あなたが騒ぎの中心にたどり着くと、そこには多数の冒険者ギルド員がいた。その中であなたはエイナを見つける。状況はどうなっている?とあなたは声を掛ける。
「タケミカヅチ・ファミリアの方で……いや、ブシドーさんですか。今は一般人を避難させるために散らばったモンスターを捕縛、もしくは掃討を頼んで回っているところです。既にロキ・ファミリアにも頼んで……って、ちょっと!?」
モンスターの捕縛、掃討と聞いた時点であなたは駆けだした。今は一刻の猶予も無い。武器は無いがモンスターが散らばっているというのなら、一般人から逸らさなくてはならない。
あなたの後ろからエイナが無茶をしないでと叫んでいる声が聞こえるが、彼女も彼女で忙しいはずだ。自分のために時間を取らせるわけにもいかないと考えたあなたは、より一層の速度を持ってモンスターを探しに出た。
「アイズ、そっちはどう?」
「ん、終わった」
モンスターの脱走。それを聞いた私たちロキ・ファミリアは、冒険者ギルドの指示でモンスターの捕縛をしていた。武器を持っていなくとも魔法が使えるリヴェリアや私なら、急なモンスターにも対応できるからだ。
騒動の場に居合わせた私たちは、現場の逃げるモンスターを抑えていたけど……何匹か外に逃がしてしまったようだ。
「すみません!ロキ・ファミリアの方はいませんか!」
騒動も一段落と言ったところに、ギルドの受付嬢がやってきた。曰く、長い黒髪をまとめた女性の冒険者が、外に出たモンスターを追って出たという。
「私の担当冒険者で、ブシドーって言う子なんですけど……。抑えきれずに外に飛び出したモンスターは、ランク1冒険者では抑えきれるようなモンスターじゃなかったはずなんです。救援を…!」
「……!」
ブシドーと聞いて、体が強張るのを感じた。特徴と言い名前と言い、彼女に間違いない。
私はリヴェリアに目線を送る。この場はもう殆ど収まっている。だったらもう動いても問題ないはず……。
「ブシドー、と言ったか」
私が動こうとしたそのとき、背後からそれは現れた。思わず臨戦態勢を取るほどの威圧感。それに沿うような筋骨隆々の外見。
「《猛者》…!何をしにここに来た!」
《猛者》オッタル。オラリオにおける唯一のレベル7。
私たちとは犬猿の仲のフレイア・ファミリアで…オラリオ最強。それが何故ここに……。
「黒髪の長髪。で、ブシドーという名の女がモンスターを引きつけに言ったんだな?」
「……あっ。は、はいっ!」
「そうか、ならその女は俺が追おう。お前たちは他のモンスターを追え」
……聞き間違いだろうか。オッタルはまるで、ブシドーを助けに行くと言っているようだ。
「……どういうつもりなのかは知らないけど、ブシドーは私の友達。助けに行くのは当たり前」
「必要ない。その女の意図を組むのであれば、むしろ悪手とも言えるな《剣姫》」
悪手?彼女を助けに行くことの何が悪手だと言うのだろう。私はオッタルをにらみつける…が、意に反さず彼は言葉を続ける。
「モンスターを引き付けるということは、モンスターを一般人から隔離することが意図だろう。その女を助けるのはどちらにも出来るが、モンスターを片づけつつ一般人を助けるのは集団であるお前たちにしか出来ん。お前たちはお前たちのやるべきことをするがいい」
「……悔しいけど、正論だアイズ。今は他のモンスターを何とかした方が良い。《猛者》が追うと言うんだ。間違いはないだろう」
リヴェリアにも言われると、流石に引き下がるほかない。ブシドーのことは心配だけど、それ以上に彼女は一般人の方を心配しているはずだ。
「他のモンスターは急いで片づけてくる。ブシドーに何かあったら、許さないから」
「言われるまでも無い」
オッタルはそう言うと一瞬で消えた。……これが、レベル7の速度。愕然とした差に私は気落ちするけど、そんな暇はない。今はモンスターを何とかする方が先だから。
散らばったモンスターを追ったあなただが、幸か不幸かモンスターは巨大な種が多かったらしくすぐ見つけることが出来た。
何かを探しているような動きをするモンスターの前に、あなたは踊り出る。そう、実際に踊りながら出た。チェインダンスと呼ばれる、モンスターの目線を集める踊りをあなたは踊っている。どうやら効果はあるらしく、モンスターの目もあなたに惹かれているようだ。
後は市街地とは逆方向に誘導するだけだ。あなたは来た道を戻り、モンスターの誘導をし始めた。
「いた!ブシドーさーん!」
あなたが来た道を戻ると、シルがいた。
……まずい。あなたはすれ違う際に即座にシルを抱える。モンスターの進行方向にいる以上、抱えて走るほかない。
「あっ、ブシドーさん大胆…」
艶めかしい声を出すシルだが、あなたには構う余裕がない。モンスターはあなたのことを追っているから、降ろしたらすぐに逃げて欲しいとあなたはシルに伝えた。
「分かりました…。怪我した人を助けられたらと思ってきたんですけど、私が助けられてたら意味がないですもんね」
シルは落ち込んでいるようだ。仕方がない、今回はタイミングが悪かった。とあなたは慰める。こればかりは運が悪かったとしか言いようがない。
あなたはそっとシルを下ろして、シルと別方向に移動する。チェインダンスで気を惹かせて、別の方向へ誘導をする。……が、モンスターの視点がシルに移っている。あなたのことなど眼中にない様子だ。
まずい。このモンスターはシルを目標としている。モンスターが一度目標を定めてしまった以上、並大抵のことではモンスターの目標は変わらない。
モンスターが、シルを捕まえようと手を伸ばしている。こちらに来ると思っていたあなたは、シルとの距離がとても離れている。
あなたは瞬時に自身の中の限界を外す。影が残るほどの速さで、シルの場所まで追いすがる。
「ブシドーさん、何を…!?」
モンスターの手が迫っていて時間が無い。あなたはシルを突き飛ばした。突き飛ばすということは、その場にはあなたが代わりにいることになる。
人をすっぽりと包める手によってあなたは握りしめられる。モンスターは顔の近くに持ってきてあなたのことを見ると、邪魔されて憤慨したかそのままあなたを地面にたたきつけた。
――意識が、飛びそうになる。
あなたはそれなりに耐久力はあるつもりだが、聖騎士や獣などとは違い避けることを前提とした戦いを続けてきている。
避けられずに一撃を、しかも防具なしで貰った。歯を食いしばってあなたは立ち上がるが、かなり危険な状態だ。
叩きつけたということはあなたはモンスターの足の近くにいることになる。さっきからうっとおしい、小さくて邪魔な存在が足元にいるなら、踏みつぶそうとするのは道理だ。
モンスターの踏み付けが眼前に迫る。あなたは受け身を取れずに叩きつけられて、呼吸も乱れたままだ。
万事休す、か。
「これを使え!」
脚が目の前に迫ると同時に、あなたの目の前に刃が突き刺さる。
あなたはソレを目にすると同時に、心臓の鼓動が大きく鳴り響いた感覚に襲われる。
即座に引き抜いて迫る脚へ向かう。
――無意識にあなたは上段の構えを取る。幾戦も取ってきた、身体が憶えている構えだ。
巨大な足を、あなたは一刀で切り伏せる。馬を両断する目的で撃つ斬馬の技が、モンスターの足を吹き飛ばした。
突如の反撃で足を失ったモンスターは、バランスを崩しながらも怒り狂う。邪魔者から外敵へ変わったあなたに、モンスターは殴りかかろうとしている。
だが、遅い。あなたは先陣の名誉を我先にと言わんばかりに構え、刀を持った時に、最初に極めんとしたその技を撃つ。
――燕返し。
「――すごい」
目の前で繰り広げられた一瞬の攻撃。直前までの風前のともし火が、最期に燃え盛る一瞬のような姿が幻視する。
ああ、やっぱり美しい。とても綺麗で、鋭い刃の魂。見込んだ通りの、本来の姿。
さあ、最後の一線を後は超えるだけ。
モンスターはさっきの技で倒れたけど、まだ息をしている。
彼女はゆっくりと近づいていく。モンスターの首元まで歩いた後は、その振り上げた刃を下すだけ。
刃はそっと飲みこまれて、血しぶきが彼女を染め上げる。
「…………何を、やっているんですか!?」
シルの叫び声が聞こえる。あなたはモンスターの首元に行き、振り上げた刃を……自身の腕に刺していた。
腕から出る血しぶきが、和装を血に染めていく。ああ、確かにこれでは選んでもらった和装が台無しだ。
「そんなことを言ってるんじゃないです!どうして、自分の腕を……」
あなたはただ、冷静になるために一度腕を封じただけだとシルに説明する。あなたの≪介錯≫も腕を封じられては発動しない。
「だからって……。自分の腕よりモンスターの方が大事だとでも言うんですか!せっかく、せっかく……!」
シルは本当に惜しい、と言った顔をしている。そこまで和装に拘っていたのか……。悪いことをしてしまった。
それと、モンスターについては大事に決まっている。このモンスターたちは捕縛の指示が出ている。怪物祭のメインを殺してしまっては後でなんと言われるか分からない。
「……はぁ。そんなに冷静に言われると、こっちまで冷静になっちゃいます。ともかく、その腕の手当てをしなきゃですね」
それもそうだとあなたは刀を抜き、血染めの和装を破いて巻きつける。
シルはその様子を見てもうあきれ顔だが、これで今は良い。それよりも……刀を投げてよこした人物が誰か、いたはずだ。
「それは俺だ。お前がブシドーだな」
名乗りを上げた男は、今まで見てきたオラリオの人物の中でも屈指の威圧感を誇っていた。
あなたは刀、ありがとう。助かった。と端的に言葉を伝え、刀を返そうとする。
「そんな血まみれの刀は受け取れん。お前が使えばいい」
と言い、男はモンスターを縛り上げていく。なるほど、この男もモンスターを捕縛しに来ていたのか。
「モンスターは俺が連れて行こう。お前はまずは傷を癒すことだな。そこの……女にでも、手当てしてもらえ」
そう言い残し、男は去っていく。……しまった、後で礼を言うにしてもあの男の名前もあなたは聞いていなかった。
「彼はオッタルですね。《猛者》と呼ばれるオラリオ最強の存在……。唯一のレベル7冒険者です」
唯一のレベル7。それを聞いたあなたは彼があの三竜に挑めるほどの武人と判断する。
なるほど、通りで凄まじい威圧感を出すわけだ。とあなたが納得しているとシルに腕を強引に引っ張られる。流石に穴の開いた部分だ、触られると痛いのだが。
「そんな適当に布を巻きつけた程度で手当なんて言いません!手当用の道具は持ってきてるんですから、素直に治療されてください!」
有無を言わさぬシルの勢いは、先ほどのオッタルの威圧感をも上回っていた。
怪物祭が終わった後、あなたはファミリアの教会へ来ていた。あの騒動の際に、少年とヘスティアも巻き込まれていたと聞いたからだ。
教会の地下室の扉を開く。するとそこではヘスティアが少年に膝枕をしていた。
無事でなによりだ。とあなたはヘスティアに言う。
「ベルくんが守ってくれたからね。僕はもう傷一つないさ」
なるほど。少年は少年でしっかりと守り抜いたらしい。やるじゃないか、と少年を覗き見ると大事そうにナイフを抱えている。
「僕もベルくんに何かしてあげたくてさ。思いついたのがこのくらいだったんだ」
ヘスティアは自分で作ったナイフを少年にプレゼントしたらしい。なるほど、だからこんなに大事に抱えているのか。ナイフを抱えて寝るなんて危ない真似、少年がするわけがない。
「ブシドーくんも大変だったみたいだね。腕、大丈夫かい?」
あなたの腕のことをヘスティアはすでに知っていたようだ。問題ないとあなたは腕を振り回す。しかも微妙に誇らしげな表情で。
「……うーん、わかんないな。まだ痛むはずだろう?どうしてそんなに誇らしげなんだい?」
あなたは答える。自分はこの傷で誇りを保てたのだと。
刀を一度は捨てたあなたが、今の今まで弓を使っていたにも関わらず、それでもあなたは刀を忘れてはいなかった。
だからこそ……誇りを忘れてはいけない。
掲げた刀に相応しく、あなたは理由なく刃を振るってはいけないと考えていた。ただの無意識での《介錯》などもっての外だった。
それが守れた証がこの傷だ。誇らしくないわけがない。
「ははっ、ずいぶんとすがすがしい顔をしてるね。今まで見たことない良い顔だよ」
ヘスティアの邪魔をしてはいけないと考えたあなたは、ファミリアを後にする。
夜道、あなたはふと刀を抜く。白刃にはあなたの顔が映し出される。
なるほど、良い顔だ、その顔は相変わらず鋭い目つきをしていた。だが、同時に誇らしい笑顔をしていた。
《チェインダンス》
使用したターンのみ、狙われ率と回避率が上昇するスキル。
レンジャーは攻撃を回避した次のターンに使用が可能になるスキルがある。それと組み合わせて使える。かもしれない。
《上段の構え》
ブシドー(職業名)のスキル。ブシドーは構えスキル→攻撃スキルと、攻撃の前に構えを取らなければならない。
《斬馬》
上段の構えの際に使用できるスキル。
単体に強めの斬撃を放つシンプルな技。消費も少ない。
《燕返し》
上段の構えの際に使用できるスキル。
上段の構え時に使用できる最大威力の技。強めの斬撃を3度放つ。