だし。とにかくやめさせよう。ほっとくと、虫が悪い。

 

「あの、周りの人に迷惑ですから、そんな大声出しちゃいけませんよ」

 

「なんですか?俺は今、仕事中です。邪魔はしないでください」

 

いやあんた店長だろ。いくら何でもその態度はないんじゃないか?

 

「周りを見てくださいよ。迷惑がかかってるんですよ」

 

俺にそう言われた店長は、その言葉に応じて辺りを見回す。客の視線は見事に、店長に降り注いでいた。

 

「ちっ、そもそも、そいつがミスをするからいけないんだ!!仕事も中々覚えられていない!」

 

店長は周りにも、俺にも怒鳴りながら、バイトの女性を指さした。

 

「だからって怒鳴るのはどうかと思いますよ。それに、名札を見る限り、彼女は研修中ですよね。しっかりサポートするのが上の務めじゃないんすか?そんな怒鳴ってちゃ、やる気も失せてしまいます」

 

「うるさい!店のやり方に、客が口出しをするんじゃない!」

 

は~、これはもうどうにもなんねぇや。店長がこんなんじゃ。

 

「ゴホン!」

 

店長が怒鳴る中、その後ろに1人のスーツを着た男性が現れた。

 

「これはどういうことかね?」

 

「しゃ、社長!こ、これはその、ですね」

 

なんと社長であったか。いや~、よかった。店長がこれだから、どう事態を収拾すればいいのかわかんないところだったけど、助かった。

 

「何事かと思って、来てみたら・・ハァ。私と一緒に来てもらおうか」

 

「くっ!・・お前のせいで!」

 

怒りのあまり、店長が俺の顔面目掛けて殴りかかってきた。何で俺なんだよ・・。そんで俺のトラウマ蘇らせないでくれよ。何度もそんな目に合ってんだから。

 

それ故に、こういう対処法は知っている。

 

その拳が当たる直前、手をはじき、受け流した。そしてそのまま倒れこむ店長。

 

なんとも情けない姿だ。むしろ店員が恥ずかしい思いをするぞ。

 

「さあ、はやくいくぞ!・・皆さま大変お騒がせして申し訳ありません。よろしければ、これからもスーパー〇〇をご贔屓に。・・君も、ありがとう。見たところ中学生に見えるが、すごい子だ」

 

「そんな大層な事してませんよ。放っておけなかっただけです」

 

「随分と謙虚だな。何度も言うが本当にありがとう。何かお礼をしなければな」

 

「いりませんよ。それに、お宅のスーパーをよく利用させてもらってますから」

 

「そうか。君がそう言うなら、無理強いはしない。私はお暇するよ」

 

そう言って社長は、店長を連れて、この場を去った。

 

パチパチパチパチパチ

 

その瞬間、店内が拍手の音で満たされた。いいぞ!、よく言った!という名声までもが俺に向けられていた。

 

うわぁ、目立っちまった・・。明日からはきっとここに来るたび、俺はヒーロー扱いされるんだろうなぁ。さすがに自意識過剰だな。

 

「あ、あの、ありがとうございました!」

 

叱責を受けていたバイトの女性が、深く頭を下げて、お礼を言ってきた。ふむ、よく顔を見ると美人さんだ。まだ童顔な辺り、高校生だろう。

 

「別にいいですよ。あのまま帰るなんて俺にはできなかっただけです。バイト、頑張ってください。それでは」

 

「あ、待って。せめてこれだけでも」

 

彼女はそう言って、一枚のメモを渡してきた。そこには、数字と記号が羅列されている。連絡先かな?

 

「ではこれで。本当にありがとうございました。また来てくださいね」

 

彼女は最後にそう言い残し、バックヤードに入っていった。

 

俺、携帯持ってないんだけど・・・。

 

 

 

 

「へぇ、そんなことがね・・・ふむふむ」

 

スーパーで起きた出来事を話すと、クレアはハンバーグを頬張りながら、感心したように頷く。

 

「やるじゃない八幡。家族としても誇らしいわ!」

 

何だろうな、クレアに褒められると、素直に嬉しい。それは置いといて、このメモどうしようか?捨てるなんて人の厚意を踏みにじるなんてことできないし。

 

「せっかくだから、これを機会に携帯買おうか」

 

「え、いいの?」

 

「遠慮しなくていいよ。私も地球専用の携帯が欲しかったし」

 

「え?地球専用?」

 

「これだよ。ソフィーラではこういうやつを連絡手段にしてるんだ」

 

クレアが出してきたのは、厚さ1cmの長方形の機械だ。見た目はただのスマホにしか見えないが・・。

 

「こうやって使うのよ」

 

横にあるボタンを押すと機械が光だし、モニターが目の前に映った。あれだ、スクリーンのようなやつ。

 

「これはビーコンって言って、このモニターから、ビデオ通話とかできるの。他にも、検索機能やマップ、様々な用途があるわ」

 

「へぇ、凄いな・・」

 

後日、スマホを買いに行き、取り敢えず店員さんとクレアのだけでも登録をしといた。

 

 

しばらく時が過ぎた休日の11時頃、昼食と夕食の材料を買いにきた。

 

先日のいざこざの影響も特になく、今日も店に人だかりができている。

 

「こんにちは」

 

野菜の目利きをしていたら、あの時のバイトの女性に挨拶をされた。

 

「こんにちは」

 

俺も挨拶を返す。

 

「こないだはどうもね。・・そういえば、名前言ってなかったね。汐留春(しおどめはる)って言うの。よろしくね」

 

「はぁ、比企谷八幡です」

 

名乗るつもりなかったんだが、名乗られてしまった以上返さなければいけない。

 

「それでは」

 

「あ、待って。さっき入荷したばっかの野菜があるから持ってって。新鮮だよ」

 

「本当ですか!ありがとうございます」

 

ラッキー♪

 

その日、初めて良好な顔見知りができました。

 

 

入学してから2ヶ月、行事の一つである遠足も何事も無く終わらせ、現在は6月。

 

だいぶ俺も魔法を使えるようになった。魔力玉はバスケットボール並に作り出せ、初歩的な魔法も使えるようになった。

 

〈ディセイブ〉〈リビテーション〉〈デテクション〉。これくらいかな。ちなみに〈デテクション〉というのは、探知魔法だ。使えて損はないらしい。

 

今日も少し練習をしている。今回は魔力玉2つ同時に出すことを目標として頑張っている。

 

やっぱ難しいな・・。2つ出そうとすると、1つの玉が2つに分裂しちゃって小さくなっちまう。

 

そしてそれを見守るクレア。

 

「(思ったよりも成長速度が速い。八幡ってめんどくさがりだけど、努力家だからね。なんだか楽しみになってきたわ)」

 

「ほっ、ほっ」

 

よし、もう慣れてきたな。意外とコツを掴むのが容易になってきた。俺って実はすごいんじゃないか?

 

「(元々頭もよくて理解力もあって、呑み込みも早いな、と思っていたけど、予想以上にできてきちゃってる・・・)」ポカーン

 

「ん?どうしたクレア?そんな顔して」

 

クレアの今の顔は、目が点になっていて、ポカーンと口を開けている、失礼だけど間抜け面だった。

 

「いや、八幡。平然と魔力玉分裂させてるけど、それ結構難しいのよ」

 

「え、そうなのか?俺的には2つ同時に出したいんだが・・。まぁ、これがすごいなら続ける価値はあるな」

 

「(何で地球人が?じゃなくて地球人だからこそなんだろうな。ここには魔法なんて存在しない。故に魔法関連の創造力はソフィーラの人よりも長けているんだと思う。どっちにしろ、八幡はすごい魔法使いになりそうね)」

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。

もらった感想は、前書きか後書きで答えようと思います。

また次回。

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