世界は不公平だ。頭がよくてスポーツができてクラスの人気者のあの子よりも、なんの取り柄もない私を選んだ──。
そして、世界は、残酷だ──。
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私立ひばりが丘学園。
そこに通う
「いつも思うんだけどさぁ、ひかりって本当にオシャレしないよね?」
ひかりの隣の席に座る
ひかりと紫苑は幼稚園のころからの幼なじみだ。家も隣同士で、時間があるときはよく互いの家を出入りしていた。そして、日が沈むまで遊びふけるのだ。知らない人が見たら、仲の良い二人は姉妹に見えていただろう。中学生になってからもその関係は続いていた。部活などで時間は短くなったが、空いた時間は二人でいることがほとんどだった。
「そうかな? 別に気にしたことはないんだけど」
ひかりは自分の格好を確認しながらそう言った。
「ひかりもいちおう女の子なんだし、もっとオシャレに気を遣おうよ……」
紫苑は呆れながらそう言った。
こう言っている紫苑は上着を羽織らずカッターシャツだけを着ており、しかもそのカッターシャツの胸元のボタンを一つ開けている着方をしている。オシャレというよりラフな着方といえるだろう。
「……私は……紫苑ちゃんみたいにスタイル良くないし、絶対に似合わないよ」
「ほーーら! ネガティブ発言はよくないって言ってるでしょ! マイナス一点!」
紫苑は人差し指を突き立てる。
「……なにそれ?」
「ペナルティだよ、ペナルティ! ひかりがネガティブな発言するたびに減点していくんだよ!」
「……どういう……」
ひかりは言いかけたが、そのときに担任の
「みなさん、おはようございます」
『おはようございます!』
緒方先生のあいさつに、生徒たちは声を揃えて答えた。
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──同時刻、とある場所──
「新しい魔法少女が、ですか?」
白いローブをまとった男性が思わず大きな声を上げた。
「そうだ。 覚醒のときは近い」
もう一つの声。それは黒猫によるものだった。
「ということは、これで魔法少女が五人揃う、というわけですね?」
「ああ、そういうことだ」
黒猫は革張りのソファにジャンプする。どうやらそこがお気に入りの場所らしくすぐに横になった。
「これで
「……さあ、それはどうかな?」
黒猫はそのまま目を閉じ眠りについた。
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──四時間後、再び学園──
ひかりと紫苑は食堂で昼食を食べていた。ひかりはアジフライ定食、紫苑はカレーライスを注文している。
「あ、そうだ! 帰りに服でも買っていかない? 最近いい店見つけたんだ」
紫苑は思い出したようにそう持ちかけた。
「え、服?」
ひかりは急に言われたので思わずビクッとした。
「あれ? まずかった?」
「いや、別に大丈夫だよ」
「よかったぁ~~!」
紫苑は安心したように息を漏らした。
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──さらに四時間後──
ひかりは校門前で紫苑を待っていた。
ひかりは新聞部、紫苑はなぎなた部に入っているのだが、なぎなた部の活動は新聞部よりも三十分遅く終わるので必然的にひかりが紫苑を待つことになるのだ。しかし、ひかり自身待つことは嫌いではなかった。
と、紫苑が走ってひかりのもとへやって来た。
「ごめんごめん、遅くなっちゃった!」
「大丈夫。 いつものことだし、慣れっこだから」
ひかりは謝る紫苑にこう言った。
「じゃ、行こうか!」
「うん、そうだね」
ひかりは紫苑の案内で新しく出来たばかりだという洋服店に向かった。
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辿り着いた洋服店は全面ガラス張りで外からでも中の様子が見られるようになっていた。中にはありとあらゆる服が男女問わず置いてある。そこそこ繁盛しているようで、客もそれなりにいた。
「なんだかすごいね……」
「へへ、中はもっとすごいよ!」
店内に入ると、ひかりはまずその広さに圧倒された。何坪あるのかは見当つかないが、そのほかの洋服店と比べても広いということはひかりにも分かった。
「すごいでしょ~~?」
「うん! 思ってたよりも広いね!」
「ここならさ、ひかりに似合う服もあるんじゃないかな?」
「……そ、そうかな?」
とびっきりの笑顔で紫苑が言ったので、ひかりは思いきり照れてしまった。
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──同時刻、路地裏──
会社員の
「
細見は悪態をつきながらその場にヘタリと座り込んだ。と、そんな細見のもとにとある影が近づいていった。
「ずいぶんと不満がありそうですね? 私でよければ手伝いましょうか?」
細見に声をかけたのは黒いマントを羽織った男だった。細見はいぶかしげに男を見る。
「
「私なら、
「
「ええ。 あなたの叶えたい願いはなんですか?」
「……
細見は一呼吸置き、言った。
「
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──再び洋服店──
「いやーー、買った買った!」
紫苑は両手に買い物袋を提げ満足そうだった。
「……うれしそうだね」
一方ひかりは、一、二着のチュニックを買った程度だった。
「欲がない! ひかりは全然欲がないよ! ほんとにそれだけでいいの?」
「……うん。 これでも全然困らないし」
「ほええ……」
紫苑はそんなひかりを信じられないといった目で見た。
「じゃあ、帰ろうか?」
「え? あ、ああ! そ、そだね!」
紫苑は答えた。
キャアアァァーーーー!!
女性の悲鳴が聞こえたのはまさにそのときだった。周りにいた人が一斉に悲鳴が聞こえたほうに目を向けた。ひかりと紫苑もそちらのほうを見た。
「なんだなんだ?」
紫苑は背伸びをしながらなにが起きたのか見ようとした。紫苑は女子のなかでは身長が高いほうだが、やはり成人男性のほうが背が高いのでこうするしかなかったのだ。
「なんだあれは!?」
と、一人の男性がある方向を指さした。そこは悲鳴が聞こえた場所だ。そこには今まで見たことのないような
「なに……あれ?」
より見やすい場所に行こうとブロック塀の上にのぼったひかりは、その異様なものを見て愕然とした。
の怪物はじっとひかり達のほうを見ている。と思えば、次の瞬間には群衆の中心に移動していた。もの凄いスピードで、ひかりの目ではどのように動いたのか捉えられなかった。怪物は紫苑のすぐそばにいた。
「…………え?」
紫苑は動けなかった。あまりの出来事に体が反応しなかったのだ。怪物はクイッと首をかしげる。そして、手と思われる部分をあるものに変化させた。それは、まぎれもなく包丁そのものだった。怪物は一瞬の間をあけたあと、紫苑の腹部にそれを刺した。