混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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難易度2ミッション(震え声)


害たるその身の行く末は

 やばい。やばいやばいやばい。

 

 輸送機を落とした後、神機使いの元に渡らない方がよさそうな物を物色して壊していたんだが、今思えばそれすらも油断だった。

 ゲーム内でも『輸送機が落とされた』系のミッションは、アイテムがアラガミに食べられる前に受注可能になっていた。つまりそれだけ連絡が早いのだ。

 極東支部の近く、この場所は愚者の空母か? こんなところで輸送機が落ちて、極東人が来ないはずがないのだ。

 防衛班ならまだいい。ジーナ・ディキンソン以外なら悠々と逃げ遂せるだろう。何も戦う必要は無いからな。だが、今周りにいる奴らはやばい。語彙が無くなる程にはヤバイ。まじっべーよ。

 

 ショートブラストバックラーで人類種のバグ、神薙ユウ。バスタータワーシールドで半アラガミのソーマ・シックザール。神薙ユウが来るまでは単騎討伐数トップのロングシールド、雨宮リンドウ。

 所謂、スーパー極東人。上からバグ、ラスボス、裏ボスである。

 それが、今俺のいる場所――輸送機――の周りをうろついている。

 回収系任務は基本的には2分とか5分とか、作戦時間自体が短いはずだからやり過ごしきれば大丈夫なはずだけど……。

 

 俺にできる事は、制動力の全てを以てして体を動かさない事。あの音が漏れたらおしまいだと思え。

 

『偵察班より入電! 中型アラガミが接近中! 30秒後に……ジジ……ます!』

 

 うぉわぁ!? 輸送機の通信システムが生きてた!? 変に壊れて神機使いのインカムの周波数拾ってんのか!?

 でも、これこそ神のお導きだ。アラガミだし。

 できるだけ大きい音を出す奴に来てほしい。クアドリガとか。あいつは大型か。

 

「チッ……作戦時間はどうするんだ……?」

 

『今回だけの特例で、通常の40:00までと伸ばす許可がおりました。回収及び撃退をお願いします』

 

「おーぅ、聞いたなお前ら。中型アラガミの方は不意を見つけたら隙をついてぶっ殺せよ?」

 

 何が天のお導きだ! そんな特例聞いたことないぞ!

 でも、そうか。ゲームでは時間切れが有り得たけれど、現実でそんなことも言っていられない。何故ならアラガミ(おれたち)には作戦時間など関係ないからだ。

 レルネーの沼では99:99だったし、本来の神機使いの活動時間は40:00、50:00処ではないのだろう。

 

「ゴアアアアア!」

 

 こ、この鳴き声は!

 

「なんだコンゴウかぁ……。っと、俺がこんなんじゃいけねぇな。お前ら、気ィひきしめていけよ!」

 

 なんだコンゴウか……。堕天しようが禁忌種になろうが神融種になろうが他のアラガミと比べるとどうにも劣るコンゴウか……。

 大きな音を出すわけでもなし、強いて言うなら『ころがる』が強そうに見えるが、判定も小さいという悲しい仕様。RAGE BURSTの高難度ミッションではオウガテイル並に雑魚敵としてわらわらでてくる始末だ。ウコンバサラもだが。 

 あ、でもこのまま簡単にコンゴウがやられてくれれば、この3人はとっとと帰るかもしれない。いいぞコンゴウ。抵抗せずにやられてくれ。どうせ再構成されるんだし。

 

「ゴアアア! アァア!」

 

 げ、その位置で空気弾は――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちゃー……輸送機に当たっちまったか……ヒバリちゃん、中には?」

 

『既に避難済みですが……爆発の危険性も考慮しておいてください』

 

「ふん……とっとと倒せばいいだけだ」

 

 言うが早いか、ソーマがコンゴウに走り寄る。空気弾を撃った反動で硬直しているコンゴウ。その鼻っ面に、ステップからのバスターの降り降ろしが炸裂する。ただの一撃で結合崩壊を起こすコンゴウ。破壊の一撃が乗っているわけではない。コンゴウの顔面が破砕攻撃に弱すぎるだけである。

 全身に空気を集束し、解放しようとするコンゴウ。だが歴戦のソーマ、既にバックステップでそこにはいなかった。

 コンゴウの身体から広範囲全方向に空気が解き放たれる。

 その風圧に推されて、輸送機が傾いた。

 

 

「キィ……」

 

 

 コンゴウを視界にいれながらも、先程のバックステップとは比べ物にもならない勢いで輸送機から離れるソーマ。

 神薙ユウも油断なく輸送機の方を向く。その視界にコンゴウは入っていない。敵とすら考えていないのだ。

 奴を見た事のない雨宮リンドウだけが、未だにコンゴウを相手にしている。否、たった今ソレを倒した。

 

「おい……! そんな奴どうでもいい……! 油断するな!」

 

「おいおい、どうでもいいって……コアの捕食は基本だろ?」

 

 そう言ってゆっくりとプレデターフォームを展開、コンゴウを捕食するリンドウ。

 そのリンドウに向かって、2つの影が飛び出した。

 

 1つは輸送機から。

 もう一つは――神薙ユウだ。

 

「ん? ……うぉ!? おいおい、コイツはもう死んでるぜ?」

 

 神薙ユウの降り降ろしたショートをギリギリで避けるリンドウ。その剣筋は既に死に絶えたコンゴウを切裂いた。

 

「……」

 

 リンドウの言葉に返事を返さず、ただ目を限界まで見開いて構えるユウ。ソーマはタワーシールドを展開したまま動かない。

 2人とも、自分の役割をわかっているのだ。

 

「……そんなにやべぇのか……だがそんなヤツどこにも……クッ!?」

 

 何を察したのか、咄嗟に後ろを向いてシールドを構えるリンドウ。シールドの表面に黄色い波紋が浮かんで消えた。ジャストガードだ。

 リンドウのシールドに当たったナニカは瞬時に神薙ユウと別方向に移動する。直後、リンドウのシールドに神薙ユウのショートが叩きつけられた。

 

「うぅお!? 今のか! 速すぎねぇか?」

 

「馬鹿な事言ってる暇があったら盾を展開していろ……! ショート以外であれはとらえられねぇ……」

 

 シールドの展開を解除したリンドウにソーマが言葉を投げかける。その速さを目にして漸く理解したのか、リンドウはシールドを再展開する。

 

「キィ……」

 

 漸くそのナニカ――赤いアバドンが止まった。血に塗れた体色が、夕日に照らされて更に紅く、緋くなっていた。横に長い黄の双瞳がゆらりと浮かんでいる。

 

「ありゃ……ホントにアバドンか?」

 

「……俺に聴くな……」

 

 軽口をたたくリンドウと窘めるソーマ。上下関係で言えば逆のはずなのだが、極東支部にしてみれば見慣れた光景である。

 

『皆さん! 逃げて! 輸送機が爆発します!』

 

 竹田ヒバリからの通信。その言葉を照明するように、輸送機の原動機部分が赤熱し始めている。

 やむを得ないとリンドウ、ソーマは後ろに下がる。ユウは――。

 

 あろうことか、ステップを以てアバドンに斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 っべーよ。まじっべーよアレ!

 コンゴウのアホが輸送機を動かしたせいでバレたのはまだいい。

 だけど、俺が逃げようとするところに何故いるんだ雨宮リンドウ!

 神薙ユウは雨宮リンドウごと俺を斬ろうとして来るし……。極東人は化け物か!? 化け物だな。

 とりあえずさっき聞こえてきた通信から輸送機が爆発してくれるってわかったので、それに乗じて逃げようと思う。いのちだいじに、だ。

 

 輸送機の原動機部分が赤くなってきた。

 ――来る!!

 

「シッ!!」

 

 神薙、ユウが来てる――!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……逃がした、か。でも当たったみたいだね……」

 

 爆風による加速が手助けをしてくれたようだ。剣先が少しだけ掠った。すぐに逃げられてしまったけど、これなら――。

 

「慣れた、かな?」

 

 あれだけ目の前で見せられたのだ。それによってわかったことは、停止から最高速度まで、わずかにラグがあること。オラクル細胞の定義は『考えて、喰らい続ける細胞』だった。『考えて』から『体が動く』までのラグを狙えば行けそうだ。

 

「さて、どうやって帰ろうかな……」

 

 神薙ユウは爆炎によって分断された愚者の空母をみて呟いた。

 

 




主人公は停止→最高速度までにラグがないと思っていますが、それは考えて→動いているのが普通だからです。
ハルさんの時の様な咄嗟の行動ならともかく、今回は輸送機の爆発に乗じて逃げ出そうと『考えて』『動こうと』してましたので、わずかなラグがありました。
もっとも、神薙ユウを視認した後は咄嗟の行動なのでラグ無くかすり傷で済ませています。
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