実況パワフルプロ野球 短編シリーズ 作:小波大輔
ここは、独立リーグのチームの1つ、アマゾネス。
そのグランドで、1人の女性がピッチング練習をしていた。
彼女の名前は、佐菜あゆみ。このチームのエースを担当している。
あゆみ「アハアハアハ・・・」
息切れしながらも、彼女は球を投げ続けた。
もう500球近く投げていた。
左肩が鉛のように重く感じていた。
しかし、それでもやめれない。それにはある理由があった。
あゆみ「(この間の試合、私がもっといいピッチングをしていたら・・・)」
心の中でそう言うあゆみ。
実は、先日の試合で彼女は先発として登板した。初回と2回は、見事に抑えが、3回突如崩し、5回まで6失点をしてしまう。本来ならこのまま敗戦となるはずだったが、このチームでプロを目指す永尾拓哉と元メジャーリーガーの番堂長児のおかげで、逆転して勝利をもぎ取った。
しかし、あゆみは、自分の実力不足に不甲斐なさを少し感じていた。だから、少しでもチームのために・・・
「佐菜さん」
そこに1人の青年がやってきた。
あゆみ「あ、永尾さん」
あゆみのそばにやってきたのは、先日の試合で3安打4打点1ホーマーの活躍を見せた永尾拓哉である。
永尾「佐菜さん。もうその辺にしたら?いくらなんでも、投げ込みすぎだよ!」
永尾がそう指摘する。
あゆみ「大丈夫でぇす永尾さん。もっと投げ込まないと、またこの間の試合のように・・・」
あゆみがそう言う。
実は、あゆみは永尾のことが好きである。しかし、永尾にはプロポーズしたい相手がいる。
いわば、片思いの三角関係の状態である。
けれど、あきらめがつかなく、こうも無理をしてまで、チームのためと称して投げ込んでいる。
永尾「あれは、たまたまだ!どんなピッチャーでも、調子を崩すことはある!それに、こんなに投げたら肩を壊すよ!」
永尾がそう言う。
少し大げさかもしれないが、500球も投げ込めば肩が悲鳴を上げてもおかしくはない。しかも、こんなに投げ込めばケガ・・・いや、選手生命を失ってもおかしくはない。
あゆみ「それでも、私は投げまぁす!」
あゆみは、反論しようとする。
普段の彼女は、大人しく優しい女の子だが、今日はどうも意地を張っている。
どうにかして、やめさせないと・・・永尾は、懸命に考えていた。
その時だった。
「そうだよ、彼の言う通りだよ。無理な投げ込みはあまりよくないよ」
そこに突如、肌が少し焼けていた髪は灰色の女性があゆみにそう言う。
あゆみ「でも・・・」
「焦る気持ちはよくわかるわ。けれど、肩を壊したらどうしようもないよ。君はまだ成長していく!あたしが保証するわ」
その女性は笑顔でそう言う。
あゆみ「はい、わかりましたぁ・・・」
「分かればいいわ。それじゃあ、頑張ってね。アマゾネスのエース、佐菜あゆみさん」
女性は、あゆみのフルネームを言って去っていった。
永尾「なんだったんだろうかあの人?」
あゆみ「わからないですぅ。でも、まるで私に何かを期待している感じでしたぁ・・・」
あゆみがそう言う。
結局、その女性の言葉を受け入れて、それ以降キャプテンの無理難題の命令以外は、適度の練習をするようになった。
■
それから月日が経ったある日のこと
永尾「急に呼び出して一体なんだろうね矢部くん」
矢部「わからないでやんす。また、キャプテンの無理難題の練習じゃあないでやんすか?」
矢部がそう言うと、アマゾネスのキャプテンの新島早紀がやって来る。
しかし、2人が思っていたことは憂鬱で終わった。
新島「え~、みんなに急遽お知らせがある。実は、明日プロ野球の2軍と練習試合を行うことになった」
そう言うと周りがざわつく。
現在のルール上、プロ野球チームと対決できるのは、社会人、大学、独立リーグのみ。しかも、2軍(チームによっては3軍)が相手となる。なお、この場合は、公式ではなく、練習試合扱いとなる。
永尾「ちなみに、キャプテン。その2軍のチームと対決するプロ野球チームはどこなんですか?」
新島「読売ジャイアンツだ」
小石川「げ!?よりにもよって、巨人かよ・・・」
番堂「巨人の2軍か。相手にとって、不足はない!わしは、パ・リーグにいたが巨人とは何度も対戦した!」
矢部「それは、一体何年前の話でやんすか・・・」
矢部がそう言う。
新島「で、その巨人の先発だが、佐菜に行かせる!」
佐菜「え!?わ、私ですかぁ!?」
新島「最近、かなり力をつけている佐菜ならできる」
永尾「その意見には、俺も同じです」
新島と永尾がそう言う。
佐菜「わかりました。何処まで、やれるかわかりませんが、懸命に頑張ります!」
佐菜がそう強い意志で答えた。
■
翌日
矢部「とうとう、この日が来たでやんす」
永尾「そうだな」
矢部「それより、巨人の選手、見るでやんす。大田選手、アンダーソン選手、それに調整中の阿部選手もいるでやんす」
矢部がそう言う。
確かに、中堅若手に交じって外国人選手や2軍で調整中の選手もいた。
佐菜「あ!」
永尾「ん?どうしたの佐菜さん?」
佐菜「永尾さん、阿部選手の受けているピッチャー、見てくださぁい」
佐菜に言われて、永尾が阿部が球を受けているピッチャーを見ると、なんと以前に佐菜に忠告とエールを送った肌が少し焼けていた髪は灰色の女性がいた。
矢部「あ!あれは、太刀川選手でやんす!?」
矢部がそう言う。
永尾「太刀川って、あの太刀川広巳選手のことか矢部くん!?」
矢部「そうでやんす!」
矢部がそう言う。
佐菜「太刀川広巳?」
永尾「佐菜さん知らないの?数年前、甲子園でほとんどが女性が主体だった聖ジャスミンが共学して3年目で優勝したチームだよ。その聖ジャスミンの2大エース、横浜の小波選手と優勝への原動力になったのが太刀川選手だよ。確か、ドラフト3位で、巨人に指名されて、1年目の途中から1軍になると、1年目で10勝を挙げて、それから毎年2ケタ勝利をする女性先発ピッチャーとしての女性選手の憧れの的となった人だよ!」
永尾がそう言う。
佐菜「女性先発ピッチャーの憧れぇの的・・・」
佐菜がそうつぶやく。
どういう心境で佐菜にあんなことを言ったかは、太刀川本人しかわからない。
けれど、これだけはわかる。
佐菜「努力すれば、私もあんな選手になれるぅ・・・」
佐菜はそう言う。
新島「みんな、そろそろ試合が始まるぞ!先発ピッチャーは、あの太刀川選手だ!今は、ケガをして2軍で調整中だが、ケガをして初めての登板らしい!みんな、いくらプロでも、全力でやるわよ!」
選手一同「おーーー!」
永尾達が掛け声を出す。
そして、後攻の彼らが守備へ就く。
佐菜「(相手は、巨人軍の皆さん。抑えきれるかわからないけれど、太刀川選手に期待できるようなピッチングを見せてあげますぅ!)」
佐菜は心の中でそう意気込んだ。
その姿をベンチから太刀川が見ていた。。
太刀川「(早紀、相変わらずだね。早紀が独立リーグで野球を続けていると聞いて、私はチームに来た時に会ったあの女の子、やっぱり先発ピッチャーだったのね。そして、前より表情がとてもいいわ。練習試合とはいえ、プロとして本気を見せないと)」
太刀川は、佐菜の元気な姿に笑顔を見せながら心の中でそう言うのであった。
そして、試合が始まった。
後日、キャラ設定の紹介を投稿します