混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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すみません変な所で切ってますが




あー、言い訳が思いつかないですが、変な所で斬れてます!!!


Wanted

 迂闊だった。

 いや、愚かだったといっても差し支えは無い。

 

 極東支部に帰ってくる前、とある希少なアラガミのコアを捕食・回収することができた。

 それを、サカキ博士やリッカちゃんと研究を繰り返して、自立型のアラガミ装甲へと転する技術をなんとかモノにした。

 それで、満足していたんだ。

 

 あいつが、あの狡猾なアラガミが。

 僕達クレイドルだけでなく、ブラッドまでもがいない状況なんて好機を見逃すはずがないのに。 目先の事への手助けに囚われて、アイツの動きを予測できていなかったんだ。

 

 僕の、失態だ。

 

 

 

 スパルタカスを倒して、すぐにヒバリちゃんとの通信が切れた。

 ルシフィルが来たのだと、そう思って身構えて……数分後、何事も無く通信が復活した。

 それはブラッド側も同じのようで、全く同じ時間、通信が使えなかったようだった。

 

 やられた、なんて思う前に、声を荒げてヒバリちゃんに問いただしたよ。

 「極東支部との連絡は取れるか」ってね。

 ヒバリちゃんもそれだけで理解してくれたみたいで、すぐに連絡を取ってくれた。

 そう、取ることはできたんだ。

 

 繋がった通信から聞こえてきたのは、3年前リンドウさんがMIAになった時と同じ色を持った、ツバキさんの声だった。

 それだけで、理解できてしまった。

 

 勿論、理解したのは僕だけじゃない。

 ソーマも、リンドウさんも。 ブラッドの面々も。

 

 勝利の余韻などに浸る暇はない。

 

 輸送機に急いで乗り込んで、常時ならば出さない出力でトバしてもらって。 着陸姿勢に移った時点で、ハッチを開けて飛び降りて。

 

 その、血痕を目にした。

 

 あ、と声が出たのを覚えている。

 

 乾いた声だったのか、色の無い声だったのか――憎しみの混じった声だったのか。

 どれだったのかは、定かじゃない。

 でも、あ、とだけ声が出て。

 

 僕は生まれて初めて、目の前が真っ赤に染まるという経験をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリサ・イリーニチナ・アミエーラ(享年18)

 2070年フェンリルロシア支部入隊。

 2071年フェンリル極東支部転属。

 2074年、ミッション名『スノー・プロー』にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。

 元独立支援部隊『クレイドル』所属。 階級特進無し。

 

 ジーナ・ディキンソン(享年25)

 2066年フェンリル極東支部入隊。

 2074年、ミッション名『スノー・プロー』にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。

 元『サテライト防衛班』所属。 階級特進無し。

 

 ブレンダン・バーデル(享年25)

 2067年フェンリル極東支部入隊。

 2074年、ミッション名『スノー・プロー』にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。

 元『サテライト防衛班』所属。 階級特進無し。

 

 エミール・フォン・シュトラスブルク(享年20)

 2073年フェンリルドイツ支部入隊。

 2074年フェンリル極東支部転属。

 同年、ミッション名『スノー・プロー』にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。

 元極東支部第一部隊所属。 最終階級は上等兵(二階級特進)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……被害は、極めて甚大だよ。 ゴッドイーターにも、一般市民にも被害が出てしまった。 

 不幸中の幸い、なんて言い方はしたくないけれど……クレイドルの諸君が帰ってくる前に採取してきてくれた『レトロオラクル細胞』によるアラガミ装甲の強化のおかげで、居住区内への侵入は防ぐことができた。

 だけど、サテライト拠点の候補地は、ダメだったんだ。

 警報を出して、残っていた大工は少なかったけど……それでも、被害が出てしまった。

 

 何故か……本当に何故か、黒蛛病患者のいる区画だけは、無傷だったけれどね」

 

 淡々と話すサカキ。

 しかし、その声は、表情は、いつもの胡散臭さを無くして――死んでいる様だった。

 

「こんなことは言いたくないけれど……ゴッドイーター諸君は、今後は任務以外はできるだけ外部居住区に近づかない方がいいかもしれない。 僕達への不信感が高まってきているんだ。 悲しい思いをしたくないなら……だけどね」

 

 支部長室(ここ)に来る途中、ユノに会った。

 葦原ユノ。 独立拠点『ネモス・ディアナ』出身の歌姫で、サテライト拠点の発展を促進するためにフェンリルの広報活動に協力、支援の約束を取り付ける為に世界各地を飛び回る女性だ。

 いつもは気丈で、諦めないとふるまっている彼女。

 

 その彼女が、泣いていた。

 

 頑なに話したがらないユノを宥めるナナを背に、隣にいたサツキへと何があったのかを聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここ最近は、フェンリル極東支部を拠点として活動するユノ。 その背景には、黒蛛病患者たちの存在が或る。

 取り分けアスナ、という女の子を気に掛けるユノが、サテライト拠点が破壊されたと聞いて周囲の制止も聞かずにその子の元へ向かった時の事だ。 

 

 1人の住民が、ユノへとこう言い放ったそうだ。

 

「何をしに来た、フェンリルの狗が。

「ネモス・ディアナの総統の娘だかなんだか知らないが、歌を練習する余裕のある場所で育ち、恵まれて育ってきたんだろう。

「お前は、生きてさえいれば何度もやり直せると言う。

「それはお前が生きているからだ。

「友人を、家族を、同僚を、目の前で失って。

「それでもやり直せるというのか。

「やり直して、命が戻るのか。 大切な人は、戻ってくるのか。

「やり直しなど出来るものか! 歌などで、人の命を救えるか!

「ただ死にゆく俺達を、憐みの目で見るくらいなら、もう二度とここへこないでくれ!」

 

 

 ユノの背景など、何も知らない住民の言葉だ。

 その住民だって、普段からこのような事を思っているわけではないのだろう。

 しかし、自身のすぐ近くで死人が出て、配給は僅かで。

 ストレスの限界だったのだ。

 口をついて出た言葉は、止まらなかったのだ。

 

 それでもユノは、アスナの元へ向かおうとした。

 

 そこへ、石が投じられた。

 投げたのは――アスナと同じくらいの歳の、少年。

 

 どのような意味が込められていたのかはわからない。

 唇を噛みしめて、俯いて。

 

 あの住民と同じ気持ちだったのかもしれないし、ここにはいない方がいいと言ってくれていたのかもしれない。

 けど。

 

 ユノは胸が苦しくなって、極東支部へと戻ってきてしまった。

 

 ユノが泣いていたのは、そんな自分に対しての怒りだ。

 あそこで逃げてしまえば、あの住民のいう事を肯定しているようなものではないか。

 

 真摯な思いで、各地を回ってきた。

 助けたくて、救いたくて――助けて欲しくて。

 目の前で親しい人を失った経験だってある。 『ネモス・ディアナ』出身の者なら、誰もがそうだろう。

 それでも、恵まれていなかったかと問われれば、即座に返答はできない。

 

 歌を歌う。 言葉にするのは簡単だが、この世界においてそれは難点があるのだ。

 1つは、アラガミ装甲などで確実に守られている場所でないと行えない事。

 アラガミの中には、音に敏感に、過剰に反応する種も少なくはない。

 歌など、格好の的だ。

 

 もう1つは、労働力の問題だ。

 女子供であっても、労働力は必須だ。 力仕事は男衆に任せるとしても、日々の仕事や他人の手伝いなど、一日にやるべきことは沢山ある。 それこそ、人手が足りないと喚き立てる程に。

 そんな中で、歌を歌う。

 歌をサブにして、他の仕事をメインにやることならできるだろう。

 だが、歌をメインに練習する事は、酷く難しい。

 葦原総統の娘、という立場が無ければ、できなかったことだろう。

 

 そうやって、考えてしまうのだ。

 自身に悪い点があったと考えやすいユノは、どんどん汚点を自分に塗り重ねていく。

 

 無論、今までにこのような事を言われたことが無かったかというと、そんなことはない。

 心無い発言をする者なら、過去に幾人もいた。

 

 しかし、ユノは気丈を振る舞い続けてきた。

 

 今回、こうして崩れ落ちてしまっているのは、神機使い達が原因である。

 

 仲良くなり過ぎたのだ。 極東支部の面々と。

 

 暖かく迎えてくれた極東支部の面々が、次々と床に伏せ、死に絶え。

 ユノ自身のストレスも、相当なモノへと膨れ上がっていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 ここまで聞いて、これ以上は、そっとしておいてほしいとサツキに言われ、ユノを後にしたのだった。

 

 

 絶望。 そんな2文字が、浮かび上がりそうだった。

 

「アタシは喰らうだけだ。 感応種も、ルシフィルも、アラガミは全部喰らってやる。 なんて言われようと構わねぇ。 求めてくるのさ。 喰らえ、ってな」

 

 重くなった支部長室の空気を払うかのように、唐突にヒロが語り始める。 その声色に不安や悲しみは無く、いつも通りの彼女であることが窺い知れた。

 

「諦めたいンならそれでいいよ。 アタシの邪魔だけしなけりゃね。 

                  ――アンタは、違うようだけど?」

 

 頭に付くのは、生きる事を、だろうか。 ゴッドイーターを、だろうか。

 

 ヒロの視線の先にいるのは、ユウ。

 彼は。

 

 

 彼は。

 

 

 彼は、嗤っていた。

 

「3年前……僕は、サマエルに何度も負けた。 あっちがどう思っているのかは知らないけど、僕は何度も負けて、それが悔しくて、絶対に勝ってやろうと思って戦っていた。

 けど、今は違うんだ……。

 これが、憎いって感情なんだね。 これに惑わされることはないけど……。

 怒りだけは、生まれてこの方感じたことが無い程に燃え滾っているよ。

 諦める? ふふ……それだけは……あり得ないなぁ」

 

 怒気の籠った声色。

 ずっと一緒にいるソーマやリンドウでさえ、聞いた事が無い声だった。

 

 血色の波紋が、ユウに落ちる。

 

「……俺も守らなけりゃいけねぇ奴がいるからなぁ……。 降りたりはしないぜ」

 

「……ふん。 最初から、諦めるなんて選択肢はない……」

 

 リンドウは誰かを思い浮かべて。 ソーマは当然であるというように呟く。

 

「俺もさぁ……復讐のためだけにここまで生きてきたんだ。 みんなを守る力を、やっと手に入れて……今更尻尾巻いて逃げるなんて事、するわけないだろ?」

 

「それにー、私達がいないと隊長寂しいでしょー?」

 

「ケッ……」

 

 ハルオミもユウと同じく……決意を秘めた声で宣言する。

 ナナの言葉には茶化しが入っていたが、確かな信頼があった。

 

「……ふぅ。 やっぱり君たちは凄いね……。 僕達も、早急なレトロオラクル細胞のアラガミ装甲化に努める。 伴って、ゴッドイーター諸君にはアラガミ『キュウビ』の討伐及びコアの捕食を頼むよ。 クレイドル諸君が一度倒してくれた事で、レトロオラクル細胞を持ったまま種として根付いてくれたからね。 数をそろえる事ができるはずだ」

 

 




正直神薙ユウがいるのにクレイドルの面々がキュウビ倒せてないの考えられなかったんで、見つけた時点でユウ君が採取しちゃいました。 さらに技術転化まで済んでいたっていう。

前話で改修していたのは、これをアラガミ装甲へ入れるためですね。


次の話も人間側です。
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