混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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ステキャン攻撃キャンステキャン攻撃キャンフンフンフンシュバッフンフンフンュバッフンフンフンュバッ


憧憬の現れ

 どうやら1つだけ勘違いをしていたらしい。

 

 俺ことアバドンの存在や、赤い雨が降っていたことから時期は少なくとも2074年――GE2開始時だと思っていたんだが、違うらしい。

 

 何故わかるかといえば、遠目に見える3人に神機使い。青、赤、黒の男たち。

 

 青がソーマ・シックザールで赤がエリック・デア=フォーゲルヴァイデ。黒いのは無印……もしくはリザレクションの主人公だろう。小説版は神薙ユウって名前だったけど……。

 

 人類の名前なんてどうでもいい、とは言い切れない。

 

 赤いのは置いておいて、青と黒。ソーマ・シックザールと神薙ユウは所謂バグ的存在だからだ。片や半分俺達と同族のくせに地球に反意を翻す逆賊。片やただの神機使いでありながら――プレイヤーによっては――単騎であらゆるアラガミを退ける本当のバグ。

 だから、こうして遠目から観察するのは悪い事ではない。はず。

 

 

 それに、今から起こるであろうことは作中屈指の名シーンなのだ。

 

 赤いの……エリック・デア=上田を、最弱と称されるオウガテイルが一撃の元殺すというオウガテイルの活躍シーン。その後、オウガテイルはソーマ・シックザールに倒されてしまうのだが、あれほど輝いているオウガテイルに横やりを入れるというのは無粋の極みだろう。

 

 なにより、アラガミになったからこそわかることがある。

 

 俺は、俺という個がある故に自身を認識できているが、思考は地球のため、地球の意思を貫け! と叫びたててくる。アラガミってのはオラクル細胞の塊だ。それも、総てのアラガミが。 レトロオラクル細胞も、カオスオラクル細胞もオラクル細胞の一種。群にして個なのだ、俺達は。 だからオウガテイルが目の前で屠られようとも、大した感情は湧いてこない。人間だった頃に準えるならば髪の毛が一本抜けたくらいだ。爪を切られたでもいい。

 

 それほどまでに、興味が無い。

 

「エリック! 上田!」

 

 おぉ、ついに名シーンが来た。

 

 普段見せる事のない程の高いジャンプをしたオウガテイルが、赤い上田に伸し掛かって――首に食らいついた。

 なるほど、なぜあの時上田が一撃で死んだのか気になっていたんだが、そういうことか。

 

 化け物からみても化け物揃いな神機使いも、首を取られれば死ぬと。

 

 

 上田を殺したオウガテイルがソーマ・シックザールのバスターによって葬り去られる。

 あのオウガテイルの体力が極端に少ないのか、ソーマ・シックザールのバスターの威力が異常なのか。

 

 この場合は前者だろうな。

 

 多分難易度1だろうし。

 

「キィ……」

 

 そういえば、本来アバドンには聴覚が無い。だというのに、さっき俺はソーマ・シックザールの声を聴く事が出来た。これはどういうことなんだろうか。

 

 体から出てしまうこの音も聞こえてはいるんだが、この音、止める手立てが見つかっていない。マップに映らないとはいえ、この独特の音は何故かフィールド中に響く。

 つまるところ。

 

「ん……? 今、何か聞こえたような……こっちか? ……死にたくないのなら、ついてこない方が良いぞ」

 

 

 自身も騒音スキルを持っているくせに耳がいい事で!

 

 青いの――ソーマ・シックザールが迷いない足取りでこっちに向かってくる。

 後ろに追従する神薙ユウ。武装はショートブラストバックラーか。

 戦闘スタイルを決めた所で、俺は戦闘未経験だ。初戦からバグ野郎2人は厳しくないか……?

 

「キィ……」

 

 あ、まずいな。方向転換をしようとした際に漏れた音で、完全に気付かれた。

 

 仕方ない。とりあえず攪乱して――逃げる。

 欲を掻くべきではない。殺すべき相手であるのは確かだが、こちらが殺されてしまっては意味がないのだ。俺という意識が他のアラガミに宿る可能性も無きにしも非ずだが、100%でない賭け事は嫌いだ。

 よって、攻撃するにしても狙うのは――ソーマ・シックザールのみ!

 

「なっ!? 速い!?」

 

 白いシャツ? に向けて突進する。バスターの威力は恐ろしいが、その動きは鈍重だ。俺との相性は最高に悪いはず。

 

 逆に、ショートはいただけない。間合いに入れば斬られるのは確実。新人を恐れすぎと思うなかれ、神薙ユウはハンニバル神速種を単騎討伐できるほどのポテンシャルを秘めているのだ。恐れすぎて損はないだろう。

 

「ぐぅ!? この……! ちっ! 速い!」

 

 ヒット&アウェイ。明確な体力ゲージが見えないからどれほどの威力なのかは分からないが、苦悶の表情から見て多少のダメージは入ったはずだ。

 

 攻撃力=質量*速さ。速さは見ての通りだし、どんな攻撃をうけても吹き飛びもダウンもしないこのボディは、存外質量があるのかもしれない。あらゆるアラガミ素材の凝縮という仮説が真実を帯びてきた。

 

 一撃を入れた瞬間、制動力を最大限に発揮して真反対の方向へ。1mmの反動もなく最大速度に達し、バスターの間合いから逃げる。

 空を切るバスター。割れた地面からその威力が見える。やはり直撃は避けた方が良いな。

 

「キィ……」

 

 ――これなら、勝てるんじゃないか……?

 

 ……というような油断はしない。何故なら、視界の端に映っていたはずの神薙ユウがいなくなっているから。

 背後から聞こえる甲高い音。ある程度の実力を持つ神機使いなら誰もがわかる、アドバンスドキャンセルの音だ。ショートのアドバンスドキャンセルからの攻撃は、右から左への横薙ぎのはず。

 右方向へ最速での移動をする。尾びれ付近を風圧が撫で、背後で息を飲む音が聞こえた。

 やっぱり神薙ユウは危険だ。どこの新人が仲間であり先輩である神機使いを囮にして背後から急襲するというのか。間合いも完璧に把握している。俺でなければ斬られていただろう。

 

「キィ……」

 

 もう十分な情報は得られた。無警戒だった先程とは違い、完全警戒状態に入った2人を相手にこれ以上は危険だろう。

 油断なく構えているソーマ・シックザールと神薙ユウ。

 いいだろう。

 制動力の真価を見せつけてやる。

 

 

 初動から最速でソーマ・シックザールに向かう。それをわかっていたとでもいう様に、タワーシールドを展開するソーマ・シックザール。このままシールドにぶつかれば、その硬直を狙って神薙ユウが斬りつけてくるだろう。

 

 だから、当たる直前で真横に方向転換する。そしてそのまま逃走。走れアバドン。

 

 フェイントと思われないフェイント。全てが最速であるから、フェイントなのか本気の攻撃なのか悟られない。これこそが制動力の真価である。

 

 

 あばよ! ごっといーたぁん! 

 

 ……無理があるか。

 




人類の敵ですが、主人公はそれなりにシリアルです。
慈悲はありませんが
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