箱庭最強最弱も異世界から来るそうですよ? 作:紅ノ道化師
「な、なんでこの短時間で“フォレス・ガロ”のリーダーと接触して、しかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」
俺達がギフトゲームをしてる間に箱庭を堪能している間に飛鳥、耀、ジンの三人はこの辺りを支配しているコミュニティ“フォレス・ガロ”のリーダー、ガルド=ガスパーと接触し、喧嘩を売りギフトゲームをする状況になっていた。
黒ウサギの受難が絶えることは無いようだ。
「しかもゲームの日取りは明日!しかも敵のテリトリーで戦うなんて!準備している時間もお金もありません!どういう心算があってのことですか!?…聞いているのですか?」
「「腹が立ったから後先考えずに喧嘩を売った。反省はしている」」
「黙らっしゃい!!」
ハモる言い訳に激昂する黒ウサギ。
「いいじゃねえか黒ウサギ。別に見境なく喧嘩を売ったわけじゃないわけだし」
「あんな三下に負ける要素無し」
「十六夜さんと天道さんはは面白ければいいと思っているかも知れませんが、このゲームで得られるのは自己満足だけなのですよ。このギアスロールを見て下さい」
俺は黒ウサギからギアスロールを受け取りそれを読み上げる。
「“参加者”が勝利した場合、主催者は参加者の言及する罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”確かに自己満足だな」
「時間さえかければ彼らの罪は暴かれます。だって肝心の子供達はもう……」
黒ウサギも“フォレス・ガロ”の噂は聞いていたがまさかここまでとは思っていなかった。
「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの。それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」
「ま、まあ確かに逃がせば厄介ですが…まあいいでしょう“フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんがいれば楽勝でしょう」
「何言ってんだ?俺は参加しねえぞ?」
「当たり前よ。貴方達なんて参加させないわ」
十六夜と飛鳥は怪訝そうな顔をして鼻をならす。
「だ、駄目ですよ!皆さんはコミュニティの仲間なのですから協力しないと…」
「そうじゃねえ、この喧嘩はこいつらが売って奴らが買った。なのに俺らが手を出すのは無粋だって言ってんだよ」
「あら、わかってるじゃない」
「ああ、もう好きにして下さい…」
今日一日でかなり問題児達に弄ばれた黒ウサギはもはや突っ込む元気も無かった。
*
“フォレス・ガロ”との一悶着を終えて、黒ウサギ達は信仰のあるコミュニティにギフト鑑定をしてもらうことになった。
「“サウザンドアイズ”?」
「YES。サウザンドアイズは特殊な“瞳”のギフトを持つ者達の群体コミュニティ。箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「ギフト鑑定の必要性あるか?」
「自分のギフトを把握しておけば引き出せる力は大きくなります。皆さんも自分の力の出所は知りたいでしょう?」
黒ウサギは同意を求めるが十六夜、飛鳥、耀の三人は少し複雑な表情を浮かべていた。
「げッ、白夜王かよ…」
白夜王とはちょいと問題が有る。
俺達は、街路の脇に生えている桜の様な木を眺めていた。
「桜の木……ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」
「いや、まだ初夏に入ったばかりだぞ?気合の入った桜が咲いててもおかしくないぞ」
「……今は秋だと思うけど」
「異なった異世界から来たんだから時間軸がずれてるんだな…他にも違う場所がある筈だが」
三人に疑問になった時に俺は助言を入れた。
黒ウサギが更に追加で言ってくれる。
「天道さんの言う通りです。皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているので時間軸の他にも歴史や文化、生態系など違う箇所がある筈です」
「へえ、パラレルワールドってやつか?」
「近いが違う。平行世界は、世界軸が常に並行なため、お互いの世界が交わることが立体交差平行世界は世界軸が交差するため、2つの世界に共通点が生まれる。
立体交差平行世界論:仮に2つ以上の世界軸があるとするなら、その全てが独立している訳では無いという考え方の一種だ」
この手の説明は昔覚えたが二人は分からないらしいから加えて説明する。
「例えば世界軸xに住んでいる★と世界軸yに住んでいる●が居る。
平行世界だと、★と●は決して会うことは無い。世界軸が常に並行なため、お互いの世界が交わることが無い。
…が、立体交差平行世界だと、ある一点で世界軸が交わることにより★と●が会える」
へぇーと一同が言う。
そうこうしているうちに“サウザンドアイズ”の支店に到着した。
店の前では割烹着姿の女性店員が看板を下ろそうとしていた。黒ウサギが慌てて止めにいく。
「待っ………」
「待ったはなしですお客様。ウチは営業時間以外営業していませんので」
黒ウサギは待ったをかけられなかった。
流石は超大型商業コミュニティと言った対応である。
「な、なんて商売っ気のない店なのかしら!」
「全くです!閉店時間の五分前に締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とはお客様舐めすぎでございますよ!?」
黒ウサギは喚くが女性店員も冷めた目で黒ウサギを見る。
「なるほど、確かに“箱庭の貴族”である兎のお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますのでコミュニティの名前をよろしいですか?」
「……!」
黒ウサギは答えられなかった。黒ウサギに変わってか十六夜が躊躇いなく答える。
「俺たちは“ノーネーム”ていうコミュニティなんだが?」
「ほほう、ではどの“ノーネーム”様でしょうか?できれば旗印を確認させてもらってもよろしいでしょうか?」
女性店員にそう言われなにも言えられなくなる十六夜達。
「これで通れるだろ?」
俺が見せたのは“ザ・シード”の旗印。
その中には勿論サウンドアイズの旗印も刻まれている。
「これは“ザ・シード”!?って事は…!?」
店員は旗印を見て驚き俺を見て更に驚く。
「ん、ただいま…」
すると店の中から白い影が迫ってくる。
「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉ!久しぶりだな黒ウサギィィィィィ‼︎」
「きゃあぁぁぁ……!」
突然現れた着物を来た白髪の少女が黒ウサギと共に街路脇の水路に落ちた。
「…おい店員。この店にはドッキリサービスもあるのか?あるなら俺も是非別バージョンで」
「ありません」
「なんなら有料で」
「やりません」
「やろうか…」
「か、考え置きます…///」
三人はなんとも馬鹿らしい会話であるが俺らは真剣だ。
「し、白夜叉様?どうして貴方がこんな下層に?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしてたに決まっておろう。フホ、フホホホホホホ!やはりウサギは触り心地が違うのう。ほれ、ここが良いか、ここが良いか?」
「白夜叉様……取り敢えず離れて下さい‼︎」
黒ウサギは白夜叉を引き剥がすと、店の方に投げつける。
クルクルと縦回転で迫ってくる白夜叉を十六夜は俺に向けて蹴る。
「オラァ!」
「ゴハァ!」
迫ってくる白夜叉を俺は優しく受け止めた。
余談だが…俺も蹴ったことが有るが結果決闘に成った。
「お、おんし飛んできた初対面の美少女を蹴り飛ばすとは何様じゃ‼︎」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
「そして受け止めてくれた小僧感謝す…るぞ?」
白夜叉は俺の顔を見るなり驚く。
久し振りに二人に会えて気分が良かった。
「頭首殿なのか!?」
「おうとも、正真正銘“ザ・シード”頭首の天道湊様だぜ?」
その言葉を聞いた瞬間白夜叉は俺に抱きつく。
俺はただ十六夜の真似をしただけなのに…
「会いたかったのぞー!!」
「ギヤャャャャァァァ!!!」
白夜叉の行動により俺の反応にみんなは驚く。
抱き付いた速度と絞められた力は俺の骨をミシミシと砕く。
「白…マジで死ぬから…最後の遺言──今までありがとな、さよなら」
俺の言葉を聞いて白夜叉は急いで離れる。
多分俺此処に眠るだわ…
「すまぬ、頭首殿は“最弱”だったの。それにしてもおんしらが異世界から来た新しい同士か。ということは…」
白夜叉は不敵な笑みを浮かべていた。
「ついに黒ウサギが私のペットに!」
「なりません!!どういう起承転結があってそうなるんですか!?」
黒ウサギが耳を逆立てて怒る。
「さて、冗談はこれまでにして、話があるのだろう?話なら店内で聞こう」
「よろしいのですか?彼らは名も旗もない“ノーネーム”のはず。規定では」
「“ノーネーム”だとわかっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する侘びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。まぁその心配はないと思うがの」
白夜叉は黒ウサギ達を店内に引き入れる。