混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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前半の考察(笑)はほとんどストーリーに関係しないと思うんで飛ばして大丈夫です。


no answer from the earth

 神機兵。

 

 長刀型と大剣型の2種類が存在していて、そのどちらもが兵装の換装が可能。 本来……というか今の時点ではまだ、対アラガミ用無人兵器であり人類を護るモノだ。 まぁブラッドのお守りが無いとろくに動かせないという本末転倒さは抱えているのだが。 お守りの対象が錘になるとは……ん、氷雪系のアラガミが通って行ったな。

 

 ゲームの中では結構初期に暴走してわらわら群がってくるわ、CC・ホライゾンみたいなチャージクラッシュが邪魔だわで良い印象を持っている人は少ないと思う。 他のアラガミは文字色変えて表示されるのに神機兵だけ他の文と同色で、見落として任務いってあああああ! な人もいたのではなかろうか。 え? 俺? HAHAHA。

 

 さて、この神機兵だが、元々はジェフサ・クラウディウス……今もフライアで偽・ゲンドウポーズをしているであろう半同族のラケル・クラウディウスの父親によって考案された、神機のオラクル制御機構を応用した人型機動兵器である。

 現在はレア・クラウディウスが開発する有人制御型――偏食因子に適合していない一般人でも搭乗可能――と、九条ソウヘイによって研究開発がすすめられている無人制御型の2つが存在し、この内後者の無人制御型は未だに外部からの補助無しでは無人運用の成功例無しという、正直そんなんを無理矢理任務に連れ出すなよと思わないでもない成果を誇っている。

 

 赤い雨対策も万全らしく、装甲には特殊なコーティングが為されていて赤い雨の中でも通常通りに稼働できる、らしい。 そんな特殊なコーティングがあるなら建造物とかに使えばいいのに。

 

 戦闘方法は現ブラッド隊長であるジュリウス・ヴィスコンティの血の力を用い、ジュリウスに蓄積された戦闘経験を神機兵に伝達してそれを元に構築されているらしいのだが、詳しい内容は明らかにされていなかった。

 

 

 

 まぁあのキチガイ染みた動きを見ればわかると思うのだが、あれはアラガミである。

 

 

 その仕組みの話をする前に、まずは『黒蛛病』と『赤い雨』について話さなければならないだろう。

 

 

 

 黒蛛病。

 

 赤い雨に触れる事で高確率で発症する病で、有効な治療法は見つかっていない。 発症した場合の致死率は100%という、人間にとっては恐ろしい病気だ。 空気感染や飛沫感染は無く、接触のみ――それも蜘蛛の文様にだけ――感染するということが判明しているが、治療法が確立されていない故に患者が畏怖の対象になることも多いようだ。 

風邪の様な症状として表出、以後身体能力の著しい低下、吐血、全身に痛みが走るという様に進行していき、最終段階では黒い蜘蛛の様な文様が体表面に浮かぶようになる。 段階の内、どこで死に至るかは個人差があるのだが、多分これは『特異点』への適合率の問題だろう。

 

 

 現時点で人間の黒蛛病に対する認識は『病』であるが、その実黒蛛病は地球の『意思』が発現した『終末捕食』を起動するための手続き(プロシージャ)だ。

 

 シオが月へ追いやられた事により、特異点を失った地球が新たに特異点を造りだそうとするシステム。 要は手当たり次第、という奴である。 手段を選ばなくなったというわけだ。 最初からそれをすればよかったのに。

 

 ここからは推測なのだが、赤い雨の雨水とは意図的に暴走させたオラクル細胞なのではないだろうか。 神機兵を思い出してほしいのだが、本来鋼鉄色という様な鈍い色だった神機兵は、暴走したオラクル細胞の侵食により装甲が赤く変色していた。 極地適応型の赤とは違う、暴走によって力を得たような種――ルフス・カリギュラや――俺も、その身は燃える様な赤をしている。

 

 

 

 この推測を仮定とすると、色々と辻褄が合うのだ。

 

 赤い雨水を人間が体内に取り込むと、体細胞が緩やかに浸食されて『特異点』と酷似した『偏食因子』を発生させるようになる。 体細胞が侵食されるのは、雨水がオラクル細胞だからだろう。 身体能力の著しい低下や全身の痛みは、ゴッドイーター適合試験を見れば一目瞭然だ。 オラクル細胞と自身の細胞の喰らい合いが想像を絶する痛みだということは、ゲーム始めに絶叫を聞かされたプレイヤーならわかる事だろう。

 

 適合試験は無理矢理に、且つ効率よく適合させる物だろうから、一度に来る痛みの度合いは適合試験の方が上かもしれないが、葦原ユノのように全身を黒蛛病に犯さるまでのトータルの痛みは同等なのだと考える。

 

 逆に、アラガミが之を取り込むと、その身を強力な個体へと変化させる。

 アラガミはそもとしてオラクル細胞の塊だ。 そこに赤い雨というエッセンスを加えた所で、痛みなどないのだろう。 強力な個体とはまさに感応種の事だ。 地球の意思をそのまま受け取れる存在。 地球の『血』を浴びたアラガミとなる。

 

 ブラッドの『血の力』という名称も、ラケル・クラウディウスが付けた物なのだが、当のラケル・クラウディウスは一言も『()()()血の力』だとは言っていない。

 

 血の力の『血』とは、赤い雨とは、そのままの意味で地球の『血』なのではないだろうか。

 

 

 さて、話を戻そう。

 

 

 神機兵の教導とジュリウス・ヴィスコンティの『血の力』の仕組みについてだ。

 

 

 上記のとおり、黒蛛病患者は偏食因子をその身に宿す。

 

 それを抽出し、神機兵へと投与することで感応能力を高め、ジュリウス・ヴィスコンティの『血の力 統制』を以て戦闘情報を伝達していたのだ。 赤い雨によって生成された偏食因子を取り込んだオラクル細胞の塊(じんきへい)が暴走するのは当たり前だ。

 

 むしろ、暴走というより元の鞘に戻ったというべきなのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長々と語っていたのだが、今回の目的は俺の眼下にのっそりのっそり歩くその神機兵――ではなく、ブラッド隊員である。

 

 傍らを歩いて護衛しているブラッド隊員は、シエル・アランソン。 『直覚』という血の力を発現する、これまた厄介な神機使いだ。 『知覚した敵の状況を伝達し感応現象を通じて味方に共有する』というもので、要は『敵体力視覚化』と『ユーバーセンス』をデフォルトで持っているということだ。

 俺は上記2つに感知されないからいいのだが、他のアラガミにとってこの2つは中々に厄介だ。 乱戦時など、どのアラガミの体力が一番低いのか分かられれば集中攻撃を受けるし、奇襲などが全て意味を為さなくなる。

 

 更にコイツはブラッドバレットの改良など色々と面倒な研究を進めてしまうので、早めに摘み取っておきたいところである。

 

 

 この後すぐに訪れる、最大のチャンスで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「既に赤い雨が降り始めました。 ここからの移動は困難と思われます」

 

 ため息をついて、シエルは傘となっている神機兵を見遣る。

 

 背部が大きく損傷した神機兵――βと呼ばれているもの――は機能を停止し、動くことはない。 

 通信機の向こうでジュリウスとグレム局長が揉めているのが聞こえる。 効率を考えれば、二次被害を考えれば、グレム局長のいう事は正しい。

 

 

 そう、正しいのだ。 正しいのだから、仕方がない。

 

 

「救援は不要です。 更新された任務を続行します」

 

 何かを言いかけたジュリウスを無視して無線を切る。 空は鮮血の様に赤く、しとしとと降る雨粒も緋。

 今は小雨で、自身が小柄であるから神機兵の影に隠れていられるものの、降水量が増えれば確実に接触してしまうだろう。

 

 赤い雨に降れれば、その先にあるのは死、のみ。

 接触感染を考えればもうブラッドにいる事も出来なくなってしまうだろう。

 

 

「その前に、ここから無事に生還できれば……の話ですが」

 

 

 ドシャッ、と大きな音を立てて飛来してきたシユウを見て呟く。 平時であればシユウ程度、1人で十分に倒せる。 だが、今の状況では――赤い雨を避けつつ、神機兵を護りながらの戦闘は――無理だ。

 

 

 

 シユウが跳びあがる。 イェン・ツィーにも匹敵する高さだ。 赤い雨で強化されてるのだろうか。

 

 

 

 シユウが突進してくる。 遅いが、避ける事は出来ない。 後ろには動けない神機兵がある。

 

 

 

 シユウが目の前に来る。 ただの一撃で死ぬつもりはないが、確実に吹っ飛ばされる。 赤い雨に濡れるのは免れないだろう。

 

 

 

 シユウが――。

 

 

 

 シエルは目を瞑った。 装甲すら構えなかったのは、諦め故か。

 

 

 

「…………」

 

 

 

「…………?」

 

 痛みはない。 どころか、衝撃もない。

 恐る恐る目を開けるとその瞳に映ったのは……鉛色のブレードが、シユウの脳天を叩き割っているところだった。

 

 そのままドライバーでも振りぬくかのような勢いでシユウを叩く――神機兵。 自らの後ろに鎮座している神機兵ではない。 違う。 この()()は――。

 

 

 

 

 

 

「君……?」

 

 

 

 何故。 どうして。 

 いろんな言葉が浮かんでは消える。 

 

 ありがとう、とか、助かりました、という言葉は浮かんでこない。

 

 命令違反をしてまで助ける程の命であるという自覚を、シエルは持っていない。

 

 

 

 

 

 

 だから取り乱してしまった。

 

 

 

 だから気付けなかった。

 

 

 

 だから――直前で、気付いた。

 

 

 

「え……?」

 

 

 神威ヒロの乗る神機兵υの背後。

 

 

 赤乱雲よりも、赤い雨よりも、なお紅い……緋い点。

 

 

 それが、先のシユウとは比べ物にならないスピードで向かってきている事に。

 

「君……! 後ろ……!」

 

 

 神威ヒロはその言葉に疑念を投げかけることなく、獣染みた動きでソレを迎え撃とうとする。 振り返り様の斬り返し。 並のアラガミであれば、一撃で沈むかもしれない程の威力と的確さをもったソレ。

 

 ――並のアラガミであれば、だ。

 

 そのアラガミ――サマエルに、ロングブレードやバスターブレードといった鈍重な武器で挑むのは完全な間違いである。 パリングアッパーでもガードは出来ても攻撃を当てる事は出来ない程のスピードを持つサマエル。 いくら有人制御により機動力が上がっていると言っても、神機兵とは本来が鈍重だ。 暴走すれば――あるいは、レトロオラクル細胞を取り込めばまた違ったのかもしれないが、現時点の神機兵には限界があった。

 

 

 

 鉛色のブレードを、いとも容易く避けるサマエル。 当たる直前で勢いを殺さずに急降下し――神威ヒロの乗る神機兵υを、通り過ぎた。

 

 

「あ……」

 

 

 

 装甲を展開できたのは、幸か、不幸か。

 

 

 

 ジャストガードに成功したシエルは――――ノックバックにより、赤い雨の降り注ぐ地面へと、投げ出された。

 

 

 一瞬にして肌へと染み込む赤い雨粒。 仰向けに倒れたが故に、口や鼻にも雨粒が侵入してくる。 白い服は鮮血に濡れたようにその様を変え、銀糸のような髪も緋に染まった。

 

「キィ……」

 

 サマエルは、そもままシエルにとどめを刺そうと方向転換をする。 一切の反動無く行われるソレに、シエルができることは一つもない。 何もない。

 

 シエルの目尻に涙が浮かぶ。

 本当に死を目の当たりにした時、シエルは人間だったのだ。

 

 音速の如きスピードで飛来するサマエル。

 

 

 

 さよならと、最後に言おうとして――その言葉は、神威ヒロの放ったオラクルの刃に阻まれた。

 

「キィ……」

 

 

 極大の()()()()の柱。 それが、サマエルへと直撃した。

 

 烈風刃。 いつのまにか神機兵を降りた神威ヒロによって放たれたものだ。 ちなみにシユウは既に拡散している。

 睨み合うサマエルと神威ヒロ。

 

 

「キィ……」

 

 その膠着から抜け出したのは、サマエル。

 

 

 

 目的は達したとばかりにシエルの方を見遣ると、消えたのかと見紛うスピードでどこかへ去って行った。

 

 

 

 緊張から気を失うシエルが最後に見た物は、再度神機兵に搭乗して己が身を抱く神威ヒロの姿だった。

 




ケイトさんとシエルを狙う……中の人は好きなんですけどね……
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