混迷を呼ぶ者 作:飯妃旅立
赤い雨に生まれた混迷
朱い。紅い空が見える。
緋い雲だ。赤い雨が降っている。
自分は――倒れているのか。
仰向けに。
地面に。
緋い雲ってなんだっけ……。
確か、危険な物……。
赤乱雲?
「キィ……」
起き上がろう。
なんか、ふわふわする。
……浮いてる?
「キィ……」
朱い雨が降ってる。
ここは……廃墟?
崩れ落ちた外壁。大穴の空いた建物。地面にも沢山の瓦礫が落ちてる。
「キィ……」
朱い雨が止まない。
雨が地面に水たまりを作ってくれた。
朱いけど、映るかな。
「キィ……」
ふよふよと移動する。
どうにも浮いているらしい。
浮いているというか、泳いでる?
「キィ……」
緋い水たまりを覗き込む。
横長の薄い目。ギザギザした大きな口。色はわからない。
けど……俺はコイツをみたことがある。
「キィ……」
もう少し身を乗り出す。
ボールのような小さい体躯に、おびれ。
小さいヒレも左右についてる。
「キィ……」
間違いない。
これは……コイツは。
俺は、アバドンだ。
「キィ……」
アバドン。
体内に希少なコアを持つ、発祥不明の
そう、
「キィ……」
なんでも喰らい、喰らった物の性質をわが物とするオラクル細胞によって全身を構成される、正真正銘の化け物。
同じオラクル細胞でしか傷つける事の出来ない強固な体を持っている。
とかそんな設定だったはず。
「キィ……」
そういう、設定だ。
GOD EATERというゲームの中での話。
だけど、実際目の前……というか、俺自身がソレになってしまっている。
「キィ……」
アバドン。そのコンセプトは『逃げる宝箱』。
戦う事すらせず、ただ逃げては止まり、逃げては止まりを繰り返す存在。
聴覚は無く、視界も狭い。唯一の特徴はゴッドイーターのレーダーにひっかからないことだろうか。
「キィ……」
ゲームの名前と同じ職業、ゴッドイーター。神を喰らうなどという大それた名前を冠する地球の敵。
バグ的存在と言ってもいい。何度も体内を浄化しようとする地球に歯向かい、それを退けてしまう害悪。
どれだけ殺しても、どれだけ追い詰めてもわらわらと復活するソイツらは、見ていて気持ちのいいものでは――あれ?
「キィ……」
あれ、俺、何考えてたんだ?
ゴッドイーターは地球の敵。これはいい。
いいか?
「キィ……」
よくないだろ。
でも、ゲームの舞台で2度行われた終末捕食は、地球の意思だった。
最終的な螺旋の樹の中身を見ればわかる。
全てを終末捕食に飲み込んで、再生すればあのような綺麗な自然が戻るのだ。
「キィ……」
それを防ごうとする人類は、やはり敵だろう。
数十年前まで、地球を守るとかほざいていたから手を貸してやっただけなのに。
自分たちに危機が迫ったからと手のひらを返した奴らは、害悪だろう。
「キィ……」
朱い雨が降る。
確かコレも地球の意思。特異点と呼ばれる終末捕食のコアを造りだすのに必要な現象。
地球が、人類さえをも取り込んで再生してくれようとしているのだ。
「キィ……」
それに賛同した人類もいたけれど。
賛同したものは片っ端から悪扱いをされていた。
地球に仇なす者が善なのか?
「キィ……」
それは違うと思う。
違うと思うから、俺が正さないと。
さしあたっての障害は、ゴッドイーター。
「キィ……」
それと。
その周りに住む一般人だろう。
作中では、あの中から新しいゴッドイーターが選出されていたのだから。
若い芽は、早めに摘まないと。
「キィ……」
朱い雨が体になじむ。
地球が俺を応援してくれている気がする。
あぁ、今は。
この雨が止むまで、浸っていよう。
「キィ……」
人類を、終わらせよう。
超強化アバドンになりますのでご注意