–––––––––聖杯戦争開始まで、あと2日。
残る陣営はセイバーのみである。
とある学校。
その学校には、ある一人の男がいた。
その名は、「衛宮士郎」。
彼は、学校内でも、中々の男であり、弓道部の間桐桜から惚れられているのでは?と、噂も立つほどである。
そんな彼は、ある意外な人物と仲が良い。
「衛宮君?いる?」
––––––それは、ツインテールが特徴的な少女。「遠坂凛」。
また、アーチャーのマスターでもある。
彼は、聖杯戦争の事や、自分に激似(同一人物・同一存在)のアーチャーの存在も全く知らない、いわゆる一般人である。
「お、遠坂?何か用か?」
彼は、皆から嫉妬される存在でもある。
「え、えっとね…?き、今日は一緒に帰ってやっても…いい…わよ?」
彼女は彼に少なからずも、惚れっ気かあり、毎日こうやってアプローチをしているという噂がある。
「別にいいや。」
そして、そんな彼女のアプローチをばっさり切る行為をよく見ることが多い。
彼女は、学校内でもかなり美人に当たる存在なので、他の男子生徒は、羨ましいという感情と、嫉妬心に埋もれることが多いらしい。
「そ、そう…ならいい…ケド…」
「きぃ〜!!ムカつくぅー!!」
彼女は、学校が終わるとこのように怒りの発散にアーチャーを使う。
まさに、踏んだり蹴ったり。
いや、比喩などではなく、本当に。
「いだだだだだだ!!?やめろ、凛!」
勿論、英霊である彼も、一人の人間であったため、女子高生であっても、蹴られれば痛いのである。
「…全く、君は考えろ。確かに私は激似だが、エミヤシロウとは全く別でだな!」
勿論、紛れも無い嘘である。
彼女は彼に言い放った。
「声も体も体つきも…全部同じくせに。」
「ぐっ…」
正論であるがために、反論は出来なかった。
勿論、アーチャー自身も、何故守護者として呼ばれなかったのか、不思議に思っているだろう。
「…私は英霊で、彼は人間だ。私とは何の関係も無いと言った方が、早いのではないか?」
「だから、二人とも激似っていうか、何処ぞの国のドッペルゲンガーよ?アーチャー、本当に何者?」
私に聞かれても困る、と反論するアーチャー。
しかし、誰の目からもはっきり分かる事がある。
–––––––––––––この聖杯戦争には、イレギュラーが存在する。
恐らく、彼はそのイレギュラーであろう人物だ。聖杯に何らかのラグが起こったのだろうか、はたまた、単なる召喚ミスなのかは神のみぞ知る。
「アーチャー、紅茶でも入れてよ、紅茶。」
手を振りながら、離れろ、とでも言いたげに部屋から追い出した。
先ほどまで彼を踏んでいた彼女は、此処までも理不尽な存在なのである。
「ああ、はいはい…理解したよ、マスター。」
アーチャーも凛の事をマスターと呼び、部屋から出た。
しかし、彼は凛の事をマスターと思った事は一度もない。このままでは、聖杯戦争の前にストレス発散のサンドバッグにされて、絶命するだろう。
そのため、彼女を敬う姿勢を見せないと、参加した意味もなくなる。
まず、命令に従うように、彼女の紅茶を作らねばならない。
アーチャーはキッチンへ向かった。
「…何故貴様が此処にいる。」
「おや、居てはいけないというルールがあるのかね?」
アーチャーがキッチンに立った瞬間に目に映ったのは、黒の礼装に包まれた神父。
名は『言峰綺礼』。
遠坂邸に住み着いているらしく、教会には行かないという、よく分からない神父である。
「私は刺激を求めに来たのだよ、エミヤシロウ。さあ、麻婆豆腐を作ってくれ。私は今、客として訪れている。」
本当によく分からない神父である。
「麻婆豆腐を作るのは構わないが–––––––––––別に、凛の要望が先でも構わんのだろう?」
「–––––––––駄目だ。」
「––––––––––なんでさ。」
この神父、やたらと自分を優先的にするため、困っている。
暫くは、麻婆豆腐作りに励んだアーチャーだが、神父からの評価はこのようなものだ。
「フッ、食べられる味だが、凛の作る麻婆豆腐の方が美味い。」
「刺激が足りない、刺激が足りないのだよ。」
「––––––美味い、だが、刺激が足りない。」
このように、無駄に辛口なコメントを聞いていた彼は、約一時間に及ぶ麻婆豆腐作りをしていた。
「凛、邪魔するぞ?」
あれから20分。
紅茶を淹れ、部屋にやってきたアーチャー。
「…む?凛?」
ガチャッ。
扉を開ける音を立て、ティーカップを片手に部屋に入る。
「〜〜〜♪」
…どうやら、脱衣していたようだ。
恐らく、トイレに行った後で、「うっかり」部屋を間違えたのだろう。
勿論、彼がそれに興奮するわけがなく、空気を読まずに言い放った。
「おや、魔力供給の準備中だったか?コレは失礼。私も脱がねばならないか。」
「…え?」
アーチャーが脱ぎ始めた。
スカートに手をかけていた凛は、半裸状態であったため、裸体を見ているにも関わらず、無反応なアーチャーに対して、こう言い放った。
「…令呪を以って命ずる。」
「自害せ…」
「待て、凛!それは不味い!」
聖杯戦争前に自爆する気か?と、凛を止めるアーチャー。
凛も、事の大切さに気付いたようで、胸を隠し、アーチャーを蹴った。
「アーチャー!次やったら!絶対!許さないから!」
バタン。
扉を閉める音がして、彼は言い放った。
「やれやれ…冗談のつもりだったのだが…。女性は皆堅物ということか。」
違う、そうじゃない。
日常は、刻一刻と変化していく。