混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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ちょっと短め。


秀逸なる逸脱

「ブラッド隊長 ジュリウス・ヴィスコンティ。 以下隊員各位、到着しました」

 

 自身らを教え導く車椅子の博士よりも、なお胡散臭い糸目眼鏡……もとい、ペイラー・サカキに挨拶に向かったブラッド。 

 ジュリウス、神威ヒロ、香月ナナ、ロミオ・レオーニの4人だけが、この場に来ることができた。

 

 最後のブラッド隊員は()()()()に直接出向かうという連絡があったので、シエル・アランソンを黒蛛病患者の治療施設へ入院させてから出向いたという次第だ。

 

「ようこそ極東支部へ! 私がここの支部長、ペイラー・サカキだ。 エミールが世話になったそうだね。 できれば直接会いたいと思っていたんだ」

 

 胡散臭い糸目眼鏡……サカキが、顔よりもなお胡散臭い声で言う。 その声色は、礼を言いたいという雰囲気。

 

 しかし、どうしてか。

 

 いや、言うまでもないのだろう。

 即死こそ免れたとはいえ、早期の欠員はブラッドに大きなダメージを与えていたのだ。

 

「……何か、事情があるようだね。

 いいだろう。 すぐにでも任務に入ってもらおうかと思っていたけれど……まずは極東支部の置かれている状況について説明するよ」

 

「今の極東支部は、いくつかの大きな問題に直面している」

 

「一つは『黒蛛病』。 『赤い雨』を浴びる事で発症する未知の病だね」

 

 

 そのワードが出た瞬間、ジュリウス含め各員が拳を握りしめる。 普段マイペースな神威ヒロも、唇の端を、その唇が白む程に噛んでいた。

 それを見据えつつ、サカキはもう1つの問題へと話を移す。

 

「そしてもう1つが、『感応種』だ。 所謂接触禁忌種と呼ばれる、新種のアラガミ……君ら『ブラッド』は交戦経験があるんだよね?」

 

「知っているとは思うが、感応種は『偏食場』という強力な感応波を用いて周囲のアラガミを従わせるという、特異な能力を持っている」

 

「勿論それはオラクル細胞の塊である神機にも影響を及ぼし、普通の神機使いの神機は機能停止してしまうけれど……」

 

「君たち『ブラッド』はその感応波の干渉を押しのけて、これを撃退した」

 

 

 またも拳を握りしめる。 握りしめたのは、神威ヒロ。

 

 

「……実に、心強いよ」

 

「さて、『赤い雨』と『感応種』。 この2つの問題の解決を、君たち『ブラッド』にも協力してほしいというわけなんだが……どうだろう?」

 

 最後だけは胡散臭さを晴らした、真摯な声で頼み込むサカキ。 それほどまでに切羽詰まった状況なのだ。

 

「……えぇ。 承りました。

 是非、是非協力しましょう」

 

 

 その言葉に、どれほどの意味が込められていたのか。

 

 協力を申し出たいのは、どちらだったのか。

 

「……ありがとう。 こちらも惜しみなく情報提供とサポートをする。 ここアナグラを、自分たちの家だと思ってくれれば幸いだ」

 

 その時、ノックの音もせずにガチャリとドアが開く。 一斉にそちらを見るブラッド。

 

「博士―、歓迎会のスケジュール、みんなに聞いてきましたよ」

 

 

 その声は、無理矢理空元気を押しだそうとしている感じが伝わってくる。

 そんな声で入ってきたのは、赤髪に黄色いバンダナを巻いた藤木コウタだ。

 

 疲れの色が見えている。

 

「あれ、もしかして……ブラッドの人たち?」

 

「あぁ、ありがとうコウタ君。 そうだ、彼らがブラッドだよ」

 

 サカキの言葉に、姿勢を正すコウタ。

 

「極東支部第一部隊隊長、藤木コウタです。 これからよろしくね」

 

 ここに雨宮ツバキが、或いは神薙ユウが居れば母性や父性を感じさせる目で見られたのだろうが、生憎2人とも今の極東支部にはいなかった。

 

「ブラッド隊隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。 こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 ジュリウスも姿勢を正し、一礼して自己身分を言う。 どちらの方が階級が上かというと、ブラッド隊が特殊部隊故に一概には言えない。

 

「今は歓迎会の準備中だから……色々見て、ゆっくりしててくれよ。 ブラッドのみんなの部屋もあるからさ」

 

 そう言って、出ていくコウタ。

 極東とブラッド。 どちらもが歓迎会というムードではない事に関しては、誰も触れない。

 

「あぁ……そうだ、ブラッド諸君。

 サマエルというアラガミを知っているかい?」

 

 その言葉に、ブラッド各員が――ナナやロミオまでもが、目を見開いてサカキを見た。

 

「……どうやら、君たちの持つ事情と深く関係しているようだ……よかったら、情報交換をしないかい? 僕達極東も、彼のアラガミには手を焼いていてね……」

 

「……はい。 

   是非に」

 

 ジュリウスが答える。 その目に浮かぶのは――怒り。

 

 

 

 この情報交換の末、ブラッド隊はシエルを襲ったのがルシフィルという感応種である事を知るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サマエル

 

3年前に極東支部で初めて確認され、その後グラスゴー支部でも確認された

アバドン神属第一種接触禁忌種。

血色の身体に嘲笑を浮かべたような顔を持つ。

音速に匹敵する超高速で移動・攻撃を行い、戦場を掻き廻す様は混迷の名を冠するに相応しい。

極東地域で討伐された個体が、他のアラガミと同様に再生し、種として定着したもの。

なお、最初に確認された個体以外は神機使いに危害を及ぼしたという事例は確認されていない。

 

 

ユーバーセンス等で補足する事が適わず、その身から漏れ出る独特の音でのみ判別できる。

アバドン同様体内に希少なコアがあるかは不明。

 

攻撃属性 なし

弱点属性『神』『火』『氷』『雷』

 

 

 

ルシフィル

 

赤乱雲よりも緋い体色が特徴的なアバドン神属感応種。

感応能力により戦場の全てのオラクル細胞へとジャミングを仕掛け、その全てを不活性化させる。

戦場にいるアラガミの活性化を強制的に解除するものの、神機使い側の通信機器、レーダーマップ、視界、聴覚のほとんどを機能不全に落とし込むので、その場での装甲の展開を推奨する。

 

 

サマエル同様、音速に匹敵する速力で移動・攻撃を行い、その威力はただの一撃でも死に至る脅威となる。 現状、一個体しか確認されていないものの、出現時には最大の注意を払う必要がある。

 

攻撃属性『神』

弱点属性 不明

 




主人公はサマエル→ルシフィルになりましたーわーぱちぱち


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