混迷を呼ぶ者   作:飯妃旅立

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主人公最強タグを使うならこういう展開はてんぷれーと


愛を胸に、荒を敵に。

 

 ――ケイトが死んだ。

 簡単な任務だった。少なくとも9年目と3年目がいて失敗することなど有り得ないほどには。

 だから、2人でも大丈夫だろうと思って、俺は別の長期任務に就いていたのに。

 1日経って任務から帰ってきたグラスゴー支部は、とても静かだった。人手不足により、いつも慌ただしく動いている職員やオペレーター、清掃員までもが沈痛な面持ちで。

 まるで、空気までもが死んでしまったかのようだった。

 

 普段はのほほんとしてる支部長に肩を掴まれ、真剣な顔をされた時は別人か? なんて茶化す気にもなれなかった。「よく聞きなさい」と。「気をしっかり持ちなさい」と言われて、その口から紡がれた言葉。

 ――ケイトとギルが任務中新種と遭遇、ギルは重傷、ケイトは――死亡。

 

 その言葉をかみ砕く前に、飲み込む前に、俺は駆けだしていた。

 立ち止まっていたら、その場から動けなくなりそうだったからかもしれない。

 走ることで脳の活動を止めてしまいたかったからかもしれない。

 

 ただ、がむしゃらに病室を目指して駆けた。ギルバートがいるであろう病室に。

 ケイトの死を受け入れたわけじゃない。そんなもの、何年経っても受け入れられると思えない。

 だけど、今だけは。

 今だけは、ギルの元へ一刻も早く駆けつけてやらないといけないと思ったんだ。

 

 自分1人が生き残ってしまった事を悔いて、ギルの心が壊れてしまう前に。

 

 

 力強く病室のドアを開けると、果たしてそこにはギルがいた。

 呆けたような顔で、曇り空の映る窓を眺めて。

 でも、俺にはソイツ(・・・)が、ギルバート・マクレインに見えなかった。

 

 ――間に合わなかった?

 

「ギル……? おい、ギル?」

 

 これだけ音を立ててドアを開けたのに、こちらを振り向こうともしない。

 その横顔は、どこか遠くを見ているようで。

 

「ギル! ギルバート・マクレイン! こっちを向け!」

 

「あ……ハル、さん……」

 

 ――目が死んでいる。

 まるで抜け殻だ。乾いた涙の痕が痛々しい。

 

「ギル……お前……」

 

「ハルさん……俺……」

 

 なんて声をかければいい? 気にするな? そんなこと、優しいコイツができるはずがない。しょうがなかった? そんな言い訳、コイツ自身が許すはずがない。

 かける言葉が見つからない。いつもは場を茶化して、たとえ憎まれ役になってでも回ってくれる舌が、一切動いてくれない。

 

「俺……俺は……なんで、俺が生き残ったんですか……? 俺が死ねばよかったのに……ッ!」

 

 でも、その言葉を聞いてカッとなってしまった。

 重傷者だろうが弟分だろうが関係ない。グっと病人服の胸元を掴んで引き寄せる。

 この呆けた顔が、むかついて仕方がない。

 

「ケイトを……ケイトが死んだことを、無駄だったみたいに言うんじゃねぇ!!」

 

 言って、それが八つ当たりでしかない事に気付いてギルを放す。

 違うだろう。もっと、兄貴分としてかけてやる言葉があったはずだ。こんな、こんな当り散らすような言葉じゃなくて。

 でも、どうしても許せなかった。

 

 ――ケイトがいたことを、否定されたようだったから。

 

「ッ……!! すみません……どうか、してました」

 

 ほら、気遣われてしまった。あれだけケイトを慕っていたギルだ。自身の目の前でケイトの命が消えた瞬間を見たのだろう。コイツだって相当辛いはずなのに。

 なんて、ダメな兄貴分なんだ。

 

「ギルバート……お前さんは、俺とケイトの大事な弟分なんだよ……。死ねばよかったなんて、言わないでくれ。頼むから……ッ」

 

 押しつけがましい。結局は自分のためじゃないか。ギルの心が壊れてしまわない様に駆けつけた、なんて言って、本当は自分の心を護りたかっただけだ。

 本当に死ねばよかったのは、このどこまでも最低な心を持っている俺――。

 

『ハルオミ! すぐにエントランスへ戻ってきテ! 居住区にアラガミが侵入したみたイ!』

 

 一応、何かあった時の為につけてきていたインカムからオペレーターの焦りに焦った声が聞こえてくる。本当に何かあるなんて、笑えない。

 こんな心境状態で戦闘しても、良い戦果なんて得られるはずがない。

 他の神機使いを出せば――と、言おうとして、気付いた。

 この支部にはもう、俺しか神機使いがいないのだと。

 

「あ……ハルさん! その……俺とケイトさんを襲ったアラガミは、血まみれの様な体色をしたアバドンでした。めちゃくちゃ速くて、その、だから――。

 気を付けて、くださいッス」

 

 病室を出ようとする俺に、ギルがエールをくれた。

 その声色だけは、まるでいつものギルバートの様で……。

 俺は「あいよ」といつも通りに答える事が出来た。

 

 その余裕は、10分と持たなかったけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか平静を保って、オペレーターにどこにアラガミが現れたのか聞いたとき、俺の頭はほとんど真っ白になりかけた。

 ――C15外部居住区画。

 そこからの事はよく覚えていない。

 全速力で神機保管庫に行って神機を掴み、平時では考えられないほどのスピードで駆けた。

 オペレーターが色々言っていた気がするけど、全て耳に入ってなかった。

 

 これ以上、これ以上俺から大切な物を奪うのはやめてくれと願って、C15外部居住区に急いで。

 でも、そこにあったのは。

 

 

 地獄だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィ……」

 

 D.D.先生が死んだ。

 その事を認識して、苦しくて苦しくて。

 せめて縋りつこうと先生が開いていた私塾の方を見た時、ソイツは現れた。

 

 思い出の詰まった私塾は崩れ、その瓦礫の隙間から。

 まるで食後のライオンのようにゆったりと。

 真赤に濡れた小型のアラガミ――アバドン。

 

 ――俺とケイトさんを襲ったアラガミは、血まみれの様な体色をしたアバドンでした。

 

 ギルの言葉が蘇る。

 

 そうか。

 

 そうか。

 

 そうか、こいつが――。

 

「お前が……お前がやったのか!!」

 

 視界が血の色に染まる。

 どくり、どくりという血流と心音しか聞こえない。

 血が騒いでいる。

 

 気付いた時には、俺は駆けだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キィ……」

 

 葬儀に集まっていた人間1人1人に体当たりをかまし、更に残っている人間がいたら面倒だと家一軒一軒を崩して回っていた時だった。

 最後の一軒……本がいっぱいあったし、ここがデレン・ダルグリッシュの私塾だろうか? を出ようとして、慟哭を聞いた。

 泣きじゃくる幼子のような、この世を恨む少年のような、総てを悔いる青年のようなその声。

 ――しめた。そう思った。

 

 この特徴的な声色は、真壁ハルオミしかいない。

 想定以上に駆けつけてくるのが早かったけれど、神機使い1人程度ならどうということはない。

 ――今思えば、油断極まりない。最初のバグ野郎以外、勝ち続けていたからだろうか。

 

 俺はゆったりと、見せつけるようにしてガレキの山と化した私塾を出て行った。

 

「キィ……」

 

 やはり真壁ハルオミ。バスタースナイパーシールド。スナイパーだけには気を付けないといけない。狙撃弾の方が、俺より少しだけ早い。同じ方向に進んだら、の話だが。

 

「お前が……お前がやったのか!!」

 

 憤怒。

 アラガミよりも荒々しい。

 心なしか、真壁ハルオミの周囲を白と赤のエフェクトが渦巻いている気がする。

 

 ……赤いエフェクト?

 

 それをもう一度確認しようとしたときには、目の前に真壁ハルオミがいて。

 

 真壁ハルオミは、左腕を突きだしてきていた。

 

 

 

「キィ……」

 

 な、なんだ? 何が起こった?

 口の中に異物感と、超至近距離の真壁ハルオミ。

 

 その左腕はこちらへ伸びてきていて……その先は、俺のく、ちの、中!?

 

「あああああああああ!!」

 

 まずい! 真壁ハルオミのバスター、ワックマックは――溜め動作速度UP!!

 自分の腕ごと――!?

 

「オラァァァァァアアア!!」

 

 た、退避―!

 




ハルオミさんの状態
バスター  ワックマック   器用 溜め動作速度UP
スナイパー スイートシャフト ハイドアタック アイテム(使用速度、効果↑)
シールド  スティルザワン  スタミナ大 親愛 Bオラクル吸収量↑

変則的ですが、
ケイト&D.D.先生の死で親愛発動、バースト
ハイドアタックで主人公に気付かれず、溜め動作速度UPで(上がりすぎですが)チャージクラッシュ発動
って感じです。

決して窮地に陥ったから新たな力が覚醒したわけじゃないんや……(言い訳
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